作業療法士がスポーツ分野で働くには?理学療法士との違いも紹介
公開日:2022.11.14
作業療法士のなかには、スポーツ分野に興味のある方もいらっしゃることでしょう。
「スポーツ」と言えば理学療法士が携わるイメージが強いかもしれませんが、実は作業療法士としてスポーツ分野に関わる人は少なくありません。では実際に、作業療法士は、スポーツ分野でどのような働き方ができるのでしょうか?
今回は、スポーツ分野に興味がある作業療法士に向け、働く方法ややりがい、理学療法士との違いについてお伝えします。
文:田口 昇平
(作業療法士、福祉住環境コーディネーター2級)
作業療法士がスポーツ分野で働く方法
作業療法士がスポーツ分野で働くには、主に以下の3つの方法があります。
1.スポーツリハビリを得意とする医療機関に就職する
病院やクリニックには、整形外科をはじめ、スポーツ外傷のリハビリに力を入れている医療機関があります。
医療機関は、外科的治療が必要な患者さんのリハビリをおこなったり、画像診断をもとに多職種協働で治療を展開したりできるのが特長です。
作業療法士として、チームで連携し、専門的なスポーツリハビリをおこないたいと考える方には、医療機関への就職がおすすめです。
2.スポーツトレーナーを目指す
スポーツトレーナーには次の種類があります。
・医療的ケアに強い「アスレティックトレーナー」
・アスリートの体調管理やケガ・故障予防の指導をおこなう「コンディショニングトレーナー」
・ジムやフィットネスクラブで運動プログラムを立案・提供する「フィットネストレーナー」
・アスリートの筋機能を総合的に高めてパフォーマンス向上を図る「ストレングストレーナー」
などがあげられます。
「作業療法士の資格がなくても、スポーツトレーナーを目指すことはできますが、医療系の国家資格があることで、強みとしてアピールできます。
ケガ・故障のケアから予防・体調管理まで、幅広くアスリートをサポートできるのがスポーツトレーナーの特長です。
3.障がい者スポーツの指導員として働く
作業療法士がスポーツ分野で働きたい場合、障がい者スポーツの指導員を目指すのも1つの方法です。
近年では、障がい者の運動能力向上や健康維持、余暇などを目的としたスポーツ活動が各地で盛んにおこなわれており、専門的知識・技術を備えて指導員の募集している自治体も多く見られます。
また、作業療法士に加えて、「障がい者スポーツ指導員」の資格を取得すると、さらに活躍の場を広げやすいでしょう。障がい者スポーツの分野に興味のある方は、資格取得にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
スポーツ分野で働く作業療法士のやりがい
スポーツ分野で働く作業療法士には、他の分野では経験できないやりがいがあります。
運動機能の評価・訓練に集中できる
一般的なリハビリにおいて、作業療法士は、活動・社会参加面に重点を置いたアプローチが求められます。
食事・排泄から家事・仕事に至るまで、患者さんを幅広くサポートしていますが、その分、運動機能面のアプローチに時間をかけにくいケースも少なくありません。
スポーツ分野を専門とすれば、筋肉・関節・靱帯などの機能改善が中心となり、他の分野に比べて、運動機能の評価・訓練に特化したアプローチがしやすいというやりがいが生まれます。
スポーツに復帰するアスリートと喜びを共感できる
ケガや故障から復帰したアスリートが、再び表舞台で活躍する姿を見ることは、スポーツ分野で働く作業療法士の醍醐味です。
ケガや故障に苦しみ、きついリハビリ・トレーニングをこなす姿をそばで見てきたからこそ、アスリートが成績を残したり、チームに貢献したりできるようになったときには、作業療法士にとっても自分のことのように嬉しく感じられるでしょう。
スポーツ分野で働く理学療法士との違いは?
冒頭でもお伝えしたとおり、スポーツ分野と言えば、理学療法士のイメージがあるのではないでしょうか。
続けて、スポーツ分野における作業療法士と理学療法士の違いや、作業療法士ならではの強みを見てみましょう。
精神面のサポ-トで強みを生かせる
アスリートがスポーツで最大限のパフォーマンスを発揮するには、精神面が安定していることが大切です。
プレッシャーのかかる場面で、不安や焦りに押しつぶされてしまうと、持てる力を十分に発揮することができないでしょう。
そうした局面を乗り越えるには、作業療法士の得意とする精神的なアプローチが活かせます。アスリートの気持ちを切り換えたり、意欲を高めたりといったサポートをすることで、精神面からもアスリートのパフォーマンス向上が図れるでしょう。
治療・トレーニングに「遊び」の要素を取り入れられる
スポーツのパフォーマンスを向上させるためには、実際に競技をおこなったり、運動機能を向上させるトレーニングをおこなったりするのが効果的ですが、ときには遊びの要素も大切です。
作業療法士は、物品や環境を工夫して、楽しみながら治療・トレーニングをおこなうのが得意な職種でもあります。
例えば、子どもを対象に車いすスポーツをトレーニングするなら、鬼ごっこ遊びを通して車いす操作を習得する訓練を取り入れるなど、アイデアを生かした取り組みが可能です。
トレーニングにうまく遊びを取り入れることができれば、アスリートも楽しみながらスポーツに向き合えるのではないでしょうか。
作業療法士ならではのケアやトレーニングを
スポーツ分野で働く作業療法士は、有資格者数全体からみれば少ない傾向にあります。
しかし、作業療法士は、スポーツ分野でも十分活躍できる職業です。心身両面からアプローチしたり、ケアやトレーニングに遊びの要素を取り入れたりと、作業療法士だからできることもあります。
職種の専門性をしっかりと活かして、スポーツ分野にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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田口 昇平
作業療法士/福祉住環境コーディネーター2級
2008年に作業療法士免許取得後、東京都内のリハビリ専門病院や特別養護老人ホームなどの施設で医療や介護業務に従事。2018年より、フリーライターに転身。医療介護職の働き方や働きやすい労働環境づくりなど、幅広いテーマで執筆。心理学・脳科学分野の書籍を愛読し、学んだ内容をブログやSNSで情報発信している。
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