スポーツ分野の理学療法士になるには?トレーナーの役割や就職先を解説
公開日:2021.07.19 更新日:2024.03.27
文:rana(理学療法士)
理学療法士のなかには、スポーツ分野に携わりたいと考える人も多いのではないでしょうか。理学療法士は競技復帰のためにリハビリをしたり、再発予防の指導をしたりと、スポーツ分野においても活躍の場が多くあります。ただ、一口にスポーツ分野といっても、その領域は幅広いものです。
実際にスポーツに関わるには、どのような働き方を目指せばよいのでしょうか。今回は、スポーツ分野における理学療法士の役割と、スポーツ分野で働くために必要なことについてお伝えします。
目次
スポーツ分野における理学療法士の役割
身体動作のスペシャリストである理学療法士は、スポーツ分野においてもその専門性を活かせます。活躍できる分野は大きく2つあり、1つは治療家として携わること。そしてもう1つは、スポーツトレーナーとしての関わりです。
スポーツトレーナーとは、スポーツ選手が競技において最大限のパフォーマンスを発揮できるように、トレーニング指導、コンディショニング調整、リハビリなどのサポートを行う職種です。
ここでは、スポーツ分野で求められる役割について確認しましょう。
けがへの対応
スポーツの現場では、けがの受傷場面に遭遇することも少なくありません。その際、理学療法士は専門家として、応急処置や、その後の対処指導などの対応が求められます。
競技復帰に向けたリハビリ
けがにより、競技から離脱してしまった選手が復帰できるようにリハビリを行います。一般の人や高齢者のリハビリと比べ、よりスポーツ動作に即した内容のリハビリメニューを立案する必要があります。
選手のコンディショニング調整・パフォーマンスの向上
試合に向けて、選手の身体コンディションを整えたり、パフォーマンスを向上させたりすることも理学療法士の役割です。選手個々の身体機能を把握し、時にはメンタルのケアも必要になることもあるでしょう。
傷害予防
個々の選手の動作を分析して、予測されるけがが予防できるようにサポートします。具体的には、一人ひとりの身体状況をしっかりと把握したうえで、ウィークポイントを鍛えたり、過度な負担がかかっている箇所のケアをしたりすることになります。
理学療法士としてスポーツ分野に携われる6つの環境
理学療法士が求められる施設は多岐にわたりますが、環境によっては全くスポーツ分野に関わることができません。実際にスポーツ分野に携わるとしたらどのような環境を選べばよいのでしょうか。スポーツに携わることのできる主な環境を6つ紹介します。
2.アスリート対応の整形外科クリニック
3.プロチーム
4.障がい者スポーツのサポート
5.地域スポーツのサポート
6.その他
1.スポーツに特化している病院
スポーツ医学専門の医師がいる病院では、多くのスポーツ選手が来院します。なかには日本代表チームやプロチームに帯同している医師もおり、その医師の元には有名プロ選手も治療に訪れます。そのような病院に就職できれば、多くのスポーツ選手のリハビリに携わることができるでしょう。
2.アスリート対応の整形外科クリニック
地域の整形外科クリニックには、部活や社会人競技でスポーツをしている人なども通院しています。「スポーツクリニック」と掲げた施設や、ホームページなどでスポーツに力を入れていると掲載しているクリニックであれば、スポーツをしている多くの患者さんと携われるでしょう。
クリニックは部活をしている学生も通院するため、子どもから大人まで幅広い人を対象に関われるという特徴があります。
3.プロチーム
近年、Jリーグやプロ野球のチームにトレーナーとして理学療法士を雇用するケースが増えています。 リハビリだけでなく、選手のコンディション調整や応急処置など、高いレベルのスキルが必要とされます。ある程度の実績や人脈がなければ、携わることの難しい狭き門ですが、それだけ魅力のある仕事といえるでしょう。
4.障がい者スポーツのサポート
シッティングバレーボールやブラインドサッカーなど、障がい者スポーツのサポートをする仕事もあります。日本理学療法士協会や各県士会が窓口となって募集していることもあり、多くの理学療法士が派遣されています。脊髄損傷や義肢など、理学療法士の専門知識を活かして、選手をサポートできるやりがいのある仕事といえるでしょう。
5.地域スポーツのサポート
中学や高校の部活や、地域のサッカークラブなどのサポート活動を行う理学療法士もいます。自分が卒業した学校や所属していたクラブなどは、比較的受け入れられやすく、週末に帯同してサポートしている理学療法士も多くいます。
6.その他
求人数としては多くありませんが、フィットネスジムで個々のトレーニングをサポートする理学療法士もいます。近年、理学療法士が独立してフィットネスジムやパーソナルジムを開業するケースも増えており、今後こうした求人が増える可能性も考えられます。
そのほか、スポーツメーカーの研究・開発に携わっている理学療法士もいます。
スポーツ分野の理学療法士になるために必要なこと
スポーツ分野に携わる理学療法士になるためには、分野に特化したスキルや知識を高めると同時に、関連する人脈を築くといった取り組みが必要です。
スポーツ分野に携わるために心がけたい2つのポイントをまとめました。
1.スキルを習得する
スポーツ分野では、一般病院や高齢者施設のリハビリとは違い、よりスポーツ動作に特化したスキルが求められます。
具体的には、各スポーツ特性に基づいた動作分析や、トレーニング要素を加味したリハビリメニューの立案などです。これらの内容を含んだセミナーに参加したり、現場経験を積んだりなどして、スキルを習得していくことが必要です。
2.人脈をつくる
チームに帯同してスポーツチームに携わりたいと考えるなら、その道に通ずるよう人脈を広げていくことが必要です。
勉強会や親睦会など、スポーツ分野で活躍する理学療法士やトレーナーと関係を築いていくことで、仕事をもらえる可能性が広がっていくでしょう。
アスレチックトレーナーの資格を取ることも近道に
スポーツに特化した道を進んでいきたいのであれば、アスレチックトレーナーの資格を取得することも選択肢の1つに挙げられます。
アスレチックトレーナーとは、医師やチームのコーチなどと連携しながら、スポーツ選手のトレーニングやコンディショニング、医療に関わる高度なケアなどを行う、スポーツトレーナーの一種です。
一般のスポーツトレーナーと比べ、より医学的な知識を有し、選手の応急処置やリハビリ、コンディショニングなど幅広く選手をサポートするのが特徴です。
アスレチックトレーナーの資格は、日本スポーツ協会認定の「JAPO-AT」と、ジャパン・アスレチック・トレーナーズ協会認定の「JATAC-ATC」の2つの民間資格があります。
アスレチックトレーナーの資格は、必ず取得しなければいけないというわけではありません。しかし、専門的な知識を得たり、養成校でスポーツトレーナーとの人脈を広げたりきっかけをつくります。資格取得は、スポーツ分野に携わる近道となることでしょう。
スポーツ分野は理学療法士の専門領域
身体機能や動作分析など、運動の専門家である理学療法士にとって、スポーツは専門性をより発揮できる分野であるといえます。
自身が実際に取り組んできたスポーツであれば、より自身の経験を患者さんに還元でき、やりがいを感じられることでしょう。スポーツ分野に興味があれば、自身のキャリアアップとして携わってみてはいかがでしょうか。
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rana(理学療法士)
総合病院やクリニックを中心に患者さんのリハビリに携わる。現在は整形外科に加え、訪問看護ステーションでも勤務。 腰痛や肩痛、歩行障害などを有する患者さんのリハビリに日々奮闘中。 業務をこなす傍らライターとしても活動し、健康、医療分野を中心に執筆実績多数。
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