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ブルンストローム・ステージ(Brs)を評価する際の心構えと注意点

公開日:2023.04.18 更新日:2024.01.11

ブルンストローム・ステージ(Brs)を評価する際の心構えと注意点

文:平岡 泰志(作業療法士)

脳血管障害の患者さんに対して、必ずといっていいほど実施されるブルンストローム・ステージ(Brs)。臨床経験が豊富なセラピストであれば評価方法で迷うことはありませんが、経験が少ない場合、いざ患者さんを目の前にすると戸惑うこともあるでしょう。

今回は、「臨床で評価をする時に失敗したくない」「患者さんの前でも堂々と落ち着いて評価をしたい」というセラピストに向けて、Brsの評価をする目的や、評価をする際の心構えや注意点について解説します。

ブルンストロームステージ(Brs)とは

ブルンストローム・ステージ(Brs)を評価する際の心構えと注意点

ブルンストローム・ステージ(Brunnstrom-stages)は1960年代にスウェーデンの理学療法士、ブルンストローム氏によって開発された脳血管障害の運動麻痺に対する評価方法です。

英語表記の頭文字をとって、Brsとも略され、上肢・手指・下肢それぞれをStageⅠ〜Ⅵの6段階で評価します。

Brsの評価で何が分かるの?

Brsでは、脳血管障害の後遺症である麻痺の程度やその回復段階を評価できます。また、ステージの急激な低下がみられる場合、脳血管障害の再発や悪化を判断する材料にもなります。

Brsを評価する目的は?

Brsは麻痺の程度を評価することで、治療に大きく役立ちます。というのも、麻痺の程度によって治療方法が異なるため、正しく評価することで、より良い治療方法を選択できるようになるからです。

たとえば、上肢のステージがⅢの患者さんに上肢の挙上が必要な作業を無理やり行わせると代償動作が入り、痙性を増強させかねません。患者さんに不利益を与えないよう、ステージに沿った治療方法を選択することが大切です。

また、Brsはセラピスト間で広く認知されているため、担当者が変わったり、在宅リハビリに切り替わったりする際の申し送り時も、相手に理解されやすいというメリットもあります。

ブルンストロームステージ(Brs)の上肢・下肢・手指別ステージ評価方法

Brsの評価方法は上肢・手指・下肢の部位ごとのステージに分けられています。患者さんの状態を確認しながら、以下を参考に評価を行いましょう。

上肢 stage Ⅰ:弛緩性麻痺
stage Ⅱ:上肢のわずかな随意運動
stage Ⅲ: 座位で肩・肘の同時屈曲、同時伸展
stage Ⅳ: 腰の後方へ手をつける。肘を伸展させて上肢を前方水平へ挙上。肘 90°屈曲位での前腕回内・回外
stage Ⅴ: 肘を伸展させて上肢を横水平へ挙上、また前方頭上へ挙上、肘伸展位での前腕回内・回外
stage Ⅵ:各関節の分離運動
手指 stage Ⅰ:弛緩性麻痺
stage Ⅱ:自動的手指屈曲わずかに可能
stage Ⅲ: 全指同時握り、釣形握り(握りだけ)伸展は反射だけで、随意的な手指 伸展不能
stage Ⅳ: 横つまみ(母指は離せない)少ない範囲での半随意的手指伸展
stage Ⅴ: 対向つまみ、筒握り、球握り、随意的な手指伸展(範囲は一定せず)
stage Ⅵ: 全種類の握り、全可動域の手指伸展。すべての指の分離運動
下肢 stage Ⅰ:弛緩性麻痺
stage Ⅱ:下肢のわずかな随意運動
stage Ⅲ: 座位、立位での股・膝・足の同時屈曲
stage Ⅳ: 座位で足を床の後方へすべらせて、膝を90°屈曲。踵を床から離さずに随意的に足関節背屈
stage Ⅴ: 立位で股伸展位、またはそれに近い肢位、免荷した状態で膝屈曲分離運動。立位、膝伸展位で、足を少し前に踏み出して足関節背屈分離運動
stage Ⅵ: 立位で、骨盤の挙上による範囲を超えた股外転。座位で、内・外 側ハムストリングスの相反的活動 と、結果として足内反と外反を伴う膝を中心とした下腿の内・外旋

参照:Brunnstrom S. Moter testing procedures in hemiplegia:based on sequential recovery stages. Phys Ther 1966;46:357-375) (石田暉. 脳卒中後遺症の評価スケール. 脳と循環 1999;4:151-159)

ブルンストローム・ステージ(Brs)を評価する際の心構えと注意点

ブルンストローム・ステージ(Brs)を評価する際の心構えと注意点

Brsの評価ポイントを頭では理解していても、いざ臨床で実践してみると、思ったように評価ができない場合があるでしょう。患者さんを目の前にしても、落ち着いて評価するための心構えと注意点を紹介します。

何のために評価をするかを常に考えておく

Brsの評価は、私たちセラピストのために行うものではなく、患者さんの心身を回復させるために行うものです

評価に集中しすぎて、声掛けもせずに患者さんをおざなりにしてしまうと、相手は不安になります。正確な評価や治療には、信頼関係が必要なため、常に相手への配慮を忘れずに、評価をする目的を考えて実施するようにしましょう。

患者さんの疲労度を観察しながら評価する

デンマークのオーフス大学病院が発表した研究結果によると、脳血管障害後の患者さんは身体的疲労レベルが上昇しやすいことが報告されています

評価を受ける患者さんは、私たちが想像するより疲れやすさを感じている可能性があるため、疲労度に注意しながら実施する必要があります。

患者さんが疲労した状態では、正確な評価結果が得られず、的確な治療が行えなかったり、再評価が必要になったりする可能性があります。評価中はもちろん、評価をする前にも、患者さんの疲労度を観察しながら行いましょう。

Brsの評価は患者さんのためであることを忘れずに

セラピストの間で広く認知されているBrsは、他職種も含め幅広く活用されている評価方法です

経験が浅いうちは、患者さんを目の間にすると焦ったり緊張したりして戸惑うこともあるでしょう。臨床で評価する前に、Brsの評価方法や評価をする目的、心構えを頭に入れておくことで落ち着いてのぞむことができます。

こまめな声掛けと患者さんの疲労度に注意し、信頼関係を深めながら評価するようにしましょう。

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参考

脳卒中ガイドライン2015【追補2019】|日本脳卒中学会
脳卒中ガイドライン2015【リハ抜粋】|公益社団法人日本リハビリテーション医学会
脳卒中治療ガイドライン2021におけるリハビリテーション領域の動向|理学療法化学37(1):129-141,2022
脳卒中理学療法診療ガイドライン|公益社団法人日本イ理学療法士協会
作業療法ガイドライン脳卒中|一般社団法人日本作業療法士協会
The Brunnstrom Stages of Stroke Recovery: What Each Milestone Means |FlintRehab
脳卒中の上肢機能評価と訓練の実際|リハビリの質を高めるためのコツを伝授します!|OGメディック
Brunnstrom S. Moter testing procedures in hemiplegia:based on sequential recovery stages. Phys Ther 1966;46:357-375 (石田暉. 脳卒中後遺症の評価スケール. 脳と循環 1999;4:151-159)
Dimensions of post-stroke fatigue: a two-year follow-up study|National Library of Medicine

平岡 泰志

平岡 泰志

作業療法士/医療介護分野専門ライター
地方の二次救急指定病院にて5年間勤務。その後、多職種と共にデイサービスの立ち上げに携わり、現在は主任として現場を統括。「高齢者の尊厳を守る」を念頭に、利用者と家族の生活をサポート。プライベートでは4人の子どものパパ。仕事と子育ての両立をするべく、日々奮闘中。

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