作業療法士の新人教育プログラムに密着!
公開日:2015.03.25 更新日:2015.04.02
昨今、療法士の養成学校の急増により、新人作業療法士が増えています。新人教育は作業療法士の基礎作りとして非常に重要であり、各施設によってさまざまな工夫が施されています。ところが、同じ医療施設勤務のなかでも、看護師向けには「新人看護職員研修ガイドライン」のような指導目標があるのに対し、作業療法士の新人教育制度はまだまだ完備されていないのが現状です。例えばリハビリ研修の場合、「急性期」から「在宅」までの流れを一貫して実施するために、ひとつの病院だけでの実施が難しいことも課題といえます。
しかし、作業療法士も、どんな施設であれ最低限の新人教育が求められていますし、地域単位での連携を図りながら、新人教育を実施できる体制が必要になってきています。ここでは、いくつかの病院の事例を参考に、作業療法士の新人教育プログラムの内容をご紹介します。
研修の目的
作業療法士として必要な基本的知識と技能の習得を図ることはもちろんですが、トレーニングによって現場に早く適応でき、医療人としての自覚を向上させることが主な目的です。また、先輩の作業療法士にとっても、新人教育を行うことで自己の能力をさらに伸ばす機会にもなります。現場での研修のほか、症例・研究発表、論文作成を必修とする施設もあります。
新人教育プログラム内容
研修の目的を果たすために、各施設ではどのような教育が行われているのでしょうか。実際に行われている例をご紹介します。
5年間にわたる入念な研修
茨城県のある病院では、研修総責任者と指導作業療法士のもと、5年間かけて入院・外来における作業療法を研修することになっています。訪問作業療法、介護老人保健施設およびデイケアなどでの作業療法研修も実施し、研修修了時には、その病院の認定療法士と位置づけて、さらに高等教育機関での専門研修や地域医療、作業療法研修を実施する方式となっています。
先輩セラピストによる指導や事例報告発表で柔軟な思考を
一方、東京都のある病院では、新人教育期間は1年間。1人の新人セラピストにつき先輩セラピスト2人が指導します。最初の3ヵ月間で集中的に作業療法業務全般について指導を行い、業務経験の有無や業務遂行能力について、チェックリストを用いながら進行状況や達成度を確認していきます。新人と先輩セラピストが互いにコミュニケーションをとりながら指導が進められるのが特徴です。その後は病院内の各科、リハビリテーション科や作業療法科など、それぞれにおいて研修や事例報告の紹介など講義が開催されたり、事例報告を発表したりといった機会もあるそうです。事例報告をまとめることで自分自身の作業療法について振り返り、その後の実践に生かし、さまざまな意見を聞く機会によって柔軟な思考を養うことが期待されています。
作業療法士協会の生涯教育制度
新人教育の一環として、作業療法士協会の生涯教育制度も利用することができます。これは、作業療法士の質の向上を目的として平成10年に創設されたもので、新人教育プログラム制度(現在は「現職者共通研修」と改名)もあり、一般的に活用されています。新人研修プログラム制度のほか、作業療法士の継続的なスキルアップを図るためのさまざまな研修が行われており、これらの研修により作業療法の臨床実践、教育、研究および管理運営に関する一定水準以上の能力を有した作業療法士は、「社団法人日本作業療法士協会認定作業療法士」として認定されます。
このように、作業療法士の新人教育は施設によって大幅に異なるものの、基本的には先輩セラピスト達との連携は不可欠であり、協会の教育プログラムも活用するなど、さまざまな取り組みが行われています。作業療法士としての技術を学ぶことはもちろん、リスク管理や患者さんの治療計画を立てて退院までの道筋をつくる能力も必要になるでしょう。作業療法士の増加に伴い、新人教育制度の今後の展開が期待されます。
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