理学療法士になるには最短何年かかる?資格取得までの流れを解説
公開日:2024.06.26
文:内藤 かいせい(理学療法士)
理学療法士を目指すとき、最短でどのくらいかかるのか気になる方も多いのではないでしょうか。理学療法士は国家資格なので、誰もがすぐになれるわけではありません。最短で資格を取得するためには、養成校で必要な知識や技術を3年以上学ぶ必要があります。
この記事では、理学療法士を目指す最短の流れや、事前に準備しておきたいことについてご紹介します。資格の取得方法を知ることで、将来を見据えながら理学療法士を目指せるようになるでしょう。
目次
理学療法士になるには最短で何年かかる?
理学療法士になるには、最短で3年かかります。理学療法士は国家資格なので、国家試験に受験して合格する必要があります。そのためには、養成校で3年以上学び、理学療法士に必要な知識や技術を身につける必要があります。
厳密にいうと、同じリハビリ職である「作業療法士」を取得していれば、理学療法士は最短2年で取得可能です。しかし、これは珍しいパターンなので、基本的には最短3年という認識で問題ありません。
理学療法士になるまでの3つの流れ
理学療法士になるまでには、以下の3つの流れを経る必要があります。
1. 養成校に入学する
2. 必要なカリキュラムを履修する
3. 国家試験に合格する
ここではそれぞれの流れについて詳しく解説します。
1.養成校に入学する
まずは、理学療法士の資格を取得できる養成校に入学する必要があります。養成校には大学や専門学校などがあり、基本的に3年制か4年制のいずれかです。最短3年で資格を取得する場合、3年制の短期大学や専門学校に入学することになります。養成校の種類や年制によってカリキュラムは変動しますが、理学療法士になるために必要な知識・技術を学べることに変わりはありません。
日本理学療法士協会によると、養成校は2024年の段階で、全国に275校あるとされています。そのため、養成校探しに困ることは少ないでしょう。毎年行われている学校見学やオープンキャンパスなどに参加して、自分にあった養成校を目指すことが大切です。
出典:日本理学療法士協会|養成校一覧
2.必要なカリキュラムを履修する
養成校に入学したら、定められているカリキュラムを受けて、それらを履修する必要があります。理学療法士に必要なカリキュラムは、以下の4つに大きく分かれています。
● 一般教養科目
● 専門基礎科目
● 専門科目
● 臨床実習
1年次では解剖学や生理学などの基礎的な知識の学習からはじまり、学年を経るごとに専門性に特化した分野を学びます。カリキュラムの難易度も学年に応じて高くなるので、1年次からしっかりと基礎を固めておくことが大切です。最終学年になると臨床実習がはじまり、医療機関やクリニックなどで理学療法士の実際の仕事を経験します。
3.国家試験に合格する
カリキュラムを履修した後は、最後に国家試験を受験します。国家試験に合格すれば、理学療法士の資格を取得できます。
例として、令和5年度で行われた国家試験の日程や試験内容、合格率などを以下の表にまとめました。
試験期日 | 2月19日(日) |
---|---|
試験内容 | 筆記試験(マークシート方式) |
合格基準 | ・総得点:167点以上/278点 ・実地問題:43点以上/120点 |
合格率 | 87.4% |
試験期日は、基本的に毎年2月中旬の日曜日となっています。合格率は毎年80〜90%を前後しているため、理学療法士の国家試験は決して難しいものではありません。これまで受けたカリキュラムをしっかりと履修し、国家試験対策をすれば十分に合格できるでしょう。
出典:厚生労働省|第58回理学療法士国家試験及び第58回作業療法士国家試験の合格発表について
3年制の養成校に入学するメリット
3年制の養成校は、4年制よりもどんなメリットがあるのでしょうか。ここでは、3年制の養成校に入学するメリットについて詳しく解説します。
キャリア形成に有利
3年制の養成校は、理学療法士として就職した後のキャリア形成に有利といえます。3年制であれば、4年制よりも1年早く理学療法士になれるので、早くから経験を積むことが可能です。
令和4年度の厚生労働省の調査によると、理学療法士の全体の平均年齢は34.7歳とされています。看護師や放射線技師の平均年齢は40歳以上なので、理学療法士は医療職のなかでは若い傾向にあります。そのため、職場によっては若いうちから役職に就くことも珍しくありません。その状況を考えると、1年早く理学療法士になれるだけでも、キャリアにとって大きなメリットとなり得るでしょう。
出典:令和4年賃金構造基本統計調査 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)
4年制よりも学費が安い
3年制の養成校は、4年制よりも1年早く卒業できる分、学費が安い傾向にあります。学費は養成校によって異なるので、具体的な比較はできません。しかし、場合によっては4年制よりも100万円以上安くなることもあります。学費をおさえながら理学療法士になりたい方に関しても、3年制のほうがおすすめといえるでしょう。
3年制の養成校に入学するデメリット
3年制の養成校に入学するデメリットとしては、授業がタイトになりやすい点です。4年制よりも1年短い分、カリキュラムが密になりやすいので、人によっては忙しいと感じることもあるでしょう。授業のスピードについていけないと、期末テストで赤点を取って留年してしまう、というケースもあります。
時間に余裕を持ちながら勉強したい方は、4年制のほうが向いている場合もあります。3年制と4年制はどちらもメリット・デメリットがあるので、よく検討してから3年制にするかを決めると良いでしょう。
最短で理学療法士になるために準備しておきたいこと
最短で理学療法士になるためには、どのような準備をしておくと良いでしょうか。ここでは、養成校に入学するまでに準備すべきことを詳しく解説します。
予習をしておく
入学前に予習しておくと、養成校で受ける授業の内容がスムーズに頭に入りやすくなります。予習しておきたい内容は、「解剖学」や「生理学」などの医療職にとって基礎となる分野です。これらの知識は理学療法士になった後でも必要になるので、早めに勉強しておいて損はありません。
予習する際は専門的なものではなく、初心者向けの書籍やサイトなどがおすすめです。まずはざっくりでも良いので、人体がどのような構成になっているのかを勉強してみましょう。
勉強習慣をつけておく
勉強習慣をつけておくと、養成校に入学した後もつまずきにくくなります。養成校では高校や中学と同じように、定期的にテストを受ける必要があります。そして、理学療法士として就職した後も、常に研鑽を積まなくてはいけません。
早期から勉強習慣をつけておくことは、学生時代はもちろん、就職後も大きなメリットとなるでしょう。少しの時間からでも良いので、毎日の勉強習慣をつけるようにしてみてください。
パソコンの操作に慣れておく
パソコンの操作に慣れておくことも大切です。養成校では実習や研究レポートを書く機会があるので、WordやExcelなどの基本的なソフトの操作は覚えておくと良いでしょう。また、就職後も電子カルテや書類作成のためにパソコンを使用する機会が多くなります。詳しい知識は必要ありませんが、パソコンをある程度操作できるくらいにはしておきましょう。
理学療法士になるには最短で3年かかる
最短で理学療法士になるには、3年制の養成校に入学することが条件です。3年制の養成校は、4年制よりもキャリア形成や学費の面で優位となる傾向にあります。しかし、その分授業がタイトになりやすいので、しっかりとカリキュラムについていく必要があります。予習しておく、勉強習慣をつけるなどの準備をすることで、養成校での授業も頭に入りやすくなるでしょう。3年制の養成校の特徴を把握したうえで、最短で理学療法士を目指してみましょう。
内藤 かいせい
理学療法士として回復期病院と訪問看護サービスに従事し、脳血管疾患や運動器疾患などの幅広い症例を経験する。リハビリで患者をサポートするとともに、全国規模の学会発表にも参加。 新しい業界にチャレンジしたいと決意し、2021年に独立する。現在はWebライターとして活動中。これまでの理学療法士の経験を活かして、医療や健康分野で多くの執筆・監修に携わっている。
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