脱水予防! 嚥下(えんげ)困難の患者さんへのアプローチ
公開日:2016.07.11 更新日:2016.07.22
だんだんと気温が上がり、でもまだ過ごしやすい風も吹く季節。知らず知らずのうちに水分摂取量が減ってしまい、気がつけば脱水になっていたということも少なくありません。特に嚥下困難な患者さんは水分補給が難しく、日頃からの脱水予防が必要です。嚥下困難な人だけでなく、高齢者のリハビリを進めるうえで注意したい、上手な水分補給について考えてみましょう。
嚥下困難で生じやすい脱水
嚥下困難を抱える患者さんの多くは、十分な水分が摂取できていないようです。特に気になるのが高齢者の場合。高齢者が1日に必要な水分量は、食事以外で1000~1500mlといわれています。発熱、下痢、嘔吐(おうと)などの体調の変化や環境の変化によっては、これ以上の水分が必要な場合もあります。安静にしている状態でも1時間に100mlほどの水分をこまめに補給することが大切です。嚥下困難によって、一度誤嚥を経験するとその恐怖心から、ますます水分をとりたくないという気持ちが起こり、さらに水分摂取量が減ってしまいます。高齢者になるとさらにリスクが高まり、のどの乾きを感じにくかったり、食事量が低下することで食事から得られる水分量が減ってしまったりする傾向があります。また、排泄を心配する患者さんも多く、のどが渇いても我慢してしまう人もあるようです。さらには、降圧剤や利尿薬の副作用として脱水状態になりやすく、自覚症状の有無にかかわらず、水分不足になっている人が少なくありません。
機能に応じた水分の形態を選びましょう
脱水予防には、水分補給を意識して行う必要があります。しかし、いざ水分補給をしようとしても、嚥下困難があれば水のようにさらさらした液体は飲みにくいものです。患者さんの状態に合わせた飲みやすい形態を準備してあげましょう。基本となるのが、均一な密度でとろみがついてまとまりがよく、のど通りの良い形態です。お茶や水などの水分をゼラチンで固めただけの水分摂取ゼリーがオススメ。飲み込みやすい濃度は患者さんによって異なりますが、通常は水300mlに対してゼラチン5gが目安となります。ゼラチンは口腔内温度で表面が融解しても、内部は固形を保つという特徴があり、咽頭への送り込みがスムーズに行えます。もし咽頭部にゼリーが残ったとしても、体温で融解するので窒息のリスクは下がります。
なかなか飲み込みができない患者さんには、くず粉や増粘剤でとろみをつけ、粘度をあげてみましょう。味に変化がないと飽きるのではないかと考えがちですが、水分補給としては水やお茶が適しています。反対にコーヒーや甘いジュースなどは内臓に負担をかけてしまうので、嗜好品として利用します。味があるものを好まれる場合は、水で薄めたものをゼリーにするとよいかもしれません。
電解質補給がポイント
電解質は細胞の浸透圧を調整したり、筋肉細胞や神経細胞のはたらきに関わったりするなど、身体にとって非常に重要な役割を持っています。電解質には、ミネラルに属するナトリウム、クロール、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどがあり、相互に作用しながら働きます。少なくても多くても細胞や臓器の機能を低下させるため、バランスを保つことが重要です。食事量が減ってしまい、口から摂取できるミネラル分が少ない患者さんには、電解質補給も兼ねた水分補給を行います。海塩をひとつまみ、水分に混ぜてからとろみをつけるのがおすすめ。電解質の欠乏で治癒やトレーニングが停滞する可能性もあるため、普段の状態を確認しながら、患者さんの状態に適した水分補給を心がけましょう。特に就寝前後の水分補給は大切です。排泄の問題もありますが、できればしっかり補給すること。睡眠中には水分と電解質を補給することができないため血液が流れにくくなり、脳血栓の要因となる場合もありますから注意が必要です。
水分補給において大切なこと
病院内など過ごしやすい温度にしていると、水分補給も忘れがちです。脱水を防ぐためにも、患者さんの状態に合わせた対応を行いましょう。また、誤嚥性肺炎の予防として、正しい姿勢を維持させることも大切です。患者さんだけでなく、自分自身の脱水予防も忘れずに。意識してこまめに水分補給をするようにしましょう。
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