アプリが仕事を変える?! 言語聴覚士のこれからの働き方
公開日:2016.08.26 更新日:2021.08.10
IT化が進み、さまざまな機能を持つ家庭用の電子機器が定着してきました。なかでも、スマートフォンはパソコンのような機能を兼ね備え、アプリを選択することで、だれもが専門性の高いツールに触れられるきっかけを広げています。
多くのアプリ開発が進むなかで、言語聴覚士が行うリハビリで活用できるツールも増えつつあります。手軽に利用できるアプリによって、言語聴覚士の仕事はどのように変化しているのでしょうか?
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生活を変え続けるネット革命
かつて、音楽は録音されているメディアを買って聴くものでした。いまやインターネットが普及し、有料でも無料でも音楽がダウンロードできます。言語聴覚士の仕事にも、そうした変化の波が訪れていることを感じている方も多いのではないでしょうか?
例えば、補聴器を考えてみましょう。まだまだ市販される補聴器の性能には届かないものの、アプリをダウンロードするだけで補聴器の役割を果たしてくれるツールが手軽に使える時代になりました。現在も、補聴器といえば専門家が調整し、個別に使い方を指導するのが一般的です。
しかし、アプリであれば素人がなにげなく使うことも増えてきます。使い方を理解していない患者さんが間違った操作を行って、トラブルが起きるかもしれません。
そうした状況が一般化すると、補聴器を必要としている人が訪ねてくるのを待つような従来の在り方では対応ができません。専門家としての新しい役割が求められることになります。
このように、アプリの存在は良くも悪くも言語聴覚士の働き方を変えていく可能性があり、無視のできない存在といえるでしょう。
リハビリにもアプリの波が
アプリの台頭には不安もありますが、一方で、専門家が臨床場面で活用できる可能性も秘めています。手軽に持ち運べるアプリをうまく活用できれば、リハビリの効果を高めるだけでなく、荷物や作業の負担を減らすことも可能です。ここでは言語聴覚士が知っておくと便利なアプリをご紹介します。
1.コミュニケーションサポートに「かんたん筆談」「手書き電話UD」
言語聴覚士がかかわる患者さんは、失語や発音不明瞭の方も少なくありません。これまで紙を利用してきた筆談も、アプリになれば、ゴミが出ません。筆談ができるアプリ「かんたん筆談」もありますが、特におすすめなのが、筆談で電話ができる「手書き電話UD」です。
そのほか、登録した文字や文章を音声に変えて伝えるアプリ「指電話」は、音声がクリアで自然な発声ができるため、失語症の人にはとても聞きやすいといわれています。
2.測定に「騒音計サウンドレベルメーター」
「騒音計サウンドレベルメーター」は口唇から20cmほど離れたところで、声量を測定することができます。裏技としてアプリを入れたスマートフォンやタブレットの音量を調整することで、簡易的な聴力測定として利用することもできるでしょう。
3.嚥下(えんげ)に関する情報提供に「Dysphagia」
嚥下に関する人体断面図を用いた動画アプリ「Dysphagia」。嚥下造影検査の前や構音点や構音方法について説明する際にわかりやすい動画を見ることができます。ただし説明は英語なのが難点です。動画として利用し、患者さんへの説明フォローに利用してもよいでしょう。
アプリの時代、言語聴覚士は?
アプリをはじめ、ここ最近の人工知能の進化はめざましいものがあります。今後、ますますアプリを含めた人工知能が人の仕事を変えていくことは間違いないでしょう。
野村総合研究所と英オックスフォード大学との共同研究によると、2030年には日本の49%の仕事が人工知能にとってかわられるといわれています。
測定や情報提供など機械に任せられるものは機械に任せ、身体機能の最終評価と患者さんの性格に合わせた対応、心理状態に合わせたかかわり方など、人間だからこそできるスキンシップなどがますます重視されるかもしれません。
今後、言語聴覚士としてどうあるべきなのか、機械をさらに活用した上で必要とされる、より人間らしい対応とはどんなものかといった新たな課題が見えるかもしれません。
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