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関節リウマチの運動療法

公開日:2023.02.15 更新日:2024.02.19

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文:臼田 滋(理学療法士)
群馬大学医学部保健学科理学療法学専攻 教授

膠原病と関節リウマチ

関節リウマチ(rheumatoid arthritis: RA)は、膠原病(collagen disease)に含まれる疾患です。炎症性自己免疫疾患で、関節痛や関節の変形が代表的な症状。詳細な発症のメカニズムは未解明で、根治的な治療はありません。以前は、関節の破壊が進行し、障害も重症化する患者さんも多く認めましたが、近年では、早期診断や早期からの多様な薬物療法の使用により、炎症の活動状態が抑えられ、関節の状態も比較的良好に経過する患者さんも増えています。炎症に対しては、安静と運動の適度なバランスが大切で、生活の指導・教育と患者さんによる自己管理が基本です。

膠原病は、いろいろな疾病を含む疾患群の総称ですが、全身の複数の臓器の炎症により、さまざまな機能障害が生じます。共通する所見として、結合組織や血管に病理的変化を認めます。主な共通する症状としては、発熱、倦怠感、関節炎、関節痛、皮膚症状、レイノー現象など。女性に多いことも特徴です。2019年国民生活基礎調査の関節リウマチの通院者数では、総数は88万9千人で、男性の21万2千人に対して、女性は67万6千人でした。一般に慢性に経過して、寛解と再燃を繰り返し、徐々に進行・悪化することがあります。

膠原病に含まれる疾患

1942年にクレンペラー博士が疾患の概念を提唱した際に含まれていた疾患を古典的膠原病といい、その他多くの膠原病類縁疾患が膠原病に含まれます(表)。

表 主な膠原病に含まれる疾患
表1

関節リウマチの診断と治療

関節リウマチは、両側性の多発関節炎を示すことが多いですが、四肢の関節だけでなく、脊椎、血管、心臓、肺、皮膚などの全身の臓器に病変が及ぶことがあります。

初期には朝のこわばり(morning stiffness)が特徴的で、朝起きたときに特に手がこわばって、握ることが困難になります。その後、関節炎、関節痛を認めるようになり、手指、足趾、手関節、肘関節、膝関節などの多関節に炎症所見を認めるようになり、全身の倦怠感や疲労感なども生じます。

関節炎では、関節の中の滑膜に炎症が生じ、増殖する滑膜炎が特徴で、進行すると増殖した滑膜が骨を破壊して、関節変形が起こります。一般的な変形として、手指のスワンネック変形、ボタン穴変形、尺側変位、母指のZ型変形、足趾のつち指、重複指などがあります。股関節の中心性脱臼や、頸椎の環軸椎亜脱臼も生じることがあります。

早期診断が重要で、ACR(アメリカリウマチ学会:American College of Rheumatology)/EULAR(ヨーロッパリウマチ学会:European Alliance of Associations for Rheumatology)関節リウマチ分類基準2010年が用いられています(表)。確定診断後、速やかに治療をおこなった患者ほど、関節の破壊が少ないとされています。

表 ACR/EULAR ACR/EULAR 関節リウマチ分類基準2010
表2

治療は、基礎療法(患者自身の疾患の理解と関節保護などの生活上の注意)、薬物療法、リハビリテーション、手術(滑膜切除術、人工関節置換術など)が基本であり、内科的治療と外科的治療を統合して治療されます。薬物療法では、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs:nonsteroid anti-inflammatory drugs)、副腎皮質ステロイド薬、抗リウマチ薬、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs:disease-modifying antirheumatic drugs)、 生物学的製剤を組み合わせて用いられます。生活上の注意やリハビリテーションにおいて、炎症が活動的な時期や部位に対しては、過度な使用や運動は避けるべきであり、安静と運動の適度な管理が重要です。

《問題》関節リウマチに対する運動療法で正しいのはどれか

【理学療法士】第56回 午前41
関節リウマチに対する運動療法で正しいのはどれか。

<選択肢>

  1. 1. 活動期では関節可動域運動は行わない。
  2. 2. 環軸椎亜脱臼では頸椎可動域運動を行う。
  3. 3. 関節強直では関節可動域運動を行う。
  4. 4. 等尺性運動で筋力を維持する。
  5. 5. ムチランス変形では他動運動を行う。

解答と解説

正解:4

それぞれの選択肢に沿って、関節リウマチに対する運動療法について解説しま

(1)炎症の活動期の運動
炎症は、発赤、熱感、腫脹、疼痛、機能障害を特徴とした徴候で、安静が基本です。そのため、炎症の活動期に対して運動は基本的に勧められません。炎症症状を認める関節に対しては、装具等による固定や関節の保護を中心に管理します。炎症の寛解を認めた場合には、速やかに適度な運動をおこないます。

(2)環軸椎亜脱臼に対する関節可動域運動
運動により亜脱臼の悪化を生じる危険があり、積極的な関節可動域運動はおこないません。カラー等を用いて固定することもあります。環軸椎の部位での脊髄の圧迫は、重篤な場合には呼吸不全が生じ生命の危険もあるため、慎重な対応が必要です。

(3)関節強直に対する運動
関節強直は、関節部の骨や軟骨の変形、癒着による関節可動域の制限で、特に骨性の癒合である骨性強直では、関節可動域がほぼ完全に失われた状態です。そのため、このような状態の関節に対して関節可動域運動をおこなっても、効果はほとんど期待できません。

(4)関節リウマチに対する筋力増強運動
身体活動の減少等により筋力が低下する可能性があり、筋力増強運動が必要とされます。筋力増強運動には、主に静的(等尺性)筋収縮と動的(求心性・遠心性)筋収縮による運動がありますが、動的筋収縮には関節運動を伴い、関節の炎症状態を悪化させる可能性があります。そのため、関節運動を伴わない等尺性運動が勧められます。

(5)ムチランス変形に対する運動
ムチランス変形は、急速に骨吸収が進行し、高度に関節が破壊された状態です。特に手指に認められることが多く、オペラグラス変形ともいわれます。ムチランス変形に対する運動は、炎症や関節の破壊を助長する可能性があるため、特に他動運動は勧められません。適度な関節の固定、安静が必要です。

実務での活かし方

日本リウマチ学会編集による「関節リウマチ診療ガイドライン2020」でのリハビリテーションに関する推奨を紹介します。

●関節リウマチ患者に対する運動療法は、患者主観的評価を改善させるため、推奨する。
運動療法は、関節リウマチ患者の身体機能および生活の質に関する患者主観的評価を、疼痛の悪化なく改善させるエビデンスが認められます。なお、関節リウマチ患者の運動療法は、十分な薬物療法による、疾患活動性のコントロールの下に、継続しておこなう必要があります。具体的にどのような介入がより効果的か、またいかに継続しておこなうかは検討課題とされています。

●関節リウマチ患者に対する作業療法は、患者主観的評価を改善させるため、推奨する。
作業療法は、関節リウマチ患者の身体機能に関する患者主観的評価を改善するエビデンスが認められています。運動療法と同様に、十分な薬物療法による、疾患活動性のコントロールの下に、継続しておこなう必要があります。

関節リウマチ患者の理学療法管理における臨床的なガイドライン(Peter WF, et al.: Clinical Practice Guideline for Physical Therapist Management of People With Rheumatoid Arthritis. Phys Ther 101(8): 1-16, 2021)では、理学療法は、教育と組み合わせたアクティブな運動療法が基本であり、マッサージ、電気療法、温熱療法、レーザー療法、超音波、テーピングなどの他動的な介入は付随的な治療としています。
主な推奨内容の要約を紹介します。

推奨1:病歴の聴取
患者の健康状態や患者の生活における疾患の影響に関する包括的な情報収集をおこなうべきです。

推奨2:身体機能の検査
疾患の活動性(関節痛、腫脹の程度、関節可動域制限)、関節変形、運動耐容能、筋機能、頸椎や顎関節の評価などをおこなうべきです。

推奨3:評価指標
患者に特異的な症状の評価指標、疼痛や疲労の程度(NRS:numeric rating scale)、健康関連QOL指標、6分間歩行テストを使用するべきです。

推奨4:介入は患者さんの状態により、プロファイル1-3に分類して実施すべきです。
・プロファイル1:教育と限定的な監視下での運動指示
比較的状態が良好な患者さんに対しては教育的指導を中心に、ほぼ独立した状態で運動を実施します。
・プロファイル2:教育と短期的な監視下での運動療法
機能や生活が中等度に制限されている患者さんに対しては、短期間の監視による運動療法を実施します。運動について患者さんが十分に理解した段階で、ほぼ独立した状態での運動へ移行します。
・プロファイル3:教育と十分な監視下での運動療法
より重症な患者さんに対しては、十分な監視の下での運動療法を実施します。

介入において教育が重視されています。効果的な自己管理を支援し、健康状態やQOLを最適な状態にするための情報の提供や助言が重要です。特に、障害や疾病によって生じる結果、運動や健康的な生活様式(ストレスや疲労を軽減する工夫など)の重要性などについての情報提供をおこなう必要があります。

[出典・参照]
文中に表示
一般社団法人日本リウマチ学会編集「関節リウマチ診療ガイドライン2020」
Peter WF, et al.: Clinical Practice Guideline for Physical Therapist Management of People With Rheumatoid Arthritis. Phys Ther 101(8): 1-16, 2021

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関節リウマチでやってはいけない仕事とは?向いている仕事や働きやすい職場環境について解説

臼田 滋

臼田 滋

群馬大学医学部保健学科理学療法学専攻 教授
群馬県理学療法士協会理事
理学療法士免許を取得後、大学病院で勤務し、理学療法養成校の教員となる。
小児から高齢者までの神経系理学療法が専門。

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