理学療法士(PT)とは?仕事内容や作業療法士との違いについて

更新日 2022年12月16日 公開日 2018年03月08日

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理学療法士(PT)はリハビリテーションに関わる専門職種として活躍していますが、国民目線での認知度は高いとはいえず、仕事をきちんと理解されている方は少ないようです。今回は理学療法士の仕事内容を解説し、同業である作業療法士との比較も踏まえながら転職のために資格を選ぶ際、参考にしていただければ幸いです。

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理学療法士(PT)とは?仕事内容や作業療法士との違いについて

1. 理学療法士(PT)って一体何者?

理学療法士の歴史

日本における理学療法士の歴史は1965年に「理学療法士及び作業療法士法」が制定されたところから始まり、1966年第1回国家試験合格者から有資格者として、先達がスタートした道が続く中で、最近では毎年1万人近くの新人理学療法士が誕生しています。理学療法士の業務は様々な分野に拡大してきました。

理学療法士の定義とは

理学療法士と聞いてどんなイメージがあるでしょうか? リハビリテーションに関わる仕事という大まかな部分はわかる方もいるかも知れませんが、一般に詳しく説明できる方は少ないかと思います。なぜなら、理学療法士という職種は医療・福祉・介護といった業界の中でもまだ認知が進んでいるとは言い難く、「運動を指導する人」といった名称が一般感覚かもしれません。高齢の方々には「マッサージの先生」と言われたりもします。

理学療法士はphysical therapist(フィジカルセラピスト)とも呼ばれています。看護師がNsと呼ばれるように、理学療法士はPTと略されることが多いです。作業療法士とともに誕生した国家資格であり、名称独占であるため免許を持った人でなければ名乗ることはできません。

法律の条文では理学療法を「身体に障害のある者に対して、主としてその基本的動作能力の回復を図るため、治療体操やその他の運動を行わせ、及び電気刺激、マッサージ、温熱その他の物理的手段を加えることをいう」と定義されています。

理学療法士の仕事内容は?

理学療法士の仕事内容を説明する前に、まずは、そもそも理学療法がどういう治療方法なのかについて説明していきます。
理学療法とは病気、けが、高齢、障害などによって運動機能が低下した状態にある人々に対し、日常生活を行う上で基本となる動作(寝返りや起き上がりなどの起居動作、立ち上がりや歩行など)の回復や悪化予防を目的に、運動、温熱、電気、水、光線などの物理的手段を用いて行われる治療法のことです。

簡単に言ってしまえば動作の専門家であり、各個人の身体機能や痛みの評価・分析をした上で、基本動作能力の改善、運動療法により正しい動きの学習と指導、痛みや麻痺の回復に対する物理療法、自立した日常生活を支援するリハビリテーションの専門職種ということになります。関わる疾患としては例えば、
・中枢神経疾患
・整形外科疾患(運動器の障害)
・呼吸器疾患
・心疾患
・内科的疾患、筋力低下
などです。なお、理学療法は医療行為に位置付けられているので、医師の指示の下に行われるのが前提となっています。

基本的な動作の指導を行う機会が多いため、体格が良い男性患者に対して介助する場合などは治療者側にも体力が必要になります。スポーツをやっていると筋肉や関節などへの興味も湧きやすいことも相まって、学生時代に運動をしていた体育会系の方が理学療法士を志すケースが多いのもうなずけます。
また理学療法士は単独でのリハビリもありますが、総合病院、地域医療でも他の医療チームとの連携する場面も多く、重要な要素となっています。

もともと理学療法では何らかの原因で運動機能が低下した方々を主な対象としていましたが、医学の進歩や社会保障情勢の変化によりその対象は多様化しています。昨今では負傷・病気後のリハビリや障害者(児)に対する療法にとどまらず、運動機能低下が予想される高齢者への予防や生活習慣病への予防対策、スポーツ障害やパフォーマンス向上への介入、がん患者への緩和医療への関与なども理学療法士には求められています。あわせて福祉用具や住環境への助言・相談も行っています。

以上を踏まえると、理学療法士は生まれてから死ぬまでの人生すべてに関わることができ、医療・介護両面でサポートできる素晴らしい仕事であると言えます。最近では東日本大震災などの災害に際して、被災者の活動の低下による身体機能低下を予防するために現地に赴き、助言や指導を行ったことなども活動の一つとして注目されています。

理学療法士の所属先・勤務先

具体的にどのような所属先・勤務先があるのか主な例をご紹介していきます。

医療施設
  • ・総合病院や療養型病院、診療所などの医療機関
  • ・リハビリ専門病院
福祉施設
  • ・介護関連施設
  • ・身体障害者福祉施設
  • ・児童福祉施設
その他
  • ・保健所
  • ・身体障害者福祉施設
  • ・プロ・アマスポ―ツクラブなど

理学療法士と聞くと、どうしても病院勤務という印象があります。実際、理学療法士の多くは病院やクリニックなどの医療機関で働いていますが、近年、病院勤務以外の職場で活躍する理学療法士も増えつつあります。
その中でも高齢化社会が進み、介護保険施行後になると通所リハビリテーションや訪問リハビリテーションといった介護分野にも活躍の場が広がっています。これからますます需要が高まる分野であることは間違いありません。
理学療法士には、幅広い勤務先がありますから、自分の希望に近い勤務先で働くことができる可能性は高いといえるでしょう。

2. 作業療法士(OT)との違いとは?

理学療法士の役割が大まかにわかったところで、同じリハビリ分野で活躍する作業療法士の仕事も理解しないといけません。仕事内容としては混在する部分も多々ありますので、現役の理学療法士の方々の中にも自信をもって説明できない人がいるのではないでしょうか。

作業療法士はoccupational therapistとも呼ばれ、臨床場面ではOTと呼ばれることが多いです。前提として作業とは、食べたり入浴したりといった人の日常生活に関わるすべての諸活動のことを指すとされています。作業療法では基本的な運動能力から、社会の中に適応する能力まで維持・改善を行い、その人らしい生活の獲得を目標としています。

どちらの職種もリハビリテーションに関わる仕事という点では同じです。主な違いとしては、理学療法士は基本動作の回復、維持、悪化予防を目的にするのに対して、作業療法士は応用動作と社会への適応能力の回復を目的としています。

作業療法士はおもに理学療法のリハビリで回復した身体機能を活用し、日常生活に関わる応用動作(服を着る、身体を洗う、家事を行うなど)を可能にするために練習していきます。作業療法の手段としては、生活動作の反復や遊びなどを取り入れたレクリエーション、創作活動(体操、編み物、陶芸、音楽など)などがあります。

また、作業療法士は精神疾患や心理といった人間として活動を行うために重要な分野を学んでいるため、精神科の患者さんや心理面のサポートをする上でも、専門的なリハビリテーションを実施できます。もちろん理学療法士の臨床場面では障害受容などに関わる機会はありますが、実際に精神科病院などで活躍しているリハビリ職は作業療法士が多く、高い専門性があるといえます。

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3. 理学療法士と作業療法士で迷ったら・・・

では、実際に国家資格を取得しようと考えた場合、自分にはどちらが合っているのかわかりにくいところかと思います。ここでは一つ症例を通して、それぞれの職種がどのような関わりをしていくのかを見てみたいと思います。

60歳代女性が脳梗塞で入院し右手足に麻痺が出たとします。主治医からリハビリテーションの指示が出てからリハビリテーションが開始となりますが、理学療法士は手足の拘縮(関節が硬くなること)を予防するため関節を動かし、筋力が落ちないように運動を指導します。寝返りや起き上がり、立ち上がりや歩くなどの大きな動作の反復練習を行い、自宅に帰ってからの生活で特に移動することに困らないように回復を促します。できるだけ早く、適したリハビリをすることにより、寝たきりになることを防ぎ、患者さんのQOLに大きく貢献します。

作業療法士も拘縮予防や筋力トレーニングなどは行う事も多いですが、細かな作業に合わせて本症例のような場合は自宅での家事を担っていることが多いため、麻痺がある右手で包丁や鍋などの使用練習、洗濯物や掃除などの確認などを行います。ご家族がいればこれからどう協力できるか話し合い、難しい場合などは、左手や道具で代用できないかなども考慮し、ご本人ができるだけ満足のいく生活ができるよう一緒に考えます。また、将来への不安なども出やすいため心理面のフォローも必要です。

少し極端な例でしたが、理学療法士と作業療法士の仕事内容はこのような違いがあります。理学療法士は足腰を中心としたリハビリテーション、作業療法士は手を使った動作を中心のリハビリテーションといわれていたこともありましたが、実際の臨床場面ではそこまでハッキリと分けることはほとんどなく、必要な事であれば専門分野を共有し合い職域を超えて治療を模索していくことも多いです。

もしどちらの職種にするか悩むようであれば、学校見学や職場見学をお勧めします。やはり実際の治療場面や現場の声を聴くことが、自身の進みたい方向性を確認する方法です。

おわりに

各職種はそれぞれが専門性を生かせる分野がある一方、リハビリテーションというくくりの中で理学療法士もしくは作業療法士だからやってはいけない項目はありません。しっかりとした評価の上で、様々な手段を検討していくことが求められます。
努力は必要ですが患者に「ありがとう」といってもらえることは理学療法士としてのやりがいの一つですし、更に効果的な治療を目指すモチベーションにも繋がります。この記事が少しでも職種選びの参考になれば幸いです。

※参考URL
日本理学療法士協会 http://www.japanpt.or.jp/general/aim/physicaltherapist/
日本作業療法士協会 http://www.jaot.or.jp/ot_work

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