介護老人保健施設(老健)で働く理学療法士の給料や仕事内容を解説
介護老人保健施設(老健)とは、介護を必要とする高齢者の自立支援や在宅療養支援を行う施設です。介護老人保健施設で働く理学療法士は、長期にわたって利用者さまと関わる機会が多いため、じっくりとリハビリを進めていきたい方にはおすすめの職場と言えるでしょう。また、理学療法士に対して好待遇の職場が多いのも、介護老人保健施設の特徴です。
この記事では、介護老人保健施設で働く理学療法士の平均的な給料や、給料アップの方法、主な仕事内容、働くやりがいなどについて詳しく解説します。
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目次
介護老人保健施設(老健)で働く理学療法士の給料は?
介護老人保健施設は介護が必要な高齢者を対象に、「在宅復帰」を目的としたケアサービス(医療、リハビリテーション、介護など)を提供する施設です。入所の対象となるのは、65歳以上の要介護認定を受けた方で、病院を退院して自宅に戻るまでの間、リハビリ目的で利用される方も多く見られます。
(出典:公益社団法人 全国老人保健施設協会「老健施設とは」/https://www.roken.or.jp/about_roken)
理学療法士の平均月収と施設別の平均月収は、下記の通りです。
【理学療法士の平均月収】
職種 | 平均月収 |
---|---|
理学療法士全体 (作業療法士,言語聴覚士,視能訓練士を含む) |
約296,000円 |
介護施設で働く理学療法士 (作業療法士,言語聴覚士,視能訓練士を含む) |
351,230円 |
(出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」/https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html)
(出典:厚生労働省「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」/https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/21/dl/r03gaiyou.pdf)
【施設別の平均月収】
施設 | 平均月収 |
---|---|
介護老人保健施設 | 328,120円 |
全体平均 | 293,800円 |
(出典:厚生労働省「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」/https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/21/dl/r03gaiyou.pdf)
介護老人保健施設で働く理学療法士の給料は、理学療法士全体の給料より高い点に特徴があります。また、介護医療院や訪問介護施設などの介護施設と比べても、介護老人保健施設で働く理学療法士の給料は高水準です。
他の職員との給料比較
介護老人保健施設では、理学療法士の他に看護職員や看護師などが働いています。介護施設で働く理学療法士と他の職員との給料の違いは、次の通りです。
【他の職員との給料比較】
職種 | 平均月収 |
---|---|
理学療法士 (作業療法士,言語聴覚士,視能訓練士含む) |
351,230円 |
介護職員 | 315,640円 |
看護職員 | 369,760円 |
生活相談員・支援相談員 | 336,830円 |
介護支援専門員 | 332,640円 |
事務職員 | 300,830円 |
(出典:厚生労働省「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」/https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/21/dl/r03gaiyou.pdf)
介護施設で働く職員のなかでは、看護職員と理学療法士の給料が高水準であることが分かります。ただし、実際の給料額は施設の規模や雇用形態、経験、勤続年数などによって異なる点に注意してください。
介護老人保健施設で理学療法士が給料をアップさせるための方法
介護老人保健施設で働く理学療法士の方が、給料アップを目指す方法は以下の通りです。なお、各種手当の金額は、マイナビコメディカルの求人情報をもとに算出しています。
・夜勤手当をもらう
24時間体制で利用者さまのケアを行っている施設では、理学療法士が夜勤をするケースもあります。夜勤手当の金額目安は、下記の通りです。
手当の金額目安 | 約3,000~8,000円/回 |
---|
夜勤の頻度を増やすことで、給料アップにつながるでしょう。
・年末年始手当をもらう
施設によっては、年末年始に出勤する職員に手当を支給する場合があります。年末年始手当の金額目安は、下記の通りです。
手当の金額目安 | 約1,400~5,000円/回 |
---|
一時的な手当ではあるものの、給料アップの方法として覚えておくとよいでしょう。
・より待遇のいい職場に転職する
現職の待遇によっては、転職を検討するのも1つの方法です。より待遇がいい職場に出会えれば確実な給料アップが実現できます。転職を検討する場合は給料面だけでなく、各種手当や福利厚生の充実度もきちんとチェックしましょう。
なお、夜勤や年末年始手当以外にも住宅手当や皆勤手当、職務手当、管理職手当などさまざまな手当を設けている施設があります。「自分は諸手当の支給条件に該当しているか」「どうすれば該当するのか」などについても、確認しておくとよいでしょう。
介護老人保健施設における理学療法士の主な仕事内容
介護老人保健施設では医師、看護職員、理学療法士などの職種に関する人員配置基準が定められています。理学療法士の場合は、施設の入所者100人に対して1人以上を配置しなければなりません。
(出典:厚生労働省「介護老人保健施設(参考資料)」/https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000174012.pdf)
一方、一般病院における理学療法士の人員配置は「適当数」となっており、明確な基準は定められていません。
(出典:厚生労働省「医療法に基づく人員配置標準について」/https://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/03/dl/s0323-9b.pdf)
以下では、介護老人保健施設での理学療法士の仕事内容について解説します。
理学療法プログラムの作成
理学療法プログラムとは、利用者さまの状態に合わせて作成するリハビリテーション計画のことです。作成にあたっては、利用者さまの身体状況や生活状況などをしっかりと把握した上で、適切なリハビリテーション内容・頻度を検討する必要があります。
理学療法プログラムの作成する際に確認が必要な項目は、下記の通りです。
- ・身長や体重
- ・生活状況
- ・基礎疾患や既往歴
- ・運動機能
- ・神経機能 など
利用者さまやご家族に寄り添った理学療法プログラムを作成するには、医師、看護職員といった他職種との連携や情報共有も重要です。
利用者さまへのリハビリテーションの実施と助言
理学療法プログラムを作成したら、その内容に沿ってリハビリテーションを実施し、定期的に評価を行います。その際、利用者さまに訓練のやり方を教えたり、ご家族に介助方法の指導をしたりするのも理学療法士の大事な役割です。場合によっては、看護職員や介護職員など施設内で働く職員から、理学療法士の観点で助言を求められることもあるでしょう。
なお、リハビリテーションの内容は、「トイレのために衣服の着脱をする練習」「自宅で過ごすための機能訓練」など、在宅生活で必要な能力を獲得するためのものが中心となります。
利用しやすい環境の整備
利用者さまが施設を利用しやすいように、環境を整備することも理学療法士の大切な仕事です。必要に応じて、自宅の環境整備に関する助言も行います。
施設や自宅の環境整備の一例は、下記の通りです。
- ・福祉用具の選定・導入
- ・家具の配置に関する工夫
- ・自宅のバリアフリー化やリフォーム
段差の解消や手すりの設置、照明の設置なども環境整備の一例です。環境を整備することで、利用者さまの主体的に生活する意欲が向上したり、転倒を予防したりする効果も期待できるでしょう。
介護老人保健施設で働く理学療法士の仕事の流れ
介護老人保健施設で働く場合、8~17時の8時間勤務が一般的です。病院やクリニックに比べて、緊急度の高い利用者さまが少ない施設も多いため、残業時間は比較的短い傾向にあります。
介護老人保健施設で働く理学療法士の1日の流れ(一例)は、下記の通りです。
8:00 | 始業 |
・職員シフトの確認 ・連絡事項の確認 ・介護記録やケアスケジュールの確認 |
---|---|---|
8:30 | ミーティング |
・他職員との情報共有 ・他職員と認識のすり合わせ |
9:00 | リハビリ開始 |
・リハビリの実施 ・利用者さまの観察およびサポート ・利用者さまへの助言 |
11:30 | 記録 | ・リハビリ内容や進捗の記録 |
12:00 | 休憩 | − |
13:00 | リハビリ開始 |
・リハビリの実施 ・利用者さまの観察およびサポート ・利用者さまへの助言 |
16:30 | 記録 | ・リハビリ内容や進捗の記録 |
17:00 | 終業 | − |
リハビリテーション内容の記録は、午前と午後に分けて記入します。誰が見ても理解できるように、分かりやすく端的に記入することが大切です。
上記の業務以外に医師や看護職員、介護職員、ケアマネジャーなどとのカンファレンスも実施されます。カンファレンスの頻度や時間帯は、各施設によってさまざまです。
介護老人保健施設で理学療法士が働くやりがい
病院やクリニックでは幅広い年齢層にリハビリテーションを行いますが、介護老人保健施設におけるリハビリテーションの対象は、介護を必要とする高齢者に限定されます。そのため、介護老人保健施設で働く理学療法士は、病院やクリニックなどの医療施設とは違ったやりがいが感じられるでしょう。
以下では、介護老人保健施設で働く理学療法士ならではのやりがいを2つ紹介します。
一人ひとりの利用者さまと深く関われる |
---|
介護老人保健施設で働く理学療法士は、利用者さまと深く関わることができます。病院やクリニックで理学療法士がリハビリに関わるのは、基本的に患者さまが入院、通院している期間だけです。一方、介護老人保健施設は利用者さまと日常的に関わり、身体機能低下などの悩みにしっかりと寄り添うことができます。そのため利用者さま1人ひとりの特徴を把握し、より深い信頼関係が築けるでしょう。 |
利用者さまの生活を支える仕事ができる |
---|
利用者さまが安心かつ安全に生活するための支援ができるのも、理学療法士が介護老人保健施設で働くやりがいの1つです。介護老人保健施設で働く理学療法士は、主に慢性期・維持期の利用者さまを対象に、在宅復帰を目指したサポートを行います。加えて、福祉用具の選定、住宅改修の助言、ご家族への介助指導などを行うのも理学療法士の役割です。そのため「利用者さまの目標達成(在宅復帰)の支えになりたい」「利用者さまにより充実した人生を送っていただきたい」と考える方は、介護老人保健施設での仕事に大きなやりがいを感じるでしょう。 |
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まとめ
介護老人保健施設で働く理学療法士は、利用者さまの「在宅復帰」という目標に向けたリハビリを行います。介護老人保健施設で働く理学療法士の平均月収は、理学療法士全体の平均月収よりも高い水準にあり、他の介護施設と比較しても高めの金額となっています。
介護老人保健施設勤務の理学療法士が給料アップを目指す場合、夜勤や各種手当を増やす方法が有効です。また、より好待遇の職場に転職するのも1つの方法でしょう。
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※当記事は2023年5月時点の情報をもとに作成しています
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