難聴者やろう者と関わる言語聴覚士
公開日:2015.04.16 更新日:2015.04.23
言語聴覚士は、難聴児やろう児のリハビリテーションを担当します。いくつかの地域で手話言語条例が制定されるなか、言語聴覚士の視点から、ろう者と手話の関係についてご紹介します。
聴覚障害児を対象とする言語聴覚士
新生児聴覚スクリーニングの普及により、早期に赤ちゃんの聴覚についてのことがわかるようになってきました。聴覚障害児を対象とする言語聴覚士は、音と物との結びつきを形成したり、補聴器のフィッティングを通すことにより、子どもに音やことばへの気づきを促します。重度の難聴がある場合は、医師の指示のもとに人工内耳のマッピングを行い、補聴器をつけている子どもと同じように、リハビリテーションを通して音やことば、概念などを結びつけていきます。
補聴器や人工内耳をつけていても、内耳の働きが十分でないために、音の認知はできても、音としての弁別が難しい子どもも少なくありません。
ろう者と手話
ろう者のことばが手話です。手話には大きく分けて3種類あり、ろう者が使う「日本手話」と日本語の文法に即した「日本語対応手話」、そして日本手話と日本語対応手話の間にある「中間手話」があります。日本におけるろう者と手話との関係を教育的な視点からみると、口形や表情などから相手の言っていることを読み取る力と、耳を使って聞き取る力を重視する聴覚口話法が主流となる時代が長く続きました。現在では、音声や手話、指文字などを併用するトータルコミュニケーションや、日本手話で学校教育を行うなど、学校や地域内でのコミュニケーション方法が多様化しています。世界的な流れとして、手話がろう者の言語として確立されつつある今、言語聴覚士は補聴器や人工内耳をつけた子どもと関わるため、手話を使ってある程度のコミュニケーションをとれる力が求められるようになるでしょう。
手話言語条例と手話
神奈川県では、2014年12月に手話をろう者の言語として認める条例が可決され、2015年の4月より施行されます。そして、神奈川県のなかで、聞こえない人と聞こえる人を結ぶ架け橋となるよう、手話の普及を促す取り組みが定められています。
聴力の程度にかかわらず、手話を身につける方が多くいます。聞こえない・聞こえるという部分に関係なく、相手とのコミュニケーションを図るプロの言語聴覚士としては、手話の勉強やろう文化に触れる機会を増やすことが今後求められるでしょう。言語聴覚士として難聴児やろう児と接していると、音声だけでは十分なコミュニケーションがとれない場面に遭遇することもあります。このような場面では、手話や手話を取り巻く文化まで知っていると、コミュニケーションやリハビリテーションの幅が広がり、聴覚に障害のある人をより深く理解する手助けになるでしょう。
【参考URL】
他の記事も読む
- NHISSとは?評価方法や点数、注意点などについて解説
- タンデム歩行とは?目的や評価のポイントについて解説
- 保育・教育現場で活動する作業療法士――子どもの発達を支える仕事の魅力に迫る
- パーソナルトレーナーはやめとけと言われる理由3選!その将来性も合わせて解説
- 理学療法士に向いていない学生の特徴は?学校入学前に知っておきたいこと
- 脊柱管狭窄症でやってはいけないこととは?症状や原因などについても解説
- 運動器リハビリテーションとは?対象患者や点数、施設基準などについて解説
- 作業療法士が別の道で働くならどんな仕事があるか?実例をもとに詳しく解説
- 鎖骨骨折のリハビリ内容は?日常生活での注意点と自分でできるリハビリについても紹介
- 嚥下訓練「パタカラ体操」のやり方と効果を解説【自宅で実践!】
- 脳動脈の支配領域の覚え方は?脳血管との関連性や閉塞時の症状についても解説
- 関節リウマチでやってはいけない仕事とは?向いている仕事や働きやすい職場環境について解説
- 端座位とは?メリットや必要な機能、リハビリ方法などについて解説
- 拘縮とは?概要や原因、予防方法などについて解説
- こんな道もある! セラピストの仕事「エンパワーメントで高齢者の食・望む暮らしをサポート」
- 【福祉住環境コーディネーター受験】いきなり2級を受けてもよい?合格率や試験対策などを解説
- 言語聴覚士で年収1000万円は実現可能?リアルな年収実態と年収アップ方法を解説
- 機能訓練指導員とは?仕事内容や必要な資格などについて解説
- FIMの評価方法とは?特徴やメリット、項目などについて解説
- 半月板損傷でやってはいけないこととは?リハビリの内容や気をつけるべきことを解説