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第72回高齢者の転倒による骨折とリハビリテーション

公開日:2022.10.19 更新日:2022.10.21

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文:臼田 滋(理学療法士)
群馬大学医学部保健学科理学療法学専攻 教授

「骨折」とは?

骨折とは、骨の連続性が失われた状態で、完全に連続性が失われた状態を完全骨折、部分的に連続性が保たれた状態を不完全骨折といいます。また、皮膚や軟部組織に創傷があり、骨折部と外界が直接交通するものを開放骨折といいます。

骨折の原因は外力ですが、通常はかなり強い外力が作用することで骨折を生じます。ただし、骨が全身的あるいは局所的に病的に脆弱化している場合には、極めて軽度の外力でも骨折する場合があります。

正常な骨が、転倒などの強い外力によって骨折した場合が外傷性骨折です。腫瘍や骨髄炎などの局所的な病的な状態によって骨の強度が低下している場合に、軽微な外力で生じる骨折が病的骨折です。

明確な外傷がなく、外力(ストレス)の繰り返しによって骨折する場合がストレス骨折で、そのうち、正常な骨への外力の反復で生じた場合が疲労骨折、高齢者などで強度が低下した骨で日常生活程度の軽い外力で生じた場合が脆弱性骨折です。

高齢者が転倒で生じやすい骨折

高齢者では、筋力低下やバランス機能の低下、あるいは危険に対する予期的な行動の不十分さなどから転倒を生じること多いです。骨粗鬆症により骨の強度が低下していること、姿勢の異常なども、転倒しやすくなる原因になります。
転倒することで自信がなくなったり、積極的に活動することに対して不安を生じたりするなどの悪影響がありますが、転倒による外力によって骨折を生じることが多いことも特徴です。

高齢者の転倒による骨折は、多くの場合は脆弱性骨折です。若年層でも転倒によってさまざまな部位の骨折が発生する可能性がありますが、高齢者に生じやすい部位も認めます。
高齢者が転倒で生じやすい骨折としては、大腿骨近位部骨折、胸腰椎の圧迫骨折、上腕骨近位部骨折、橈骨遠位端骨折などが認められます。

統計から見る「高齢者の骨折」

高齢者が骨折・転倒によって要支援・要介護状態となることは多く、2019年度の国民生活基礎調査では、12.5%であり、認知症、脳血管疾患、高齢による衰弱に次ぐ第4位です。2001年からその割合は約9~12%ですが、徐々にその割合は増加傾向にあります。

また、2020年度の人口動態統計では、65歳以上の高齢者の不慮の事故の死亡数は約33,000人で、その約27%が転倒・転落・墜落で、交通事故の約4倍です。もっとも多い転倒・転落・墜落の原因はスリップ、つまずき及びよろめきによる同一平面上での転倒で約85%、次が階段及びステップからの転落及びその上での転倒で約5%です。

骨折の治療とリハビリテーション

骨折に対する一般的な治療は、まず骨折した部分を元の状態に整復します。その後、その位置でギプス等による外固定か、手術で体内に固定材を入れて、骨折した部分を連結して固定する内固定を行います。骨折部位やその程度などにより時期や期間はさまざまですが、骨癒合を確認しながら、関節可動域運動や筋力増強運動、荷重練習や歩行練習などのリハビリテーションを実施します。若年者の場合には、多くの患者は、骨折の前の状態に概ね復帰できます。

高齢者の場合には、深部静脈血栓症や肺炎、褥瘡などの急性期の合併症の影響を受けることも多く、環境の変化や安静などによる認知機能の低下や精神症状、さらに全身の身体機能が低下し、いわゆる寝たきりとなってしまう場合も少なくありません。できるだけ安静期間が短い治療法を選択し、できるだけ早期からリハビリテーションを行う必要があります。
骨折に対する治療以前に、骨折の予防が重要であり、骨粗鬆症の予防や治療、転倒予防などが重視されています。

《問題》高齢者の転倒で生じやすいのはどれか。

【理学療法士】第56回 午前43
高齢者の転倒で生じやすいのはどれか。

<選択肢>

  1. 1. 距骨骨折
  2. 2. 脛骨骨折
  3. 3. 肩甲骨骨折
  4. 4. 踵骨骨折
  5. 5. 橈骨骨折

解答と解説

正解:5

選択肢に登場する骨折について、解説していきます。

(1)距骨骨折
比較的まれな骨折で、高所からの転落や交通事故などの強い外力によって生じます。
高い場所から飛び降りた際や、自動車のブレーキペダルを踏んだまま正面衝突した際などに、足関節が過度に背屈されて、脛骨下端に圧迫されて骨折を生じます。
高齢者でも生じることがありますが、多くはありません。

(2)脛骨骨折
脛骨の骨折は部位によって、脛骨近位部骨折、脛骨骨幹部骨折、脛骨遠位部骨折があります。
脛骨近位部骨折は、膝関節に外力が加わった際に、大腿骨遠位部と脛骨近位部が衝突することで生じる関節内骨折です。
脛骨骨幹部骨折は、脛骨の中間部分の骨折で、交通事故などによる強い衝撃や、スキーなどで足部が固定された状態で、下腿が強くねじられる力などによって生じる骨折です。
脛骨遠位部骨折は、足関節が強くねじられたり、高所からの転落や交通事故のなどにより、下腿長軸方向に強い圧が加わったりすることによって生じる骨折です。
いずれも高齢者でも生じることがありますが、その頻度は多くはありません。

(3)肩甲骨骨折
比較的頻度の低い骨折で、自転車やバイクの転倒時など、肩から地面に落下した際の強い衝撃によって生じます。交通事故や高所からの転落などでも、肩甲骨骨折が認められることがあります。
高齢者でも生じることがありますが、やはりその頻度は多くはありません。

(4)踵骨骨折
そのほとんどが、高所からの転落による踵への強い衝撃によって生じる踵骨の圧迫骨折です。両足から接地することから両側性に受傷することも多く、腰椎の圧迫骨折などの他の部分の外傷を伴うこともあります。
高齢者でも生じることがありますが、その頻度は多くはありません。

(5)橈骨骨折
橈骨の骨折は部位によって、橈骨近位端骨折、橈骨骨幹部骨折、橈骨遠位端骨折があります。いずれも転倒、転落で手をついた際に生じやすい骨折です。
その中でも橈骨遠位端骨折は、高齢者が転倒した際に生じるもっとも頻度の高い骨折のひとつです。

高齢者の転倒で多い「橈骨遠位端骨折」

転倒時に手をついた際に生じやすい手首の骨折「橈骨遠位端骨折」の詳細を解説します。
橈骨遠位端骨折の発生率は加齢とともに増加し、70歳以上の高齢者では若年に比べて男性で2倍、女性で約18倍となります。その受傷機転は、立位から転倒がもっとも多く、報告によって多少差がありますが、原因の約50%から80%を占めます。

危険因子としては、高齢、女性、独居、ステロイド剤の使用歴、骨粗鬆症、路面の凍結や低気温などの気象、ビタミンD低値、片足保持時間15秒未満などが指摘されています。

骨折部の遠位骨片が背側に転位している場合をコレス(Colles)骨折、逆に掌側に転位している場合をスミス(Smith)骨折といいます。

状態によって保存療法、手術療法が選択されることがありますが、多くは受傷後数ヶ月で日常生活では概ね支障がなくなります。
しかし、橈骨遠位端骨折の受傷後に、大腿骨近位部骨折やその他の骨脆弱性骨折を生じることが多いため、骨粗鬆症の治療や転倒予防の対策を強化する必要があります。

実務での活かし方

橈骨遠位端骨折診療ガイドラインで推奨されているリハビリテーションについて紹介します。

・手関節以外の部位に対する運動
橈骨遠位端骨折の患者では、手関節以外に肩、肘、手指の関節可動域の制限も生じることが多く、注意が必要です。受傷部位の手関節の固定期間中でも、受傷側の肩、肘、手指の関節可動域運動や筋力増強運動を行うことが推奨されます。

・患者に対する機能回復のための運動の指導
運動を患者に指導し、自宅で練習を実施した場合には、作業療法士が通院でリハビリテーションを実施した場合とほぼ同様の成績が得られます。しかし、通院でのリハビリテーションは、拘縮が強い症例では有用であり、さらに患者の満足度が高くなります。

・橈骨遠位端骨折の評価
患者立脚型評価であるDASH(disabilities of the arm, shoulder and hand)の使用が推奨されます。
DASHは、日常生活における上肢の使用の困難さ23項目と、疼痛に関する7項目の、合計30項目で構成される上肢の障害の評価指標です。DASHの項目のうち、11項目を抽出した簡易版がQuick DASHです。いずれも日本語版が公開されています。
DASHは関節リウマチや手根管症候群などの疾患でも使用され、短時間で比較的簡便に評価が可能です。

[出典・参照]
橈骨遠位端骨折診療ガイドライン2017(南江堂)

臼田 滋

臼田 滋

群馬大学医学部保健学科理学療法学専攻 教授
群馬県理学療法士協会理事
理学療法士免許を取得後、大学病院で勤務し、理学療法養成校の教員となる。
小児から高齢者までの神経系理学療法が専門。


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