脊柱管狭窄症でやってはいけないこととは?症状や原因などについても解説
公開日:2024.04.03
文:rana(理学療法士)
脊柱管狭窄症は、「長く歩くと足がしびれる」「腰を反らすと痛い」といった症状が見られます。そのまま放置すると、足に力が入らなくなったり、歩けなくなったりする場合もあるため、日常においても症状が悪化しないように対処することが大切です。
では、具体的に何に気をつけて、どのような対処をしたらよいのでしょうか。今回は脊柱管狭窄症についてやってはいけないこと、症状や原因などについて現役理学療法士が解説します。
脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)とは
脊柱管狭窄症とは、背骨にあるトンネルのような構造をした神経の通り道(脊柱管)が狭くなることで生じる病態をいいます。脊柱管が加齢や構造的な変化などによって狭くなり、中に通っている神経が圧迫されて、痛みやしびれなどの症状が出現します。
年齢を問わず生じますが、特に50歳代以降から発症する人が増え、60〜70歳代に多く見られます。脊柱管狭窄症の診断は、整形外科での問診、レントゲン検査、MRI検査、脊髄造影検査などの結果から、判明します。
脊柱管狭窄症の原因
脊柱管狭窄症が発症する原因には、どのようなものがあるのでしょうか。続けて、脊柱管狭窄症の主な原因について紹介します。
加齢による背骨の変形
最も多い原因は、加齢による組織の変性です。年齢を重ねるにつれて背骨が変形する可能性が高まり、背骨にある骨と骨の間でクッションの役割をしている椎間板がつぶれたり、靭帯が分厚くなったりすることで脊柱管が圧迫されてしまいます。
そのため、年齢が上がるにつれて脊柱管狭窄症を発症する方が増えるのです。
仕事やスポーツによる負担の蓄積
仕事やスポーツなどによる負担の蓄積も、脊柱管狭窄症の原因になります。特に背骨を大きく後ろに反ったり、捻ったりする動きは脊柱管が圧迫されやすいため、脊柱管狭窄症になるリスクが高まります。
先天的な病気によるもの
珍しいケースではありますが、生まれつき脊柱管が狭いことが原因で脊柱管狭窄症を発症するケースもあります。このような病態を「先天性脊柱管狭窄症」といいます。
脊柱管狭窄症の症状
脊柱管狭窄症の主な症状は、脚のしびれ、痛みなどが挙げられます。
歩くことで症状が強まり、長時間の歩行が困難になりますが、休息すると症状が和らいで再び歩けるようになります。このような歩行と休息を繰り返す状態を「間歇性跛行(かんけつせいはこう)」といいます。
初期の頃は長く歩く時に症状が出ることが多く、日常生活にはそこまで支障をきたしません。ですが、脊柱管狭窄症が進行するにつれ、短い距離でも歩くことが困難になり、脚の脱力感、排尿排便障害などを起こす場合があります。
脊柱管狭窄症でやってはいけないこと
脊柱管狭窄症と診断された場合、できるだけ悪化しないように日常でも注意することが大切です。脊柱管狭窄症でやってはいけないことについて理解しておきましょう。
痛みを我慢して運動をする
脚や腰に痛みがあるのに、我慢して無理に運動をするのは避けましょう。よく「腰が悪いなら、腹筋や背筋を鍛えるとよい」といった話を耳にするかもしれません。
確かにそうした一面もありますが、あくまでケースバイケースで、すべての症状に当てはまるわけではありません。脊柱管狭窄症の場合、運動によって脊柱管がさらに狭まってしまうリスクがあります。
痛みを我慢するのではなく、痛みが続く場合には病院で診てもらうことが重要です。
重たいものを持ち上げる
脊柱管狭窄症になったら、重たいものを持ち上げる動作は避けましょう。特に低い位置に置かれたものを屈んで持ち上げる動作は、腰に多大な負担がかかります。
誰かに手伝ってもらったり、できるだけ屈む姿勢にならないように注意したりして腰へのストレスをかけないことが大切です。
腰を反ったり、捻ったりする
脊柱管狭窄症では、腰を後ろに反ったり、捻ったりすると症状が悪化する可能性があります。
なぜなら「反る」「捻る」といった動作は脊柱管を狭めてしまう方向の運動だからです。
ゴルフやテニスなどのスポーツをはじめ、日常生活動作においても、腰を反ったり捻ったりしないように注意しましょう。
脊柱管狭窄症の治療方法
脊柱管狭窄症と診断された場合には、以下のような治療方法が行われます。
薬物療法
薬物療法では、それぞれの症状に合わせて次のような薬が処方されます。
●末梢血管を広げて血流をよくする薬
●過剰に興奮している神経を鎮める薬
症状にあわせてさまざまな種類の薬がありますが、医師の指示のもと、他の薬との飲み合わせなどを考慮して服薬します。
装具療法
腰に巻くコルセットを装着する装具療法により、腰が反ったり、捻ったりすることを予防しながら治療を進める方法です。
コルセットを巻くことで、腹圧がかかって背骨が安定するため、症状の緩和が期待できます。一般的に既成のコルセットが処方されますが、体の採寸をとり、オーダーメイドで作成する場合もあります。
リハビリテーション
股関節や背骨の柔軟性を図ったり、体幹の筋肉を鍛えたりするリハビリテーションも効果的です。リハビリテーションは、医師の指示のもと、動作を専門とする医療技術者である理学療法士によって実施されます。腰に負担をかけない動作訓練、症状を予防する体操指導など、日常生活指導を受けることになるでしょう。
手術
薬物治療や装具療法などを続けていても改善しない、または症状が重度の場合は脊柱管を狭めている原因を取り除く手術が検討されます。特に排尿排便障害が見られている場合は早めに手術を受けた方がよいかもしれません。
脊柱管狭窄症が疑われたら専門医の受診を
一般的に脊柱管狭窄症は腰を丸めたり、股関節をストレッチしたりすることが勧められます。しかし、自分の体に合った対処法ではない場合、症状を悪化させてしまうこともあります。
本やインターネットで紹介されている方法が、必ずしも自分に合うとは限りません。自己判断をせず、医師や理学療法士の指示を受けて、体の特性に合った正しい治療を受けるようにしましょう。
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rana(理学療法士)
総合病院やクリニックを中心に患者さんのリハビリに携わる。現在は整形外科に加え、訪問看護ステーションでも勤務。 腰痛や肩痛、歩行障害などを有する患者さんのリハビリに日々奮闘中。 業務をこなす傍らライターとしても活動し、健康、医療分野を中心に執筆実績多数。
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