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理学療法士と柔道整復師どっちがいい?違いや難しさ、将来性を解説

公開日:2021.02.04 更新日:2024.09.11

文:rana  理学療法士

患者さんに対して手技を用いた施術を行う医療資格には、理学療法士のほかに柔道整復師やマッサージ師(あん摩マッサージ指圧師)などがあります。いずれも体の不調を改善するために施術を行う専門家として混同されやすいのですが、その違いはどこにあるのでしょうか。

今回は患者さんからも質問されることの多い、「理学療法士と柔道整復師の違い」について詳しく解説します。

理学療法士とは

理学療法士はPT(Physical Therapist)とも呼ばれるリハビリの専門家です。けがや病気などで身体に障害のある人や障害を予測される人に対し、基本動作能力の回復や維持、身体機能の向上を図るために、医師の指示のもと、リハビリを行います。

病院で歩いたり、関節を動かしたりするリハビリをしているのが理学療法士というイメージがあるのではないでしょうか。リハビリのなかでも動作に特化しているのが理学療法士の特徴で、歩行や立ち上がり、寝返りなど基本動作の改善に重きを置いています。

小児から高齢者はもちろん、スポーツ選手などリハビリの対象は幅広く、今後も活躍の場が広がっていくことでしょう。

柔道整復師とは

柔道整復師は、主に捻挫や打撲、骨折、脱臼といったけがの応急処置や治療のほか、リハビリを行います。理学療法士が外傷(けが)だけでなく病気などのリハビリに対応する一方で、柔道整復師は、主に外傷の治療・リハビリを提供するのが特徴です。接骨院や整骨院にいる「先生」が柔道整復師というのがイメージしやすいのではないでしょうか。

医師のように手術や切開といった観血的療法ではなく、整復や固定などの柔道整復術を用いて治療を行います。柔道整復師も接骨院や整骨院だけでなく、スポーツ分野や介護分野などの需要もあり、今後ますます活躍の場が期待されるでしょう。

理学療法士と柔道整復師の違い4選

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理学療法士と柔道整復師は同じ医療職組として共通する点も多いですが、どこに違いがあるのでしょうか。理学療法士と柔道整復師の違い4選について見てみましょう。

①施術内容

理学療法士は、運動療法(関節可動域訓練、筋力増強訓練、動作訓練など)と物理療法(温熱、電気などを用いた治療)を主に用いて治療を行います。

一方、柔道整復師は主に整復法、固定法、後療法(手技療法、物理療法、手技療法)を用いて治療を行います。

どちらも患者さんに直接触れる治療なので、一見共通するようにも見えますが、用いる施術内容が異なります。

②治療の目的

理学療法士が提供する治療は、患者さんの身体能力を回復させ、動作能力、日常生活能力の向上を図ることを目的としています。また、これから障害が予想される人に対し、身体機能や動作能力が低下しないよう、予防を図るのも目的の一つです。

一方、柔道整復師は骨折や捻挫、脱臼などの外傷の治癒を目的として治療を行います。

理学療法士は局所だけでなく動作や日常生活といった全体像を捉えるのに対し、柔道整復師は患部に特化しているのが治療目的の違いといえるでしょう。

③開業権の有無

前述しましたが、柔道整復師には開業権があり、自分で接骨院や整体院を開いて治療を提供することが可能です。一方、理学療法士には開業権がなく自身の治療院で理学療法を提供することはできません。

最近、自身で開業している理学療法士もいますが、保険適応が認められていないため、理学療法は提供できません。理学療法士の開業で多いのは、デイサービスやボディサロン、セミナー団体などです。

④医師の指示の有無

柔道整復師は医師以外で外傷治療を提供できる唯一の職種です。骨折や脱臼など、許容範囲内であれば、自身の判断で適切な治療を提供できます。

一方、理学療法士は医師の指示がなければ患者さんに治療を提供することができません。医師を必要とするか否か理学療法士と柔道整復師の違いになります。

理学療法士と柔道整復師の共通点

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まずは、理学療法士と柔道整復師の共通点を見てみましょう。

①国家資格である

いずれも医療系の国家資格であることが、大きな共通点です。国の法律に基づき、各分野における一定水準以上の知識や技術を有していることが証明され、そのスキルが認められています。

整体師やカイロプラクターといった民間資格と比べて、理学療法士や柔道整復師は資格取得の難易度が高く、社会的な信頼性や信用性を得られやすい資格です。

②資格取得には指定された養成校に通わなければならない

どちらも資格取得には、文部科学大臣もしくは厚生労働省大臣の指定する養成施設(専門学校や大学など)で3年以上、学ばなければなりません。

カリキュラムは解剖学や生理学など、一部共通する部分もありますが、それぞれの資格に特化した内容を受講します。養成校で必要なカリキュラムを修了したうえで、国家試験に合格した人だけが資格を取得できるのです。

共通点が多いこの2つの資格。どちらのほうが難しいのか気になる人も多いでしょう。

過去3年間の国家試験合格率は、「理学療法士が85%前後、柔道整復師は60%前後」です。

~過去3年間の国家試験合格率~

<理学療法士>

令和3年度(第57回) 79.6%
令和4年度(第58回) 87.4%
令和5年度(第59回) 89.2%

<柔道整復師>

令和3年度(第30回) 62.9%
令和4年度(第31回) 49.6%
令和5年度(第32回) 66.4%

合格率だけ見ると柔道整復師の難易度がやや高いように思えますが、試験科目や授業のカリキュラムの違いがあるため、一概にそうとは言い切れないでしょう。

というのも、就学中に実施される実習の期間に違いがあります。柔道整復師の実習が約180時間であるのに対し、理学療法士は880時間以上の実習をこなさなければなりません。柔道整復師は主に整骨院や接骨院、理学療法士は病院やクリニック、介護施設など、実際の現場にて指定された期間、実習をこなします。

実習に合格しないと進級できないため、国家試験とは違った難しさがあるのです。

③体の不調を訴える人に対し、徒手で施術を行う

対象や範囲は異なりますが、いずれも徒手を用いた施術を行います。施術中の様子が一見同じように見えることが、混同されやすい理由といえるでしょう。

また、施術内容は資格取得者それぞれが学んでいる手技や治療方針による部分が大きいものです。そのため、実際に行う施術の違いは少ないかもしれません。

④資格取得後も自己研鑽が求められる

どちらの資格も国家資格を取得後、知識を深めたり、治療技術を磨いたりする自己研鑽が求められます。実際の患者さんに治療を提供していくには、常に新しい知識やスキルのアップデートは欠かせません。むしろ、国家資格取得がスタートラインであり、そこからの経験や学びの積み重ねが重要といっても過言ではないでしょう。

それぞれの資格に特化した教本やセミナーなどがあり、多くの資格保有者が自己研鑽に励んでいます。

理学療法士・柔道整復師それぞれの特徴と対象となる疾患

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今度は、理学療法士と柔道整復師の特徴や対象となる疾患について見てみましょう。それぞれ資格ごとにまとめました。

理学療法士の特徴

理学療法士は、医師の指示の下、必要と判断される患者さんに対して、身体機能・動作能力の改善、日常生活能力の向上を目的としたリハビリを行います。その対象が幅広いのが特徴です。

<理学療法士のリハビリの対象となる主な疾患>
・整形外科疾患
・脳血管障害
・神経難病
・呼吸器疾患
・脊髄損傷 など

リハビリ方法は、徒手療法だけでなく、運動療法、動作分析、呼吸訓練、日常生活動作訓練、福祉用具選定など多岐にわたり、対象者により深く関わります。

幅広い分野の疾患を経験したい、患者さんと深く関わりたいと思う人は、理学療法士が向いているといえるでしょう。ただし、開業権はないため、治療院を持つといった独立はできません。

主な就職先は病院、介護施設、訪問リハビリ、クリニックといった医療機関で、収入面でも安定している傾向にあります。また需要も高いことから、転職しやすい仕事といえます。
高齢化が進むなか、理学療法士の活躍の場は増えるでしょう。

柔道整復師の特徴

柔道整復師は、骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷などのけがに対して応急的治療を行います。基本的にはけがの急性期に対応し、整復や固定などの手技を用います。

理学療法士とは異なり、医師の指示がなくても決められた範囲内であれば自身で診察・診断・施術が可能です。また開業権があるため、自分で独立して接骨院・整骨院を営むこともできます。

就職先は、接骨院や整体院が主ですが、トレーナーとしてスポーツチームに帯同する人も少なくありません。スポーツ現場でけがの応急処置をしたい、自分で接骨院を開業したいと思う人は、柔道整復師が向いているでしょう。

自分で開業した場合、収入は集客や売り上げに左右されてしまいますが、定年がないので長く働けるのがメリットです。

理学療法士と柔道整復師、ダブルライセンス取得のメリットは?

すでに理学療法士として活躍している人のなかで、スキルアップのために柔道整復師の資格取得を考える人もいます。

もちろん理学療法士資格を取得した後、柔道整復師の資格を取得することも可能です。理学療法分野とはまた違った知識や手技を学ぶことができ、何よりも自分で独立できる開業権が得られるのが大きなメリットとなるでしょう。

ですが、理学療法士資格を持っていても柔道整復師養成校のカリキュラムが免除されることはありません。一から全て受講・修了しなければならないため、学費と時間を要します。

また、ダブルライセンスを持っているからといっても、診療報酬上の点数は変わらないため、雇用の場合は給料に反映される可能性は低いでしょう。

「自分は理学療法士だけど接骨院を開業したい」という目標が定まっている場合、ダブルライセンスの取得はアリかもしれませんが、それ以外はあまりメリットがないのが現状です。

理学療法士と柔道整復師、それぞれに向いている人とは?

理学療法士に向いているのは、骨折や脱臼などのけがだけでなく、脳血管疾患や呼吸器疾患など幅広い対象に携わりたいという人です。局所治療だけではなく、基本動作や日常生活動作など、全体像を捉える視点が理学療法士には求められます。また、医師や看護師など、チーム医療の連携が必要となるため、コミュニケーションスキルが高い人が向いているといえるでしょう。

一方柔道整復師は、整形分野、外傷に特化して治療をしたい、将来的に独立開業をしたいという人に向いています。独自で判断して治療を展開することができるため、自分の意思を貫いて仕事をしたいという人がより向いているかもしれません。

理学療法士にしかない強みを示すために

患者さんから、「接骨院の先生やマッサージ師とは何が違うの?」と聞かれたことがある理学療法士も多いのではないでしょうか。

患者さんからすると、自分の体を良くしてくれる人であれば、資格の違いにこだわりはないのかもしれません。しかし、それぞれはあくまでも違う資格であり、対応する範囲が異なります。

理学療法士として柔道整復師にはない強みを示すことができれば、患者さんの信頼を得る機会にもつながるでしょう。

理学療法士は幅広い分野に対応し、より深く患者さんと関われる職種です。理学療法士としての専門性を磨き、さらなるステップアップを図りたいものです。

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参考

第57回理学療法士国家試験及び第57回作業療法士国家試験の合格発表について
第58回理学療法士国家試験及び第58回作業療法士国家試験の合格発表について
第59回理学療法士国家試験及び第59回作業療法士国家試験の合格発表について
第30回柔道整復師国家試験の合格発表について
第31回柔道整復師国家試験の合格発表について
第32回柔道整復師国家試験の合格発表について

 

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rana

理学療法士
総合病院やクリニックを中心に患者さんのリハビリに携わる。現在は整形外科に加え、訪問看護ステーションでも勤務。 腰痛や肩痛、歩行障害などを有する患者さんのリハビリに日々奮闘中。 業務をこなす傍らライターとしても活動し、健康、医療分野を中心に執筆実績多数。

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