摂食嚥下障害の基礎訓練法と訓練法選択のポイント
公開日:2022.12.01
文:近藤 晴彦
東京都言語聴覚士会 理事 広報局局長
本記事の概要
言語聴覚士の臨床では、摂食嚥下障害の患者さんにお会いすることが多くあります。摂食嚥下障害への対応は、飲食物を用いた「直接嚥下評価」や飲食物を用いない「間接嚥下評価」をおこない、問題点を抽出。機能訓練や適切な代償法によって、最大限に誤嚥を防止し、安全かつ適切に経口摂取できることを目指します。
今回は摂食嚥下障害の評価とその対応について解説していきます。
《問題》嚥下障害の治療・対応について誤っている組み合わせはどれか。
【言語聴覚士】第22回 第86問
嚥下障害の治療・対応について誤っている組み合わせはどれか。
<選択肢>
- 1. 頭部挙上訓練―食道入口部開大
- 2. 息こらえ嚥下法―声門閉鎖強化
- 3. 頚部回旋―喉頭挙上の強化
- 4. 交互嚥下―咽頭残留物の軽減
- 5. アンカー強調嚥下法―舌運動の強化
解答と解説
正解:3
摂食嚥下訓練では、最大限に誤嚥の防止をおこない、安全かつ適切に経口摂取ができることを目指します。そのため、各評価から問題点を抽出し、それに対応した適切な機能訓練や代償法の修得をおこないます。
今回の設問では、1.2.4.5はどれも治療と対応が適切ですが、「3.頚部回旋―喉頭挙上の強化」は不適切な組み合わせとなります。頚部回旋とは、頚部を患側に回旋して患側梨状陥凹を閉じることで、健側梨状陥凹を広くし食塊を健側に導きやすくする方法であり、主に咽頭機能に左右差を認める患者さんに実施する方法です。
実務での活かし方~嚥下基礎訓練法と訓練法選択のポイント~
摂食嚥下障害への介入について、臨床で実施する頻度が高い嚥下基礎訓練法と、臨床における訓練法選択のポイントについて解説していきます。
(1)主な嚥下基礎訓練法
(2)臨床における訓練法選択のポイント
臨床における訓練法選択のポイントについて解説します。
訓練法の選択には、適切な評価および問題点の抽出が重要です。そのため、VF検査(嚥下造影検査)やVE検査(嚥下内視鏡検査)によって評価し、問題点を明らかにすることが必要になります。
また、訓練方法には禁忌事項があり、合併する基礎疾患によっては実施できない場合があります。したがって、実際の臨床で訓練法を選択する際には、医師の指示を仰ぐことも必要になります。
まとめ
摂食嚥下訓練における評価とその対応について解説しました。言語聴覚士が摂食嚥下障害に介入する際には、問題点を明らかにし、それに対応した適切な介入をおこなうことが求められます。そのため、VF検査(嚥下造影検査)やVE検査(嚥下内視鏡検査)による評価が重要であり、医師をはじめとした関連職種との連携が欠かせません。
[出典・参照]
日本摂食嚥下リハビリテーション学会医療検討委員会. 訓練法のまとめ(2014 版).日本摂食嚥下リハ会誌,2014

近藤 晴彦(こんどう はるひこ)
東京都言語聴覚士会 理事 広報局局長
国際医療福祉大学大学院 修士課程修了。
回復期リハビリテーション病院に勤務する言語聴覚士。
東京都言語聴覚士会
http://st-toshikai.org/
東京都におけるすべての言語聴覚士が本会に入会され、自己研鑽に励み、地域社会に貢献することを目指し、活動中。
他の記事も読む
- 高次脳機能障害の作業療法
- アルツハイマー型認知症に合併する言語症状
- 慢性腎臓病のリハビリテーション
- 「レビー小体型認知症」の作業療法のポイント
- 言語聴覚療法における予後予測について
- 超皮質性失語の評価について
- 脳卒中患者のPusher現象
- 「神経症性食欲不振症」の作業療法のポイント
- 【失語症臨床】発話の流暢性評価はどう役立てる?
- パーキンソン病の作業療法と日常生活支援
- 不随意運動のしくみ 患者への困りごとへの対処
- 全身持久力トレーニングの中止基準~修正ボルグスケール・mMRC息切れスケールを表で解説~
- バーセルインデックスを用いたADL評価の注意ポイント
- 言語聴覚士が知っておきたい失語症に合併する言語以外の症状
- 疼痛を伴う特殊な病態とリハビリテーション
- 作業療法士から強迫性障害の患者家族へのアドバイス
- 急性期リハにおける失語症への介入のポイント
- 理学療法における発達検査の基本
- 「集団作業療法」で成果を高めるための注意点
- 高次脳機能障害の患者や家族への説明で言語聴覚士ができること