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言語聴覚療法におけるリスク管理(リスクマネジメント)

公開日:2023.02.27

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文:近藤 晴彦
東京都言語聴覚士会 理事 広報局局長

リハビリテーションにリスク管理が不可欠な理由

リハビリテーションにおいては、転倒や転落などの事故が起こることもあり、臨床業務の遂行にあたってはリスク管理(リスクマネジメント)が求められています。言語聴覚士の臨床においても例外ではありません。誤嚥や窒息などの重大事故にもつながりかねない摂食嚥下訓練を実施することもあるため、厳密なリスク管理が求められます。

今回は言語聴覚療法におけるリスク管理(リスクマネジメント)のポイントについて解説していきます。

《問題》言語訓練中に患者の容態が急変したとき最初にすべきことはどれか

【言語聴覚士】第21回 第152問
言語訓練中に患者の容態が急変したとき最初にすべきことはどれか。

<選択肢>

  1. 1. 横にする
  2. 2. 血圧を測る
  3. 3. 周囲のスタッフを呼ぶ
  4. 4. 家族に説明する
  5. 5. 報告書を書く

解答と解説

正解:3

患者の様態が急変するなど、トラブルが起きた際には「頭が真っ白になる」という表現があるように、当事者はパニック状態に陥ります。そのため、患者の急変時の対応において、もっとも重要なことは「自分一人で判断、処理をしない」ことであると考えられています。当事者は動転して冷静な判断ができないことが多く、すぐに応援要請をすることが鉄則です。

したがって、正答はになります。
選択肢1.2.4.5ついては、いずれ実施することになりますが、最初にすべき項目ではありません。応援を要請した後に応援者とともに複数で実施したり、事後に実施したりする内容です。

実務での活かし方~言語聴覚療法におけるリスク対策のポイント~

言語聴覚療法におけるリスク管理(リスクマネジメント)について解説していきます。

(1)言語聴覚療法におけるリスク
言語聴覚士の業務に関する事故にはどのような内容があるのでしょうか。日本リハビリテーション医学会 学術集会における報告(2004年および2005年調査)によると、言語聴覚療法でのヒヤリ・ハットなどの報告事例は「転倒・転落」がもっとも多く、次いで「誤嚥・窒息・肺炎」であることが明らかになっています。その他、「異変・急変」「怪我」「チューブ類抜去」「異食」などが報告されています。

このことから、言語聴覚療法におけるリスクは、リハビリテーションのリスクと同様「転倒・転落」と摂食嚥下訓練を実施することに伴う「誤嚥・窒息・肺炎」が中心であること、また、予想のできない「異変・急変」「怪我」「チューブ類抜去」「異食」があることが考えられます。

(2)対策
急変時の対応の鉄則は「自分一人で判断、処理をしない」ことであり、事故が起きた際に、はじめに行うことは応援を要請するであることを解説しました。そのため、平時から緊急時の行動や連絡先についてマニュアル化し、共有しておくことが重要です。

言語聴覚療法は個室で実施することがほとんどです。どのようにして、その場から離れずに個室から応援を要請するのか、マニュアル化しておくことが重要です。また、リスク管理への対策として、マニュアルに従って実際に応援を要請する、応援要請した後に対処するなど、実際に急変を想定したにロールプレイでのトレーニングを実施することが推奨されています。

その他にも、リスクを伴う評価や訓練を実施する際には、言語聴覚士が一人にならないような場所で訓練を実施するなどの配慮が必要です。例えば、リスクの高いケースとしてフードテストや直接嚥下訓練を実施する際には、個室ではなく、吸引セットがあり、看護師・医師が側にいるベッドサイドや病棟で実施することが好ましいでしょう。

まとめ

言語聴覚療法におけるリスク管理(リスクマネジメント)について解説しました。
言語聴覚療法におけるリスクには、リハビリテーションのリスクと同様「転倒・転落」と摂食嚥下訓練を実施することに伴う「誤嚥・窒息・肺炎」があることが明らかになっています。
急変時の対応の鉄則は「自分一人で判断、処理をしない」ことであり、実施に事故が起きた際にどのように応援を要請するのか等対応についてマニュアル化し、ロールプレイなどのトレーニングを実施することが重要です。
平時より、いざという時に慌てない心構えを構築することがリスク管理(リスクマネジメント)においては求められます。

[出典・参照]
佐場野優一.リハビリテーションにおけるリスクマネジメント 言語聴覚士の立場から.リハビリテーション医学,2006;43:149-179
藤島一郎,柴本勇 動画でわかる摂食・嚥下障害患者のリスクマネジメント.中山書店,2009

近藤 晴彦

近藤 晴彦(こんどう はるひこ)

東京都言語聴覚士会 理事 広報局局長
国際医療福祉大学大学院 修士課程修了。
回復期リハビリテーション病院に勤務する言語聴覚士。
東京都言語聴覚士会ロゴ 東京都言語聴覚士会
http://st-toshikai.org/
東京都におけるすべての言語聴覚士が本会に入会され、自己研鑽に励み、地域社会に貢献することを目指し、活動中。

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