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「集団作業療法」で成果を高めるための注意点

公開日:2023.03.15

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文:中山 奈保子
作業療法士(教育学修士)

集団作業療法の目的と効用

作業療法では、病気や障害の内容や程度、経過に応じた「集団」を活用し、対象者の達成感や健康感に対して働きかけます。集団の作業療法は、社会生活に適応するための技術を高める場であるのと同時に、お互いにとって価値がある大切な情報を得たり、似た立場にある者同士の絆を強めたりする場にもなります。他者と協力して何かを成し遂げ、充実感やモチベーションが高まるなど多くの効用があります。

精神科病院のように、普段から集団の作業療法がおこなわれている施設に限らず、個別の作業療法がメインとなっている施設でも実施しているケースは多々あります。作業療法室内で自然と生まれた集団のなかで対象者の変化をみたり、同じ興味や関心をもった複数の対象者同士を引き合わせたりすることも同様です。ひとりから集団になったことにより、新しい展開がみられることも少なくないのではないでしょうか。

作業療法士が関わる集団活動には、さまざまな形態があります。
作業療法士の国家試験では、以下のような問題が出題されています。

《問題》集団作業療法について正しいのはどれか。

【作業療法士】第56回 午前 47
入院患者のせん妄発症を予防するための取り組みとして適切なのはどれか。2つ選べ。

<選択肢>

  1. 1. レクリエーション活動は開放集団では実施できない。
  2. 2. 調理活動は開放集団よりも閉鎖集団の方が実施しやすい。
  3. 3. 閉鎖集団よりも開放集団の方が参加者の凝集性が高まる。
  4. 4. 急性期には個人作業療法よりも集団作業療法が優先される。
  5. 5. 集団作業療法よりも個人作業療法で受容体験は得られやすい。

解答と解説

正解:2

選択肢1~3では、集団の開放度について問われています。集団の開放度は、参加者を固定せず、誰もが気軽に参加できる集団:開放集団(オープングループ)と、参加者を固定する閉鎖集団(クローズドグループ)に分けて考えるのが一般的です。開放集団と閉鎖集団どちらの要素も適度に含み、集団活動に支障のない程度参加者の出入りがあるものは、セミクローズド(セミオープン)グループと呼ばれます。集団でおこなうレクリエーションは、いずれの開放度でも実施可能です。

選択肢2の調理活動は、課題が複数に及んでいたり、火や刃物を使用したりする場面も少なくないことから、メンバーが固定される閉鎖集団の方が実施しやすいでしょう。
閉鎖集団では、参加者個々人の活動経過を追いやすく参加者間の凝集性も高められるため、より安心・安全な場を維持しやすくなります。開放集団は、参加者それぞれのペースで参加が可能な反面、参加者間の関係性が希薄になりがちです。

集団活動は、その場の雰囲気を感じたり、参加者同士の交流を図ったりすることで、「自分にもできるかもしれない」「また行ってみようかな」などと前向きな気持ちを得たり、ありのままの自分を受け入れてもらう体験(受容体験)を重ねるのに適しています。一方で、病気を発症して間もなく専門職による伴走が必要な急性期では、専門職と一対一の関係性構築(個人作業療法)が優先されます。

臨床での活かし方

作業療法場面でおこなう集団活動では、作業療法士が思い描いた結果以上の成果が得られることがしばしばです。同じ病気や障害を負った方々同士の交流では、お互いを励ましあったり、知り得た知識や情報、体験を教えあったりする経験を通し、参加者が主体的に問題を解決する力を後押しするピアカウンセリングに近い場となることも期待されます。また、対象者が身近な他者と語り合うなかで自分の能力や役割を意識したり、感じ方や考え方の修正を図ったりすることは、近い将来に訪れる社会生活に向けて価値ある体験となるはずです。

ただし、集団を構成しようとする場合は、その意図や目的に応じて、場所や集団の大きさ(人数)、活動時間や期間、活動の実施頻度、参加者の構成などを検討するほか、集団活動の運営や参加者の心身に影響を与える要素のひとつである、集団の「開放度」についても考慮しなければなりません。なぜその活動を集団でおこなう必要があるのか、対象者にどんな効用を期待するのかなど、目的や目標を明確にして検討することが肝心です。あいまいなままだと、集団活動ならではの相乗的な成果が得られない可能性もありますので、注意してください。

中山 奈保子

中山 奈保子(なかやま なおこ)

作業療法士(教育学修士)。
1998年作業療法士免許取得後、宮城・福島県内の医療施設(主に身体障害・老年期障害)に勤務。
現職は作業療法士養成校専任教員。2011年東日本大震災で被災したことを期に、災害を乗り越える親子の暮らしを記録・発信する団体「三陸こざかなネット」を発足し、被災後の日常や幼くして被災した子どもによる「災害の伝承」をテーマに執筆・講演活動を行っている。

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