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パーキンソン病の作業療法と日常生活支援

公開日:2023.06.13

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文:中山 奈保子
作業療法士(教育学修士)

パーキンソン病の基礎知識

パーキンソン病は、中脳の黒質にあるドーパミンを産生する神経細胞の減少により生じる神経変性疾患の一つです。運動障害のほかにも、自律神経障害や抑うつなどの精神症状を合併します。慢性的に進行するため、運動機能と活動量の維持を意識した日常生活動作の指導や環境への配慮が重要です。

1817年、イギリスの医師・パーキンソン氏によりはじめて報告されたパーキンソン病は、発見当初「振戦麻痺」と呼ばれていました。その後、フランスの医師・シャルコーにより「パーキンソン病」と名付けられ、もっとも特徴的な症状である振戦が、安静静止時に意思とは無関係に生じること、手足を意識的に動かしているときはそれが抑えられるといった特徴や、予後、病理が明らかにされていきました。

現在では、振戦のほか無動・寡動、筋強剛(筋固縮)、姿勢反射障害をパーキンソン病の4大兆候として挙げるのが一般的となっています。疾患そのものによる影響だけではなく、薬剤による副作用:ON-OFF現象、便秘や尿失禁、発汗異常、血圧コントロールの異常といった自律神経障害、味覚、嗅覚、睡眠障害、抑うつ、不安障害、認知機能障害などを併発しやすいのも特徴です。

作業療法では、これらの問題により日常生活全般が不活発にならないよう、運動機能維持を目的とした訓練、日常生活動作の指導や練習、福祉用具の活用をはじめとした生活環境の整備、余暇の過ごし方への介入などが求められます。

作業療法士国家試験では、以下のような問題が出題されています。

《問題》重症度分類ステージIII。運動機能維持を目的とした作業療法で優先順位が低いのはどれか。

65 歳の女性。Parkinson 病。Hoehn & Yahr の重症度分類ステージIII。屋内歩行は伝い歩きをしている。薬物コントロールができ次
第、退院予定である。運動機能維持を目的とした作業療法で優先順位が低いのはどれか

”

解答と解説

正解:5

Hoehn&Yahrの重症度分類ステージIIIでは、歩行が不安定となりはじめ、立ち直り反応の弱さや方向転換時の不安定さが目立ちはじめます。そのため、歩行障害の進行や屋内歩行時(伝い歩き)の転倒の回避を意図した活動を優先するのが適切でしょう。
選択肢1〜4(立位での玉入れ、階段昇降、座位でのリーチ動作、ボール渡し)では、立位・座位活動において、支持基底面を超えて(ないしは、支持基底面内で)大きく重心を移動させる活動が意図されていると考えられ、重心移動に伴う体幹の活動や姿勢の保持といった運動機能に対しアプローチすることが可能です。選択肢5の机上でろくろを回す活動は、重心の移動やそれに伴う姿勢の保持機能を比較的必要としない活動であるため、もっとも優先順位が低いと考えます。

実務での活かし方~パーキンソン病への介入のポイント~

パーキンソン病の作業療法では、対象者の運動機能障害がどの程度進行しているか(=重症度)判断し、残存機能に見合った運動・動作・活動を準備することが大切です。Hoehn&Yahrの重症度分類は、主にリハビリテーション場面でもっとも広く用いられる判断基準であり、重症度を5つの段階に分類しています(表)。

【Hoehn&Yahrの重症度分類】
表 Hoehn&Yahrの重症度分類

パーキンソン病の症状は、慢性的に進行します。発症後10年間程度は通常の生活を維持できるケースが増えていますが、それ以降は個人差が大きく、要介護状態となるケースが多いのも現状です。日常生活場面では、食事中に食具の操作が止まったり、嚥下が困難となって完食まで時間を要してしまったり、排泄や入浴動作では、出入り口ですくみ足が見られたり、衣服の着脱が困難となってしまうなど、さまざまな変化が表れてきます。
セラピストよりも先に、対象者がその変化に気づくこともしばしばです。症状の進行に対する不安を対象者がひとりで抱えないよう、セラピストの丁寧な観察と気づきが欠かせません。

中山 奈保子

中山 奈保子(なかやま なおこ)

作業療法士(教育学修士)。
1998年作業療法士免許取得後、宮城・福島県内の医療施設(主に身体障害・老年期障害)に勤務。
現職は作業療法士養成校専任教員。2011年東日本大震災で被災したことを期に、災害を乗り越える親子の暮らしを記録・発信する団体「三陸こざかなネット」を発足し、被災後の日常や幼くして被災した子どもによる「災害の伝承」をテーマに執筆・講演活動を行っている。

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