医療介護・リハビリ・療法士のお役立ち情報

セラピストプラス

マイナビコメディカル
マイナビコメディカル

医療介護・リハビリ・療法士のお役立ち情報

セラピストプラス

超皮質性失語の評価について

公開日:2023.07.28

pixta_67497864_S

文:近藤 晴彦
東京都言語聴覚士会 理事 広報局局長

本記事の概要

今回取り上げる過去問のテーマは、超皮質性失語です。超皮質性失語とは、「音韻的側面の保存と語彙・意味的側面の障害」を呈する失語群で、以下の3タイプがこれに該当します。

●超皮質性運動失語(TCMA)
●超皮質性感覚失語(TCSA)
●混合型超皮質性失語(言語野孤立症候群)

実際の臨床では超皮質性失語の患者様にお会いすることも多くありますが、その評価や介入については迷うことも多くあるかと思います。
今回は、超皮質性失語について解説していきます。

《問題》超皮質性失語でみられないのはどれか。

【言語聴覚士】第23回 第159問
超皮質性失語でみられないのはどれか。

<選択肢>

  1. a.再帰性発話
  2. b.表層性失読
  3. c.補完減少音
  4. d.反響言語
  5. e.音韻性錯書
  1. 1. a,b
  2. 2. a,e
  3. 3. b,c
  4. 4. c,d
  5. 5. d,e

解答と解説

正解:2

超皮質性失語の概念は、Lichtheimによって確立されたものです。「音韻的側面の保存と語彙・意味的側面の障害」を呈するため、言語の復唱能力が他の言語能力に比べ、相対的に保存された失語群となります。

今回の設問にある「a.再帰性発話」「e.音韻性錯書」は、超皮質性失語では認めません。
「a.再帰性発話」とは、何を聞かれても「タン、タン」としか話せないなど、同じ音や語が常同的に繰り返される語のこと。失語症のタイプでは全失語に認められることがあります。
「e.音韻性錯書」とは、書字の際に「ミカン→ミタン」のように目標語の音の一部を書き誤る状態。失語症のタイプでは伝導失語やウェルニッケ失語に認められることがあります。

超皮質性失語の特徴は、「b,c,d」ですので、それらを除去した「2.a,e」が正解になります。
ここで、注意が必要なのは、「e.音韻性錯書」は書字における音韻的な誤りであること。発話による誤りである音韻性錯語は、超皮質性感覚失語において認められる場合があるので覚えておきましょう。

実務での活かし方 ~超皮質性失語の評価~

超皮質性失語について解説していきます。今回は、(1)超皮質性失語の概念 (2)超皮質性運動失語の特徴 (2)超皮質性感覚失語の特徴 (4)混合型超皮質性失語の4つについて、それぞれの特徴や評価のポイントを解説していきます。

(1)超皮質性失語の概念
超皮質性失語とは、「音韻的側面の保存と語彙・意味的側面の障害」を呈するため、言語の復唱能力が相対的に保存された失語群となります。発話の表出面では、新造語や音韻性錯語など非語(実際の日本語にはない語)となる誤りは基本的には認めません。また、復唱能力が保たれるため、単語・短文での復唱も可能です。しかし、語彙・意味的側面の障害を認めるため、復唱は可能であっても、その語の意味が伴っていないことがあります。

冒頭で言及したように、超皮質性失語には「超皮質性運動失語(TCMA)」「超皮質性感覚失語(TCSA)」「混合型超皮質性失語」の3つのタイプがあります。以下にそれぞれの特徴を解説していきます。

(2)超皮質性運動失語(TCMA)の特徴
超皮質性運動失語は、聴覚的理解、復唱は比較的保たれますが、呼称、語列挙、自発話の減少を特徴とします。また、“運動失語”となりますので流暢性の評価では「非流暢」に分類されます。
超皮質性運動失語の臨床における評価のポイントは次の2つ。

・自発話の減少
・語列挙の低下

自発話については、初期には無言症の状況にあることもあり、発話量・情報量ともに減少を認めます。語列挙については、呼称能力に比べて著しい低下を認めます。
自発話の減少、語列挙の低下は超皮質性運動失語の評価において見逃すことができない症状です。超皮質性運動失語の病巣は、左前頭葉背外側(中前頭回)皮質―皮質下および左前頭葉内側面(補足運動野、前部帯状回)になります。

(3)超皮質性感覚失語(TCSA)の特徴
超皮質性感覚失語は、聴覚的理解を中核症状とし、ときに相手の問いかけをそのまま繰り返す反響言語(エコラリア)を伴うことが特徴です。呼称の際にはときに語性錯語を(音韻性錯語)を認め、自発話では発話量に比べて情報量に乏しい発話となります。また、“感覚失語”となりますので、流暢性の評価では「流暢」に分類されます。

超皮質性感覚失語の臨床における評価のポイントは以下の3つ。
・反響言語
・復唱良好
・語性錯語

これらは臨床上、超皮質性運動失語と評価するためには見逃すことができない症状になります。
超皮質性感覚失語の病巣は、左下前頭回から左中前頭回に進展した前方病変型とウェルニッケ野を含まない左側頭葉後下部を中心とした後方病変型があります。

(4)混合型超皮質性失語(言語野孤立症候群)の特徴
混合型超皮質性失語は、自発話・理解ともに重度の障害を認め、検査自体も困難であることがあります。しかし、理解を伴わない意図的な復唱とは異なる「反響言語(エコラリア)」、文を途中まで言って聞かせると、求められていないのに残りの部分を完成させる「補完現象」を認めることが特徴です。流暢性の評価では、自発話の極めて乏しい発話であるため「非流暢」に分類されます。

混合型超皮質性失語の臨床における評価のポイントは、次の3つ。
・自発話の著しい減少
・理解障害
・復唱可能、補完現象

臨床において、この3点は混合型超皮質性失語と評価するためには見逃すことができない症状になります。
混合型超皮質性失語は、広範な脳損傷例や、広範な脳損傷例や後-上前頭葉領域と中―後大脳動脈領域が同時に損傷され、「言語野の孤立」をきたした状況と考えられています。広範な病巣であることから、他の高次脳機能障害を合併することが多く、純粋型の症例は臨床においては少ないと言われています。

まとめ

超皮質性失語について解説しました。超皮質性失語は、「超皮質性運動失語」「超皮質性感覚失語」「混合型皮質性失語」の3タイプあります。「音韻的側面の保存と語彙・意味的側面の障害」を呈するため、言語の復唱能力が相対的に保存された失語群となります。そのため、反響言語や補完現象など、意味を必要としない表出が可能となることがあります。実際の臨床においては、表出課題では復唱能力、呼称能力、語列挙などの結果の分析や理解障害の程度を評価することが重要です。

[出典・参照]
藤田郁代ら.標準言語聴覚障害学 失語症学 第3版.医学書院,2021

近藤 晴彦

近藤 晴彦(こんどう はるひこ)

東京都言語聴覚士会 理事 広報局局長
国際医療福祉大学大学院 修士課程修了。
回復期リハビリテーション病院に勤務する言語聴覚士。
東京都言語聴覚士会ロゴ 東京都言語聴覚士会
http://st-toshikai.org/
東京都におけるすべての言語聴覚士が本会に入会され、自己研鑽に励み、地域社会に貢献することを目指し、活動中。

今よりさらに良い環境で働けるよう
キャリアドバイザーが全力でサポートします
\今すぐ1分で完了/

    <PR>マイナビコメディカル

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  •  LINEで送る

他の記事も読む

おすすめ

TOPへ