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第13回視覚障害者に「どれくらい見えますか?」と聞けなかった

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横浜市スポーツ医科センターの理学療法士・加藤瑛美さん。2016年には視覚障害者競技「ゴールボール」の女子日本代表チームトレーナーとして、リオデジャネイロパラリンピックに参加しました。身体障害者ならではの「運動のくせ」を理解しながら、トレーニングを展開するのは初めての経験だったと語ります。

「障害について質問することは失礼なことではない」という発見

私はスポーツ医科学に基づいた専門のクリニックに勤務していますが、パラリンピック選手、特に視覚障害の選手と関わるのは初めてでした。オリンピック選手の患者さんに関わったことはありますが、身体障害がある選手だからこそ要求される知識や技術もあります。
 
例えば、グループでトレーニングするときに「手を上げよう」と声をかけると、顔の高さに軽く手を上げる選手もいれば、頭より高く腕を上げる選手もいます。私が見本の動作をしても選手たちには伝わらないため、一つひとつの動作を言語化しなければなりません。
 
スポーツでは感覚的な伝え方をしたほうが選手に納得してもらえることがあります。具体的な向きや角度ではなく、「ストロークのときに、もっと膝をグッと入れよう」というような表現ですね。身振り手振りをつけて話すことで伝わりやすくなりますが、視覚障害の選手にはそうした表現も伝えにくいということにも、このとき気づきました。
 

最初は失礼かなと思って躊躇したところもあるのですが、思い切ってそれぞれの選手に「どれくらい見えているの?」と聞きました。「物がここにあるのはわかる」とか、人によっては結構見えていて「指の本数はわからないけれど、そこに手があることはわかる」という選手もいました。
 
障害について質問することは、まったく失礼なことではないとすぐにわかりました。他のスタッフや選手に相談したら、そうしたことはどんどん確認してほしいと言われましたね。

理解の方法が異なる先天性視覚障害の選手と中途障害の選手

トレーナーとして関わるようになってからは、選手とのコミュニケーションを大切にしています。とにかく選手たちと話をしました。選手と言葉で理解を深め合うことは、最初は難しかったですね。今でも、フォームなどを確認するときは選手の身体を触らせてもらいます。その後、私の身体も触ってもらって「この姿勢の方がパフォーマンスがいい」ということを理解してもらうようにしています。
 
視覚障害の選手は特に、フォームが崩れやすい傾向があります。両眼の視力が極端にアンバランスなために見やすい方の目ばかり使ってしまい、身体が左右に傾いてしまう選手。また日常生活でも足で床の凹凸を探る動作をしているために、姿勢の崩れやすい選手など。
このような姿勢の崩れがフォームに悪影響を与えるなら、修正するためのトレーニングが必要です。これは障害者スポーツの特徴だと思います。
 
また、トレーナーになってから気づいたことですが、先天性視覚障害の選手と中途障害の選手では、それぞれ得意なことが異なっています。
中途障害の選手は見えてきたときの記憶を手がかりに練習ができます。例えば「野球のピッチャーがボールをリリースするときのように素早く投げる」と伝えたとき、動作をイメージできるので新しい技術を習得しやすいですね。一方、先天性視覚障害の選手は視覚情報がなくても理解することに慣れているので、一旦覚えたら忘れない。自分のものにする能力に優れているなと感じる場面がよくあります。(次回に続く

安藤啓一

安藤啓一(あんどう けいいち)

福祉ジャーナリスト。大学在学中からフリー記者として活動を始める。1996年アトランタパラリンピックをきっかけに障害者スポーツの取材をはじめる。夏冬パラリンピックや国内大会を多数取材。パラリンピック関係者に読み継がれている障害者スポーツマガジン「アクティブジャパン」「パラリンピックマガジン」記者などを経験。日本障がい者スポーツ協会発行誌『No Limit』などの媒体にも寄稿している。取材活動のほかチェアスキー教室講師としてもスポーツに取り組んできた。共著に「みんなで楽しむ!障害者スポーツ」(学習研究社)がある。


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