第16回テニスのジュニア選手から理学療法士を目指すまで
公開日:2017.06.26 更新日:2017.07.07
視覚障害者競技「ゴールボール」の日本代表チームトレーナーである、理学療法士の加藤瑛美さん。「理学療法士のことは知らなかったけれど、テニスのジュニア選手の頃から将来はスポーツトレーナーになりたかった」と語ります。加藤さんが理学療法士という仕事の奥深さに触れたのは、ジュニア選手時代のけががきっかけでした。
コーチよりもトレーナーとして選手をサポートしたいという思い

私は大学までテニスの選手をしていました。けがをしたときのリハビリテーションで今の職場である、「横浜市スポーツ医科学センター」に通ったことがスポーツのリハビリテーション職を目指すようになったきっかけです。手術が必要なほどの大けがの経験はないのですが、肉離れや捻挫でよく通院していました。
もともとスポーツトレーナーの仕事は気になっていて、高校生のときには大学に進学してテニス選手を続けるか、トレーナーになるための学校に進もうかと悩みました。ただその頃は、理学療法士という専門職のことはまったく知りませんでした。メンタルトレーナーの指導も受けていましたが、「トレーニングをサポートしたり、リハビリテーションに関わったりするのがトレーナーさん」という漠然としたイメージしかありませんでした。
イメージは漠然としていましたが、「テニス選手を続けるのか、サポートする側に回るのか」を考えたときには、コーチなどの「指導者」ではなく、トレーナーになりたいとは考えていたように思います。
リハビリによる身体の変化を通じて理学療法士の仕事に興味が

選手時代、私自身も患者として痛みが和らぐといった身体の変化を実感し、リハビリテーションの大切さに気づきました。トレーナーになるならここで働きたいと考えたのは、それがきっかけです。スポーツトレーナーには鍼灸師や柔道整復師のなどの医療資格を持った人が多いのですが、私は理学療法士以外は考えませんでした。
就職活動を始めたときには地元の北海道に帰ることも考えていましたが、両親が資格を取るための学校へ行ってもいいと言ってくれて、理学療法士を目指すことを決めました。
そのときは今の上司にも進学のことを相談し、ここで働くことを目標に養成校を受験しました。入学した養成校は夜間コースだったので、昼間は今の職場で理学療法士の助手としてアルバイトをすることに。資格の取得後は、晴れて正職員としての就職が決まりました。

ここのリハビリテーション科では、受診した患者さんが効果を実感できるリハビリテーションを目指しています。関節の可動域が広がることや痛みの緩和など、自宅でセルフケアを継続する動機づけとして、受診前後で何らかの変化を感じてもらうことが大切です。(次回へ続く)

安藤啓一(あんどう けいいち)
福祉ジャーナリスト。大学在学中からフリー記者として活動を始める。1996年アトランタパラリンピックをきっかけに障害者スポーツの取材をはじめる。夏冬パラリンピックや国内大会を多数取材。パラリンピック関係者に読み継がれている障害者スポーツマガジン「アクティブジャパン」「パラリンピックマガジン」記者などを経験。日本障がい者スポーツ協会発行誌『No Limit』などの媒体にも寄稿している。取材活動のほかチェアスキー教室講師としてもスポーツに取り組んできた。共著に「みんなで楽しむ!障害者スポーツ」(学習研究社)がある。
障害者スポーツ 記事一覧
- 第25回 車椅子バスケ~障害者スポーツだからこそ、理学療法士の専門性が生きてくる
- 第24回 ルール次第で重度障害者アスリートが主役に。車椅子バスケ大会、High8(ハイエイト)
- 第23回 障害者のスポーツ経験は生活の自立につながる
- 第22回 理学療法士がサポートするとスポーツ選手は強くなれるのか
- 第21回 世界トップのブラジル代表チームで活躍する理学療法士
- 第20回 日本代表チームのメディカルスタッフとして金メダルを目指す
- 第19回 ブラインドサッカー、日本代表選手の高度な空間認知能力に驚き
- 第18回 理学療法士養成校の学生がブラインドサッカー選手になるまで
- 第17回 スポーツのリハビリテーションは競技知識が必須です
- 第15回 海外パラ選手の障害に配慮しないハードな練習にビックリ
- 第14回 理学療法的な視点から代表選手の選考に携わる経験も
- 第13回 視覚障害者に「どれくらい見えますか?」と聞けなかった
- 第12回 スポーツリハ職員、ゴールボールの代表チームトレーナーになる
- 第11回 競技経験があるからこそ選手のことを理解できる スポーツがリハビリテーションの可能性を広げます
- 第10回 高度化する障害者スポーツは危険なのか? 理学療法士は障害特性を理解した指導ができる
- 第9回 めざせ東京パラリンピック出場 夢への第一歩、東京都の選手発掘プログラム
- 第8回 9月8日開幕! セラピスト的パラリンピックは障害者スポーツ補装具に注目
- 第7回 障害者水泳、成田真由美選手復活! 日本記録更新でパラリンピックへ
- 第6回 男女混成のバトル系種目、車椅子ラグビーは重度障害者スポーツ!?
- 第5回 車椅子バスケはリオパラリンピックで世界に挑む