理学療法士は名称独占資格?業務独占資格との違いも解説

更新日 2024年01月24日 公開日 2024年01月24日

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医療現場で働く職種の多くが国家資格を保有していますが、国家資格には「業務独占資格」や「名称独占資格」といった分類があります。みなさんは、理学療法士が何の分類になるかご存じですか?

理学療法士は、「理学療法士及び作業療法士法」という法律で規定された名称独占資格であり、資格を持っている人だけがその名称を名乗ることができます。

この記事では、業務独占資格と名称独占資格の概要や、それぞれの違いについて詳しく紹介します。また、理学療法士が名称独占資格であることのメリットも解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。

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理学療法士は名称独占資格?業務独占資格との違いも解説

理学療法士は業務独占資格? 名称独占資格?

国家資格には、資格を持っている方だけが独占的にその業務を行える「業務独占資格」と、資格を持っている方だけが職業名を名乗れる「名称独占資格」があります。

前述したように、理学療法士は名称独占資格に該当する国家資格であり、このことは「理学療法士及び作業療法士法」という法律で規定されています。

【理学療法士及び作業療法士法での規定】

第四章 業務等
(名称の使用制限)
第十七条 理学療法士でない者は、理学療法士という名称又は機能療法士その他理学療法士にまぎらわしい名称を使用してはならない。
第六章 罰則
第二十二条 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
一 第七条第一項の規定により理学療法士又は作業療法士の名称の使用の停止を命ぜられた者で、当該停止を命ぜられた期間中に、理学療法士又は作業療法士の名称を使用したもの
二 第十七条の規定に違反した者

(引用:e-Gov法令検索「理学療法士及び作業療法士法」/https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=340AC0000000137

「理学療法士及び作業療法士法」が示すように、理学療法士の資格を持っていない方が理学療法士の仕事をすることに罰則規定はありません。ただし、無資格者が理学療法士の名称や、理学療法士と誤解されるような紛らわしい名称を名乗った上で、理学療法士の仕事を行うことは法律違反にあたります。そうしたケースには、罰則が定められていることも覚えておきましょう。

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国家資格の分類:業務独占資格・名称独占資格・設置義務資格・技能検定

医療従事者をはじめ、高度な専門性が必要とされる仕事では、知識や能力が不足していると、生命や財産を脅かす危険性があります。そのため、国では特定の職業に関する法律を制定し、その仕事を行う知識・能力があることを認定する国家資格制度を設けました。

国家資格はそれぞれの法律で設けられている規制の種類によって、4つに分類できます。以下では、業務独占資格と名称独占資格を含めた4つの分類について解説しましょう。

■国家資格の分類

分類 概要 資格・職業の例
業務独占資格 資格を持つ者だけが、その仕事を独占して行える 医師、看護師、診療放射線技師、弁護士、公認会計士など
名称独占資格 資格を持つ者だけが、その名称を名乗ることができる 理学療法士、作業療法士、管理栄養士、保育士など
設置義務資格 特定の事業を行う際に、法律で設置を義務付けられている資格 旅行業務取扱管理者、職業訓練指導員、衛生管理者など
技能検定 特定の業務に必要な技能を評価する国家検定の資格 ファイナンシャルプランナー、機械加工、建築大工など

(出典:文部科学省「国家資格の概要について」/https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shougai/014/shiryo/07012608/003.htm

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業務独占資格とは

業務独占資格とは、該当する資格を取得している方のみが、その仕事・業務を独占的に行える資格のことです。資格の種類によって取得の難易度は異なりますが、医師や弁護士など、高度な専門知識・能力を求められる資格が多く、国家試験の難易度も高い傾向にあります。

業務独占資格の種類

業務独占資格に該当する国家資格には、それぞれの根拠となる法律が定められています。代表的な業務独占資格としては、弁護士、司法書士、税理士、公認会計士、一級建築士などが挙げられ、医療関連の国家資格にも下記のような業務独占資格があります。

■代表的な医療関連の業務独占資格

資格名 独占業務の範囲 根拠となる法律
医師 医業(医行為)
※看護業務・調剤業務・放射線照射業務は状況に応じて従事可能
医師法
歯科医師 歯科医業 歯科医師法
看護師 看護業務
※傷病者や褥婦に対する療養上の世話、診療の補助・サポート
保健師助産師看護師法
助産師 助産または妊婦・褥婦・新生児の保健指導
薬剤師 処方箋にもとづく調剤業務・服薬指導 薬剤師法
診療放射線技師 医師や歯科医師の指示のもとで行う人体への放射線照射 診療放射線技師法

業務独占資格の特徴

法律で業務独占資格と定められた国家資格は、医業や看護業務、調剤業務のように専門的な知識・能力が求められるものがほとんどです。業務独占資格の所持者が行うべき業務を無資格者が行った場合は法律違反となり、名称独占資格の場合よりも厳しい罰則が科せられることに留意しましょう。

なお、業務独占資格は名称独占資格を兼ねているケースが多く、その場合資格を持っていない方は業務に従事することも、資格に関連する職業名を名乗ることもできません。業務独占・名称独占それぞれに違反した際の罰則は、以下の通りです。

■無資格者が業務独占資格の業務を行った場合の罰則(医師の例)

違反のケース 罰則
医師免許を持たない者が医業を行った場合 3年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金(または両方)
医師免許を持たない者が、医師や類似する職業名を名乗って医業を行った場合 3年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金(または両方)

(出典:e-Gov法令検索「医師法」/https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000201

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名称独占資格とは

名称独占資格とは、その資格を取得している方のみが特定の職業名を名乗れる資格のことです。名称独占資格にあたる資格を持たない方が、その職業名や類似する名称、紛らわしい名称を名乗ることはできません。

業務独占資格との違いは、「業務を独占的に行えるかどうか」という点です。業務独占資格では、無資格で業務を行うことを禁じているのに対して、名称独占資格の業務は資格を持たない方が行っても罰則がありません。

名称独占資格の種類

業務独占資格と同様、名称独占資格でもそれぞれの根拠となる法律が定められています。代表的な名称独占資格としては、社会福祉士、介護福祉士、中小企業診断士、技術士などが挙げられ、医療関連の国家資格にも下記のような名称独占資格があります。

■代表的な医療関連の名称独占資格

資格名 業務の範囲 根拠となる法律
理学療法士 医師の指示にもとづいた理学療法の実施 理学療法士及び作業療法士法
作業療法士 医師の指示にもとづいた作業療法の実施
臨床検査技師 医師の指示にもとづいた検体検査・生理学的検査(厚生労働省令で定められた検査)の実施 臨床検査技師等に関する法律
保健師 保健指導 保健師助産師看護師法
管理栄養士 健康な人や傷病者に対する栄養指導、栄養管理、給食管理 栄養士法

名称独占資格の特徴

名称独占資格は、業務独占資格のように特定の業務を独占して行うことができません。しかし、厚生労働省の「看護師、助産師及び准看護師の名称独占について」によると、名称独占資格には「社会的信用の確保」「専門的な資格・業務の識別」「相手方との信頼関係の確立や被害の未然防止」などの意義があるとされています。また、医療業界では、医療の質を一定以上の水準に保つ手段としても活用されています。

名称独占資格も業務独占資格と同様に、根拠となる法律に違反した場合の罰則が定められています。業務独占資格ほど厳しくないものの、無資格者が名称独占資格の職業名や紛らわしい資格名称を使用した場合は、罰金などの罰則対象になることを覚えておきましょう。

(出典:厚生労働省「看護師、助産師及び准看護師の名称独占について」/https://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/05/s0527-14b.html

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理学療法士が名称独占資格であるメリット

理学療法士の国家資格は業務独占資格ではなく、名称独占資格に該当します。つまり、理学療法士が行うリハビリ業務は無資格者でも行えるということです。ただし、理学療法士が業務独占資格でないことは、医療業界・介護業界全体から見て一概にデメリットとは言えません。

例えば、在宅で介護を受ける方の場合、個別のリハビリテーションが提供される機会はそれほど多くありません。そのため、ご家族の方や介護職員、看護職員が日常生活のなかでリハビリテーションアプローチ(関節可動域訓練、起立・歩行訓練など)を行うことは、非常に重要な意味を持ちます。

地域包括ケアシステムが推進され、入院医療から在宅医療、病院から地域へのシフトが求められている時代だからこそ、理学療法士が名称独占であることの意味は大きいと言えるでしょう。

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まとめ

国家資格には、資格を持っている方だけが独占的にその業務を行える「業務独占資格」と、資格を持っている方だけが職業名を名乗れる「名称独占資格」があり、理学療法士は名称独占資格に該当します。

名称独占資格は、業務独占資格のように特定の業務を独占して行うことはできませんが、「社会的信用の確保」「専門的な資格・業務の識別」「相手方との信頼関係の確立や被害の未然防止」などにおいて、大きな意義を持っています。

国家資格を持つ専門職として社会的な信頼を得ている理学療法士が、さらなる活躍を目指す場合は、転職を検討するのも1つの方法です。マイナビコメディカルでは、医療・福祉業界に精通したキャリアアドバイザーが、希望に合った求人をご紹介するのはもちろん、履歴書の添削や面接対策についてもしっかりとサポートいたします。転職をお考えの理学療法士の方は、ぜひマイナビコメディカルにご相談ください。

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※当記事は2023年5月時点の情報をもとに作成しています

監修者プロフィール

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