理学療法士国家試験の出題内容は?受験要件や難易度・勉強方法も解説

更新日 2023年11月13日 公開日 2023年11月13日

#国家試験 #情報収集 #転職検討/準備

理学療法士になるためには、養成施設で3年以上学んだ上で、毎年行われる理学療法士国家試験に合格する必要があります。問題はマークシート形式で、解剖学や生理学、運動学などの「一般問題」に加えて、リハビリ現場における事例や症例を問う「実地問題」が出題される点が特徴です。なお、2024年には試験内容が改定され、職業倫理や職場管理、教育、法規・関連制度を問う「理学療法管理学」が出題基準に追加されます。

この記事では理学療法士国家試験を取り上げ、過去の出題内容や受験要件、難易度、勉強方法について解説します。

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理学療法士国家試験の出題内容は?受験要件や難易度・勉強方法も解説

理学療法士の国家試験で出題される内容

理学療法士の国家試験では、「一般問題」と「実地問題」が出題されます。2022年に実施された第57回理学療法士資格試験では、一般問題を158点満点、実地問題を114点満点とし、総得点で164点以上、実地問題で40点以上正答することが合格基準となっていました(以上は、採点除外となった問題を除いた点数となります)。

〇出題内容
・一般問題:解剖学、生理学、運動学、病理学概論、臨床心理学、リハビリテーション医学(リハビリテーション概論を含む)、臨床医学大要(人間発達学を含む)、理学療法

・実地問題:運動学、臨床心理学、リハビリテーション医学、臨床医学大要(人間発達学を含む)、理学療法

○合格基準
一般問題を1問1点(158点満点)、実地問題を1問3点(114点満点)とし、次のすべてを満たした者を合格とする。

・総得点:164点以上/272点
・実地問題:40点以上/114点

(出典:厚生労働省「第57回理学療法士国家試験及び第57回作業療法士国家試験の合格発表について」/https://www.mhlw.go.jp/general/sikaku/successlist/2022/siken08_09/about.html

理学療法士国家試験の各設問は、厚生労働省が定めた基準に基づいて作成されています。2024年度からは、理学療法士養成カリキュラムの改正を踏まえて、出題基準が以下のように改訂される予定です。

【理学療法士国家試験の出題基準(2024年度以降)】

・人体の構造と機能及び心身の発達
・疾病と障害の成り立ち及び回復過程の促進
・保健医療福祉とリハビリテーションの理念

・基礎理学療法学
・理学療法管理学
・理学療法評価学
・理学療法治療学
・地域理学療法学
・臨床実習

(出典:厚生労働省「令和6年版理学療法士作業療法士国家試験出題基準について」/https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000163627_00001.html

主な変更点は、「理学療法管理学」が加わることです。理学療法管理学に該当する項目は、以下の通りとなります。

・職業倫理:コンプライアンス・法令遵守/プロフェッショナリズム/行動規範
・職場管理:情報管理/多職種連携/安全管理/労務管理、人事考課/労働衛生管理
・教育:理学療法教育の歴史/学習内容/キャリア支援/生涯学習/教育学
・法規・関連制度:社会保険制度

2024年度以降に理学療法士国家試験を受験する方は、令和6年版の出題基準にもとづいて作成された教材で勉強しましょう。

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一般問題

一般問題は160問出題され、マークシート形式で回答します。試験内容を知るため、実際に出題された設問を見てみましょう。

上腕骨骨幹部骨折で最も合併しやすい神経障害はどれか。

1.腋窩神経
2.筋皮神経
3.尺骨神経
4.正中神経
5.橈骨神経

(出典:厚生労働省「第57回理学療法士国家試験」/https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp220421-08a_01.pdf

正答は5です。上腕骨とは肩関節と肘関節の間をつなぐ骨で、骨幹部はその中央部分にあたります。橈骨神経は上腕骨に接触する形で走行しているため、折れた部分に圧迫されることで麻痺などの感覚障害が生じやすくなります。

(出典:日本骨折治療学会「上腕骨骨幹部骨折」/https://www.jsfr.jp/ippan/condition/ip28.html

(出典:整形外科学会「橈骨神経麻痺」/https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/radial_nerve_palsy.html

(参考書籍:「第53-57回 理学療法士・作業療法士国家試験問題 解答と解説 2023」/医歯薬出版)

感染予防の標準予防策standard precautionsについて正しいのはどれか。

1. 感染症患者のみに対して日常的に実施されるべき感染対策である。
2. 歩行練習中に患者が出血した場合は手袋をして対処する。
3. 屋外での歩行練習では感染予防対策は不要である。
4. 血圧測定を行う前の手指衛生は不要である。
5. マスクは N95 を使用する。

(出典:厚生労働省「第57回理学療法士国家試験」/https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp220421-08a_01.pdf

正答は2です。感染対策はすべての入院患者、すべての場所に適用されるものであり、1は「感染症患者のみ」とした点が誤り。3も屋外での対策を「不要」とした点が誤りです。日常業務における手指衛生のタイミングには、「患者に触れる前」や「患者に触れた後」「患者周囲のものに触れた後」なども含まれるため、4も正しくありません。5は、N95と限定されている点が誤りです。

(出典:日本環境感染学会「標準予防策(Standard precautions)」/http://www.kankyokansen.org/other/edu_pdf/3-3_02.pdf

(参考書籍:「第53-57回 理学療法士・作業療法士国家試験問題 解答と解説 2023」/医歯薬出版)

実地問題

実地問題は事例や症例について問われる設問で、トータルで40問出題されます。1問3点と配点が高く、総合得点とは別に合格基準点が設置されているため、十分に対策して臨みましょう。

第57回の理学療法士国家試験で実際に出題された実地問題を紹介します。

18 歳の女子。動作時の足底部の痛みを訴えた。足底腱膜炎の診断で超音波治療を行う。正しいのはどれか。

1. 周波数を 10 MHz とする。
2. 照射強度を 10 W/cm2 とする。
3. 照射時間率を 40 % 照射とする。
4. 疼痛を訴える場合は照射強度を下げる。
5. プローブを5cm 以上、皮膚から離して行う。

(出典:厚生労働省「第57回理学療法士国家試験」/https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp220421-08a_01.pdf

正答は3と4です。超音波治療で用いられる周波数は一般的に1MHzと3MHzの2種類なので、1は誤りです。照射強度は強度0.05~1W/cm2が適切であることから、2も不正解。超音波は空気中を伝播しないため、プローブは皮膚に沿って照射するのが適切。したがって、5も誤りです。

(出典:国立研究開発法人科学技術振興機構J-STAGE「超音波療法の基礎と臨床応用」/https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjeapt/24/1/24_16-9/_pdf

(参考書籍:「第53-57回 理学療法士・作業療法士国家試験問題 解答と解説 2023」/医歯薬出版)

6歳の女児。顕在性二分脊椎。機能残存レベルは第4腰髄である。歩行練習の実施方法で適切なのはどれか。

1. 靴型装具を使用する。
2. 短下肢装具と杖を併用する。
3. 短下肢装具のみを使用する。
4. 長下肢装具と杖を併用する。
5. 骨盤帯付き長下肢装具と歩行器を併用する。

(出典:厚生労働省「第57回理学療法士国家試験」/https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp220421-08b_01.pdf

正答は2と3です。第4腰髄残存では大腿四頭筋が正常に働くため、短下肢装具のみでの歩行練習が可能です。ただし、安全面や心理的負担を考慮するなら、短下肢装具と杖を併用するのが望ましいでしょう。なお、靴型装具はSharrardの分類におけるV群で使用するため、1は適切ではありません。5は第II群での適切な処置であり、本問では不適切です。

(出典:国立研究開発法人科学技術振興機構J-STAGE「二分脊椎患児の理学療法」/https://www.jstage.jst.go.jp/article/spinalsurg/28/2/28_128/_pdf

(出典:国立研究開発法人科学技術振興機構J-STAGE「二分脊椎児に対するリハビリテーションの現況」/https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/46/11/46_11_711/_pdf

(参考書籍:「第53-57回 理学療法士・作業療法士国家試験問題 解答と解説 2023」/医歯薬出版)

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理学療法士試験の受験要件

理学療法士の国家試験は、厚生労働省により以下の受験資格が定められています。

第十一条 理学療法士国家試験は、次の各号のいずれかに該当する者でなければ、受けることができない。
一 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第九十条第一項の規定により大学に入学することができる者(この号の規定により文部科学大臣の指定した学校が大学である場合において、当該大学が同条第二項の規定により当該大学に入学させた者を含む。)で、文部科学省令・厚生労働省令で定める基準に適合するものとして、文部科学大臣が指定した学校又は都道府県知事が指定した理学療法士養成施設において、三年以上理学療法士として必要な知識及び技能を修得したもの
二 作業療法士その他政令で定める者で、文部科学省令・厚生労働省令で定める基準に適合するものとして、文部科学大臣が指定した学校又は都道府県知事が指定した理学療法士養成施設において、二年以上理学療法に関する知識及び技能を修得したもの
三 外国の理学療法に関する学校若しくは養成施設を卒業し、又は外国で理学療法士の免許に相当する免許を受けた者で、厚生労働大臣が前二号に掲げる者と同等以上の知識及び技能を有すると認定したもの

(引用:e-gov法令検索「理学療法士及び作業療法士法(昭和四十年法律第百三十七号)」/https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=340AC0000000137

つまり、受験資格を得るためには、以下のいずれかの条件を満たすことが必要となるわけです。

・文部科学省大臣指定の学校や都道府県知事指定の養成施設で、3年以上理学療法の課程を学んでいる
・作業療法士の免許を持ち、指定の学校や養成施設で2年以上理学療法の課程を学んでいる
・外国で理学療法に関する養成校を卒業している
・外国で理学療法士に相当する免許を交付されている

通常は、大学や専門学校などの指定の学校・養成施設で3年以上学ぶ必要がありますが、作業療法士の資格を持っていれば、2年間の履修で受験資格が得られます。

外国の理学療法士養成施設を卒業している方や、理学療法士に相当する免許を取得した方にも受験資格があります。ただし、その場合は受験前に本人が書類申請を行い、厚生労働省大臣に受験資格があると認定されることが必要です。

理学療法士試験の概要

理学療法士の試験日は、例年2月下旬に実施されます。試験開催地は、北海道・宮城県・東京都・愛知県・大阪府・香川県・福岡県・沖縄県の全国8か所です。

当日の試験時間は午前と午後に分かれます。試験の概要は以下の通りです。

出題数 試験方法 時間
午前 ・80問の一般問題
・20問の実地問題
筆記試験(マークシート形式)※ 2時間40分
午後 ・80問の一般問題
・20問の実地問題
筆記試験(マークシート形式)※

2時間40分

※重度視力障害者の受験生は口述試験及び実技試験を実施

(出典:厚生労働省「第58回理学療法士国家試験受験者留意事項」/https://www.mhlw.go.jp/content/001048798.pdf

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理学療法士試験の合格率・難易度

理学療法士試験の出願者数や受験者数、合格率は以下の通りです。

出願者 受験者数 合格者数 合格率
第53回理学療法士国家試験 12,691人 12,148人 9,885人 81.4%
第54回理学療法士国家試験 13,253人 12,605人 10,809人 85.8%
第55回理学療法士国家試験 12,831人 12,283人 10,608人 86.4%
第56回理学療法士国家試験 12,503人 11,946人 9,434人 79.0%
第57回理学療法士国家試験 13,377人 12,685人 10,096人 79.6%

(出典:厚生労働省「第53回理学療法士国家試験及び第53回作業療法士国家試験の合格発表について」/https://www.mhlw.go.jp/general/sikaku/successlist/2018/siken08_09/about.html

(出典:厚生労働省「第54回理学療法士国家試験及び第54回作業療法士国家試験の合格発表について」/https://www.mhlw.go.jp/general/sikaku/successlist/2019/siken08_09/about.html

(出典:厚生労働省「第55回理学療法士国家試験及び第55回作業療法士国家試験の合格発表について」/https://www.mhlw.go.jp/general/sikaku/successlist/2020/siken08_09/about.html

(出典:厚生労働省「第56回理学療法士国家試験及び第54回作業療法士国家試験の合格発表について」/https://www.mhlw.go.jp/general/sikaku/successlist/2021/siken08_09/about.html

(出典:厚生労働省「第57回理学療法士国家試験及び第54回作業療法士国家試験の合格発表について」/https://www.mhlw.go.jp/general/sikaku/successlist/2022/siken08_09/about.html

合格率は例年80%前後と高い割合で推移しており、なかには85%を超える回もあります。合格状況だけを見ると比較的やさしい試験のようにも思えますが、実際には難易度が低いわけではありません。理学療法士試験は出題範囲が広いため、養成校で学んだ内容をしっかり身に付けておく必要があるでしょう。

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理学療法士試験を勉強するときの注意点

理学療法士試験に合格するには、早い時期から試験対策を講じることが重要です。ここでは、試験勉強で押さえておきたい注意点について解説します。

過去問を解いて反復練習をする

理学療法士試験は、出題範囲が広い上に問題数も多いので、スムーズに解けるようになるには出題傾向に慣れる必要があります。まずは、10年分を目安として過去問に取り組みましょう。

また、過去問は解きっぱなしにせず、間違えた問題は必ず正答できるように解説を読み込むことが大切です。過去問をすべて解き終えたら最初からやり直し、苦手な分野を克服しましょう。問題と解答、解説を暗記できるほど、繰り返し学習することがポイントです。

実地問題は映像で考える

実地問題は、症例を挙げて最適な選択肢を選ばせる問題です。そのため、解くときは具体的な映像をイメージして考えるとよいでしょう。

試験勉強の際は、インターネットで映像を検索・確認したり、実習における現場の様子を思い出したりしながら、学習を進めるのがおすすめです。ビジュアルで覚えると、記憶に定着しやすくなるため、本番でも重要な内容を思い出しやすくなるでしょう。

グループワークを活用する

「1人だと集中が続かない」という方は、友人とグループワークを行い、お互いの苦手な部分をカバーしあうのも効果的です。お互いの分からないポイントを教えあうことで、質問する側は疑問が解消でき、教える側は知識が定着するでしょう。お互いの頑張りが刺激になるため、モチベーションの維持にも有効です。

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まとめ

理学療法士の国家試験では、一般問題160問、実地問題40問の合計200問がマークシート形式で出題され、実地問題で約35%、総得点で約60%の得点がおおよその合格基準です。

理学療法士試験の合格率は、例年80%前後となっています。ただし、難易度が低いわけではなく出題範囲も広いため、早くから対策を行うのがおすすめです。合格のためには、とにかく過去問を反復練習しましょう。グループワークで勉強するのも効果的です。

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※当記事は2023年5月時点の情報をもとに作成しています

監修者プロフィール

マイナビコメディカル編集部

 

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