理学療法士は精神科で働ける?役割や仕事内容を解説

更新日 2022年12月20日 公開日 2022年12月26日

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理学療法士のなかには、「精神科病院で働いてみたいけれど、精神科病院で働く職種は作業療法士」というイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。事実、精神科病院に勤務するリハビリ職の数は、作業療法士のほうが多い傾向にあります。しかし、理学療法士の求人がまったくないわけではありません。競争率は高くなりますが、精神領域に興味がある理学療法士の方は、精神科病院への転職にチャレンジしてみるのも良いでしょう。

当記事では、精神科病院の施設形態や理学療法士の人数、求人状況、給与、精神科病院で働く場合の仕事内容などについて紹介します。記事を読むことで、精神科病院への転職を検討する際の疑問、不安が減らせれば幸いです。

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理学療法士は精神科で働ける?役割や仕事内容を解説

理学療法士は精神科病院で働ける?

理学療法士が精神科病院で働くことは可能です。近年では、精神疾患が「5大疾病」に加えられ、精神疾患のある患者さまに理学療法士が対応する機会も増えています。精神領域に興味があるなら、精神科病院での勤務を考えるのも1つの方法でしょう。

以下では、精神科病院の概要や、精神科病院で働く理学療法士の実態について解説します。

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精神科病院の施設形態

精神科病院では、精神疾患のある患者さまに対して、心理的問題の解消や社会性の回復などを目指して治療を行います。治療方法は、精神療法や薬物療法、生活指導、カウンセリングなどさまざまで、医師や薬剤師、作業療法士、臨床心理士など、各専門職がチームとなって治療にあたります。

(出典:公益社団法人日本精神科病院協会「精神科病院医療体制の解説」/https://www.nisseikyo.or.jp/guide/psychiatry02.php

厚生労働省の調査によると、日本にある精神科病院は1,059施設(2020年10月時点)となっており、一般病院の15%程度です。

(出典:厚生労働省「令和2(2020)年医療施設(静態・動態)調査(確定数)・病院報告の概況」/https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/20/index.html

心の病気を診る診療科には、「精神科」と「心療内科」の2つがあります。両者の違いを簡単に説明すると、精神科は統合失調症やアルコール依存症・認知症など、「精神面」に症状が出る疾患を治療する科目。心療内科は心身症、消化器心身症など、「身体面」に心因性の症状が出る疾患を治療する科目と言えます。症状の原因はどちらも「心」ですが、症状のあらわれ方で診療科が変わることに注意しましょう。

理学療法士は、精神科と心療内科のどちらで働く場合でも、身体機能の回復を目指して治療・支援することになります。それぞれの診療科の役割を理解した上で、業務にあたることを心がけましょう。

精神科病院で働く理学療法士はどのくらいいる?

日本精神科病院協会の「精神科医療ガイド」に書かれた「精神科病院医療体制の解説」を見ると、リハビリなどの支援プログラムを担当する専門職として、作業療法士の名称が記されています。このことからもわかる通り、精神科病院で働くリハビリ職は、理学療法士よりも作業療法士のほうが一般的です。

(出典:公益社団法人日本精神科病院協会「精神科病院医療体制の解説」/https://www.nisseikyo.or.jp/guide/psychiatry02.php

また、厚生労働省の調査によると、精神科病院で働く作業療法士は約6,958人、理学療法士は約251人となっており、統計的に見ても精神科病院で働く理学療法士は、まだまだ少ないことが分かります。

(出典:厚生労働省「令和2(2020)年医療施設(静態・動態)調査(確定数)・病院報告の概況」/https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/20/index.html

しかし、近年の精神科病院では高齢の患者さまが増加しており、認知症などで身体機能の低下が起こりやすくなっている方も多く見られます。そのため、座る、立つ、歩く、起き上がる、寝返りをうつといった運動機能の回復やADLの向上を支援する理学療法士の需要は、今後増えていくでしょう。

【関連リンク】理学療法士(PT)とは?
仕事内容や作業療法士との違いについて

精神科病院での理学療法士の求人状況は?

マイナビコメディカルに掲載されている求人情報を確認したところ、「精神科病院」と「理学療法士」の条件で検索した際の公開求人数は81件(2022年7月19日時点)でした。地域別に見ると、東京や大阪などの都市部でも求人数は数件であり、精神科病院の求人数は決して多くはありません。

求人数が少ないと倍率も上がるため、応募書類や採用面接では、自分の経験やスキルをしっかりアピールする必要があるでしょう。

「自分の経験・スキルでは、精神科病院への転職が難しそう」と感じる場合は、精神科のある総合病院などに勤務して、精神領域について学ぶのも一案です。精神科を含む総合病院の場合、求人数も多いため選択肢が広がるでしょう。

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精神科病院で働く理学療法士の給与は?

精神科病院で働く理学療法士の給与が気になる方もいるでしょう。以下の表は、厚生労働省の調査をもとにした理学療法士の平均給与と、マイナビコメディカルに掲載されている「精神科で働く理学療法士」の平均給与を示したものです。

ただし、厚生労働省のデータは、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士を含んだ平均値となります。

●理学療法士の給与状況

理学療法士全体(※1) 約427万円
精神科病院で働く理学療法士(※2) 約300万~450万円

(※1出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査 結果の概況」/https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2021/index.html

(※2出典:マイナビコメディカル/https://co-medical.mynavi.jp/search/30300140/ar/st/wk/ep/cf/fe/%E7%B2%BE%E7%A5%9E%E7%A7%91%E7%97%85%E9%99%A2/

マイナビコメディカルに掲載されたモデル月給を見ると、諸手当込みで22万~32万円程度が多い傾向にあります。また、賞与は年2回で2~4か月分の支給、昇給は年1回のところがほとんどでした。病院にもよりますが、交通費や住宅手当、資格手当を支給してもらえるケースもあります。

なお、転職してすぐは、全体平均より給与が下がる可能性もありますが、経験を重ねることで平均年収と同じか、それ以上の年収を得ることが期待できるでしょう。

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高収入を狙うためにできること

精神科病院で働く理学療法士の仕事

精神科病院の患者さまには、これまで精神機能への介入が重視されていました。しかし近年は、向精神薬の副作用や長期入院による寝たきり状態のケアなどのため、身体的介入が必要なケースが増えています。

そうしたことから、精神科病院においては作業療法士だけでは行えない身体的介入を行うのが、理学療法士の主な役割となります。以下では、精神科病院で理学療法士が必要になるケースと、具体的な仕事内容について紹介します。

精神科病院で理学療法士が必要になるケースは?

精神科病院で理学療法士が必要となるケースには、主に以下の3つがあります。

・向精神薬の副作用
統合失調症と診断された患者さまには、薬物療法、休養・環境調整、心理社会療法などの治療が行われますが、薬物療法で用いられる向精神薬には、身体が震えたり、筋肉が固まって動かしにくくなったりする副作用のリスクがあります。副作用によって、患者さまが食事や排せつなどの動作に支障をきたした場合には、理学療法士が身体的介入を行いサポートします。

・廃用症候群
長期にわたって入院が続くと、身体機能が低下して廃用症候群になりかねません。また、筋肉や骨、臓器などの運動能力が低下すると、筋萎縮や誤嚥性肺炎といった、さまざまな障害を引き起こすリスクが高まります。そのため理学療法士は、リハビリなどを通じて身体機能の維持・向上をサポートすることが大切です。寝たきりの患者さまに対しては、床ずれ防止のための体位変換なども行います。

・身体合併症の発症
精神科病院では、精神疾患を持つ患者さまが他の疾患を発症する「身体合併症」のケースも多く見られます。統合失調症と多発外傷を患うケースや、うつ病と骨折を患うケースなどは、その一例と言えるでしょう。理学療法士はそうした患者さまに対して、日常的動作の回復を目指したADL訓練、認知機能の悪化を抑える認知症リハビリテーション、歩行訓練などを行います。

精神科で働く理学療法士の仕事内容は?

精神科における理学療法士の仕事内容は、精神疾患によって身体機能が低下した患者さまや、身体合併症を発症した患者さまにリハビリを行い、サポートすることです。患者さまによって疾患の程度やできる動作が異なるため、理学療法士は患者さまが持つ本来の能力を見極めた上で、訓練内容を決める必要があります。

リハビリの際は、患者さまと信頼関係を築き、疾患の特徴や回復状況も考慮しながら、本人のペースでゆっくりと行うことが大切です。失敗が続くとリハビリのモチベーションが維持できなかったり、落ち込んだりする場合もあるため、成功体験を少しずつ積めるような工夫も必要でしょう。

また、精神疾患によっては、理学療法士が指示する内容をうまく理解できなかったり、動作に反映できなかったりするケースもあります。そのため、患者さまの理解力やどの程度の動作まで行えるかによって、適宜リハビリ内容を修正することも大切です。

【関連リンク】理学療法士が病院に勤務するメリット・デメリット

まとめ

精神科病院では、身体機能の低下が起こる患者さまが増えており、精神的介入だけでなく、身体的介入が必要とされる場面も多く見られます。精神科病院で働く理学療法士の数は、まだまだ少ないものの、今後は徐々に需要が伸びていくでしょう。身体機能の改善には、患者さま1人ひとりと向き合い、それぞれに適したリハビリ内容を考えることが大切です。

精神科病院で理学療法士として働きたい方は、ぜひマイナビコメディカルをご利用ください。キャリアアドバイザーが理学療法士のみなさまに親身に寄り添い、希望に沿った職場をお探しいたします。応募書類の添削や面接等の日程調整といったサポートも行っておりますので、お気軽にご相談ください。

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※当記事は2022年8月時点の情報をもとに作成しています

監修者プロフィール

マイナビコメディカル編集部

 

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