理学療法士になると後悔する理由とは?後悔する前にできることも解説
理学療法士は、病気やけがなどで身体に障害がある方、あるいは障害の発生が予見される方に対して、自立した日常生活を送れるようにサポートするリハビリの専門家です。急速な高齢化が進むなか、そのニーズは年々高まっており、数多くの患者さまの役に立てる理学療法士は、大きなやりがいと魅力のある仕事と言えるでしょう。
ただし、理学療法士として働くなかで「思っていた仕事と違う」と感じている方や、後悔を感じている方はゼロではありません。
この記事では「理学療法士になると後悔する」と言われる理由と、後悔する前にできることについて詳しく紹介します。理学療法士として活躍している方や、現在理学療法士を目指している方は、ぜひご覧ください。
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目次
「理学療法士になると後悔する」と言われる理由6つ
国家資格である理学療法士は、病院をはじめとする医療機関や介護福祉施設、障害者福祉施設など、幅広い職場で活躍できます。また、高齢化が進行する現在、身体機能回復のプロフェッショナルである理学療法士の需要は、ますます高まると言われています。
ただし、前述したように、理学療法士として働くなかで後悔を感じている方はゼロではありません。そのため、「理学療法士になると後悔する」といった声を聞くこともあります。
ここでは、「理学療法士になると後悔する」と言われる理由を6つ解説しましょう。
給料が安い
「理学療法士になると後悔する」と言われる理由の1つに、理学療法士の給料が他の医療系国家資格よりも低めの水準であることが挙げられます。
理学療法士と他の医療系資格の平均年収は、以下の通りです。
職種 | 平均年収 |
---|---|
理学療法士 (作業療法士,言語聴覚士,視能訓練士を含む) |
約427万円 |
看護師 | 約499万円 |
保健師 | 約481万円 |
臨床検査技師 | 約496万円 |
薬剤師 | 約581万円 |
日本の民間給与 | 約443万円 |
(出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」/https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html)
(出典:国税庁「令和3年分 民間給与実態統計調査」/https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan/gaiyou/2021.htm)
厚生労働省の調査によると、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士を含む理学療法士の平均年収は約427万円となっており、他の医療資格者に比べて50万円以上低いことがわかります。特に、薬剤師の平均年収である約581万円と比較すると、150万円以上もの差があります。また、理学療法士の平均年収は、日本全体の平均年収と比べても下回っている状況です。
以上のことから、理学療法士のなかには「一般企業で働いたほうが多くの収入が得られるのでは?」と考えて、転職を選ぶ方もいらっしゃいます。
大幅な昇給が見込みにくい
理学療法士がもたらす利益は、リハビリで得られる診療報酬(医療機関が行った診療や検査、治療などの医療行為の対価として公的医療保険から支払われる報酬)にもとづいた点数によって決まります。また、診療報酬は一律で点数が決まっており、経験年数やスキルの違いによって差が出ることはありません。
そうした背景から、理学療法士は比較的昇給が少ない職種だとされています。以下は、年代別の理学療法士の給与です。
年代 | 平均年収 |
---|---|
20~24歳 | 約329万円 |
25~29歳 | 約380万円 |
30~34歳 | 約414万円 |
35~39歳 | 約437万円 |
40~44歳 | 約487万円 |
45~49歳 | 約516万円 |
50~54歳 | 約539万円 |
55~59歳 | 約575万円 |
60~64歳 | 約459万円 |
65~69歳 | 約357万円 |
70歳~ | 約330万円 |
(出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査 結果の概況」/https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2021/index.html)
とはいえ、経験年数やスキルがまったく給料に反映されないわけではありません。理学療法士が年収で後悔しないためには、常にスキルを磨き続けることが重要でしょう。
残業時間が多い
日本医療労働組合連合会の調査によると、リハビリテーション職の66.5%が始業時間前、60.5%が終業後の時間外労働を行っているという結果が出ています。
また、リハビリテーション職の23.5%、介護職員の21.6%が、「残業代を請求できない雰囲気がある」と回答しています。こうしたデータを踏まえると、理学療法士の職場のなかには労働環境が悪いところも一定数存在するようです。
ただし、近年は働き方改革によって、医療従事者の労働環境が改善されつつあります。2017年には27.2%だった時間外労働への給与全額支払い率も、現在は46.5%と大きく向上しており、今後も改善が見込めるでしょう。
(出典:日本医療労働組合連合会「日本医労連「2021年秋・退勤時間調査」結果の概要」/http://irouren.or.jp/research/5216e0735789cd27928b7bf3d0092ee88895d574.pdf)
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職場によってはプライベートな時間が取りにくい
理学療法士は高度な技術・知識を要する専門職のため、日々の自己研鑽が欠かせません。また、理学療法士は関連分野の知識や国内外の事例、医療を取り巻く課題などにも常に注意を払い、情報収集や分析を行う必要があります。
そのため、理学療法士のなかには、休日を返上して研修会に参加したり、夜遅くまで実技練習をしたりする方も少なくありません。
そうした生活が続いて、仕事とプライベートの境界線が不明瞭になると、心身が疲弊して後悔につながることもあるでしょう。
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職場によっては研修が自費負担になる
理学療法士が働く施設では、職員にスキルアップしてもらえるように、研修にかかる費用を職場側が負担するのが一般的です。しかし、研修費を職員の自費負担としている職場はゼロではありません。
「理学療法士になると後悔する」と言われる直接的な要因ではないものの、負担が続けばモチベーションの低下につながりかねないことも事実です。なかには、こうした負担を軽減するために転職を考える方もいるでしょう。
理学療法士の供給が需要を超えてしまう
厚生労働省の調査によると、2040年に理学療法士の供給は需要の1.5倍になると予測されています。
実際、2002年に約3万4,000人だった理学療法士の就業者数が、2017年には10万5,000人まで増加。需要と供給のバランスが崩れることで就職の難易度が高まるのではないかと懸念されています。
(出典:厚生労働省「医療従事者の需給に関する検討会」/https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000132674_00001.html)
ただし、急速な高齢化が進むなかで、リハビリテーション人材へのニーズがなくなることは考えられません。次に紹介する「理学療法士として後悔する前にできること」を参考に、数十年後も求められる理学療法士を目指しましょう。
高収入を狙うためにできること
理学療法士として後悔する前にできること
誰しも、理学療法士として働くなかで後悔を感じる場面はあるでしょう。しかし、ネガティブな気持ちのまま働き続けると、日々の仕事が成長や学びにつながらず、自分の時間を無駄にしてしまう可能性があります。
そこで、ここからは後悔する前にできる3つの行動を紹介します。
職場が合わないと感じたら転職する
職場の人間関係や社風が合わないと感じたら、転職するのも1つの方法です。自分が希望する条件に合った職場に転職できれば、多くの悩みを解決できるでしょう。
ただし、安易な転職活動は失敗のもと。理学療法士が転職を成功させるためには、客観的な視点で自分を評価することと、転職の方向性(転職先に求める条件)を固めておくことが大事です。まずは、給与、研修制度、残業時間など、譲れないポイントを明確にすることからはじめましょう。
なお、給料を重視する際は、幅広い勤務先を比較することで、希望に近い職場を見付けやすくなります。医療機関や介護福祉施設だけでなく、製薬会社や医療機器メーカーなどにも目を向けてみるとよいでしょう。
関連資格を取得する
認定理学療法士や専門理学療法士といった関連資格を取得すれば、職場でのキャリアアップにつながるほか、転職で有利に働く可能性もあります。
以下では、認定療法士と専門療法士の概要を紹介します。
●認定療法士
認定理学療法士は理学療法士の専門性を高め、質の高い理学療法を提供することを目的とした資格です。認定理学療法士の資格は、脳卒中、神経筋障害、脊髄障害、発達障害など22分野に細かく分けられており、分野ごとに認定制度が設定されています。
認定理学療法士になるには、指定されたカリキュラムを受講し、日本理学療法学術研修大会に参加した上で認定試験に合格する必要があります。
●専門理学療法士
専門理学療法士は神経理学療法、小児理学療法、運動器理学療法など13の専門分野から、1つ以上の分野において高い学術的知識を身に付けていることを証明する資格です。
専門理学療法士になるには、指定されたカリキュラムの受講、学会への参加、査読付き原著論文の発表といったステップを終えた後、口頭試問に合格する必要があります。
(出典:公益社団法人日本理学療法士協会「認定・専門理学療法士制度」/https://www.japanpt.or.jp/pt/lifelonglearning/new/certif-specialized/)
理学療法士の資格を生かせる異業種へ転職する
理学療法士の資格は、保育園やスポーツ分野、行政機関、一般企業でも生かすことができます。
例えば、スポーツトレーナーとして働く場合、選手が最大限のパフォーマンスを発揮できるように、トレーニング指導、コンディショニング調整、リハビリなどを行うのが主な業務となります。求人数はそれほど多くありませんが、選手から必要とされるためやりがいは大きいでしょう。
また、行政機関である保健所や市役所(健康企画課、介護福祉課など)で働けば、健康推進事業の企画立案や予算の算定などの幅広い役割を担うことが可能です。医療機関や介護福祉施設での働き方が合っていないと感じる方は、理学療法士資格を生かせる異業種への転職を検討してみてはいかがでしょうか。
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まとめ
「理学療法士になると後悔する」と言われる主な理由として、給料が安い、昇給が見込みにくい、残業時間が多い、プライベートな時間が取りにくいなどが挙げられます。加えて、2040年に理学療法士の供給が需要の1.5倍になると予測されていることも、後悔する理由の1つと言えるでしょう。
ただし、高齢化が進むなかで、リハビリテーション人材へのニーズがなくなることは考えられません。また、医療・介護業界の働き方改革により、少しずつ待遇改善が進んでいることも事実です。現在の職場が「合わない」と感じる場合は、自分が希望する条件に合った職場に転職することで多くの悩みを解決できるでしょう。
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※当記事は2023年5月時点の情報をもとに作成しています。
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