理学療法士におすすめの民間資格とは?取得のメリットやポイントもご紹介
公開日:2025.01.27
文:内藤 かいせい(理学療法士)
理学療法士の仕事の幅を広げるためには、どのような民間資格の取得がおすすめか知りたい方はいませんか?理学療法士に関係する資格は民間・公的を含めて多くの種類があり、それぞれ取得方法が異なります。
この記事では、おもな資格の種類や取得するメリットをご紹介します。自分の目的にあった資格を取得することで、理学療法士のキャリアが広がるきっかけとなるでしょう。
理学療法士が民間資格を取得するメリット
理学療法士が民間資格を取得すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、具体的なメリットについて解説します。
専門性の獲得
資格の取得によって、特定分野の専門性を高められるメリットがあります。専門性を獲得できれば、患者さんに対して質の高いリハビリの提供につながります。また、チーム医療のなかで重要な役割を担えるようになれば、理学療法士としての価値も高まるでしょう。
このように、専門性の獲得は患者さんの信頼を得るだけでなく、医療機関内での評価を高めるきっかけとなります。
キャリアアップ
資格の取得は、理学療法士のキャリアアップのきっかけにもなります。たとえば、介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格があれば、介護保険制度に関係する職場で働くことが可能です。スポーツ関連の資格を取得すれば、プロスポーツチームやフィットネスクラブでも活躍できるでしょう。
民間資格は理学療法士のみならず、新たな分野でのキャリアアップも実現できます。
モチベーションの向上
資格の取得は、仕事に対するモチベーションの向上にもなるでしょう。資格取得によって新しい知識やスキルを習得すれば、今までとは異なる視点で業務が行えます。その結果、質の高いアプローチが可能となり、仕事への意欲も高まります。
理学療法士として長く活躍するには、継続的な学習と自己研鑽は重要な要素です。資格取得は、スキルアップするためのよいきっかけとなるでしょう。
理学療法士におすすめの民間資格・公的資格
理学療法士に関係する民間資格・公的資格は、非常に数多くあります。ここでは、そのなかでも代表的な資格についてご紹介します。
認定理学療法士
認定理学療法士とは、より専門性の高いスキルを保有している理学療法士であることを証明する資格です。理学療法士の上位資格のような位置付けにあり、日本理学療法士協会によって設けられています。認定理学療法士を取得するための流れとしては、以下のとおりです。
● 指定されたカリキュラムの受講、学術研修大会の参加をする
● 認定試験に合格する
この資格を取得することで、専門的な知識と技術を持つ理学療法士として認識されるため、患者さんやスタッフからの信頼も高まりやすくなります。また、転職や給与面でメリットとなる場合もあるでしょう。
専門理学療法士
専門理学療法士は、認定理学療法士からさらに高度な専門性を保有していることを証明する資格です。こちらも日本理学療法士協会による制度で、認定理学療法士の上位資格という位置付けです。専門理学療法士になるための流れは、以下があげられます。
2. 指定されたカリキュラムの受講、学術大会の参加をする
3. 学術大会で発表をする
4. 論文を執筆する
5. 口頭試問に合格する
このように、認定理学療法士よりも取得難易度は高い傾向にあります。しかし、その分専門分野のエキスパートとして認められるようになるので、認定理学療法士よりも恩恵を受けやすくなるでしょう。
心臓リハビリテーション指導士
心臓リハビリテーション指導士とは、日本心臓リハビリテーション学会によって設けられた資格です。循環器疾患の患者さんに対するリハビリや、ケアを行うための知識や技術が備わっていることを証明するものです。心臓リハビリテーション指導士になるための条件としては、以下があげられます。
● 理学療法士や医師、看護師などの指定された資格を保有している
● 日本心臓リハビリテーション学会の会員を2年以上継続している
● 心臓リハビリ指導の実地経験が1年以上、または心臓リハビリ研修制度で受験資格認定証を交付されている
循環器疾患の患者さんに対してリハビリを行うことが多い方は、こちらの取得を検討してみましょう。
認知症ケア専門士
認知症ケア専門士とは、認知症患者へのケアに関する知識と技術が備わっていることを証明する資格です。これは、日本認知症ケア学会が設けている民間資格です。
この資格を取得するためには、3年以上の認知症ケアの実務経験が求められます。そのうえで、認定試験(一次・二次)に合格することで資格を取得できます。認知症ケア専門士には、上位資格の「認知症ケア上級専門士」があるので、興味がある方はこちらの資格の取得も検討してみましょう。
呼吸療法認定士
呼吸療法認定士とは、呼吸療法に関する知識・技術のスキルアップを目的に設けられた資格です。以下の3学会が合同で認定しており、正式名称は「3学会合同呼吸療法認定士」です。
● 日本呼吸器学会
● 日本麻酔科学会
呼吸療法認定士の資格を取得するためには、以下の条件が必要です。
2. 指定された学会や講習会に一定回数出席している
3. (1)(2)を満たしたうえで、認定講習会を受講する
これらの条件を満たしたのち、認定試験に合格することで資格を取得できます。
福祉住環境コーディネーター
福祉住環境コーディネーターとは、住環境整備に関する専門知識を持つことを証明する資格です。理学療法士としての知識と組み合わせることで、より実践的な住環境整備の提案ができます。
福祉住環境コーディネーターは東京商工会議所が認定しており、1級から3級まであります。
受験資格に制限や条件はなく、誰でも受験が可能です。もっとも階級が高い1級からの受験もできますが、基本的に2・3級から取得するのが一般的です。試験は年2回実施され、多肢選択式の問題で出題されます。
NST(栄養サポートチーム)専門療法士
NST(栄養サポートチーム)専門療法士とは、栄養に関する高い知識や技術を保有していることを証明する資格です。患者さんの栄養状態を改善し、QOL(生活の質)の向上を目指すチーム医療において、役立つ資格といえます。
日本栄養治療学会が認定しているNST専門療法士になるには、以下の条件が必要です。
2. 栄養管理士や理学療法士などの国家資格を取得して3年以上
3. 医療・福祉施設に勤務し、栄養サポートに関する業務に従事した経験がある
4. JSPEN学術集会に1回(10単位)以上参加している
5. NST専門療法士受験必須セミナーに受講している
6. (4)(5)を含む、合計30単位を取得している
7. JSPEN認定教育施設での40時間の実地修練を修了している
これらの条件を満たしたうえで、認定試験に合格することで資格を取得できます。
介護支援専門員(ケアマネジャー)
介護支援専門員(以下:ケアマネジャー)とは、要介護者や要支援者の生活をサポートし、適切な介護サービスを提供する資格です。ケアマネジャーは、介護保険サービスを利用するために必要なケアプランの作成を担う役割があります。そのため、介護サービスを利用するうえで重要となる資格です。
ケアマネジャーの資格を取得するには、まず理学療法士や介護福祉士などの資格を保有したうえで、5年以上の実務経験が求められます。その後の流れは、以下のとおりです。
2. 介護医園専門員実務研修を受ける
3. 資格が交付される
介護分野でのキャリアアップを考えている方は、ぜひケアマネジャーの資格取得を検討してみましょう。
スポーツ関係の資格
スポーツ関係の資格には、さまざまな種類があります。代表的な資格としては、以下のとおりです。
● JATAC-ATC(ジャパン・アスレティック・トレーナー)
● NSCA-CPT(NSCA認定パーソナルトレーナー)
● CSCS(認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト)
これらの資格取得には、講習の受講や認定試験の合格が必要です。このような資格を取得することで、スポーツ分野でのキャリアを築きやすくなります。スポーツ分野に携わっている、または興味がある方は、ぜひ資格の取得を検討してみてください。
理学療法士が民間資格・公的資格を取得する際のポイント
理学療法士が資格を取得する際のポイントとして、明確な目的を持ちつつ、計画的に取り組むことです。目的を明確にすることで、取得する資格を十分に活用できます。キャリアアップしたいのか、新しい分野に挑戦したいのかなど、自分の将来のビジョンにあわせて資格を選ぶことが重要です。
また、多くの資格は簡単に取得できるものではありません。そのため、勉強時間の確保や試験日程の把握など、しっかりとした準備が必要です。資格の取得を目指す際は、このようなポイントをおさえておきましょう。
民間資格の取得で理学療法士としてスキルアップしよう
理学療法士が民間資格を取得することで、キャリアアップや専門性の獲得など、さまざまなメリットを得られます。理学療法士に関係する資格が非常に多いため、自分の目的に適した種類を選択することが重要です。
また、資格によっては複雑な要件のものもあるので、計画的に取得を進めていきましょう。ぜひ今回の記事を参考にして、資格取得を目指してみてください。
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内藤 かいせい
理学療法士として回復期病院と訪問看護サービスに従事し、脳血管疾患や運動器疾患などの幅広い症例を経験する。リハビリで患者をサポートするとともに、全国規模の学会発表にも参加。 新しい業界にチャレンジしたいと決意し、2021年に独立する。現在はWebライターとして活動中。これまでの理学療法士の経験を活かして、医療や健康分野で多くの執筆・監修に携わっている。
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