理学療法士の初任給はいくら?就職先での違いと年収アップのポイント
公開日:2021.05.26 更新日:2024.09.11
文:rana(理学療法士)
理学療法士が就職先を検討する際、「給料はいくらもらえるのだろう」、「将来的に基本給が増えるのだろうか」といった疑問を持つ人も多いかもしれません。
今回は新卒理学療法士の初任給事情について詳しく解説するとともに、将来性や収入アップのポイントについてお伝えします。
目次
理学療法士の初任給の平均は約25万円
理学療法士の初任給の相場は、一般の社会人と比べてどのくらいになるのでしょうか。
厚生労働省が発表する「賃金構造基本統計調査(令和5年)」を参考に、理学療法士と一般社会人の給与を比較してみましょう。
20~24歳の 所定内給与額※1 |
20~24歳の 平均年収※2 |
|
---|---|---|
理学療法士(男)※3 | 24万7100円 | 298万7900円 |
理学療法士(女)※3 | 23万8500万円 | 289万8500円 |
一般 高校卒 ※4 | 21万6200円 | – |
一般 大学卒 ※4 | 23万9700円 | – |
一般 大学卒 ※4 | 23万9700円 | – |
※1:経験年数0年目
※2:経験年数0年目かつ20~24歳の「所定内給与額(残業手当などを含まない給与)」12カ月分を乗算し、「年間賞与その他の特別給与額」と合算したもの
※3:理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、機能訓練士の合算項目
※4 : 新規学卒者の学歴別にみた賃金
このデータによると20~24歳の理学療法士が初年度に受け取る初任給は約24万円、平均年収(男女計)は約295万円となります。同資料における一般社会人の学歴別のデータと比較すると、優遇されているといえるでしょう。
他の医療・福祉職と比較した場合
理学療法士の初任給の相場は他の医療・福祉職の初任給と比べてどうなるのでしょう。
厚生労働省が発表する「賃金構造基本統計調査(令和5年)」を参考に、理学療法士と一般社会人の給与を比較してみましょう。
20~24歳の 所定内給与額※1 |
20~24歳の 平均年収※2 |
|
---|---|---|
医師 | 37万9500円 | 457万3800円 |
薬剤師 | 27万8400円 | 334万2000円 |
保健師 | 25万3000円 | 312万2000円 |
助産師 | 26万2800円 | 329万3700円 |
看護師 | 25万3000万円 | 312万9300円 |
准看護師 | 19万8000円 | 237万6000円 |
放射線技師 | 22万6500円 | 278万7100円 |
臨床検査技師 | 21万8300円 | 263万3100円 |
歯科衛生士 | 22万6900円 | 276万900円 |
歯科技工士 | 20万2900円 | 243万4800円 |
栄養士 | 20万4000円 | 250万8800円 |
介護支援専門員 | 18万9800円 | 250万3200円 |
その他保険医療従事者 | 21万5000円 | 258万6700円 |
※1:経験年数0年目 かつ20~24歳の所定内給与額
※2:年齢別経験年数0年目かつ20~24歳の「所定内給与額」12カ月分を乗算し、「年間賞与その他の特別給与額」と合算したもの
医療職のなかで、最も初任給が高いのが医師で、次点の薬剤師と比べても約10万円の差があります。一方で、高収入のイメージがある看護師の初任給は約25万円で、理学療法士との大きな差はありませんでした。
医師や他の医療・福祉職と比較した場合、理学療法士の初任給は決して低い値ではないことが伺えます。職種によって平均年収に差があるのは、初年度に賞与が満額支給される場合とされない場合があることも関係していると考えられます。
理学療法士の初任給は施設形態で変わる
理学療法士の勤務先には、病院や介護施設、クリニックなどがあり、初任給の設定は職場によって異なります。同じような規模の病院を比較しても、条件によって異なるため、それぞれ比較して確認すると良いでしょう。
全体の傾向として、病院と比べて整形クリニックの方が基本給を高めに設定している職場が多いです。ただし、福利厚生の面では、病院の方が充実している傾向にあります。また、歩合制を導入している訪問リハビリ事業所では、がんばり次第で収入アップが期待できます。しかし、その分、初任給は低めに設定されている傾向にあります。
給料は勤務地によっても差が出る
厚生労働省が発表した「職業情報提供サイトjobtag」をみると、医療・福祉従事者の平均給与額は、地域によって差があることがわかります
給料の高い職場を見極める方法として、次の3つのポイントを参考にしてください。
1.基本給だけでなく、賞与や手当もチェック
職場を選ぶ際には、まず基本給に目が向けることが多いかもしれません。確かに、基本給は収入のベースとなるものであり、しっかりチェックしておくことが大切です。
残業代などは基本給をベースに計算されるため、高いほど収入アップが見込めるでしょう。ただし、基本給だけを比較して職場を選ぶのはおすすめできません。
というのもたとえ基本給が高く設定されていても、賞与が少なかったり、手当がつかなかったりすると、他の職場より年収が低くなってしまう可能性があるからです。
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2.加入保険の種類を確認する
加入保険の種類によって税金の差引額が異なるため、手取り額が変わります。例えば、クリニックに多い医師国保は、扶養家族が増えるごとに税金が増えてしまう設定になっています。
そのため、結婚や出産を機に手取り額が減ってしまう可能性があるでしょう。事前に確認するのが難しい部分ではありますが、給与として提示されたものは手取り額とは異なるため、その違いをしっかり理解しておくことが大切です。
3.最低限チェックしておきたい項目リスト
より良い条件の就職先を選ぶためには、基本給や賞与といった収入だけでなく、加入保険や昇給率など、他の条件面にも目を向けることが重要です。チェックしておきたいポイントをまとめました。
②昇給率(過去の実績)
③各種手当(家族手当・通勤手当・住宅手当など)
④残業の有無
⑤退職金
⑥加入保険の種類
就職先を探す際には、求人票でこれらのポイントを確認してみてください。
理学療法士に将来性はあるのか
理学療法士の初任給について解説してきましたが、将来性についてはどうなのでしょうか。インターネットで理学療法士と検索すると「将来性がない」「給料が安い」といったネガティブなワードが検出されているのも事実です。
なぜそういわれているのか、理学療法士の将来性が不安視されている理由についてまとめました。
理学療法士の数が増えている
理学療法士の有資格者数は年々増加傾向にあります。厚生労働省の資料「医療従事者の需給に関する検討会~理学療法士・作業療法士の需給推計について~」によると、理学療法士と作業療法士の供給数は、2040年に需要数の1.5倍になると推測されています。つまり、必要とされている理学療法士の数に対し、1.5倍の有資格者がいることになります。
理学療法士は今後、飽和状態になると予想されており、需要に対して供給量が多いことから、就職先を見つけることが困難になっていくかもしれません。このような背景が、将来性を不安視されている理由の1つといえます。
経験や技術が給料に反映されにくい
理学療法士は経験や技術が直接給料に反映されにくい職種です。患者さんに提供するリハビリの内容が異なっても、基本となる報酬が決まっているからです。
例えば、理学療法士として研鑽を重ね、対応できる疾患が増えたり、治療の引き出しが増えたりしても、患者さんが支払うリハビリ料金は変わりません。
つまり、20年目のベテランと新人理学療法士が同じ時間を使って治療しても料金が変わらないのです。そのため、経験年数を重ねても他の職業と比べて昇給しにくく、将来的に大幅な年収アップが望みにくい傾向にあります。
診療報酬制度の影響を受けやすい
理学療法士が提供するリハビリ料金は診療報酬制度によって点数が決められており、一日に対応できる数も上限が定められています。
そのため、収益を増やすために、リハビリ件数を大幅に増やすといった対応が難しい職種なのです。
もし、今後の診療報酬制度の改定によってリハビリの点数が下げられてしまえば、当然収益も減ってしまいます。治療やサービスの質を改善しても直接リハビリ点数には反映されないことも、将来性が不安視されている原因かもしれません。
理学療法士が年収アップするための3つのポイント
理学療法士の将来性が不安視されている面もありますが、理学療法士としてスキルアップすることで年収アップを目指すことは可能です。
社会人として働き始めたばかりの頃は、経験も浅く、スキルのないままに年収を増やそうとしても難しいものです。できるだけ早い段階からキャリアップを目指せば、生涯年収を増やせる可能性が高まります。
新卒の段階から考えておきたい、年収アップにつながるポイントとして3つを紹介します。
1.スキルアップを図る
まずは、理学療法士としてのスキルを高めながら、役職を目指すキャリアパスを考えてみましょう。認定理学療法士の資格を取得して、専門性を高めるのも一案です。
また、心臓リハビリテーション指導士や認知症ケア専門士など、特定の分野に特化した資格を目指すのも良いでしょう。すぐに年収に反映されるとは限りませんが、施設によっては手当が支給される可能性があります。身につけたスキルは、転職を考える際にも有利に働くでしょう。
2.副業をする
最近は副業をする理学療法士が増えています。休日を利用して非常勤での勤務をすることで収入アップにつながります。副業を通して幅広い経験ができる可能性があるため、新卒の時こそ、チャレンジしてみる価値はあるでしょう。
ただし、施設によっては副業を禁止しているところもあるため、安易にスタートするのは禁物です。まずは勤務先の条件を確認しておきましょう。また、プライベートの時間が取りにくいため、疲労がたまりやすいのものです。本業に影響を与えない範囲で働くことが大切です。
【関連記事】
理学療法士におすすめの副業8選!収入とやりがいがアップする働き方とは?
3.転職をする
もし就職先で昇給の見込みが薄い場合には、転職も視野に入れるのも一案です。その際には勤務形態や待遇など、しっかりと情報収集したうえで転職活動を行うと良いでしょう。
ただし、働きながら転職活動を行うのは、意外と大変です。できるだけ効率よく転職をすすめたい場合には、転職エージェントを活用するのもおすすめです。自分に合った職場探しをサポートしてもらえます。
理学療法士の就職・転職における3つの注意点
理学療法士が就職・転職する際は、今後の将来性についても考慮しておきましょう。自分の希望に添わない選択をしてしまうと、やりがいを感じられないどころか、長続きせずすぐに辞めてしまうことにもなりかねません。理学療法士の就職・転職における注意点を3つ紹介します。
1.自分のキャリアアップにつながる環境を選ぶ
就職先・転職先を選ぶ際は、今後のキャリアアップにつながる環境を選ぶようにしましょう。
例えば、将来的にスポーツ業界に携わりたいと考えているのに、介護施設や訪問看護ステーションに就職してもキャリアアップに直結した経験は得にくくなります。また、病院に就職しても診療科目によってはスポーツ疾患に全く関われないこともあるでしょう。
自分が目指すべき道に直結する経験を積める施設や人間関係を構築できる環境を選ぶことが重要です。
2.副業が可能かどうかを確認する
就職・転職後に副業を考えている場合は、就職先が副業を許可しているのかどうかを事前に確認しておきましょう。施設によっては副業を禁止している場合もあります。もし禁止されているのに副業していることが発覚したら、減給や懲戒免職といった重たい処遇を受けてしまうこともあります。
3.経営者の将来性をチェックする
就職・転職先の職場が、この先も安定して継続するかしないかは経営者の手にかかっています。
大学病院や総合病院などの規模の大きな施設では、院長が辞任しても引継ぎがあり閉院してしまうことは滅多にありません。しかし、小規模なクリニックでは院長の辞任をきっかけに閉院してしまう場合もあり、突然働く場所を失ってしまう可能性もあるのです。
特に高齢の院長が経営しているクリニックでは、後継ぎはいるのか、将来性はどうなのかをチェックしておきましょう。
理学療法士としてのキャリアを考えた職場探しを
理学療法士としての最初の就職先は、今後のキャリアの土台となるものであり、将来を考えるうえで重要な意味を持ちます。
給料が高くても、やりがいを感じられなかったり、自分がやりたい治療ができなかったりすれば、仕事を続けるモチベーションが保てなくなるかもしれません。
とはいえ、生活を考えるうえでも、収入は大切な条件のひとつです。手当の有無や、昇給・賞与、副業は可能かなどの条件を確認するとともに、今後のキャリア形成を考えながら、広い視野を持って、慎重に就職先を選びましょう。
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参考
賃金構造基本統計調査(令和5年)
職業情報提供サイトjobtag
理学療法士・作業療法士の需給推計について
rana(理学療法士)
総合病院やクリニックを中心に患者さんのリハビリに携わる。現在は整形外科に加え、訪問看護ステーションでも勤務。 腰痛や肩痛、歩行障害などを有する患者さんのリハビリに日々奮闘中。 業務をこなす傍らライターとしても活動し、健康、医療分野を中心に執筆実績多数。
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