ルーマニアンデッドリフトの正しいやり方は?効果や鍛えられる部位について解説!
公開日:2025.03.19
文:柴田 太資(トレーニング指導者 大分高校・中学校サッカー部トレーナー)
ルーマニアンデッドリフトは、ボディメイクが難しいとされている体の背面の発達に、非常に有効なトレーニングです。
また正しい姿勢や健康な体づくりにも役立つ、万能トレーニングです。今回は、ルーマニアンデッドリフトを安全かつ効率的に行えるよう、効果や正しいやり方、注意点を紹介します。
日々のトレーニングにルーマニアンデッドリフトを取り入れて、機能的で美しいボディラインを手に入れましょう。
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ルーマニアンデッドリフトとは?鍛えられる部位
ルーマニアンデッドリフトとは、バーベルをひざの上まで持ち上げるトレーニング「デッドリフト」の1種です。主にお尻を覆う大臀筋(だいでんきん)と、太ももの裏側のハムストリングスを鍛えられます。大臀筋とハムストリングスを大きく動かすことで、トレーニングがより効果的になります。まずはこの2つの筋肉について理解しておきましょう。
大臀筋
大臀筋は骨盤と、太ももの大腿骨(だいたいこつ)をつなぐ筋肉で、股関節を動かすときに働きます。表層部にある大きな筋肉で、ボディラインを形成するのに重要な役割を果たします。また鍛えることで効率的に筋肉量を増やし、基礎代謝の向上も見込めます。
大臀筋を発達させるためには、股関節をいかに大きく動かすかがポイントです。ルーマニアンデッドリフトは股関節の動きを強調したトレーニングのため、大臀筋を発達させるのに大変おすすめです。
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ハムストリングス
ハムストリングスは大腿二頭筋(だいたいにとうきん)、半腱様筋(はんけんようきん)、半膜様筋(はんまくようきん)の3つの筋肉の総称で、お尻にある坐骨からひざの裏まで伸びる長い筋肉です。
ハムストリングスも大臀筋と同様にボディラインを直接形づくる筋肉で、サイズも大きいため、鍛えることで基礎代謝のアップにもつながります。ハムストリングスを鍛えるためには、ひざはあまり曲げずに、股関節を大きく動かすことがポイントです。この動きは、ルーマニアンデッドリフトのフォームの大きな特徴で、ハムストリングスを効率的に鍛えられます。
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デッドリフトとルーマニアンデッドリフトの違い
デッドリフトとルーマニアンデッドリフトの大きな違いは、ひざの動きです。デッドリフトはひざをある程度大きく曲げ伸ばしします。対してルーマニアンデッドリフトでは、ひざは軽く緩める程度に曲げたら、あとはほとんど曲げることはありません。この微妙な違いで、鍛えられる部位や、トレーニング方法の差異につながります。以下で詳しく解説していきます。。
トレーニングの開始位置
ルーマニアンデッドリフトとデッドリフトでは、トレーニングの開始位置が異なります。デッドリフトはしゃがみ込むボトムポジションからトレーニングを始めるのに対し、ルーマニアンデッドリフトはラック上に置いたバーベルを持ち、立位からトレーニングを開始します。
デッドリフト系の種目において、最も負荷が大きくなるのはボトムポジションです。立位でスタートするルーマニアンデッドリフトは、比較的負荷が小さく、トレーニング初心者でも取り入れやすい種目になります。
ルーマニアンデッドリフトは立った状態からトレーニングを開始する
鍛えられる部位
デッドリフトもルーマニアンデッドリフトも、体の背面全体を鍛える種目です。ルーマニアンデッドリフトはとくに、大臀筋やハムストリングスなどの下半身の強化に特化していることが特徴です。ひざをあまり曲げずに股関節を大きく動かすという動作が、大臀筋やハムストリングスを強く収縮させ、筋肥大を促します。
対してデッドリフトは上半身を立てた状態で行うため、僧帽筋(そうぼうきん)や脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)など、上半身の筋肉をより強化しやすい傾向にあります。体幹の前傾が小さい分、腰部の負担は若干少なく、ルーマニアンデッドリフトに比べると高重量が扱えることが特徴です。
ちなみにルーマニアンデッドリフトでは、体幹の前傾が大きくなるほど背中の筋肉(脊柱起立筋など)の収縮が強くなり、上半身の強化につながります。
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ルーマニアンデッドリフトの効果3選
ルーマニアンデッドリフトはボディメイクに加え、姿勢や腰痛、ひざの痛みの改善にも有効なトレーニングです。それぞれの効果について見ていきましょう。
ボディメイク
一般的に背面のボディメイクは、胸や肩、おなか、太ももなど体の前面の筋肉に比べて難しいと言われています。理由は直接目視することが難しく意識しにくい点や、収縮感を捉えづらく、筋力を限界まで出し切る「オールアウト」まで追い込みづらい点などが挙げられます。
ルーマニアンデッドリフトは、比較的高重量も扱えて、1種目で背面全体を鍛えることができます。適切に行えば、ボディメイクに大変効率の良いトレーニングと言えます。
姿勢改善につながる
ルーマニアンデッドリフトで鍛えられる大臀筋、ハムストリングス、脊柱起立筋などは、姿勢維持筋と呼ばれ、常に重力に逆らいながら姿勢を維持するために働いています。
筋肉は、力は強くないがスタミナはある「遅筋繊維(ちきんせんい)」と、力はあるがスタミナはない「速筋繊維(そっきんせんい)」が組み合わさって構成されています。筋肉は加齢により衰えていきますが、姿勢維持筋の中の「速筋繊維」の衰えは、姿勢の崩れにつながりやすいと考えられています。姿勢の維持と改善のためには「速筋繊維」を強化するウエイトトレーニング、中でも姿勢維持筋を鍛えられるルーマニアンデッドリフトが最適です。
腰やひざの負担軽減
ルーマニアンデッドリフトの動作は、ひざや腰の負担軽減にも有効です。股関節を軸に上半身と下半身を折りたたむ動作をヒップヒンジと呼びますが、ヒップヒンジは股関節周りの強くて大きい筋肉が働き、なおかつひざや腰を過剰に動かすことを制限します。その結果、腰やひざの負担を軽減する効果が期待できます。
ルーマニアンデッドリフトはヒップヒンジで使う筋肉を鍛えられるだけでなく、ヒップヒンジの動作が身につき、二重の意味で負担軽減につながります。
ルーマニアンデッドリフトのやり方
続いて、ルーマニアンデッドリフトの正しいやり方を解説します。
セッティング
⒉ 足は肩幅に開き、バーベルは肩幅より少し広めに順手(手の甲を上)で握る
⒊ 頭のてっぺんから尾てい骨までを引き離すように背筋を伸ばし、軽く胸を張ってバーベルを持ちあげる
トレーニング
⒉ 背中を丸めずに、一直線をキープできる範囲でバーベルを下ろす
※バーベルを下ろす高さがわからなければ、まずはひざ下を目安にしましょう
⒊ 足裏全体で地面を押して、引いたお尻を元に戻しながら立ち上がる
重量と回数の設定
最初はフォームの習得も兼ねて、ウエイトの重量は男性は20kg、女性は10kgくらいから始めます。回数は「20回を3セット」を目安にしましょう。上記の重量が問題なくクリアできたら、『10〜12回が限界がくる重さ』に重量を上げ、「10〜12回を3セット」で行います。
ルーマニアンデッドリフトの注意点
ルーマニアンデッドリフトを安全かつ効果的に実施するために、以下の3点に注意しましょう。
上半身をパッキングする
トレーニングの最初から最後まで、上半身を正しいフォームで固めてパッキングしましょう。具体的には、お尻の尾てい骨から頭のてっぺんまでを引き離すようなイメージで背筋を伸ばし、軽く胸を張り、おなかを少し膨らませた状態を維持します。トレーニング中に背中が丸まると、腰に過度な大きな負担が生じるため気をつけましょう。
どの局面でも常に上半身は丸まらない
ヒップヒンジを使う
お尻をしっかり引いて、ヒップヒンジを使ってトレーニングしましょう。折りたたみ式のガラケーになったつもりで、股関節を軸に、上半身を下半身に向かって倒してみてください。ヒップヒンジをうまく使うことで、大臀筋やハムストリングスが効果的に鍛えられ、姿勢の改善や腰、ひざへの負担軽減につながります。
足の裏を地面につける
ヒップヒンジを意識しすぎてつま先が浮いたり、逆にかかとが浮いたりしないように注意しましょう。
体の上下の動きがあるデッドリフトに比べて、ルーマニアンデッドリフトは重心が前後に大きく動きます。
足裏全体で地面を押すことができれば、大臀筋やハムストリングスも効果的に鍛えられます。しかしつま先が浮いたり、重心がずれてしまうと、ストレッチ感が出るだけでトレーニング効果は弱まる傾向にあります。
また安全性の面でも、足裏は地面から離さないことが大切です。
まとめ
ルーマニアンデッドリフトは、1種目で下半身を中心に、体の背面全体をボディメイクできる効果的なトレーニングです。また姿勢改善や関節の負担軽減など、ボディメイク以外にもさまざまなメリットがあります。ヒップヒンジや上半身のパッキングがしっかりと身につくことで、安全かつ効率の良いトレーニングがかなうはずです。ぜひ今日からルーマニアンデッドリフトを取り入れて、理想のボディラインを手に入れてください。
<参考文献>
Clem W. Thompson/ R. T. Floyd「身体運動の機能解剖」(医道の日本社)2002
庵野拓将「科学的に正しい筋トレ 最強の教科書」(KADOKAWA)2019

柴田 太資
プロアスリートのトレーニング指導、放課後等デイサービスセンターや学童保育など子どもの運動指導、健康増進のためのパーソナルトレーニングなど、幼児から高齢者まで幅広い世代を対象にトレーニングを指導する。専属契約する大分高校サッカー部はプロ選手も多数輩出する全国大会常連の強豪校。パーソナルトレーニングジムの経営や24時間型フィットネスクラブの運営にも携わる。
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