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第2回迫力とスピードの競技~障害者アルペンスキーで世界を目指せ!

公開日:2016.04.11 更新日:2016.04.22

世界チャンピオンも出場したIPC公認2016ジャパンパラアルペンスキー競技大会。その迫力の決勝戦をレポート! 障害者スキーのルールや楽しみ方、「初めて障害者スキーに挑戦するには」などもお伝えします。

パラアルペンスキーで活躍の日本選手たち

障害者のアルペンスキーで世界をリードしているのは日本人のレーサーたちです。15-16シーズンのIPCアルペンスキーワールドカップでは下肢障害のチェアスキーで森井大輝選手(トヨタ自動車所属)が総合優勝しました。このアルペンスキーで国内最高峰の大会がジャパンパラ アルペンスキー競技大会です。ここで好成績を出すことが、ワールドカップ出場権の獲得につながります。パラリンピックに憧れる若いレーサーにとってはまさに登竜門としての重要な大会です。

ジャパンパラ アルペンスキー競技大会 決勝レポート!


三澤拓選手(SMBC日興証券所属)
小柄ながら身長の高いヨーロッパ選手と互角の滑りで今季ワールドカップは表彰台に立った。

今年は3月19日から21日に白馬八方尾根スキー場で開催されました。70年ぶりという少雪のため、滑走距離が短いスラーローム種目で2連戦という変則的な競技会になりましたが、会場の八方尾根は長野オリンピックでダウンヒルなどの種目が開催された難コースです。コースサイドで観戦していたベテランスキーヤーは「パラリンピックのメダリストは速いねぇ、すごいな」とチェアスキーや片足切断などのレーサーがアグレッシブに滑るのをはじめて目撃し、驚きの表情を浮かべていました。彼らの滑りは福祉レジャーではなく、スキーに自信のある上級者でもとうてい真似ることのできない世界トップの迫力ある滑りだったからです。
 
チェアスキーはギュンと軋みながら加速。選手は一本のスキー板や機能障害のある身体でシビアにバランスをとりながら滑っていきます。2本足のスキーであればバランスを崩したとき片足を踏み出して転倒しないように踏ん張ることもできますが、この場合そのリカバリーができません。そういった難しい条件で、選手はアイスバーンの堅い雪面にスキーのエッジを食い込ませて高速ターンをきめ、通常より精密なバランスで滑っていました。
 


世界トップの滑りが国内で見られることは、若手選手の素晴らしい目標。この表彰台がパラリンピックへの第一歩です。
1位森井選手、2位鈴木選手、3位夏目選手。

今年の大会は男子シッティングで森井大輝選手が連勝しました。今シーズンのワールドカップで総合優勝した絶好調の選手です。16歳のときバイク事故で脊椎を損傷。そのとき入院中に長野パラリンピックの放送を見てスキー選手を目指したそうです。2位は2戦とも鈴木猛史選手(KYB所属)。交通事故による両大腿切断の選手です。先シーズンのワールドカップ総合優勝で、その優れたスキー技術は世界各国チームから注目されています。
 
大会初日に3位だった狩野亮選手(マルハン所属)は最高時速が100km以上になるダウンヒルのパラリンピック金メダリストです。交通事故による両下肢の機能全廃。11歳のころからスキーをしており、怪我してからも続けてきました。2日目の3位は地元白馬の夏目堅司選手(ジャパンライフ所属)でした。八方尾根スキースクールのインストラクターとして勤務中、モーグルコースでジャンプを失敗したときに脊髄を損傷しました。
 
アルペンスキーが障害者スポーツとして優れているところは「重力」が使えることでしょう。スキーは重力で加速していきます。それをいかにしてコントロールするかがテクニックです。そこが同じタイムレースでも身体機能のみでタイムを競う陸上や水泳などとの大きな違いです。スキーは重度障害でも、用具の工夫やインストラクターの補助によって、健常者と同じようなスピードと自由自在なコントロールを楽しめます。

障害者アルペンスキーのルールと楽しみ方


夏目堅司選手(ジャパンライフ所属)
元スキーインストラクターで、受傷後も翌シーズンにはゲレンデ復帰。ピョンチャンパラリンピックを目指して海外レースに参戦中。

選手は障害の種類によってスタンディング(立位)、シッティング(座位)、ビジュアリーインペアード(視覚障害)の3カテゴリーごとで順位を競います。
 
さらに各カテゴリーごとに細かいクラス分けがあります。チェアスキーで滑る選手でも、下肢麻痺だが足に力が入る、両下肢切断で腰と股関節を動かせる、背もたれの高いバケットシートで上肢を固定しなければ座位が安定しないといった身体機能の条件がタイムに影響するからです。そこで細かく分けられたクラスごとに係数が設定され、実測タイムにその係数をかけて出される計算タイムで順位を競います。
 
シッティングは1本のスキー板を装着したチェアスキーを利用します。バケットシートに身体を固定して、両腕に持ったミニスキー板付きのストックのような「アウトリガー」でバランスをとりながら滑ります。バケットシートの下にはサスペンションが付いており、膝関節に代わって衝撃を吸収したり、スキー板を雪面に押さえつけることができます。
 
選手用のチェアスキーに使用されるバケットシートは体型に合わせて個別に成形して作ります。最新のものはカーボン製。サスペンションも自動車やオートバイレース用を搭載しています。沈み込むように上下動するチェススキーのフレームは、滑走中の重心移動が最適に行えるようリンク構造が設計されています。
 
スタンディングではバランスをとるために先端にミニスキーが装着してあるアウトリガーを持って滑ることがあります。義足を利用したり、機能障害のある側の腕や足を固定して滑るような工夫をしている選手もいます。

ビジュアリーインペアード(視覚障害)の選手はガイドの先導で滑ります。ガイドはウエストなどにスピーカーを装着して、滑る方向や障害物の有無などを選手に伝えます。パラリンピックほどの世界大会では選手とガイドは1メートルほどまで接近して高速滑降します。

障害者アルペンスキーを始めるには

日本障害者スキー連盟(*)では障害のある人がスキーを始めたくなった時のサポートをしていて、貸し出し用具を使うこともできます。スキー未経験者や重度の方には2本スキーを装着して安定性の優れた「バイスキー」がおすすめです。ガイドは車椅子を介助するようにバイスキーを後ろから補助して一緒に滑ります。一般スキーヤーと同じように滑ることができるスタンディング選手や視覚障害のケースでも連盟に相談することで同じ障害の仲間からアドバイスを受けられます。
 
次回は世界を目指す障害者アスリートが事故による下半身麻痺をどう乗り越え、リハビリしてきたかをレポートします。
 
(*)特定非営利活動法人 日本障害者スキー連盟 http://www.sajd.com/

安藤啓一

安藤啓一(あんどう けいいち)

福祉ジャーナリスト。大学在学中からフリー記者として活動を始める。1996年アトランタパラリンピックをきっかけに障害者スポーツの取材をはじめる。夏冬パラリンピックや国内大会を多数取材。パラリンピック関係者に読み継がれている障害者スポーツマガジン「アクティブジャパン」「パラリンピックマガジン」記者などを経験。日本障がい者スポーツ協会発行誌『No Limit』などの媒体にも寄稿している。取材活動のほかチェアスキー教室講師としてもスポーツに取り組んできた。共著に「みんなで楽しむ!障害者スポーツ」(学習研究社)がある。


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