診療放射線技師がチーム医療で果たす役割|チーム医療の概要も詳しく解説!
近年は、さまざまな分野の医療スタッフが連携して患者さまの治療やケア、機器の管理などに当たる、「チーム医療」の普及が進みつつあります。チーム医療では、医療スタッフがそれぞれの専門性を生かし、患者さまに質の高い医療を提供することが望まれますが、そうした連携においては、診療放射線技師も重要な役割を果たします。
この記事では、チーム医療の概要とメリット・デメリット、チーム医療が抱える課題について解説します。チーム医療における診療放射線技師の需要や、チームごとに果たす役割なども紹介するので、診療放射線技師として活躍の場を広げたい方はぜひご一読ください。
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目次
チーム医療とは?
チーム医療とは、1人の患者さまに対して、複数の医療スタッフが連携して治療やケアに当たることです。
チーム医療では、医師や看護師をはじめ、薬剤師、臨床検査技師、診療放射線技師、理学療法士、作業療法士などさまざまなメディカルスタッフが、患者さまの情報や治療方針を共有し、連携して動きます。つまり、各分野の専門性をもとに知識や技術を補完し合うことで、より適切な治療を施し、患者さまのQOL(人生の質、生活の質)の維持・向上を目指すのがチーム医療の目的なのです。
チーム医療が導入される以前は、患者さまの主治医が他の専門職による診察・治療の必要性を判断し、基本方針を立て、治療計画を指示する方式がほとんどでした。しかし、医学や医療技術が進歩し、患者さまが抱える問題も多様化したことで、求められる医療の形も複雑化しています。また、高齢化が進む現代社会では在宅医療の必要性も高まっており、医療機関だけではなく、介護や福祉の現場との連携も必須となりました。
そのため、各分野に精通したプロフェッショナルが協働し、多角的な立場から患者さま1人ひとりに合った医療を模索する、チーム医療が必要とされています。
(出典:厚生労働省「チーム医療の推進について」/https://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/03/dl/s0319-9a.pdf)
チーム医療のメリット・デメリット
チーム医療を実施することで、下記のメリットが得られます。
- ・医師にかかっていた負担を減らせる
- ・疾病の早期発見、回復の促進、重症化の予防が期待できる
- ・医療ミスの防止が期待できる
近年は医療技術の進歩により、患者さまに高度な医療を提供できるようになりました。しかし、それにともなって求められる治療や検査、ケアなどが複雑化・細分化し、主治医1人の力では患者さまに対応しきれなくなっています。
チーム医療によって、各分野のスタッフがそれぞれの強みを生かし、協働して医療を行うことは、医師の負担を減らしつつ、きめ細やかな対応を行うことにつながります。また、患者さまを多角的に見守ることで、異変に気づきやすくなるほか、医療ミスの防止も期待できるでしょう。
ただし、チーム医療にはメリットがある一方で、下記のデメリットも指摘されています。
- ・医療スタッフの質や技量に差がある
- ・スタッフ同士の連携がうまくいかないことがある
医療スタッフの質や技量は一定ではありません。そのため、スタッフ同士のコミュニケーションが不十分だったり情報共有が不足したりすると、患者さまに適切な治療を施せなくなる可能性があります。
チーム医療の課題
デメリットをふまえて、現状におけるチーム医療の課題をまとめると、次のようになります。
- ・医療スタッフ同士の相互理解を深める必要がある
- ・チームをまとめることが難しい
- ・チーム医療に参加できる人材が不足している
チーム医療では、患者さまの病状によって医師や看護師の他、主に下記の職種が参加します。
- ・薬剤師
- ・管理栄養士
- ・各種検査技師
- ・理学療法士
- ・作業療法士
- ・言語聴覚士
- ・医療ソーシャルワーカー
各医療スタッフは、自身の専門領域に関する高い知識・技術を身につけているものの、他の分野については造詣が浅い場合があります。各分野の専門家たちが、それぞれの視点から主張し提言するため、意見をまとめ切るのが難しい場合もあるでしょう。
医療機関によっては十分な人材を確保できないケースもあり、いかに高水準のチームを編成・維持できるかが大きな課題となっています。
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【チーム別】チーム医療における診療放射線技師の役割!
一口にチーム医療と言っても、患者さまの病状や病院の設備によってさまざまなチームが編成されます。下記は、チーム医療で編成される一般的なチームの種類です。
- ・医療安全管理チーム
- ・医療機器安全管理チーム
- ・緩和ケアチーム
- ・摂食・嚥下チーム
- ・褥瘡管理チーム
- ・糖尿病チーム
- ・栄養サポートチーム
- ・救急医療チーム
- ・感染症対策チーム
- ・呼吸ケアサポートチーム
- ・リハビリテーションチーム
診療放射線技師の果たす役割は、所属するチームによって異なります。
ここでは、チーム医療における診療放射線技師の役割を、「医療安全管理チーム」「医療機器安全管理チーム」「緩和ケアチーム」「摂食・嚥下チーム」「救急医療チーム」の5つに分けて解説します。
(出典:チーム医療推進協議会「活躍している主なチーム医療」/http://www.team-med.jp/teams)
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【医療安全管理チーム】患者さまのための環境作り
医療安全管理チームは、医療施設全体の安全対策を講じ、事故の予防や再発防止に取り組むチームです。生命維持管理装置の保守点検や、施設内で使用する機器全般の安全な使用を指導します。
【診療放射線技師が担当する主な仕事】
- ・放射線治療機器や画像診断機器の操作・品質管理
- ・放射線機器による被ばくリスクの管理
- ・患者さまやご家族から放射線被ばくに関する質問を受けた際の適切な説明・応対
- ・患者さまが安全に、かつ安心して検査・治療を受けられる環境づくり
- ・造影剤によるアレルギー反応やペースメーカー装着者に関する情報の共有 など
【医療機器安全管理チーム】機器の管理・点検
医療機器安全管理チームは、医療施設で使用する生命維持管理装置や検査・診断機器を総合的に管理するチームです。医療機器の導入から、安全に使用するための研修、廃棄までを管理し、適切に使用されているかチェックします。
【診療放射線技師が担当する主な仕事】
- ・放射線が発生する医療機器やMRI、超音波による診断などに使用する画像検査機器の安全・品質・運用管理、および保守点検 など
【緩和ケアチーム】痛みの緩和と放射線医薬品の管理
緩和ケアチームは、治療による回復が見込めない患者さま、あるいは余命宣告を受けた患者さまとそのご家族が直面する、さまざまな問題に対応するチームです。緩和ケア病棟や施設、自宅で療養する患者さまやご家族が抱える心身の苦痛を和らげることで、QOLの改善をサポートします。
【診療放射線技師が担当する主な仕事】
- ・骨転移部位への放射線照射による痛みの緩和
- ・骨転移部位の痛み緩和に使用する放射線医薬品の管理 など
【摂食・嚥下チーム】飲み込みの検査
摂食・嚥下チームは、摂食・嚥下障害のある患者さまや障害を起こす恐れがある患者さまをサポートし、障害の改善・予防に努めるチームです。患者さまの食事能力、栄養状態、口内環境をチェックし、必要に応じて食事機能の回復や肺炎防止につながる治療・訓練を行い、日常生活における活動性の向上を目指します。
【診療放射線技師が担当する主な仕事】
- ・X線検査などによる摂食・嚥下機能の診断・確認 など
【救急医療チーム】MRI・レントゲンなどの撮影
救急医療チームは、「生命の危機にさらされている」「急変の兆候が見える」など、緊急性が高い患者さまに対して、集中的な治療を施すチームです。手術室や集中治療室、病床、あるいは必要とされるあらゆる場所で、患者さまの重症度に応じた治療にあたります。
【診療放射線技師が担当する主な仕事】
- ・病状の診断に必要なMRI・CT・X線などの検査業務 など
(出典:チーム医療推進協議会「診療放射線技師」/http://www.team-med.jp/archives/specialist/jar/)
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チーム医療における診療放射線技師の需要は?
診療放射線技師の専門性は、チーム医療に欠かせないものとなっています。放射線機器の導入を進める医療機関は増加傾向にあるため、診療放射線技師が活躍できる場は、ますます広がっていくことでしょう。
現在、診療放射線技師は男性技師の比率が高いものの、エコー検査やマンモグラフィを受ける女性患者のなかには、女性技師による検査を希望する声が少なくありません。そのため、今後は女性技師の需要拡大も期待できるでしょう。
診療放射線技師にとって、チーム医療の一員として働くことは、スキルアップにつながる良い機会です。転職を通じてスキルアップを実現させたい診療放射線技師の方は、チーム医療を実践している職場を探してみてはいかがでしょうか。
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まとめ
チーム医療では、さまざまな分野の医療スタッフが協力して患者さまの治療にあたります。いくつかの課題はあるものの、チーム医療の導入は、医師の負担を減らしつつ、患者さまにきめ細やかで専門性の高い医療を届けることにつながるでしょう。
スキルアップを目指す診療放射線技師にとって、チーム医療に参加することはさまざまな経験を得る良い機会となります。チーム医療を実践している職場を希望する診療放射線技師の方は、キャリアアドバイザーの転職サポートが受けられる「マイナビコメディカル」に、ぜひご相談ください。
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※当記事は2022年6月時点の情報をもとに作成しています
監修者プロフィール
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