診療放射線技師はやめとけ?辞めたいと感じる理由や転職先についても解説
長年、同じ職場・同じ職業で働いていると、ストレスや給料、人間関係など、何らかの理由で「辞めたい」と感じることもあるでしょう。それは、診療放射線技師のように、国家資格を有する方しか就けない仕事であっても同様です。
しかし、いざ転職活動を始めようとすると、「本当に今辞めてしまってよいのだろうか」「後悔しないだろうか」と躊躇してしまう方も少なくありません。
そこで今回は、診療放射線技師の仕事を辞めたいと感じている方に向けて、退職者の多くが挙げている「なぜそのように思うのか」の理由について解説します。あわせて、診療放射線技師として働くメリットやよくある転職先についても考察していくので、ぜひ参考にしてください。
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目次
「診療放射線技師はやめとけ」といわれる理由は?
診療放射線技師とは、放射線を使用した検査や画像診断、治療に携わる医療専門職です。主な仕事は、医師や歯科医師の指示のもと、X線撮影やバリウム検査、マンモグラフィ、CT検査などを行い、患者さまの病気を診断するための画像情報を提供することです。
また、放射線を使った病気の治療や放射線使用施設の安全管理、放射線診療に関わる医療スタッフと患者さまの被ばく線量の管理なども、診療放射線技師の役割となります。診療放射線技師になるには、診療放射線技師国家試験に合格し、免許を取得しなければなりません。
(出典:職業情報提供サイト(日本版O-NET)「診療放射線技師」/https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/1635)
医療現場において重要な役割を担う診療放射線技師ですが、「診療放射線技師はやめとけ」といわれることもあります。以下では、診療放射線技師に対して否定的な意見が出る理由について解説しましょう。
求人数が少ない場合があるため
診療放射線技師の勤務先は、総合病院や大学病院といった大規模な病院や、専門的な診療を行うクリニックなどが一般的です。そのため、病院自体が少ない地域では、診療放射線技師の求人数が少なくなる傾向にあります。
診療放射線技師として活躍するためには、求人数が少ない可能性があることを念頭に置いて、転職・就職活動に備える必要があるでしょう。その点に不安を感じる場合は、転職エージェントのサポートを受けるのも1つの方法です。
起業・独立ができないため
診療放射線技師が起業・独立できないことも、「やめとけ」といわれる理由です。
医療分野には、医師や歯科医師、薬剤師、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師など、独立開業できる仕事が多くあります。事業が成功すれば、大きく収入を伸ばすことも可能でしょう。
しかし、診療放射線技師は、医師または歯科医師の指示のもとに放射線治療や検査を行うことが法律で定められているため、独立開業ができません。大幅な収入アップを目指す方や開業したい方にとっては、この点がデメリットに感じられるようです。
放射線への誤解があるため
一般の方のなかには、「放射線」という言葉にネガティブなイメージを持つ方もいます。そして、放射線を扱う医療機器への誤解から「やめとけ」といわれることもあります。
確かに、放射線を大量に浴びると人体に影響があるため、取り扱いには注意が必要です。しかし、診療放射線技師は、放射線を安全に管理するための知識を身につけたエキスパートです。また、医療機関では人体に影響のない範囲で、安全に放射線機器を取り扱うため、被ばくの危険性は低いといえるでしょう。
診療放射線技師を辞めたいと感じる理由は?
仕事を辞めたいと思う理由は、人それぞれ異なります。また、人間関係や職場の雰囲気が理由の場合は、別の職場に転職することで問題が解決する場合もあります。しかし、なかには「職場環境を変えたい」のではなく、「診療放射線技師そのものを辞めたい」と考えるケースもあるでしょう。
ここでは、「診療放射線技師そのものを辞めたい」と考えている方によく見られる、理由や動機を3つ紹介します。
仕事が単調でルーチン作業が多いから
診療放射線技師は、病気の予防や早期治療を重視する現代社会において、非常に注目度の高い職業です。一方で、撮影や報告書作成など単調に感じやすい作業も多く、それを面倒だと思う方もいます。
毎日同じような検査を繰り返すことは、人によってモチベーションを下げる理由にもなります。特に、ドラマのように華やかな医療現場を想像して診療放射線技師を目指した方にとっては、少し物足りないかもしれません。
しかし、毎日繰り返されるレントゲン撮影などの単調な作業が、重大な病気の早期発見につながっていることも事実です。単調な作業に思えることもあるかもしれませんが、「自分は重要な役割を担っている」という誇りを持つことができれば、きっとモチベーションを維持できるでしょう。
給料アップが見込みにくいから
診療放射線技師の仕事を正しく理解していない人の目には、「医療機器のボタンやスイッチを押すだけの仕事」のように映っているかもしれません。場合によっては、医師や看護師をはじめとする医療スタッフからも誤解され、職場から正しい評価がなされないこともあります。
そして、そうした背景から「正しい評価がされていない」「給料アップが見込みにくい」と感じ、診療放射線技師を辞めたいと考える方もいるようです。しかし、待遇面が辞めたいと思う理由であれば、改善の余地はあります。
特に、年収には勤務先の医療施設の規模(総合病院・クリニック)や地域なども影響するため、規模の大きな病院や他の地域への転職を検討することで、現在の不満が解消されるかもしれません。
ちなみに、厚生労働省が発表した令和4年の職業別年収データを見ると、診療放射線技師の平均年収は約544万円となっていました。
(出典:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況」/https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2022/index.html)
忙しい職場もあるから
診療放射線技師の主な業務は、X線検査やCT検査などですが、放射線治療や画像処理などを担当することもあります。また、医療機器の高度化に伴って、MRI検査や超音波検査など、放射線を用いない検査も業務の一環になりました。
そのため、職場環境によっては、診療放射線技師が多くの業務を受け持つことになり、休みが取りにくかったり、夜勤が増えたりすることもあるでしょう。
また、医療機器や医療技術は日々進化しているため、診療放射線技師は資格取得後も勉強を続ける必要があります。そうした忙しさも、辞めたいと感じる一因のようです。
不規則な生活や業務のプレッシャーがストレスになるから
勤務先によっては、診療放射線技師も当直業務を定期的に務めなければなりません。そのため生活が不規則になりやすく、体調に悪い影響をおよぼす可能性があります。
加えて、診療放射線技師は「病気の有無を特定できる検査結果を出さなければならない」「放射線治療を成功させなくてはならない」などのプレッシャーにさらされやすい仕事です。そして、仕事中はスピードだけでなく、撮影ミスが起こらないための入念な確認作業と正確性が求められます。
そうした診療放射線技師特有のプレッシャーがストレスになると、辞めたいという気持ちにつながりがちです。無理をしないことはもちろん、次の項目で紹介するような対策を取った上で、早めに対処しましょう。
診療放射線技師を辞める前にできること
診療射線技師は、医療現場において欠かすことができない存在です。しかし、職場のスタッフに正しく評価してもらえなければ、辞めたいと思うのも仕方がないことかもしれません。
ただし、結論を急ぎすぎず、「辞めたいという気持ちは、本心からくるものなのか?」をじっくり考えてみることも大事です。
ここでは、診療放射線技師を辞めたいと思ったときにできることについて解説します。以下を参考にして、自分が本当に辞めたいと思っているのかどうかを、一度確認してみるとよいでしょう。
本当に診療放射線技師が合っていないのか考えてみること
精神的なストレスから診療放射線技師を辞めたいと思っている方は、仕事が合わないのではなく、単純に職場との相性が悪い可能性も考えられます。
まずは、本当に診療放射線技師の仕事が合わないと感じているのかどうか、自問自答しましょう。じっくり考えることで、現在の職場における人間関係や忙しさ、評価制度に不満を感じているだけの自分に気づくかもしれません。
そのような場合は、診療放射線技師の仕事を辞めるのではなく、職場を変えることで問題を解決できる可能性があります。
休職すること
不規則な生活を繰り返していると、自覚がないまま心身に不調が現れることがあります。職場での担当業務が多かったり、当直を定期的に行っていたりすることで疲れやすい環境にいる方は、一度心身を休めてみてはどうでしょう。
心身の疲れが影響して、一時的に診療放射線技師の仕事を辞めたくなっているのだとしたら、休職して心身ともにリフレッシュすることで、「また現場で活躍したい」と思える可能性があります。なお、一時的な休職に不安を感じる方は、作業量の少ない病院や当直業務がない病院に転職するのも手です。
転職エージェントを活用すること
診療放射線技師の国家資格を生かせる職場は、病院だけではありません。どうしても、仕事を辞めたいという気持ちが消えない場合は、思い切って転職を検討するのもよいでしょう。
ただし、現職を辞めたいからといって、焦って転職先探しをするのは避けてください。転職の軸(職場を選ぶにあたって重視する条件)を決めないまま活動すると、新しい職場で同じような不満やストレスを抱えてしまう可能性があるからです。
そうした失敗を避けるためにも、転職エージェントを利用して計画的に転職を進めることをおすすめします。
辞める前に思い返したい!診療放射線技師として働くメリット
診療放射線技師は、大変なこともある一方で、やりがいや魅力も多い仕事です。診療放射線技師の仕事につらさを感じている方や転職を考えている方は、辞める前にメリットを思い返してみるのもよいでしょう。ここでは、診療放射線技師として働くメリットを5つピックアップして解説します。
給与が安定している
診療放射線技師のメリットとして、給与水準が高く安定していることが挙げられます。以下の表は、医療・福祉分野における職業別の平均年収です。
職業 | 平均年収 |
---|---|
薬剤師 | 約583万円 |
診療放射線技師 | 約544万円 |
臨床検査技師 | 約509万円 |
看護師 | 約508万円 |
保健師 | 約481万円 |
臨床工学技士 | 約443万円 |
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士 | 約431万円 |
准看護師 | 約418万円 |
介護支援専門員 | 約406万円 |
栄養士 | 約379万円 |
介護職員(医療・福祉施設等) | 約363万円 |
訪問介護従事者 | 約353万円 |
(出典:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況」/https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2022/index.html)
診療放射線技師の平均年収は約544万円で、臨床検査技師や看護師よりも高水準となっています。
診療放射線技師は国家資格を必要とする職種なので、求人も比較的安定しています。手に職をつけて安定した給与を得たい方にとって、診療放射線技師はメリットの大きい仕事だといえるでしょう。
なお、職場やスキルによっても、診療放射線技師の給与は異なります。診療放射線技師は、総合病院や大学病院などの医療機関で働くケースが一般的ですが、医療機器メーカーなどの一般企業で働くことも可能です。
患者さまと直接関われる
診療放射線技師は、患者さまと直接関われる仕事です。特に検査や治療では、患者さまの身体に直接触れることもあるので、コミュニケーションが欠かせません。
また、現場では患者さまの不安を払拭するために、放射線検査の安全性を伝えることや、治療の効果を説明することも求められます。そうした点に大変さを感じる方もいるかもしれませんが、患者さまから信頼され、感謝されたときは、大きなやりがいを感じられるでしょう。
チーム医療の一員として活躍できる
チーム医療では、1人の患者さんに対して医師、看護師などの医療スタッフが連携し、それぞれの専門分野で役割を果たしながら、治療やケアにあたります。もちろん診療放射線技師も、チーム医療において重要な役割を果たす職種です。
診療放射線技師は、検査や放射線治療を通してチーム医療に貢献するだけでなく、医師や看護師、医療機器メーカーなどとコミュニケーションを取り、連携を図る役目も果たします。そうやってチーム医療の一員として活躍できることも、診療放射線技師としてのやりがいにつながるでしょう。
スキルアップを目指せる
診療放射線技師には、スキルアップにつながる認定資格がたくさんあります。そして、資格取得を通して専門知識やスキルを深めれば、仕事のやりがいやモチベーションも高まるはずです。
診療放射線技師のスキルアップにつながる主な認定資格は、以下の通りです。
- ・検診マンモグラフィ撮影認定診療放射線技師
- ・第1種放射線取扱主任者
- ・磁気共鳴(MR)専門技術者
- ・X線CT認定技師
これらの資格を取得することは、業務の範囲を広げるだけでなく、診療放射線技師としてのキャリアアップにもつながります。第1種放射線取扱主任者などは、外部の講習に参加し試験に合格すれば取得できるので、業務と並行しながらでも取得を目指すことが可能です。
将来性がある
診療放射線技師は、医療分野において需要が高い仕事です。病院やクリニック、健診センターでは、安定して診療放射線技師の求人が見られ、大規模な病院のなかには積極的に新卒者を採用しているところもあります。診療放射線技師は、場所や年齢、ブランクの有無を問わず働けるのも魅力です。
また、診療放射線技師の業務は、AIが代替できないといわれています。撮影や異常の識別といった作業にはAIが活用できるものの、患者さまの状況を正確に判断し、臨機応変な対応が求められる業務では活用しにくいためです。さらにいえば、「患者さまに寄り添う」という部分でも、人間の力が求められるでしょう。そのため、将来的に診療放射線技師の仕事がなくなる可能性は、きわめて低いと考えられています。
診療放射線技師は、需要が高く、働き方を制限されない仕事です。AIが代替できない業務も多いので、診療放射線技師は「将来性のある仕事」だといってよいでしょう。
診療放射線技師の人によくある転職先
診療放射線技師の転職先は、医療施設や各種検査機関だけではありません。以下のような職場でも、多くの技師が経験や知識を生かして活躍しています。
- ・医療機器メーカー
- ・治験関連企業
- ・各種企業の営業職(業種は問わず)
医療機器メーカーでは、これまでの経験を生かしたデモンストレーションや顧客サポートの業務を担当します。臨床経験に基づいて商品の特性・魅力を発信すれば、新たな顧客が獲得できる可能性も高まるでしょう。
治験関連企業では、治験コーディネーター(CRC)や臨床開発モニター(CRA)として、臨床開発試験がスムーズに進むようにサポートします。未経験で応募可能な求人も一定数ありますが、ある程度の臨床経験を応募条件とする求人が多いので、現場の経験や知識を生かして転職したい方には最適な職場だといえます。
それ以外では、各種企業の営業職に転職する方も見られます。診療放射線技師は、日常的に患者さまや医療スタッフなど多くの人と接するため、「デスクワークよりもコミュニケーション能力を生かした仕事のほうがなじみやすい」という方が少なくないようです。
医療の世界から一歩離れた場所で幅広い経験を積みたい方は、他業界への転職を視野に入れてみるのもよいでしょう。
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転職する際に意識するべき点は?
診療放射線技師としての経験や知識を生かせる職種に転職する場合は、ある程度の臨床経験がアピールポイントとなります。
一方、異業種に転職する場合は、長く働いてくれそうな人のほうが、転職の成功率は上がります。そうなると、転職時の年齢が成功率に影響してくるため、転職する時期を意識することも必要になるでしょう。
企業によっては、具体的な年齢基準を設けているケースもあるので、30代以降は事前に確認することをおすすめします。
診療放射線技師として、現在の職場が向いていないと感じたら、早めに見切りをつけて新しい職場を探す思い切りのよさも、ときには必要です。たとえ具体的な行動を起こさなくても、転職サイトや求人票をチェックするだけでも、自分自身を見つめ直すきっかけになるでしょう。
また、転職を検討するにあたっては、これまでの診療放射線技師としての経験が、どのように生かせるかを考えなければなりません。実際の転職活動では、医療業務の経験だけではなく、コミュニケーション能力や仕事の正確さなど、業界問わず高評価となる部分をアピールしましょう。
まとめ
診療放射線技師を辞めたいと思ったときは、辞めたいと思った理由だけでなく、仕事自体を辞めたいのか、ただ職場を離れたいのかについても明確にしましょう。辞めたいと思った理由を分析することで、次に進むべき道を明確にできるはずです。
ちなみに、診療放射線技師の資格を生かして働ける職場は、医療現場だけではありません。民間企業を含めて、さまざまな場所で診療放射線技師は活躍できます。
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※当記事は2023年12月時点の情報をもとに作成しています
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