理学療法士(PT)の転職で失敗しないためにできること
理学療法士は、病気やけがなどで身体に障害がある方や、障害の発生が予見される方をサポートするリハビリ専門職です。近年は、高齢化が進んでいる影響で理学療法士の需要が高まっており、さまざまな現場でその知識とスキルが求められています。
その分、勤務先の選択肢も広がっているため、みなさんのなかにもよりよい働き方を目指して、転職を考えている方がいらっしゃるのではないでしょうか。
ただし、転職したからといって、必ずしも理想の職場環境が得られるとは限りません。そこで今回は、転職を検討している理学療法士の方に向けて、転職で失敗するパターンや転職をスムーズに進めるためのポイント、求人を探す際のコツなどを解説します。
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目次
理学療法士の転職で失敗するケース・パターン
配偶者の転勤などでやむを得ず転職する場合もありますが、自主的に転職を決めたのであれば、「いくつかの選択肢のなかから、希望に合った勤務先を選ぶ」という方法をとる方がほとんどでしょう。しかし、それでも「以前の職場の方がマシだった」と思ってしまうケースはあります。
まずは、納得できる転職ができなかったケースを取り上げ、それぞれの理由について考えてみましょう。
目的が定まらないまま転職してしまった
転職活動を行う方のなかには、「知り合いが転職して成功したという話を聞いて、雰囲気に任せてはじめてしまった」「勢いに乗ってなんとなく始めてしまった」という方もいらっしゃいます。
しかし、転職の目的や譲れない条件がはっきりしないまま活動しても、応募先が自分に合うか合わないかの見極めができません。その結果、「想像していた働き方と違う」「前の職場のほうがよかった」などのミスマッチにつながりやすくなるので、注意しましょう。
また、知り合いに誘われるがまま転職してしまうのも考えものです。転職先についてきちんと調査しないと、「聞かされていたイメージと、実際の職場環境がかけ離れていた」と後悔することになりかねません。
高い理想に惑わされて、現在の状況を振り返れない
将来像を明確にせず、理想だけを追い求めて転職するのも、失敗しやすいパターンの1つです。
いくら高い理想を持っていても、スキルや実績がともなわなければ、現実との間にギャップが生まれてしまいます。「転職したらまわりのレベルについていけなかった」などということにならないように、しっかりと自己分析を行いましょう。
「理想通りの待遇だけれど、仕事がきつかった」というケースも見られるので、給与や待遇にとらわれすぎないことも大事です。
キャリアの整理ができていない
転職先の候補を考える場合、自分が思い描いている働き方やキャリアプランによって、選ぶ基準は違ってくるものです。
「自分が持つスキルや経験を生かして、ステップアップを目指したい」と望んだとしても、どこに向かって進むべきかが分からなければ、迷子になって失敗に終わる可能性があります。
そのため、転職するにあたってはキャリアの整理(社会人になってからの経験を振り返り、職務内容や実績などを整理すること)が、とても大事です。キャリアを整理することで、これまで気づかなかった自分の強み、弱み、得意なこと、苦手なこと、やりたいことなども認識できるため、キャリアプランも明確になるでしょう。
転職先の下調べが十分にできていない
やる気を持って転職をしたのに、働き方や職場の雰囲気が描いていたイメージと違っていて、後悔につながってしまうケースもあります。
こうしたケースの多くは、「応募先の下調べが十分ではなかったこと」に原因があります。求人票に書かれている情報は、基本的な給与や福利厚生が中心です。実際の勤務体制や職場の雰囲気は文章だけでは分かりづらく、勝手なイメージで判断してしまうと、後悔するかもしれません。
特に、職場の雰囲気は求人票だけでは把握できないため、職場見学に行くなどして下調べをしましょう。実際に行ってみることで、周辺環境や交通機関の状況なども把握できるので、転職時の職場見学はおすすめです。
相手の視点に立てていない
いくら面接を受けても落とされてしまう場合は、「相手の視点に立てていない」という可能性があります。
転職したい病院やクリニックでは、どのような人物が求められているのか、自分の経験やスキルを生かしてどうやって職場やチームに貢献できるのかなどについて、一度相手の立場になって考えてみましょう。
採用担当者からすると、「福利厚生がいい」「研修制度が整っている」「スキルアップしたい」などの志望理由だけでは、採用するメリットが感じられません。「自分に合った職場を見つけたい」という気持ちが強すぎて、自分本位にならないように気をつけてください。
理学療法士の転職で成功する人とは
ここまで失敗するパターンを見てきましたが、転職を成功させてやりがいを得たり、収入が増えたりする方ももちろんいます。
転職を成功させた方の多くは、計画性を持ち、目的やキャリアプランを明確にした上で転職活動に臨んでいます。以下では、転職を成功させるためのポイントについて、詳しく見ていきましょう。
これまでの実績を把握し、転職する目的を整理する
前述したように、転職の目的があいまいで、自身のキャリアや経験が把握できていないと、失敗する可能性が高くなります。場合によっては、転職しないほうが自分のキャリアプランに合っているというケースもあるかもしれません。
転職の際は、「なぜ今の職場を退職したいのか」を考えるのと同時に、転職の目的や将来的に目指したい姿を明確にするように努めましょう。
例えば、整形外科病院に勤務していた理学療法士の方が、さらなるスキルアップを目指して転職する場合、多様な疾患に対応する総合病院が有力な選択肢となります。収入アップを目指したいのであれば、仕事内容に加えて基本給や昇給率を重視するのも1つの方法です。
初心に帰って、理学療法士としての働き方を考える
理学療法士を目指した理由は人それぞれですが、その願いや想いがすぐにかなうわけではありません。転職の目的があいまいになったときは、初心にかえって「患者さんの笑顔が見たい」「リハビリのスキルを高めたい」などの思いを再度確認してみましょう。理学療法士として、どのような分野に挑戦したかったのかを考え整理することで、今後の展望も明確になるはずです。
希望条件について譲れない点と妥協できる点を整理する
転職先を探す際は、希望の条件を洗い出した上で、譲れない点と妥協できる点を明確にしておくことも大事です。
例えば、収入アップを目指して転職した場合、残業が増えてプライベートの時間が少なくなるかもしれません。また、スキルアップを求めて、勉強会や研修が充実した施設を選んだ場合も、休日や就業後の時間が削られる可能性があります。
そうしたことで不満や不安を感じたりしないように、譲れない点と妥協できる点を明確にし、譲れない点に優先順位をつけておくとよいでしょう。
転職先の候補を決めたら、見学に行ってみる
転職の目的が明確になり、新しい職場の候補が絞れたとしても、求人票の内容だけでは把握しづらい部分もあります。特に、人間関係や職場環境に悩んで転職を決断した場合は、職場見学で実際の雰囲気を確かめておくと安心でしょう。
そうした行動力も、転職を成功させる大きなポイントになるはずです。
理学療法士以外の選択肢はないかを考える
理学療法士の職場として真っ先に思い浮かぶのは、病院やクリニックなどの医療機関です。しかし、近年は理学療法士が活躍できる分野が広がっており、病院やクリニック以外の選択肢も数多くあります。
例えば、高齢化にともなって地域包括ケアシステムが重視されるなか、訪問看護ステーションでも理学療法士のニーズは高まっています。また、介護施設においても「これからはリハビリが重要」と考え、積極的なリハビリを行っているところが増えている状況です。
リハビリの専門家である理学療法士は、行政機関での需要も高まりつつあります。公務員として働く場合は、介護保険や医療保険に関する書類の作成・照会が主な業務となりますが、地域住民の健康増進を目的としたイベントの企画や健康指導の業務など、介護予防に関連した業務も少なくありません。地域の課題解決のために理学療法士としての経験を生かすことは、臨床現場とは違ったやりがいが得られるでしょう。
自身の能力や目的、キャリアプランに合った職場とめぐり会うためにも、病院・クリニックだけにこだわらず、幅広い視点で転職先を探してみてください。
理学療法士の転職活動のステップと必要な時間
理学療法士がスムーズに転職を進めるには、転職活動の基本的な流れを知っておくことも重要です。
理学療法士が転職活動を行う際の流れは、下記の通りです。
1. 自己分析・求人チェック |
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まずは自己分析で自身の特徴や長所・短所、得意・不得意、価値観などを洗い出し、転職先選びの軸を明確にしましょう。具体的にイメージしにくい場合には、実際の求人情報をチェックしながら、希望する仕事内容や労働条件を固めていくのがおすすめです。 |
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2. 応募・面接 |
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条件に合った求人を探して応募します。その際は、給与や福利厚生だけでなく、業務内容やスタッフの人数、職場の雰囲気、研修制度の有無なども確認した上で選択しましょう。書類審査に通過したら、面接の練習も必要です。 |
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3. 退職準備 |
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転職先が決まったら、現職の上司に退職の意志を伝えつつ、準備を進めましょう。退職の申告を「退職日の1か月前まで」とするケースが多く見られますが、手続きや引き継ぎに時間がかかることもあるため、早めに申告したほうが無難です。 |
なお、マイナビの「転職動向調査 2023年版」によると、最近では転職活動開始から2か月未満で転職する、「スピード転職」が6割を超えています。
(出典:転職動向調査 2023年版(2022年実績)「1-8-1.転職活動期間」/https://career-research.mynavi.jp/wp-content/uploads/2023/03/af5ecd66268d4c66d20ea728ddf6ea8a.pdf#page=28/)
ただし、スピードを重視しすぎて、自分に合わない職場を選んでしまったら本末転倒です。急いで転職したい理由がない限りは、自己分析や職場研究にしっかり時間をかけて、「納得できる転職」を目指しましょう。
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理学療法士が転職を成功させるための自己分析のコツ
繰り返しになりますが、転職を成功に導くには自己分析が重要です。自分の強み・アピールポイントを見つけることは、履歴書作成や面接対策に役立つだけでなく、将来の目標や理想の働き方を再認識するためのきっかけにもなるでしょう。
理学療法士が転職する際の自己分析のコツは、以下の通りです。
これまでの経験を書き出す
自己分析において、これまでのキャリアを振り返ることは非常に重要です。就業経験のなかで印象に残っていることや成功体験、やりがいを感じた瞬間などをエピソードとともに書き出してみましょう。
エピソードをピックアップする際は、当時の状況についてできるだけ詳しく振り返るのがポイントです。「ほかの人と比べたら大した経験じゃないかも」などと考えず、小さなエピソードもしっかり洗い出しましょう。
また、成功体験のようなプラスのエピソードだけでなく、失敗体験やトラブルといったマイナスのエピソードについて振り返ることも重要です。トラブルの内容や対処のし方、解決した方法などを具体的に書き出してみてください。
体験を掘り下げて自分の特徴や強みを具体化する
次に、書き出したエピソードを深掘りして、そこから読み取れる自身の特徴や強みを具体化していきます。
エピソードを掘り下げる際は、下記の3点について考えるとスムーズです。
- ・エピソードが心に残っている理由
- ・経験を通して得たスキル
- ・最終的な自分の成長・変化
一例として「初めて担当したのがとても無口な患者さまだったが、日々声掛けをし、励ましの言葉をかけることで心を開いてもらえた」というエピソードを掘り下げると、下記のようになります。
心に残っている理由 |
・初めて担当した患者さまで思い入れが深い ・患者さまが心を開いてくれたことがうれしかった |
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経験を通して得たスキル |
・リハビリは知識・技術だけでなく、患者さまの気持ちに寄り添うことも重要だと気づいた ・患者さまの表情や雰囲気から心情を読み取るスキルが身についた |
最終的な自分の成長・変化 |
・リハビリ記録に、患者さまの様子や雑談の内容も記載するようになった ・どの患者さまとも良好な関係を築けるようになった |
上記のようなケースでは、「問題に直面した際に対策を考えて取り組む力」も、経験から得たスキルだと考えられるでしょう。
自己PRとして強みを整理する
エピソードの分析によってアピールしたい強みを見つけたら、情報を整理して自己PRを作成します。
自己PRは実際のエピソードと絡めて説明すると説得力が増すため、下記の順序で内容を整理しましょう。
STEP1 | 自分の強みをひと言で表す |
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STEP2 | 強みをアピールできるようなエピソードをまとめる |
STEP3 | そこから得た学びを示しつつ、「強みを転職先でどう生かすのか」をアピールする |
転職活動における自己PRは、「自分の強みが転職先でどう役に立つか」を示すための場です。自身の強みと応募先の求める人物像がマッチしていれば、書類や面接でのアピールがスムーズに行えるでしょう。
理学療法士の求人探しは転職エージェントの利用がおすすめ
理学療法士が求人を探す方法として、ハローワークや求人サイト、転職エージェントなどが挙げられますが、働きながら転職活動を進めたい場合は、医療介護業界専門の転職エージェントを利用するのがおすすめです。
ここでは、転職エージェントの利用がおすすめである理由を3つ紹介します。
自分の代わりに企業とやりとりしてくれる
働きながら転職活動をしていると、ハローワークに通ったり、応募先と日程調整などのやりとりをしたりするのが難しい場合もあります。
その点、転職エージェントを利用すれば、面接先とのやりとりや面接の日程調整などをすべて代行してもらえます。仕事が立て込んでいるときでも担当者が手続きを進めておいてくれるため、仕事や家庭と両立しながら転職したい方にはうれしいサービスと言えるでしょう。
業界に詳しいキャリアアドバイザーが支援してくれる
多くの転職エージェントでは、キャリアアドバイザーによる書類(履歴書や職務経歴書)の添削、面接対策などのサポートを実施しており、仕事が忙しい方でも効率よく転職活動に臨むことが可能です。
ちなみに、転職エージェントのキャリアアドバイザーは、医療介護業界の転職事情に精通したプロのスタッフです。これまで数多くの理学療法士の転職を支援してきた経験から、理学療法士が転職に対して抱える不安や悩みなども十分に理解しています。
そうしたキャリアアドバイザーに自身の希望や目標、職場に求める条件などの相談に乗ってもらえるのは、大きな安心につながるでしょう。
自分に向いた職場を見つけやすい
業界専門の転職エージェントのなかには、キャリアアドバイザーが求人情報の掲載先に直接足を運んでいるところもあります。そうしたエージェントを利用すれば、求人サイトの情報だけでは分からない職場環境や仕事内容、残業時間、離職率などを教えてもらえるため、よりリアルな情報を得られるでしょう。
なお、転職エージェントを選ぶ際は、非公開求人を保有しているところを選ぶのもポイントです。
非公開求人とは、企業・施設の採用情報や一般の求人サイトには掲載されていない求人のことで、質の高い人材を求めている場合や、条件がよく募集数が少ない場合に使われる手段です。非公開求人は業界専門の転職エージェントに依頼されるケースが多いため、まずは担当者に自分の希望を細かく伝えておいてください。条件が合う非公開求人があれば、自分にマッチした求人を紹介してもらえるでしょう。
理学療法士が施設見学をするときのポイント
理学療法士が病院・介護施設などを見学する際には、いくつかのポイントを押さえておくことが重要です。職場見学のポイントは、下記の通りです。
- ・スタッフ間のコミュニケーションや雰囲気
職場の人間関係は、転職先探しにおいて非常に重要なポイントとなります。スタッフ同士が自然に挨拶を交わしていたり、明るく和気あいあいとした空気を感じられたりする職場を選ぶのがよいでしょう。
- ・施設の衛生状況
玄関や廊下、リハビリ室はもちろん、スタッフルームやトイレなどの衛生状況も確認しましょう。衛生管理や感染防止対策が徹底していない職場は、スタッフだけでなく患者さまにとってもよい環境とは言えないため注意が必要です。
- ・患者さまとの関わり方
患者さまとの会話の内容や口調になども確認しましょう。接遇の教育が行き届いていないと、スタッフと患者さまとの信頼関係が築けません。見学時に目にする些細なやりとりから、患者さまに対して丁寧に対応しているかどうかをチェックするのがおすすめです。
まとめ
転職において、最も大切なのは、しっかり準備をしておくことです。情報収集はもちろん、書類の作成や面接対策なども計画的に進めましょう。理学療法士の採用試験は、面接内容によって合否が左右されることが多いため、きちんと自己分析を行った上で、自身の実績や強みを具体的にアピールしてください。
マイナビコメディカルでは、経験豊富なキャリアアドバイザーが、多数の公開求人・非公開求人から1人ひとりに合った職場をご紹介いたします。履歴書・職務経歴書の添削や面接対策、入職後のアフターフォローなども無料でサポートいたしますので、転職活動に疑問や不安を抱えている理学療法士の方は、ぜひ一度ご相談ください。
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※当記事は2023年11月時点の情報をもとに作成しています
監修者プロフィール
マイナビコメディカル編集部
リハ職・医療技術職・栄養士のみなさまの転職に役立つ情報を発信中!
履歴書や職務経歴書の書き方から、マイナビコメディカルサイト内での求人の探し方のコツや、転職時期ごとのアドバイス記事などを掲載。
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