診療放射線技師の仕事内容とは|必要となるスキルから平均年収まで
医師の治療には、正確な情報が何よりも不可欠です。しかし、医師に求められる知識やスキルは膨大な量であり、全てをこなすためには大きな負担が発生します。そこで助けとなる大きな存在が、診療放射線技師をはじめとする各分野の検査を担うスタッフです。
ここでは、数多くの医療従事者の中から、診療放射線技師に関する主な仕事内容や、求められるスキルについてご紹介します。年収や向いている人の特徴にも触れているため、診療放射線技師を目指すことを検討している人は、ぜひ参考にしてください。

目次
1. 診療放射線技師とは?
診療放射線技師とは、医療現場において放射線の取り扱いを担う技師のことをいいます。レントゲン検査やMRI検査など、様々な検査や治療に携わる職業です。医師の指示のもとで検査や治療を行いますが、国家資格である医師または診療放射線技師でなければ、放射線を取り扱うことはできません。
活躍できる場は総合病院などの他、小規模のクリニックもあげられます。研究機関で治験コーディネーターを目指す、あるいは経験を活かして医療機器メーカーでの機器開発に携わることも可能です。
診療放射線技師は日常的に放射線と関わる仕事であり、放射線の安全管理も含めた検査機器取り扱いのプロです。放射線量が適切かどうか確認することも仕事に含まれますが、正しく安全管理さえしていれば、被ばくの危険性は低くなります。
診療放射線技師に必要なスキル
診療放射線技師として働くためには、医師や看護師と同じく、国家資格に合格する必要があります。国家資格を受験するためには、文部科学大臣が指定する診療放射線技師の養成所(大学・短大・専門学校)を卒業することが必要です。
また、他の医療スタッフや患者と検査・治療で関わるため、公的な資格の他、以下のようなスキルも求められます。
・医療知識と経験
・仕事への注意力や正確さ
・コンピュータの取り扱い
スキルとまではいかないものの、向上心や物事への柔軟性、医療従事者としての責任感やチーム医療の一角を担う使命感も重視されます。
2. 診療放射線技師の仕事内容
診療放射線技師は検査と治療はもちろん、取り扱う各装置の管理、被ばく管理(放射線量が適切かどうか)も仕事の一部です。患者の医療安全の管理も担い、被ばく管理の他に感染防止対策や事故防止対策なども行います。
ここでは、診療放射線技師の仕事で一般的に知られている検査や治療業務のうち、代表的な5つの業務についてご紹介します。
一般撮影検査
一般撮影検査は、いわゆる「レントゲン」や「一般X線検査」「単純X線検査」と呼ばれ、臓器や骨格を投影するX線を利用した検査方法(造影X線検査)です。X線を人体に照射すると、骨などの構造物によって吸収が起こり、吸収のメカニズムを利用して体内の異常を調べることができます。
専用の検査室までの移動が困難な患者のために、ポータブル式のX線撮影装置を使用するケースもあります。また、以前はフィルムタイプが主流だった撮影後のデータ出力は、現在デジタル画像が多く利用されるようになりました。
CT検査
CT(コンピュータ断層撮影)検査は、一般撮影検査と同じくX線を利用していますが、3D画像による立体的な撮影を目的としています。
ドーナツのように真ん中に空洞のあるマシンで360度の方向からX線を照射し、断面図を作ります。撮影時に造影剤を注入して血管の流れを映すことも、被ばく防止対策と同様に診療放射線技師の仕事です。
よく似た検査にMRI検査がありますが、MRI検査は放射線を使用しないのに対し、CTは放射線(X線)を使用するため、診療放射線技師でなければ検査できません。
乳房X線検査
乳房X線検査は、「マンモグラフィ」「乳がん検査」の名で一般的に知られている検査です。
女性特有の病気のひとつである、乳がんを早期発見するために役立ちます。胸部を晒し、撮影位置を合わせるために触れることもあるため、女性の診療放射線技師が担当することの多い検査です。
乳がんの初期の症状である石灰化は、触診では気づくことが難しく、乳房X線検査・超音波検査でなければ早期発見できません。専用の機材を使用し、場合によっては拡大撮影することもあります。
放射線治療
放射線治療は、細胞分裂を止める放射線の特性を利用した治療方法であり、体にメスを入れることなく病巣のがん細胞を破壊することができる治療です。近年はX線装置も高精度になり、高エネルギーの放射線を病巣へ正確に照射することが可能なため、がん治療の進歩に大きく貢献しています。
しかし、放射線治療は医療機関が少ないため、求人数が少ない傾向にあります。また、検査の場面以上に患者との触れ合いが多くなるため、技術者にはケアや配慮ができる資質が求められます。放射線に対する安全対策だけではなく、その他の安全性にも気を配り、正確に治療にあたらなければなりません。
MRI検査
MRI検査は放射線を使わず、強い磁石と電波によって人体の断面図を撮影する検査方法です。脳や脊髄、子宮などあらゆる部位の病気を早期発見することに最適であり、CT検査とは違い、造影剤を使用しなくとも血管や胆道を撮影することができます。
MRI検査では放射線を使わないため、必ずしも診療放射線技師が検査を担当しなければならないわけではありません。しかし、近年は診療放射線技師がMRIも担当する医療機関が一般的です。
3. 診療放射線技師の平均年収
診療放射線技師の年収は、勤務先の企業(施設)規模、年齢などによって変わります。政府が公表した統計データによると、平成30年時点の38.5歳の場合、平均年収は以下のとおりです。
年齢 | 月収(きまって支給する現金給与額)×12か月 | 賞与等、その他特別給与 | 合計 |
---|---|---|---|
38.5歳 | 348,600円 | 946,700円 | 5,129,900円 |
(出典:平成30年賃金構造基本統計調査 https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html)
平均38.5歳の場合、勤続年数は10.6年となり、十分な経験や知識が身についたころです。中には管理職に就く人もおり、平均年収は500万円を超えます。また、企業(施設)規模が大きくなるにつれ収入は高くなる傾向があります。20代の場合は、男女ともに350~400万円が平均年収となっています。
これら勤務先の規模や年齢などの他、年収に影響する要素は性別になります。注意したいのが、男女格差ではなく、単純に「男性のほうが手当をもらうケースが多い」という点です。
たとえば、医師の診断や治療に欠かせない情報を提供する診療放射線技師は、当直や緊急時に対応するオンコール対応業務を含む求人が多く見られます。当直やオンコール対応するスタッフに男性の割合が高く、各手当(夜勤など)が基本給に加算されることで、以下のような男女間の収入の差につながっています。
性別 | 1か月あたりの給与 | 賞与 | 合計年収 |
---|---|---|---|
男性 | 360,000円 | 1,000,000円 | 5,320,000円 |
女性 | 310,000円 | 830,000円 | 4,550,000円 |
(出典:平成30年賃金構造基本統計調査 https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html)
年収で見ると、70万円強の収入差があります。
ただし、各手当が収入差の一因となっているため、女性も当直やオンコールなど手当のつく業務を行うことで、収入アップが見込めるでしょう。
4. 診療放射線技師に向いている人の特徴
診療放射線技師の仕事は、ただ検査業務だけ行い、結果を医師に渡すだけではありません。検査時の患者の安全対策や各機械の管理、ときには放射線治療など、患者と関わることの多い仕事です。
診療放射線技師の免許取得を目指す場合は、医療情報の管理に対する責任感を持つことや、高いコミュニケーション能力が必要です。また、以下のような人に向く職業とも言えます。
・集中力に自信がある
・好奇心旺盛
・向上心がある
・夜勤が苦にならない
病気の早期発見のためにも、隅々までしっかりと確認できる集中力や根気強さ、限られた画像情報の中で細かい部分に気づく洞察力が必要です。
また、日進月歩を繰り返す医療において、診療放射線技師も日々あらゆる変化を体験します。画像診断がフィルムからデジタル主流になったように、操作する機械も進化しています。医療技術や知識の変化についていけるように、国家試験に合格後も勉強し続けられる人でなければ、活躍することは難しいでしょう。
就きたい仕事を探すときは、仕事内容や月給・年収、将来性にばかり目がいってしまいがちです。しかし、長く続けるためには、自分自身の性格や適性も把握した上で、やりがいを感じられるような仕事を選ぶことも重要です。
診療放射線技師が自分に向いているかどうか、様々な要素から考察して検討しましょう。
5. まとめ
診療放射線技師は、レントゲン検査などX線を用いた画像検査の他、X線以外を利用するMRI検査や超音波検査も行う各種検査の専門家です。また、勤務先の医療機関によっては医師の指示のもと、放射線を利用した治療法を任されることもあります。
医療機器メーカーなど、実務経験を活かした研究職としての求人も多く、転職・就職活動における選択肢は豊富です。医療技術職のように、専門性の高い医療職に興味のある人は、目指す候補のひとつに診療放射線技師を加えてみてはいかがでしょうか。
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マイナビコメディカル編集部
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