診療放射線技師の給料について|男女・地域・勤務場所別で見る違い
診療放射線技師は、医師の指示のもとでさまざまな検査機器を扱い、レントゲン検査やCT検査、MRI検査などを担当する医療技術職です。放射線を使った検査や治療は、高度化する現代医療に欠かせない技術となっているため、診療放射線技師は今後も大きな活躍が期待できるでしょう。
本記事では、診療放射線技師に興味のある方、あるいは診療放射線技師として給料アップ、キャリアアップを目指している方に向けて、診療放射線技師の給与相場や他の職業との違い、地域・勤務場所による給料の違いなどを徹底解説します。
あわせて、診療放射線技師が年収を上げるための方法についても紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。
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目次
診療放射線技師の平均給料は?
厚生労働省が発表している「令和3年賃金構造基本統計調査」の統計データによれば、診療放射線技師の平均年収は約547万円となっています。なお、この調査における診療放射線技師の平均年齢は41.9歳、月収の平均が約37.2万円で、賞与の平均は約99.8万円でした。
医師を除いた他の医療系資格と比べた場合、診療放射線技師の平均年収である約547万円は、薬剤師の平均年収約581万円に近い金額です。看護師の平均年収が約499万円、臨床検査技師が約496万円、臨床工学技士が約423万円であることを踏まえると、診療放射線技師の平均年収は、医療系資格のなかでも高い水準だと言えるでしょう。
(出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査 結果の概況」/https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2021/index.html)
なお、マイナビコメディカルでアルバイト・パートの求人情報を調べたところ、放射線技師のなかでもマンモグラフィが業務に含まれている求人は、とくに時給が高くなる傾向にありました。また、巡回健診の単発アルバイトなども高い時給が設定されており、短い時間で高い収入を得ることができるでしょう。
必要となるスキルから平均年収まで
【就業形態別】診療放射線技師の年収
診療放射線技師は、正社員からアルバイト・パート、契約社員などさまざまな働き方を選択できます。ただし、就業形態によって勤務時間や役割が異なるため、平均的な収入額にも違いが出ることを覚えておきましょう。
以下に、就業形態別(正社員、アルバイト・パート、契約社員)に見た、診療放射線技師の年収を紹介します。
正社員で働く診療放射線技師の年収
正社員として働く診療放射線技師の年収は、約547万円です。そのうち賞与は約99.8万円で、賞与を含まない月収は約37.2万円となっています。
(出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査 結果の概況」/https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2021/index.html)
正社員(正職員)は、雇用期間を定めずに雇用主と労働契約を結んで働く就業形態であり、アルバイト・パートや契約社員に比べて、幅広い業務・役割を担います。ときには検査や治療だけでなく、新人診療放射線技師の教育を行ったり、事故防止対策を求められたりするケースもあるでしょう。したがって、年収・賞与の支給額は他の就業形態よりも高い傾向にあります。
アルバイト・パートで働く診療放射線技師の年収
アルバイト・パートとして働く診療放射線技師は、時給制で勤務するのが一般的です。
厚生労働省が発表しているデータによると、アルバイト・パートとして働く診療放射線技師の時給や賞与、実労働日数・時間は、下記の通りとなっています。
時給 | 3,074円 |
---|---|
賞与 | 約10.5万円 |
実労働日数 | 約10.4日 |
1日の所定内実労働時間数 | 約5.5時間 |
(出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査 結果の概況」/https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2021/index.html)
上記のデータをもとに算出すると、平均月収は約175,832円、平均年収は2,214,993円です。
アルバイト・パートは、正社員と違って雇用期間を定めて働く就業形態であり、短時間勤務が基本となっている点に特徴があります。求人情報では、「非常勤」として募集されるケースも多く、なかには「週2~3日程度の勤務でもOK」とする職場もあります。
契約社員として働く診療放射線技師の年収
契約社員として働く診療放射線技師の年収は約300万〜350万円です。なお、契約社員の給与額については、マイナビコメディカルに掲載されている実際の求人情報をもとに算出しています。
契約社員は、アルバイト・パートと同様に雇用期間を定めて働く就業形態です。ただし、勤務時間や役割は正社員に似ており、アルバイト・パートと正社員の中間に位置する就業形態と言ってよいでしょう。
マイナビコメディカルの求人情報でも、正社員に近い働き方をする職場から、アルバイト・パートのように「短時間勤務」「日勤のみも可能」とする職場まで、さまざまな働き方が見られました。
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【地域別】診療放射線技師の年収
診療放射線技師の年収は、就業形態だけでなく勤務する地域によっても違いがあります。
診療放射線技師に限らず、多くの職種において「人口の多い都市部のほうが年収は高い」というイメージをお持ちの方が多いかもしれませんが、実際はそうとも限りません。
ここからは、「北海道・東北地方」「関東地方」「信越・北陸地方」「東海地方」「関西地方」「中国・四国地方」「九州・沖縄地方」の7エリアに分けて、診療放射線技師の平均年収を紹介します。どのエリアで働こうか迷っている診療放射線技師の方は、ぜひ参考にしてください。
(出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査 結果の概況」/https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2021/index.html)
北海道・東北地方
都道府県 | 年収 |
---|---|
北海道 | 約540万円 |
青森県 | 約600万円 |
岩手県 | 約455万円 |
宮城県 | 約655万円 |
秋田県 | 約514万円 |
山形県 | 約513万円 |
福島県 | 約437万円 |
北海道・東北地方で、診療放射線技師の平均年収が最も高かったのは、宮城県の約655万円でした。宮城県における診療放射線技師の平均年収は、全国平均である約547万円よりも100万円以上高く、全国トップクラスと言えます。
関東地方
都道府県 | 年収 |
---|---|
茨城県 | 約501万円 |
栃木県 | 約544万円 |
群馬県 | 約503万円 |
埼玉県 | 約598万円 |
千葉県 | 約592万円 |
東京都 | 約590万円 |
神奈川県 | 約562万円 |
関東地方で、診療放射線技師の平均年収が最も高かったのは、埼玉県の約598万円でした。次いで千葉県、東京都の順に高く、いずれも590万円台となっています。また、神奈川県も全国平均を上回っており、関東地方は年収の水準が比較的高いエリアだと言えるでしょう。
信越・北陸地方
都道府県 | 年収 |
---|---|
新潟県 | 約542万円 |
富山県 | 約471万円 |
石川県 | 約515万円 |
福井県 | 約593万円 |
山梨県 | 約525万円 |
長野県 | 約482万円 |
信越・北陸地方で、診療放射線技師の平均年収が最も高かったのは、福井県の約593万円でした。次いで新潟県、山梨県の順となっていますが、このエリアで平均年収が全国平均を上回っていたのは、トップの福井県のみです。
東海地方
都道府県 | 年収 |
---|---|
岐阜県 | 約494万円 |
静岡県 | 約449万円 |
愛知県 | 約606万円 |
三重県 | 約492万円 |
東海地方で、診療放射線技師の平均年収が最も高かったのは愛知県の約606万円でした。しかし、愛知県の水準が全国平均を大きく上回っている一方で、他の3県はすべて400万円台となっており、地域間の差が大きいエリアと言えそうです。
関西地方
都道府県 | 年収 |
---|---|
滋賀県 | 約588万円 |
京都府 | 約527万円 |
大阪府 | 約563万円 |
兵庫県 | 約531万円 |
奈良県 | 約547万円 |
和歌山県 | 約578万円 |
関西地方で、診療放射線技師の平均年収が最も高かったのは、滋賀県の約588万円でした。ただし、最も低かった京都府でも平均年収は約527万円。全国平均と比べてもさほど差がなく、全体的に年収の水準が高い傾向にあります。
中国・四国地方
都道府県 | 年収 |
---|---|
鳥取県 | 約419万円 |
島根県 | 約521万円 |
岡山県 | 約449万円 |
広島県 | 約536万円 |
山口県 | 約596万円 |
徳島県 | 約473万円 |
香川県 | 約665万円 |
愛媛県 | 約503万円 |
高知県 | 約585万円 |
中国・四国地方で、診療放射線技師の平均年収が最も高かったのは、香川県の約665万円でした。ちなみに、香川県で働く診療放射線技師の平均年収は全国トップです。一方で、鳥取県は全国で最も診療放射線技師の平均年収が低く、鳥取県と香川県を比較すると約246万円もの差がありました。
九州・沖縄地方
都道府県 | 年収 |
---|---|
福岡県 | 約541万円 |
佐賀県 | 約509万円 |
長崎県 | 約493万円 |
熊本県 | 約533万円 |
大分県 | 約458万円 |
宮崎県 | 約438万円 |
鹿児島県 | 約460万円 |
沖縄県 | 約470万円 |
九州・沖縄地方で、診療放射線技師の平均年収が最も高かったのは、福岡県の約541万円でした。次いで熊本県、佐賀県の順となっていますが、全国平均の約547万円を上回っている県は1つもなく、九州・沖縄地方の半数以上が400万円台となっています。
男女・勤務場所別で見る違いを解説
診療放射線技師の給料が男女で異なる理由
続いて、診療放射線技師の平均年収を男女で比較してみましょう。男性の放射線技師の平均年収が約564万円なのに対して、女性の平均年収は約491万円となっており、約73万円の差があります。
(出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査 結果の概況」/https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2021/index.html)
同じ診療放射線技師なのに、男女の平均年収に差があるのはなぜでしょうか。大きな理由として、男女間の平均年齢の違いが挙げられます。
男性の診療放射線技師の平均年齢が43.4歳であるのに対し、女性の平均年齢は37.1歳。約6歳の差があります。診療放射線技師に限らず、多くの職業が経験年数を積むほど昇給し、年収が高くなる傾向にあるため、平均年齢が低い女性の方が男性に比べて低水準になっていると考えられるでしょう。
(出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査 結果の概況」/https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2021/index.html)
また、夜勤のある病院では、女性よりも男性のほうが夜勤をこなす回数が多く、夜勤手当の分だけ収入が高くなるという事情もあります。なお、平均年齢に差が生じる主な理由としては、結婚や出産を機に退職する女性が多いことが挙げられるでしょう。
このように平均年齢の違いや夜勤手当などが、男女間の平均年収の差につながっています。ただし、性別の違いが給与の差につながっているわけではないので、女性でも夜勤に積極的に取り組んだり、長く務めたりすることで年収アップを目指すことは可能でしょう。
勤務場所別で見る診療放射線技師の給料の差は?
診療放射線技師は、働く地域や雇用形態だけでなく、どのような施設・企業で働くかによっても給料が異なります。
ここからは、診療放射線技師の勤務場所ごとに、平均年収や仕事内容を紹介していきます。働く場所によって残業時間や手当なども変わるため、希望する働き方に合わせて職場を検討するとよいでしょう。
主な就職先6つを紹介
大学病院
大学病院における診療放射線技師の平均年収は、およそ400万~600万円です。大学病院は、他の医療機関と比べて担当領域が細かく分かれているため、担当する分野が限られるケースも少なくありません。また、学会発表があるときは、研究や準備に時間が割かれて残業が増えることもあります。
総括すると、他の医療機関と比べて給料は高い傾向にありますが、その分残業が多くなる可能性がある職場だと言えるでしょう。
国立・公立病院
国立・公立の病院での診療放射線技師の平均年収は、およそ400万~450万円です。これは放射線技師の平均給与よりもやや低い水準となっています。
ただし、国立・公立病院の放射線技師は公務員の扱いになるため、それに準じた給与・待遇、福利厚生が得られます。加えて、教育体制も充実しているため、安定性やキャリアアップを重視する志望者が多い傾向です。
民間病院
民間病院の診療放射線技師の平均年収は、およそ370万~450万円です。ただし、民間の病院は規模に差があるため、病院によって給与にも幅があります。一般的には、規模の大きい病院のほうが給与も高い傾向にありますが、こうした傾向がすべての施設に当てはまるわけではないため、詳細については求人情報で確認する必要があるでしょう。
また、残業の頻度も病院ごとに異なり、残業が多い病院ほど給与が高くなる傾向です。
クリニック・健診センター
クリニック・健診センターにおける診療放射線技師の平均年収は、およそ350万~400万円です。これは、診療放射線技師全体の平均年収よりも低い水準ですが、クリニックや健診センターでは年間賞与が低めに設定されているケースが多く、月給自体がとくに低いわけではありません。また、病院のような夜勤がないのも、クリニック・健診センターの特徴と言えるでしょう。
なお、年俸制の求人の場合は賞与が一切ないケースもあるので、気になる方はあらかじめ確認しておきましょう。
クリニック・健診センターのなかでも、診療放射線技師が1人だけの職場は、担当する職務が多く責任も大きくなります。その分、給与が高く設定されていることが多く、平均年収は380万~450万円となっています。
医療機器メーカー
診療放射線技師の有資格者の場合、専門知識を生かして医療機器メーカーで働くという選択肢もあります。そうしたケースでは、多くの方が「アプリケーションスペシャリスト」という職種に就きます。アプリケーションスペシャリストとは、簡単に言うと「画像診断装置や放射線治療装置、超音波検査装置などの医療機器を医療現場に提案し、導入サポートを行う仕事」のことです。
アプリケーションスペシャリストとして医療機器メーカーで働く方の平均年収は、およそ400万~500万円と推定され、一般的には住宅手当や残業代なども別途支給されます。
アプリケーションスペシャリストは残業や出張が多く、その分の手当が加算されるため、他の職場に比べて給与が高くなる傾向です。とくに外資系企業の場合、多いところで年収が700万円を超えるケースも見られます。
仕事内容や向いている人を解説
診療放射線技師が年収を上げるためには?
診療放射線技師は、医療系資格のなかでも比較的年収が高いほうですが、なかには「さらなる年収アップを目指したい」という方もいらっしゃるでしょう。
診療放射線技師が年収アップを目指すための主な方法として、「今の職場で管理職を目指す」「給与の高い職場に転職する」の2つが挙げられます。今の職場の働き方や雰囲気が気に入っている場合は、職場を変えずにキャリアアップ・スキルアップを目指すのが最もよい方法ですが、年収や働き方に何らかの不満を抱えているのであれば、思い切って転職するのも1つの手段です。
ただし、年収アップを目的に転職を行う際は、年収だけを見て転職先を決めないことが重要です。職場によって勤務時間やシフトは大きく異なるため、年収のよさだけを見て転職すると、慣れない働き方に苦労する可能性があるからです。転職を検討するときは、業務内容や待遇の充実度など、年収以外のポイントもしっかりチェックした上で、職場選びを行いましょう。
働きながら転職先を見つけるのは時間的な負担が大きいため、スムーズに理想の転職先を見つけたい方は、エージェントによる転職サポートを受けるのもよいでしょう。
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まとめ
診療放射線技師の平均年収は約547万円で、医療系資格のなかでは薬剤師に近い水準となっています。看護師の平均年収が約499万円、臨床検査技師が約496万円、臨床工学技士が約423万円であることを考えると、診療放射線技師は、医療系資格のなかでも比較的高収入の職種だと言えるでしょう。
ただし、診療放射線技師の平均年収を男女で比較すると、男性の方が約73万円高くなっており、そこには勤続年数の長さや夜勤の多さなどが影響しているようです。
また、勤務場所によっても給与に差があり、それぞれに仕事内容や働き方、手当なども異なります。診療放射線技師の求人を調べる場合は、勤務場所ごとの特徴についてもきちんと把握しておくようにしてください。
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監修者プロフィール
マイナビコメディカル編集部
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