地域包括ケアシステムとは?作業療法士に求められる役割を解説

更新日 2024年02月08日 公開日 2024年02月08日

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高齢化の進行によって医療・介護の需要が高まり続けるなか、厚生労働省は2025年をめどに「地域包括ケアシステム」の全国的な構築を進めています。

地域包括ケアシステムとは、介護が必要となっても慣れ親しんだ地域で自分らしい暮らしを続けられるよう、周辺地域の医療・介護サービスや行政などが協力して支える取り組みのことです。

リハビリ職である作業療法士も、地域包括ケアシステムで活躍が期待される職業の1つで、他職種と協働しながら地域の高齢者の自立支援に当たります。

この記事では地域包括ケアシステムの詳しい内容と、作業療法士が地域包括ケアシステムでどのような役割を求められているのかを解説します。

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地域包括ケアシステムとは?作業療法士に求められる役割を解説

地域包括ケアシステムとは

地域包括ケアシステムとは、介護が必要になった高齢者の方が、住み慣れた自宅などで自立した生活を続けられるように、地域ぐるみでケアする医療介護体制です。

具体的には、各自治体の地域包括支援センターが中心となって、「住まい」「医療」「介護」「生活支援・介護予防」といったサービスを包括的に提供します。

(出典:厚生労働省「地域包括ケアシステム」/https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/

2025年には約800万人の団塊の世代が75歳以上となり、その後も介護や医療を必要とする高齢者人口の増加が続くと予測されています。一方で、高齢者の介護や支援を担う人材は不足傾向にあり、需要と供給のバランスをできる限り改善することが喫緊の課題となっています。

そうしたなか、厚生労働省が主導する形で進められているのが、地域包括ケアシステムというわけです。

【関連リンク】地域包括ケアってなんだ?(1)
地域包括ケアシステムの目的

地域包括ケアシステムを構成する要素

地域包括ケアシステムは、以下の要素で構成されます。

構成要素 サービス主体 役割
医療 ・かかりつけ医、有床診療所
・地域の連携病院
・歯科医療、薬局
・病院(急性期、回復期、慢性期) など
・入院が必要な病気の場合は病院が医療を提供し、日常の医療はかかりつけ医などが行う
介護 ・在宅系サービス
・施設・居住系サービス
・介護予防サービス など
・状態に合わせた介護サービスを提供する
・自宅での生活が難しい場合は、特別養護老人ホームなどの居住系サービスを、訪問介護やリハビリが必要な場合は通所系サービスを提供する
住まい ・自宅
・サービス付き高齢者向け住宅 など
・住み慣れた地域で、高齢者の尊厳とプライバシーを守りながら、その人らしい生き方ができる住環境や地域環境を提供する
生活支援
介護予防
・NPO
・ボランティア
・民間企業
・自治会 など
・見守りや家事支援など、高齢者の日常生活を支援する
・高齢者が積極的に社会参加できる場を作る

(出典:厚生労働省「介護予防・日常生活支援総合事業の基本的な考え方」/https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000192996.pdf

こうした要素が切れ目なく一体的に提供されるように、相談業務やサービスのコーディネートを行うのが地域包括支援センターです。

地域包括ケアシステムは、必要なサービスなどを住民に対して、おおむね30分以内に提供できるように設計されています。

システムを支える「地域包括支援センター」

地域包括支援センターとは、高齢者の暮らしをサポートするために各市町村に設置されている総合相談窓口です。対応可能な相談内容は、日常のちょっとした心配事から、病気やリハビリ、介護保険制度など多岐に渡ります。高齢者本人はもちろん、高齢者を支える方が介護の悩みを相談することも可能です。

そのため、地域包括支援センターでは社会福祉士や保健師、主任ケアマネジャー(主任介護専門支援員)などの専門スタッフが連携しながら地域支援を行っています。地域の高齢者が安心して健康的に生活できるよう、行政機関や介護老人福祉施設などの事業所とも協力して包括的にサポートする点が、地域包括支援センターの特徴です。

(出典:厚生労働省「地域包括ケアシステム」/https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/

2022年4月時点で全国に5,404か所の地域包括支援センターが設置されており、地域包括ケアシステムを支える拠点として機能しています。

(出典:厚生労働省「地域包括支援センターについて」/https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001203027.pdf

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地域包括ケアシステムにおける作業療法士の役割とは

地域包括ケアシステムにおいて、作業療法士をはじめとしたリハビリ職に求められているのは、以下の役割です。

・介護が必要な方の尊厳の維持
・自立生活の支援
・一人ひとりの「暮らし」や「生きがい」づくり
・効果的な介護予防
・ケアマネジメント支援
など

目標を達成するために、作業療法士の方がすべきことについて、以下の資料を参考に解説します。

(出典:一般社団法人日本作業療法士協会 地域包括ケアシステム推進委員会「地域包括ケアシステム参画の手引き 第1版」/https://www.jaot.or.jp/files/page/wp-content/uploads/2019/07/chikitebiki-1.pdf

(出典:一般社団法人日本作業療法士協会「地域包括ケアシステムにおける作業療法士の役割」/https://www.jaot.or.jp/files/page/wp-content/uploads/2018/06/tiikihoukatu-otyakuari.pdf

【関連リンク】地域包括ケアってなんだ?(2)
地域包括ケアシステムでのセラピストの役割とは?

他の医療・介護職と連携する

地域包括ケアシステムを適切に運用するためには、医療と介護分野を横断した包括的な支援を行うことが重要です。そうしたなかで重要な役割を果たすのがサービス担当者会議です。

サービス担当者会議では、さまざまな職種の担当者が利用者さまのケアプランについて情報や資料を共有し、課題の有無や改善点について意見を出し合います。

会議で作業療法士に求められるのは、利用者さまの生活状況に応じた具体的な自立支援の方法や、認知症の方へのアプローチなどに関する助言です。

作業療法士の意見が効果的なサービスの提供・実践につながるため、果たす役割は大きいと言えるでしょう。

(出典:厚生労働省「介護予防・日常生活支援総合事業のガイドライン」/https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000957652.pdf

行政・地域包括支援センターと連携する

地域包括ケアシステムの実現には、地域ぐるみで住民の生活を支援できる体制が必要です。そうした体制づくりを実現するために、厚生労働省は行政、医療、介護などの多職種が連携・協働できる「地域ケア会議」の取り組みを推進しています。

地域ケア会議は主に地域包括支援センターが主催し、行政職員やケアマネジャー、介護事業者、医師、看護師、理学療法士、作業療法士など、さまざまな関係者が参加します。

地域ケア会議の目的は、実際の事例を分析することで地域に共通する課題を明確化し、「高齢者個人に対する支援の充実」と、それを支える「社会基盤の整備(地域づくり)」を進めていくことです。そのため、作業療法士には「利用者さまの生活の自立を妨げている要因を明確にする」役割が求められます。

(出典:厚生労働省「地域ケア会議について」/https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/dl/link3-1.pdf

生活行為向上マネジメント(MTDLP)を実施する

生活行為向上マネジメント(MTDLP)は、日本作業療法士協会が地域包括ケアシステムへの貢献を視野に入れて開発したツールです。

MTDLPを行う際は、まず本人や家族へ聞き取りを行い、「やりたいけれどできなくなった」など、作業療法の目標となる生活行為を評価。その後、利用者さまが作業療法に主体的に取り組めるように、PDCAサイクルの手法なども取り入れながらリハビリを進めます。

利用者さまが積極的・意欲的に生活を営めるよう支援することは、地域包括ケアシステムの目的と合致するものと言えるでしょう。

(出典:一般社団法人 日本作業療法士協会「生活行為向上マネジメント(MTDLP)とは?」/https://www.jaot.or.jp/ot_support/mtdlp/whats/

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地域包括ケアシステムの具体的な事例

以下では、作業療法士が地域包括ケアシステムに貢献した具体例を2つご紹介します。

在宅看取(みと)りができる地域づくりのための「玉東町デスカンファレンス」の開催
(熊本県 玉東町)

熊本県玉東町の地域包括支援センターは、町内の在宅療養支援診療所、介護福祉事業所などと協働しながら、「玉東町デスカンファレンス」を開催しています。これは、在宅での看取り介護経験がある関係者に、具体的なケアの内容、当事者や家族の様子を共有してもらうカンファレンスです。

カンファレンスには作業療法士、理学療法士や医師、看護師のほか、遺族や一般住民など幅広い方が参加して、病院ではなく自宅で療養し、看取りまで行う「看取り地域包括ケアシステム」の構築を目指しています。

地域包括ケアシステム構築に向けた在宅医療・多職種連携の推進と地域ケア会議の開催
(千葉県 柏市)

千葉県柏市は、「いつまでも住み慣れた地域で暮らすことができる社会」を目指し、包括的な在宅医療の体制整備を進めています。

その取り組みの一環として開催されている「在宅医療多職種連携研修」には、市内の作業療法士や理学療法士のほか、医師や歯科医師、薬剤師、看護師、管理栄養士などが参加。医療・介護資源の現状や認知症患者の在宅ケアなどについて学んでいます。

(出典:厚生労働省「地域包括ケアシステムの構築に関する事例集」/https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/chiiki-houkatsu/

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まとめ

地域包括ケアシステムとは、高齢者が自立した生活を送るのに必要なサービスを地域が包括的に提供する体制です。

作業療法士は地域包括ケアシステムにおいて、行政や地域包括支援センター、他職種と連携を取りながら、リハビリを提供していくことになります。その際に有効なツールとなるのが、日本作業療法士協会が開発した生活行為向上マネジメント(MTDLP)です。「名称は知っているが、詳細についてはよくわからない」という方は、この機会に学んでみてはいかがでしょうか。

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※当記事は2023年5月時点の情報をもとに作成しています

監修者プロフィール

マイナビコメディカル編集部

 

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