老人ホームで働く作業療法士の仕事|必要なスキルや給与も解説
リハビリテーションの専門職である作業療法士は、医療分野や介護分野など、さまざまな職場で働いています。そのなかにあって、病気や加齢などで自宅での生活が難しくなった高齢者が入居する「老人ホーム」も、作業療法士が活躍できる職場の1つです。作業療法士にとって老人ホームは、リハビリの知識やスキルを大きく生かせる職場と言えるでしょう。
当記事では、作業療法士が活躍できる、代表的な老人ホームを4種類紹介するとともに、作業療法士が行うリハビリの内容や、求められるスキルについても解説します。老人ホームでの仕事に興味のある作業療法士の方は、ぜひ当記事を参考にしてください。
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目次
作業療法士が特に活躍できる老人ホームは?
入居者に対するリハビリの提供は、老人ホームにとって欠かせない業務です。そのため、老人ホームでは作業療法士をはじめとする、多くのリハビリ職が働いています。また、老人ホームに入居する高齢者のなかには、受けられるリハビリの内容を重視して施設を選ぶ方もいらっしゃるため、十分なリハビリを提供できるように体制を整えている施設も多く見られます。
ここでは、たくさんの種類がある老人ホームのなかから、作業療法士が活躍できる代表的な施設を4つご紹介します。
介護老人保健施設
介護老人保健施設(老健)は、入院の必要はなくなったものの、在宅での生活に不安が残る利用者さまに対して、身体介護や生活援助、医療・看護ケア、健康管理、リハビリなどを提供する施設です。
在宅復帰に向けた支援が目的のため、長期入院後から自宅に戻るまでの間に利用されることが多く、入居期間は一般的に3~6か月程度です(3か月ごとに退所できるか、継続して入居するのが望ましいかの審査が行われます)。
(出典:公益社団法人 全国老人保健施設協会「老健施設とは」/https://www.roken.or.jp/about_roken)
介護老人福祉施設
介護老人福祉施設は、重度の心身障害により在宅生活が困難な高齢者に対して、日常生活全般の介護を提供する公的施設で、「特別養護老人ホーム(特養)」とも呼ばれます。
公的な施設のなかでも特に費用が安いため、入居を希望する方が多く、入居までに長期間の待機が必要なケースもあります。
入居の対象者は、やむを得ない場合を除いて要介護3以上の認定を受けた方です。また、緊急性が高い方から、入居が優先されます。
(出典:厚生労働省「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」/https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group14.html)
介護医療院
介護医療院は、要介護者の長期療養と日常生活上の支援を目的とした施設で、2024年度に廃止が決まっている「介護療養型医療施設(療養病床)」の役割を引き継ぐために創設されました。
介護医療院には、医師の配置が義務付けられており、他の介護施設では対応できない痰の吸引や経管栄養といった日常的な医学管理や看取りの対応なども行います。また、施設内には医療設備に加えて、機能訓練室やレクリエーションルーム、談話室などもあり、医療ニーズのある要介護者の生活を「医療と介護の両面から支える施設」だと言えるでしょう。
今後、慢性期の医療や介護のニーズはさらに増加することが予想されており、医療と介護のサービスを一体化して提供する介護医療院に対する期待は、ますます高まりそうです。
(出典:厚生労働省「介護医療院とは?」/https://www.mhlw.go.jp/kaigoiryouin/about/)
有料老人ホーム
有料老人ホームは、入居する高齢者に「食事」「介護」「家事」「健康管理」のうち1つ以上を提供する施設です。介護を提供する「介護付有料老人ホーム」と、自立・要支援または要介護度が低い高齢者向けの「住宅型有料老人ホーム」、介護を必要としていない高齢者向けの「健康型有料老人ホーム」の3タイプがあり、それぞれにサービス内容が異なります。
民間施設である有料老人ホームは、公的施設に比べて設備やサービス内容が充実しており、その分入居金が高めの施設も多く見られます。有料老人ホームの場合、リハビリスタッフの配置は自由ですが、理学療法士、作業療法士が常駐するなど、リハビリに力を入れている施設も目立ちます。
(出典:厚生労働省「有料老人ホームの概要」/https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12600000-Seisakutoukatsukan/0000038009_1.pdf)
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作業療法士が老人ホームで行うリハビリとは?
老人ホームで働く作業療法士は、高齢者の生活能力を維持・向上させられるように、生活全般のリハビリを行います。
ここからは、作業療法士が老人ホームで行う「個別リハビリ」「集団リハビリ」「生活リハビリ」について具体的に紹介します。
個別リハビリ
個別リハビリは、利用者さまと1対1で行うリハビリを指します。1人ひとりに合ったペースや心身の状況を評価した上で、より効果の高いリハビリを提供できるのが、個別リハビリのメリットです。
老人ホームでは、大勢の利用者さまを少数の作業療法士で担当するケースが多く、個別リハビリの時間が取りにくい傾向にあります。ただし、介護老人保健施設のようにリハビリを重視している施設では、個別リハビリが積極的に行われています。
集団リハビリ
集団リハビリは、複数名の利用者さまでグループをつくり、各種レクリエーションや口腔体操、筋力トレーニングなどを行うリハビリです。
集団リハビリでは、利用者さまが積極的かつ気軽に取り組めるプログラムを考案・実施するのが作業療法士の役割となります。そのため、日頃から利用者さまそれぞれの身体機能や活動能力を確認しておく必要があるでしょう。
生活リハビリ
生活リハビリとは、食事、更衣、排泄、入浴などの生活動作をリハビリととらえ、生活場面で適切な介助を行いながら、利用者さまの自立した生活を支援することです。体操などで体を動かすのが苦手な方にも、取り組みやすいリハビリと言えるでしょう。
利用者さまが、できる限り自分の力で食事や着替え、移動といった動作を行えるようにサポートするため、作業療法士は居室の環境整備や福祉用具の選定、介護スタッフへの介助方法の指導なども行います。
仕事内容について
老人ホームで働く作業療法士に求められるスキルは?
高齢化が進むなか、老人ホームにおける作業療法士の需要は、ますます高まると予想されます。
老人ホームをはじめとする介護の現場に求められるのは、「利用者さまそれぞれの能力を生かしつつ、生活全般のリハビリに幅広く対応できる人材」です。ここでは、老人ホームで働く作業療法士に必要なスキルをチェックしてみましょう。
- ・利用者に合ったリハビリを提供する対応力
老人ホームで生活される利用者さまの疾患や生活背景はさまざまです。また、高齢者の心身の状況は日々変化しやすいため、常にその方に最適なリハビリや介助方法を提案し、対応していく力が求められます。
- ・総合的なサポート力
病院とは違い、老人ホームにはリハビリ職員の配置が少なく、施設に作業療法士が一人だけというケースもあります。そのため作業療法士には、専門領域以外もカバーする総合的なサポート能力が求められます。未経験の方よりも、ある程度の実務実績がある方のほうが、経験を生かした対応力を武器にできるでしょう。
- ・他職種と連携するコミュニケーション力
老人ホームで働く作業療法士は、利用者さまとのコミュニケーションはもちろん、他の職種とのコミュニケーションも不可欠です。利用者さまと身近に接している介護スタッフから情報を収集したり、リハビリの専門職として介護スタッフにアドバイスしたりする場面も多いでしょう。多職種で連携しながら、チームで利用者さまにアプローチしていくためには、日頃からコミュニケーション力を磨いておくことが大事です。
- ・認知症への対応力
老人ホームには認知症の高齢者も入居されており、そうした方々への対応も作業療法士に期待される役割の1つです。老人ホームは日常生活を送る場所であり、作業療法士が行う生活に密着したリハビリは、認知症の方にとって自信や安心につながりやすい活動と言えます。個々の状況に合わせたリハビリを行い、生活能力の維持向上を目指しましょう。
(出典:一般社団法人 日本作業療法士協会「認知症の方への作業療法」/https://www.jaot.or.jp/ot_alzheimer/)
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老人ホームで働く作業療法士の給与
老人ホームで働く作業療法士の給料や待遇が気になる方もいらっしゃるでしょう。厚生労働省の「令和3年度賃金構造基本統計調査」によると、作業療法士の平均年収は427万円です(ただし、これは作業療法士に理学療法士、言語聴覚士、視能訓練士を加えた4職種の平均値です)。
(出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査 結果の概況」/https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2021/index.html)
マイナビコメディカルをはじめとする求人情報を見てみると、老人ホームで勤務する作業療法士の年収は、約350~450万円が相場となっています。多くの求人で通勤手当や家族手当、資格手当などが用意されており、福利厚生や各種保険も充実しています。
勤務形態は日勤がほとんどで、夜勤や早出、遅出勤務といった変則勤務はほとんどありません。休日は「シフト制」「土日休み」「日曜だけ休み」などさまざまですが、残業が発生する職場は少なく、仕事とプライベートを両立できる職場が多い傾向です。
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まとめ
リハビリを提供している老人ホームは数多く、作業療法士が行う「日常生活に密着したリハビリ」は、高齢者の生活の質を上げるのに非常に効果的です。ただし、老人ホームではリハビリ職の配置人員が少ないため、総合的なリハビリ知識を求められるケースも多く見られます。リハビリの経験を積んで、さまざまな対応力を身に付けた作業療法士は、老人ホームで活躍できるでしょう。
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※当記事は2022年12月時点の情報をもとに作成しています
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