作業療法士(OT)の年収・給料と将来性について

最終更新日:2018年6月14日

作業療法士とは、心や身体に障害がある人、あるいはそれが予測される状況にある人に対し、よりその人らしい満足できる生活の獲得を図るために、対象者の目標や興味、生活歴などに配慮した治療、訓練、指導を行う専門職(国家資格)です。一度資格を取得すれば生涯更新を必要としないこともあり、高齢化社会が加速する中、今後ますます需要が高まる職種の一つとされています。ここでは、作業療法士の年収と将来性、活躍分野について紹介します。

1. 作業療法士の平均年収と初任給の相場

厚生労働省が平成28年11月に公表した「賃金構造基本統計調査」の結果によると、作業療法士の平均年収(正社員)は、420万円程度です。
企業規模別に見ると、従業員数1,000人以上の職場に勤務する作業療法士の平均年収は423万円で最も高く、従業員数10~99人の職場に勤務する作業療法士で414万円、従業員数10人以下の職場で407万円、従業員数100人~999人の職場で407万円というように、勤務する職場の規模によっても年収に違いがあることが分かります(※1)。

作業療法士の平均年収統計

従業員数 ~10人 10〜99人 100〜999人 1,000人以上
平成28年調査
(単位:万円)
407万円 414万円 407万円 423万円

※1参考:作業療法士の平均年収(従業員規模別)平成28年度賃金構造基本統計調査より

また、年代・性別によっても異なり、例えば30代男性の平均年収は450万円前後、30代女性は412万円前後。年収がピークを迎える50歳代の平均年収は、男性で600万円、女性で500万円程度となっています(※2)。

男女別 作業療法士の平均年収統計

男性 20代
前半
20代
後半
30代
前半
30代
後半
40代
前半
40代
後半
50代
前半
50代
後半
平成28年
調査
326 395 431 468 486 486 482 708
年代平均
(単位:万円)
360.5 449.5 486 595
女性 20代
前半
20代
後半
30代
前半
30代
後半
40代
前半
40代
後半
50代
前半
50代
後半
平成28年
調査
324 386 391 434 466 461 488 511
年代平均
(単位:万円)
355 412.5 463.5 499.5

参考:年代・男女別年収 平成28年度賃金構造基本統計調査より
※2 年収の算出方法:決まって支給する現金給与額×12ヵ月+年間賞与その他特別給与額
※2 調査結果には理学療法士のデータも含む。

最近の年収傾向と今度の予測

作業療法士の年収は、薬剤師、診療放射線技師、臨床検査技師といった医師・看護師以外の医療従事者(コメディカル)の平均年収と比較すると、中位~やや低位レベル、全業種との比較では中位レベルに位置づけられます。過去5年、10年の調査結果を見ても大幅な増減は見られず、ほぼ横ばい状態です。少子高齢化の影響により、社会保障費の抑制傾向がますます加速する最中、今後もこの傾向が続く可能性が高いと考えられるでしょう。

しかしながら、これらの調査結果と、実際に病院や施設で活躍する作業療法士の実感値に差異があるのも事実です。日本作業療法士協会の調査によると、例えば、作業療法士が勤務する職場の規模(従業員数)別の平均年収を見ると、従業員数10人~99人、および1,000人以上の職場で増収傾向が見られます。また、有資格者の約4割を20代、平均勤続年数が5~6年に留まるうえ、女性が全体の約7割を占める専門職集団であることも、平均年収の数字を下げる理由として加味すべきでしょう。殆どの作業療法士に夜勤がなく、医師や看護師と比べると諸手当の部分で差がつきやすいのも理由の一つです。

ワークライフバランスの充実

将来的に、大幅な年収アップは期待できないかもしれません。それは、医療機関・介護施設の売り上げ、ひいては作業療法士の給与額に直結するといっても過言ではない高齢社会の現状や、診療・介護報酬の動向が明らかであるからです。しかし、多くの作業療法士が、何らかの形で作業療法の仕事に携わることができています。日本作業療法士協会の調査によると、作業療法士全体の約9割が作業療法士として何らかの職務に就いており、「生涯、作業療法士」として働く傾向が強いことが分かります。その結果として、この仕事は定年退職まで安定した収入を得ることができる職種として、前向きに捉えることができるのではないでしょうか。

「生涯、作業療法士」として働くことができる背景には、様々な理由が考えられます。中でも、作業療法士の仕事が「ワークライフバランス(仕事と生活の調和)」を図りやすい職種である点は、是非とも注目しておきたい要素です。実際に現場で働いている作業療法士の声を拾ってみると、「365日体制の職場だが、完全シフト制で平日休みも可。「プライベートとの両立が図りやすい」「女性が多い職場なので、子育てや家庭との両立に理解がある」「研修や学会参加のために休暇を取得できる」等々、まさに理想的な働き方を実践している作業療法士が多いと感じられました。

また、作業療法士の資格は、一度取得すれば生涯更新が不要なうえ、作業療法士の採用に積極的な職場が全国各地に点在し、今後増えることが予測されるという点も、ワークライフバランスの充実に大きな影響を与えます。例えば、女性が妊娠や出産を理由に仕事を離れブランクが生じてしまったとしても、再就職先が見つからないというケースは稀です。そろそろ地元に戻りたい、転居先でも作業療法士の仕事を続けたいという希望も叶えやすいでしょう。また、「体力的に厳しい」「人数の多い職場で人間関係に悩みたくない」といった理由があっても、パートタイマー(非常勤)や小規模事業所での勤務など、多様な就労環境の中から自分に合った職場を選択できるメリットがあります。例えば、バタバタと時間に追われる急性期病院の勤務から相談・個別支援メインの福祉領域へ転職というように、分野や作業療法の対象を変えて仕事とプライベートの両立を図るケースは珍しくないのです。

2. 作業療法士の活躍の場が拡がる

かつて作業療法士の養成校を卒業する頃、就職先といえば「身体障害」「精神障害」「発達障害」の3分野に分散するのみでした。いずれも医療機関が占めていたのも当時の特徴です。その後、介護保険制度が創設や医療・障害者福祉関連の制度改正とともに、作業療法士を取り巻く状況は目まぐるしく変化していきました。現在では、新卒の作業療法士が目指す領域は、医療機関に限りません。介護事業所、児童福祉施設、自治体の保健センターなど、作業療法士を求められる分野が広がっています。

時代の変化に応じ、作業療法士養成校のカリキュラムも徐々に変化を遂げていきました。4年制大学での教育や修士・博士号を取得する環境も整えられ、職業としての作業療法から学問としての作業療法として、社会的な地位を確立していきます。大学で教鞭をとる作業療法士、医療・福祉分野における研究開発に携わる作業療法士など、その専門性と学問的基盤を活かした活躍が期待されています。

「社会起業家」として、身近な地域住民が抱える問題の解決に取り組む作業療法士の増加も見られます。例えば、2011年の東日本大震災の後には、有志者が任意団体を立ち上げ被災者の生活支援や介護予防に向けた指導を継続的に行ったり、リハビリテーションの専門家が少ない地域で、訪問リハビリテーション事業を行ったりという活躍が、多くの被災住民の健康を支えました。また、高齢者や成人だけではなく、子どもの分野にも活躍が及んでいます。特に、不登校や引きこもり、ニートといった問題に発展しやすい発達障害児の支援では、個別に作業療法士による訓練・指導が、より早期に受けられるよう事業所を開設するなど、積極的な介入が行われています。

晩産化・非婚化を背景に、さらに加速化する少子高齢社会。2040年には、1人の若者(現役世代)が1人の高齢者を支える「肩車型社会」が訪れることが予測されており、その費用負担を抑えるべく「健康寿命の延伸(健康で長生きする人の増加)」や「病気や障害があっても医療や介護に頼らない自立した生活が送れる社会」の実現が最優先課題として掲げられています(※3)。

胴上げ型から騎馬戦型、肩車型への推移の推計 図 説明
胴上げ型から騎馬戦型、肩車型への推移の推計 折れ線グラフ

※3参考:財務省HP「社会保障の維持・充実」資料を加工して作成

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