認定作業療法士はどんな資格?必要な能力や取得方法を解説
作業療法士は、リハビリテーション専門職の国家資格であり、試験に合格することで病院や介護施設、障害者施設など幅広いフィールドで活躍できます。また、「これまでの勤務経験を生かしてステップアップを図りたい」「専門性をさらに高めたい」という方のために、作業療法士の上位資格も用意されています。
作業療法士の代表的な上位資格として挙げられるのが、「認定作業療法士」です。認定作業療法士の資格を取得すれば、他の作業療法士との差別化を図ることができ、より責任ある仕事を任されるようになるでしょう。
今回は、認定作業療法士の基礎知識として、資格の詳細や必要な能力、資格の取得方法、資格取得のメリットなどを詳しく紹介します。作業療法士としてスキルアップを目指したい方は、ぜひご覧ください。
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認定作業療法士とは?
認定作業療法士は、一般社団法人 日本作業療法士協会によって「作業療法に関する各能力・技術が一定水準を超えている」と認められた作業療法士に与えられる資格です。これは作業療法士の上位資格にあたるもので、「作業療法についての高い専門性を有していることの証」でもあります。
認定作業療法士の資格制度は、作業療法士全体の質向上に向けた生涯学習プログラムの1つとして2004年に創設されました。なお、認定作業療法士の資格制度がスタートした5年後の2009年には、認定作業療法士の上位資格として「専門作業療法士」も創設されています。専門作業療法士とは、特定の専門分野において高度かつ専門的な実践能力・課題解決能力を有する作業療法士に与えられる資格です。
(出典:一般社団法人 日本作業療法士協会「認定作業療法士制度」/https://www.jaot.or.jp/files/page/wp-content/uploads/2012/10/ninnteiot-seido-shutokuyouken.pdf)
2022年9月時点における、全国の認定作業療法士数は1,327人でした。2019年度の日本作業療法士協会会員数が62,294人であることを考えると、認定作業療法士数はまだまだ人数が少ない「貴重な存在」だと言えます。
(出典:一般社団法人 日本作業療法士協会「2019年度 日本作業療法士協会会員統計資料」/https://www.jaot.or.jp/files/page/jimukyoku/kaiintoukei2019.pdf)
(出典:一般社団法人 日本作業療法士協会「認定作業療法士一覧」/https://www.jaot.or.jp/member/ninteiList/qualificate/)
作業療法士と認定作業療法士とで、仕事内容が大きく変わることはありませんが、認定作業療法士の資格を取得することは、作業療法士としての知識・技術を磨くこと(あるいは、根拠にもとづいた知識・技術を身につけること)につながります。そのため、自信を持って臨床に臨んだり、後輩作業療法士の教育にあたったりできるようになるでしょう。
さて、認定作業療法士は「作業療法に関する各能力を一定水準以上有した作業療法士」に与えられる資格だと説明しましたが、なかには「作業療法士に関する各能力」の概要について、把握できていない方もいるかもしれません。ここからは、認定作業療法士に必要とされる各能力について紹介していきます。
認定作業療法士に必要とされる能力は?
認定作業療法士に必要とされる能力として、「臨床実践能力」「教育能力」「研究能力」「管理運営能力」の4つが挙げられます。各能力の詳細は、次の通りです。
臨床実践能力 | ●各領域、病期における対象者に対して、「作業療法評価・介入・効果測定」という一連の流れを実践する能力 ●多職種連携や社会資源の活用、行政制度の利用を含めた継続的な作業療法を提供・展開する能力 |
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教育能力 | ●学校や養成施設における教員としての教育能力 ●職場の指導者、後輩育成者としての教育能力 |
研究能力 | ●日々の臨床実践経験にもとづき、実践報告や作業療法学の発展に向けた研究を実施できる能力 |
管理運営能力 | ●作業療法に関する各種制度を理解し、臨床実践における共通知識と生涯学習の意義への理解を深めた上で、職場における管理運営や協会発展に寄与できる能力 |
(出典:一般社団法人 日本作業療法士協会「認定作業療法士制度」/https://www.jaot.or.jp/files/page/wp-content/uploads/2012/10/ninnteiot-seido-shutokuyouken.pdf)
認定作業療法士の資格を取得するには?
認定作業療法士になるためには、①臨床経験年数が通算で5年以上あること、②日本作業療法士協会の会員歴が通算で5年以上あること、③各都道府県作業療法士協会の正会員であること、④日本作業療法士協会が指定する研修・事例報告を修了していることが前提です。これらの条件を満たさないと、認定作業療法士の受験資格は得られません。
ここからは、研修と認定作業療法士の取得要件について、より詳しく説明します。
基礎研修を修了する
基礎研修とは、作業療法士として臨床実践に臨むにあたって、基礎的な共通知識の学習・生活学習の意義や方向性のさらなる理解を目的に行われるものです。基礎研修には「現職者共通研修」と「現職者選択研修」の2つのプログラムがあります。
現職者共通研修は、全10テーマからなる基礎研修です。1テーマあたりの研修時間は90分となっています。
2. 作業療法における協業・後輩育成
3. 職業倫理
4. 保健・医療・福祉と地域支援
5. 実践のための作業療法研究(旧:エビデンスと作業療法実践)
6. 作業療法の可能性
7. 日本と世界の作業療法の動向
8. 事例報告と事例研究(旧:事例検討方法論)
9. 事例検討
10. 事例報告
(引用:一般社団法人 日本作業療法士協会「基礎研修制度」/https://www.jaot.or.jp/files/page/wp-content/uploads/2014/04/kisokenshuu-seido-shuuryou2016.pdf/引用日2022/09/24)
一方の現職者選択研修は、4領域のうち1領域以上を選択して受講する研修です。1領域あたりの研修時間は6時間以上となっています。
2. 精神障害領域の作業療法
3. 発達障害領域の作業療法
4. 老年期領域の作業療法
(引用:一般社団法人 日本作業療法士協会「基礎研修制度」/https://www.jaot.or.jp/files/page/wp-content/uploads/2014/04/kisokenshuu-seido-shuuryou2016.pdf/引用日2022/09/24)
現職者共通研修、現職者選択研修は、作業療法士協会への入会から5年以内に受講する必要があります。
しかし、5年以内にすべてを受講することができなかった場合でも、基礎ポイントが50ポイントに達していれば認定作業療法士の申請は可能です。基礎ポイントは、研修会や学会に参加者、講師、ファシリテーター、発表者として参加することで付与されます。
(出典:一般社団法人 日本作業療法士協会「生涯教育制度 2020 制度の概要と解説」/https://www.jaot.or.jp/files/page/kyouikubu/shougaikyouikutechoudensiban.pdf)
認定作業療法士の取得要件を満たす
認定作業療法士の取得要件として、基礎研修を修了したのちに「共通講座を2講座、選択研修を2講座受講し、事例報告を3例提出すること」が求められます。
【共通講座・選択研修について】
共通講座 | (1)研究法 (2)管理運営法 ※以前あった「教育法」は2020年度に廃止 |
---|---|
選択研修 | (1)身体障害領域 (2)精神障害領域 (3)発達障害領域 (4)老年期障害領域 ※上記の4領域から2領域(講座)を選択 |
(出典:一般社団法人 日本作業療法士協会「生涯教育制度 2020 制度の概要と解説」/https://www.jaot.or.jp/files/page/kyouikubu/shougaikyouikutechoudensiban.pdf)
各講座を受講したら、協会の学術部が管理・運営している「事例報告登録制度」というシステムを使って、定められた3事例を作成・登録しなければなりません。ただし、2事例までは、学会で発表した研究論文などで代替可能です。3事例を提出し、審査に合格すれば、認定作業療法士資格の取得申請ができるようになります。
繰り返しになりますが、申請には5年以上の臨床実践経験と、日本作業療法士協会・各都道府県の作業療法士会員であることが求められる点にも留意しておきましょう。
(出典:一般社団法人 三重県作業療法士会「認定作業療法士制度」/http://mieot.com/wp/wp-content/uploads/2020/06/ebff19acade0adde20f3e90a53088045.pdf)
なお、認定作業療法士資格は5年ごとの更新が必須です。更新するには、下記の4つの要件を満たしつつ、認定作業療法士更新ポイントを100ポイント以上集める必要があります。
項目 | 要件 | 合計 |
---|---|---|
基礎研修ポイント | 25np以上 ※1基礎ポイントは1npに該当 |
100np以上 |
実践報告 | 25np以上 ※1回につき25np |
|
後輩育成経験 | あわせて25np以上 ※1回につき5np |
|
社会的貢献 |
(出典:一般社団法人 日本作業療法士協会「生涯教育制度 2020 制度の概要と解説」/https://www.jaot.or.jp/files/page/kyouikubu/shougaikyouikutechoudensiban.pdf)
※npは認定作業療法士更新ポイントのこと
4つの領域と主な就職先を紹介
認定作業療法士を取得するメリットは?
認定作業療法士資格を取得することには、下記のようなメリットがあります。
●自らの専門性を高められる
認定作業療法士の資格取得は、自らの専門性を高めることにつながります。全国における認定作業療法士数が約6万人を超えるなか、認定作業療法士数は1,300人程度。それを考えると、資格取得は決して簡単なものではありません。そのため、自身の成長やキャリアアップにつながることはもちろん、周囲からも専門性を評価されやすくなるでしょう。
●就職で有利になる可能性がある
今後、医療広告の規制緩和によって、多くの病院が認定作業療法士の存在をアピールするようになると考えられます。また、養成施設では教員配置の要件として、「認定作業療法士が複数人所属していること」と定められており、病院・養成施設における認定作業療法士の需要はさらに高まりそうです。そのため、認定作業療法士の資格を取得することで、就職・転職が有利になる可能性もあります。
(出典:一般社団法人 日本作業療法士協会「「認定作業療法士」や「専門作業療法士」のメリットは何でしょうか。」/https://www.jaot.or.jp/about/faq/detail/126/8803-g/)
(出典:一般社団法人 日本作業療法士協会「作業療法士教育の教育水準」(改訂第5版)/https://www.jaot.or.jp/files/page/kyouikubu/kyouikusuijyun5han.pdf)
このように認定作業療法士の資格を取得し、キャリアアップを図ることは、今後の働き方や収入によい影響を与えるでしょう。
高齢化が進むなか、作業療法士の需要は右肩上がりに伸びています。働きながらでも、認定作業療法士資格の取得を目指すことは十分可能なので、みなさんもチャレンジしてみてはいかがでしょうか。「認定作業療法士の資格取得を目指したいけど、今の職場じゃ難しそう」という場合は、思い切って転職を検討してみるのも1つの手段です。
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まとめ
認定作業療法士とは、「作業療法に関する各能力が一定水準を超えている」と認められた作業療法士に与えられる資格です。認定作業療法士は作業療法士の上位資格にあたり、国内でも一握りしかいない貴重な存在となっています。
作業療法士が認定作業療法士の資格取得を目指す場合は、5年以上の実務経験に加えて、定められた研修・講座を修了した上で、事例報告を提出するなど、さまざまな取得要件を満たす必要があります。決して簡単に取得できる資格ではありませんが、働きながら取得に向けて動いている作業療法士の方も多くいます。スキルアップを目指す方は、ぜひチャレンジしてみてください。
「今の職場では、働きながら資格取得を目指すのは難しい」という方は、思い切って転職を検討してみるのも手です。全国の作業療法士求人を豊富に掲載する就職・転職サイト「マイナビコメディカル」では、無料転職サポートサービスとして、マッチ度の高い求人情報の紹介や応募書類の添削、年収交渉などを行っております。転職に少しでも不安のある方は、業界に精通したキャリアアドバイザーにお気軽にご相談ください。
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※当記事は2022年9月時点の情報をもとに作成しています
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