専門作業療法士とは?資格取得方法と各専門分野について解説

更新日 2023年04月19日 公開日 2023年04月22日

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作業療法士は、高齢者や障害者のリハビリテーションに携わる専門職であり、病院や介護施設、障害者施設などでさまざまな機能訓練を提供します。高齢化が進む現在、作業療法士の需要は右肩上がりで伸びており、この傾向は今後も続くと予測されています。

作業療法士の需要増加によって、多くの方が作業療法士を目指すなか、より活躍できる作業療法士になるためには「専門性を高めること」が非常に重要と言えます。そして、「もっと自身の専門性を高めたい」「スキルアップしたい」と考える作業療法士に注目されているのが、「専門作業療法士」の資格です。

今回は、専門作業療法士の概要から、資格取得に必要な実践内容、専門作業療法士の活躍分野までを詳しく紹介します。「社会に求められる作業療法士になりたい!」という方は、ぜひ参考にしてください。

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専門作業療法士とは?

専門作業療法士とは、認定作業療法士資格を保有する方のうち、特定の分野において高度かつ専門的な実践能力、課題解決能力を有していると認められた作業療法士のことです。専門作業療法士は、作業療法士の質の向上を目的として2009年に創設された、比較的新しい資格制度となります。

(出典:一般社団法人 日本作業療法士協会「専門作業療法士とは?」/https://www.jaot.or.jp/continuing_education/senmonot-seido/

前述の通り、専門作業療法士を目指すには、まず認定作業療法士資格を取得しなければなりません。つまり、専門作業療法士は、認定作業療法士の資格を取得した方が、さらに専門性を高めるための制度でもあるわけです。

専門作業療法士は、多様な専門性を生かしながら、現場で質の高いサービスを提供したり、社会貢献、後進の育成を行ったりしますが、そこでは下記3つの能力が重視されます。

●専門作業療法士分野において、優れた見識(判断力)と技術力によって、質の高い作業療法を実践できる能力
●専門作業療法士分野において、困難な事例に対応できる能力
●認定作業療法士のもつ教育能力や統率・指導能力、研究能力を、専門作業療法士分野で応用できる能力

2022年9月現在、専門作業療法士の資格取得者数は延べ142人となっています。2019年度の日本作業療法士協会会員数が62,294人であることを考えれば、専門作業療法士の数はまだまだ少なく、国内でも一握りしかいない貴重な存在です。

(出典:一般社団法人 日本作業療法士協会「2019年度 日本作業療法士協会会員統計資料」/https://www.jaot.or.jp/files/page/jimukyoku/kaiintoukei2019.pdf

(出典:一般社団法人 日本作業療法士協会「専門作業療法士一覧」/https://www.jaot.or.jp/member/ninteiList/professional/

作業療法士は、国家試験に合格しなければ取得できない国家資格です。そこからさらに深い知識や高い実践能力、課題解決能力を要求される専門作業療法士の資格は、「高度な専門性を保有していることの証」となるだけでなく、他の作業療法士との差別化を図るための武器にもなるでしょう。

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専門作業療法士の専門分野とは?

専門作業療法士になるには、10の分野から自身が専門とするものを選び、臨床実践を積んでいく必要があります。ここでは、各専門分野の概要や仕事内容を紹介していくので、「専門作業療法士を目指したいけど、どんな分野があるか分からない」「どの分野を伸ばせばよいか分からない」という方は、ぜひ参考にしてください。

●福祉用具
福祉用具分野では、福祉用具を必要とするすべての方を対象とし、導入支援や適切な福祉用具の選定をサポートします。また、他職種との協働・連携や、あらゆる経験を通して福祉用具の開発・普及に努めることも、福祉用具分野における専門作業療法士の重要な役割です。

(出典:一般社団法人 日本作業療法士協会「専門作業療法士の認定取得のための手引き各論(福祉用具分野)」/https://www.jaot.or.jp/files/page/kyouikubu/senmontebiki/20210601/senmon-fukushiyougu_202106.pdf

●認知症
認知症分野では、認知症の患者さまを対象に、高度な作業療法を提供(臨床実践)します。認知症患者さまの抱える問題や、適切な作業療法のあり方を理解するだけでなく、ご家族への支援や多職種連携、認知症に関する研究に努めることも大切です。

(出典:一般社団法人 日本作業療法士協会「専門作業療法士の認定取得のための手引き各論(認知症分野)」/https://www.jaot.or.jp/files/page/kyouikubu/senmontebiki/20210601/senmon-ninchishou_202106.pdf

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●手外科
手外科分野では、疾病や外傷などによって手の機能障害を患った患者さまを対象に、高度な作業療法を提供します。骨折や脱臼、外傷はもちろん、変形性関節症や手根管症候群などさまざまな疾患・障害に対する専門的かつ高度な臨床実践能力の習得が必要です。

(出典:一般社団法人 日本作業療法士協会「専門作業療法士の認定取得のための手引き各論(手外科分野)」/https://www.jaot.or.jp/files/page/kyouikubu/senmontebiki/20210601/senmon-tegeka_202106.pdf

●特別支援教育
特別支援教育分野では、障害のある児童・幼児などを対象とし、子どもの自立と社会参加を支援するための作業療法を提供します。特別支援教育にかかわる高度な作業療法の提供はもちろん、関連研究の実施やご家族、関係者のサポート・連携も、特別支援教育分野における専門作業療法士の重要な役割です。

(出典:一般社団法人 日本作業療法士協会「専門作業療法士の認定取得のための手引き各論(特別支援教育分野)」/https://www.jaot.or.jp/files/page/kyouikubu/senmontebiki/20210601/senmon-tokubetsu_202106.pdf

●高次脳機能障害
高次脳機能障害分野では、脳損傷によって認知障害を患った患者さまを対象に、高度な作業療法を提供します。脳損傷に起因する認知障害への豊富な臨床経験が必要とされるほか、一人ひとりの症例に適した作業療法の実施能力が求められます。

(出典:一般社団法人 日本作業療法士協会「専門作業療法士の認定取得のための手引き各論(高次脳機能障害分野)」/https://www.jaot.or.jp/files/page/kyouikubu/senmontebiki/20210601/senmon-koujinou_202106.pdf

●精神科急性期
精神科急性期分野では、速やかな治療が求められる精神症状を患った患者さまを対象に、高度な作業療法を提供します。精神科急性期患者さま一人ひとりの特性を踏まえて、解決に向けた作業療法の取り組みを検討する能力や、多職種連携のもと柔軟に対応する能力が求められます。

(出典:一般社団法人 日本作業療法士協会「専門作業療法士の認定取得のための手引き各論(精神科急性期分野)」/https://www.jaot.or.jp/files/page/kyouikubu/senmontebiki/20210601/senmon-seishinka_202106.pdf

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●摂食嚥下
摂食嚥下分野では、年齢を問わず摂食嚥下機能が低下した患者さまを対象に、高度な作業療法を提供します。摂食嚥下分野の高度な知識を習得した上で、患者さまの食事動作における機能訓練から食事環境の調整まで、幅広いサポート・支援を行います。

(出典:一般社団法人 日本作業療法士協会「専門作業療法士の認定取得のための手引き各論(摂食嚥下分野)」/https://www.jaot.or.jp/files/page/kyouikubu/senmontebiki/20210601/senmon-enge_202106.pdf

●訪問
訪問分野では、精神、身体、認知機能に障害のある患者さまや、将来起こり得る可能性のある方を対象とし、その人らしい暮らしを維持するための高度な作業療法を提供します。対象者の特性を理解した上で、心身機能の維持や地域活動への参加促進など、一人ひとりの生活の質(QOL)向上に貢献することが、訪問分野における専門作業療法士の重要な役割です。

(出典:一般社団法人 日本作業療法士協会「専門作業療法士の認定取得のための手引き各論(訪問作業療法分野)」/https://www.jaot.or.jp/files/page/kyouikubu/senmontebiki/20210601/senmon-houmon_202106.pdf

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●がん
がん分野では、がんの罹患経験がある方を対象とし、あらゆる問題やトータルペイン(全人的苦痛)の緩和・改善に向けた高度な作業療法を提供します。がんに罹患した方だけでなく、そのご家族を含めたサポートや、多職種チームの一員として他職種を支援する能力も求められます。

(出典:一般社団法人 日本作業療法士協会「専門作業療法士の認定取得のための手引き各論(がん分野)」/https://www.jaot.or.jp/files/page/kyouikubu/senmontebiki/20210601/senmon-gan_202106.pdf

●就労支援
就労支援では、何らかの疾患・障害を有するなかで就労を希望する方・求職している方から、その家族、企業を含めた地域社会までを対象とし、就労環境の改善と調整を行います。働くことを通して対象者の生活の質を維持・向上させつつ、他職種への支援も行いながら高度な作業療法を実践することは、就労支援分野における専門作業療法士の重要な役割となります。

(出典:一般社団法人 日本作業療法士協会「専門作業療法士の認定取得のための手引き各論(就労支援分野)」/https://www.jaot.or.jp/files/senmon-shuurou_202106.pdf

●脳血管障害
脳血管障害では、脳血管の異常に起因するさまざまな障害をもつ患者さまから、その家族を含めた地域社会までを対象とし、生活機能の改善に向けた高度な作業療法を提供します。また、多職種チームの一員として脳血管障害の治療に関する知識を得たり、得た知識を発信したりすることも、脳血管障害分野における専門作業療法士の重要な役割です。

(出典:一般社団法人 日本作業療法士協会「専門作業療法士の認定取得のための手引き各論(脳血管障害分野)」/https://www.jaot.or.jp/files/noukextukan_saisin.pdf

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専門作業療法士の資格取得に必要な4実践

続いて、専門作業療法士資格の認定を受けるための取得要件について解説します。資格取得に必要な要件は、次の通りです。

(1)認定作業療法士である
(2)4実践を修了している
(3)専門作業療法士認定審査に合格する

(出典:一般社団法人 日本作業療法士協会「専門作業療法士とは?」/https://www.jaot.or.jp/continuing_education/senmonot-seido/

専門作業療法士になるには、まず認定作業療法士資格を取得し、定められた4実践を満たした上で、認定試験に合格しなければなりません。なお、4実践とは「研修実践」「臨床実践」「研究実践」「教育と社会貢献の実践」の4つです。

ここからは、4実践について具体的に紹介します。

研修実践

研修実践は、専門分野ごとにカリキュラムが定められており、下記の3つの段階に分けられます。

専門基礎研修 各分野の対象者に対する適切な「評価・治療の実施能力」を習得する研修
専門応用研修 困難事例や少数事例といった特殊な事例にも対応できる実践能力や、後輩作業療法士の育成・指導能力を習得する研修
専門研究・開発 専門分野における研究・開発に携わり、その結果を広く伝達する能力を習得する研修

すべてのカリキュラムを修了することで、基礎から応用、研究・開発に関わるさまざまな能力を習得できます。

また、研修実践には「専門基礎研修から専門応用研修、そして専門研究・開発と順番に進めるケース」と、「専門基礎研修を修了したのち、泉温応用基研修と専門研究・開発を並行して進めるケース」の2つの進め方があります。

ただし、専門分野によっては進級要件が設定されているケースもあるため、分野ごとの手引きをあらかじめ確認しておきましょう。

臨床実践

臨床実践では、「専門分野における経験事例数が十分にあるか」や、「十分な勤務経験があるか」を確認し、最終的にその分野における高度な臨床実践能力を判断します。各専門分野では必要事例の数や種別、さらに一定時間以上の勤務経験が定められています。

認定申請の際には、事例数と勤務経験を報告しなければならないため、自己管理のもとで記録を残しておくのがおすすめです。

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研究実践

研究実践では、専門分野における臨床実践の成果をまとめた学会発表や論文、著書の実績と、「事例報告登録制度」による事例報告を確認し、最終的にその分野の高度な臨床実践能力を判断します。

専門分野によって、論文掲載の対象となるジャーナルが規定されていたり、学会発表の対象となる学会が規定されていたりするため、あらかじめ確認しておきましょう。

教育と社会貢献の実践

教育と社会貢献の実践では、後輩育成に向けた教育実践や、専門分野における社会貢献を行っているかについて判断します。

教育実践、社会貢献の実践に該当する内容は、下記の通りです。

教育実践 ●研修会・講演会などでの講師やシンポジスト
●専門作業療法士の臨床研修における指導
社会貢献の実践 ●学会・研修会の運営
●論文査読
●自治体事業への参加
●ボランティア協力

教育実践と社会貢献の実践は、研修実践、臨床実践、研究実践を進めながら、並行して積み重ねることが必要になります。

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まとめ

専門作業療法士とは、特定の分野において高度かつ専門的な実践能力、課題解決能力を有していると認められた作業療法士のことです。2009年に創設された比較的新しい資格制度であり、2022年9月時点での取得人数は延べ142人となっています。専門作業療法士を取得することで、自身の高度な専門性を証明できるだけでなく、他の作業療法士との差別化も図れるでしょう。

なお、専門作業療法士には、10の専門分野があります。今後どのような場所で働きたいか、どのような知識を伸ばしたいかを明確にした上で、自分に合った分野を選択するようにしましょう。

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※当記事は2022年9月時点の情報をもとに作成しています

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