臨床検査技師の国家試験の詳細|合格率や難易度は?
臨床検査技師は病気の診断や治療、健康の維持に必要な検体検査(患者さまから採取した血液や尿などの検査)や、生体検査(医療機器で患者さまの体を直接調べる検査)を行う医療専門職です。
臨床検査技師になるためには、大学・専門学校などで専門課程を修了した後、国家試験に合格する必要があります。臨床検査技師国家試験の出題範囲は幅広く、専門性の高い問題も多いため、合格に向けては早くからの試験対策が重要です。
この記事では臨床検査技師の国家試験を取り上げ、受験資格や日程、出題される科目、難易度、合格を目指すための対策などを詳しく解説します。「検査のスペシャリスト」として医療現場で活躍したい方は、ぜひ参考にしてください。

目次
臨床検査技師の国家試験の受験資格
臨床検査技師として活躍するには、国家試験に合格して臨床検査技師免許を取得しなければなりません。
臨床検査技師の国家試験を受験するためには、文部科学大臣の指定する学校もしくは臨床検査士の養成施設で専門的な知識と技術を学び、修了する必要があります。ただし、下記のルートでも受験資格を得ることが可能です。
- ・学校教育法にもとづく大学などにおいて、医学または歯学の課程を修め、卒業する
- ・国内もしくは外国で、医師もしくは歯科医師の免許を取得する
- ・国内もしくは外国の医師や獣医師、歯科医師、薬剤師などの大学を卒業し、文部科学大臣の指定する学校もしくは臨床検査士の養成施設において所定の科目を修める
- ・外国の臨床検査技師養成所を卒業する、もしくは外国の臨床検査技師に相当する免許を取得した上で、厚生労働大臣の認定を受ける
(出典:厚生労働省「臨床検査技師国家試験の施行」/https://www.mhlw.go.jp/kouseiroudoushou/shikaku_shiken/rinshoukensagishi/)
一般的なのは大学や短大、専門学校の臨床検査技師養成課程(臨床検査学科、検査技術科学科など)を修了するルートですが、獣医学系・薬学系・保健衛生学系学部で必要な科目を履修して卒業した場合にも受験資格が得られます。
社会人から臨床検査技師を目指す場合は、夜間コースのある学校を選ぶことで無理なく学習を進められるでしょう。
日程と受験地
臨床検査技師の国家試験は、毎年2月に実施されて3月末に結果が公表されます。ただし、試験はどの都道府県でも受けられるわけではなく、北海道・宮城県・東京都・愛知県・大阪・広島・香川・福岡・沖縄から会場を選択することになります。
国家試験の受験手続きには、受験願書と写真、返信用封筒、卒業証書の写しもしくは卒業証明書(卒業見込証明書)などが必要です。受験者の区分によって規定の書類が異なるため、提出書類の詳細については事前に厚生労働省のホームページで確認してください。
臨床検査技師の国家試験で出題される科目
臨床検査技師の国家試験は午前と午後に分けて行われ、1問1点で200問が出題されます。出題範囲は幅広く、基礎的な知識を問う問題から専門性の高い問題までまんべんなく出題されるため、効率的に勉強を進めて苦手分野を克服する必要があるでしょう。
国家試験の出題科目と概要は下記のとおりです。
科目 | 科目の概要 |
---|---|
医用工学概論(情報科学概論および検査機器総論を含む) | ・医用工学概論は電気や電子回路の基礎知識、情報科学概論はコンピュータやネットワークなどに関する知識が問われる科目 ・検査機器総論は、医療機器の基礎知識や検査の意義について問われる科目 |
公衆衛生学(関係法規を含む) | ・公衆衛生学は、医療の仕事に関わる上での心構えや基礎知識を問われる科目 |
臨床検査医学総論(臨床医学総論および医学概論を含む) | ・臨床検査医学総論や医学総論は、循環器疾患や呼吸器疾患、消化器疾患などさまざまな疾患について問われる科目 ・臨床医学総論は臨床検査の役割や意義などについて問われる科目 |
臨床検査総論(検査管理総論および医動物学を含む) | ・臨床検査総論は臨床検査技師の役割や検査の基礎、検査管理総論は臨床検査の意義や安全に検査を行うための知識などが問われる科目 ・医動物学は、寄生虫病や感染症について問われる科目 |
病理組織細胞学 | ・病理組織細胞学は、解剖学や細胞診、染色など、病理全般に関する知識が問われる科目 |
臨床生理学 | ・臨床生理学は、人体を構成する組織や器官の役割や状態に関する知識が問われる科目 |
臨床化学(放射性同位元素検査技術学を含む) | ・臨床化学は、生化学の基礎知識を問われる科目 |
臨床血液学 | ・臨床血液学は、血液学的検査に必要な基礎知識が問われる科目 |
臨床微生物学 | ・臨床微生物学は、微生物の構造や感染症の診断、治療法などについて問われる科目 |
臨床免疫学 | ・臨床免疫学は、免疫系の仕組みと免疫検査が必要な疾患、検査法などについて問われる科目 |
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臨床検査技師の国家試験の合格率・難易度は?
臨床検査技師の国家試験における2017年〜2022年の受験者数・合格者数・合格率は、下記のとおりです。
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | ||
---|---|---|---|---|
2017年 | 全体 | 4,739人 | 3,729人 | 78.7% |
(うち新卒者) | 3,870人 | 3,481人 | 89.9% | |
2018年 | 全体 | 4,829人 | 3,828人 | 79.3% |
(うち新卒者) | 3,948人 | 3,572人 | 90.5% | |
2019年 | 全体 | 4,816人 | 3,620人 | 75.2% |
(うち新卒者) | 4,002人 | 3,462人 | 86.5% | |
2020年 | 全体 | 4,854人 | 3,472人 | 71.5% |
(うち新卒者) | 3,940人 | 3,273人 | 83.1% | |
2021年 | 全体 | 5,115人 | 4,101人 | 80.2% |
(うち新卒者) | 3,947人 | 3,614人 | 91.6% | |
2022年 | 全体 | 5,331人 | 3,729人 | 75.4% |
(うち新卒者) | 4,408人 | 3,537人 | 86.4% |
(出典:厚生労働省「第63回臨床検査技師国家試験の合格発表について」/https://www.mhlw.go.jp/general/sikaku/successlist/2017/siken07/about.html)
(出典:厚生労働省「第64回臨床検査技師国家試験の合格発表について」/https://www.mhlw.go.jp/general/sikaku/successlist/2018/siken07/about.html)
(出典:厚生労働省「第65回臨床検査技師国家試験の合格発表について」/https://www.mhlw.go.jp/general/sikaku/successlist/2019/siken07/about.html)
(出典:厚生労働省「第66回臨床検査技師国家試験の合格発表について」/https://www.mhlw.go.jp/general/sikaku/successlist/2020/siken07/about.html)
(出典:厚生労働省「第67回臨床検査技師国家試験の合格発表について」/https://www.mhlw.go.jp/general/sikaku/successlist/2021/siken07/about.html)
(出典:厚生労働省「第68回臨床検査技師国家試験の合格発表について」/https://www.mhlw.go.jp/general/sikaku/successlist/2022/siken07/about.html)
臨床検査技師国家試験の合格率は年度によって異なるものの、過去6年間の全体の合格率は70〜80%前後で推移しています。
新卒者に限定した合格率は85〜90%前後の年度が目立ち、全受験者の合格率を上回ります。また、2018年、2021年のように合格率が9割を超える年も見られるため、日頃から知識・技術の習得に励み、しっかりと対策を行えば十分に合格できる難易度と言えるでしょう。
なお、臨床検査技師の国家試験における合格基準は、200点中120点(正答率6割)以上となっています。
臨床検査技師の国家試験に合格するための対策2つ
先に紹介したように臨床検査技師国家試験は、けっして難易度が高い試験ではありません。ただし、合格の可能性を高めるには十分な事前準備が必要です。基本的な対策をしっかり行った上で、本番に臨みましょう。
ここでは、臨床検査技師国家試験の合格を目指すための対策を2つ紹介します。
過去5年分の過去問を解く
1つめの対策は、「最低5年分」を目安に過去問を解き、出題傾向や国家試験の全体像をつかむことです。
臨床検査技師の試験問題は、広範囲から出題される上に問題数も多いため、まずは過去問を1冊だけ用意し、出題の傾向や問題のレベルに慣れることからはじめてみましょう。
過去問に取り組む際は、「解いて終わり」にするのではなく、間違えた問題の解説を読み込み、「なぜ間違えたのか」「正答の根拠は何だったのか」などをしっかり把握することが大事です。
全部の問題を解き終えたら最初からやり直し、すべて正解できるまで同じことを繰り返しましょう。問題と解答、解説を暗記できるほど読み込み、1年分の過去問で満点を取れる状態になったら他の年度の過去問に挑戦してください。
分からないことがあればすぐに調べる
2つめの対策は、「分からない語句をそのままにしない」ということです。問題文や選択肢、解説文のなかに分からない語句があったときは、すぐに意味を調べて正しく理解することを心がけてください。
その際、過去問題集を2冊用意し、1冊を書き込み用のノート代わりに使用するのも1つの方法です。分からない語句の意味を書き込み用の過去問題集にメモして、問題集兼用語集の1冊を作ってしまうのです。それを何度も読み返すことで、問題や選択肢の意味をより正確に理解でき、記憶も定着しやすくなるでしょう。
なお、臨床検査技師の国家試験では、過去問をアレンジした問題が出題される可能性もあるため、解答を丸暗記するだけでは点数を伸ばすのが難しくなります。正確かつ幅広い知識を身に付けて、国家試験の合格を目指しましょう。
まとめ
今回は臨床検査技師を目指している方に向けて、国家試験の受験資格や出題科目、難易度、合格を勝ち取るための勉強方法などを解説しました。
臨床検査技師の国家試験では幅広い専門知識が問われますが、合格率は70〜80%前後となっており、けっして難易度が高いわけではありません。学校の授業内容をきちんと理解し、十分な対策を行えば合格できる可能性はぐんと高まるでしょう。
臨床検査技師国家試験に合格するための対策としては、過去問を繰り返し解くのがおすすめです。問題と解答、解説を何度も読み込み、正しい知識を身に付けることを心がけてください。国家試験までのスケジュールを逆算した上で十分な準備を行い、合格を勝ち取りましょう!
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※当記事は2022年5月現在の情報をもとに作成しています
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