言語聴覚士試験の難易度は?学ぶ内容や受験資格も解説
言語聴覚士とは、「話す」「聞く」「食べる」といった機能に課題を抱えている方に向けて、機能訓練を実施するリハビリ専門職です。言語聴覚士は国家資格であり、国家試験に合格しなければ言語聴覚士として働くことができません。また、言語聴覚士国家試験を受験するためには、決められた受験資格を満たす必要があります。
みなさんのなかにも言語聴覚士を目指している方や、言語聴覚士に興味のある方がいらっしゃると思いますが、そうした方がいちばん気になるのは言語聴覚士国家試験の難易度ではないでしょうか。
そこで今回は、言語聴覚士国家試験の難易度や、言語聴覚士になるためのカリキュラム・実習の内容、主な就職先などついて徹底解説します。独学で試験合格を目指せるかについても触れるので、ぜひ最後までご覧ください。
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目次
言語聴覚士国家試験の難易度は?
言語聴覚士の資格を取得するためには、文部科学大臣が指定する学校や都道府県知事が指定する養成所で、定められた教育課程を修了した後、言語聴覚士国家試験に合格する必要があります。
下の表に示したように、言語聴覚士国家試験の合格率は例年65~70%の間で推移しています。2023年に実施された理学療法士の合格率が87.4%、作業療法士が83.8%だったことを考えると、リハビリ専門職のなかでは難易度が高めだと言えるでしょう。
実施年度 | 合格率 |
---|---|
2019年実施 (第21回言語聴覚士国家試験) |
68.9% |
2020年実施 (第22回言語聴覚士国家試験) |
65.4% |
2021年実施 (第23回言語聴覚士国家試験) |
69.4% |
2022年実施 (第24回言語聴覚士国家試験) |
75.0% |
2023年実施 (第25回言語聴覚士国家試験) |
67.4% |
(出典:厚生労働省「第21回言語聴覚士国家試験の合格発表について」/https://www.mhlw.go.jp/general/sikaku/successlist/2019/siken21/about.html)
(出典:厚生労働省「第22回言語聴覚士国家試験の合格発表について」/https://www.mhlw.go.jp/general/sikaku/successlist/2020/siken21/about.html)
(出典:厚生労働省「第23回言語聴覚士国家試験の合格発表について」/https://www.mhlw.go.jp/general/sikaku/successlist/2021/siken21/about.html)
(出典:厚生労働省「第24回言語聴覚士国家試験の合格発表について」/https://www.mhlw.go.jp/general/sikaku/successlist/2022/siken21/about.html)
(出典:厚生労働省「第25回言語聴覚士国家試験の合格発表について」/https://www.mhlw.go.jp/general/sikaku/successlist/2023/siken21/about.html)
ただし、合格率65~70%という数字は、けっして低いわけではありません。また、2022年のように合格率が75%に達する年もあります。そのため、きちんと勉強すれば十分に合格を目指せる試験だと考えてよいでしょう。
(出典:一般社団法人 日本言語聴覚士協会「言語聴覚士を目指す」/https://www.japanslht.or.jp/aim/)
言語聴覚士国家試験の合格基準
言語聴覚士国家試験では、基礎医学や臨床医学、臨床歯科医学、音声・言語・聴覚医学、嚥下障害学といった科目から、合計200問が出題されます(基礎科目100問、専門科目100問)。
言語聴覚士国家試験はマークシート方式となっており、配点は1問1点。200点満点の60%にあたる120点が合格基準となります。試験時間は午前と午後それぞれ150分ずつなので、時間配分のミスを避けるためにも、過去問などを活用して十分に慣れておくようにしましょう。
(出典:厚生労働省「言語聴覚士国家試験の施行」/https://www.mhlw.go.jp/kouseiroudoushou/shikaku_shiken/gengochoukakushi/)
(出典:厚生労働省「第25回言語聴覚士国家試験の合格発表について」/https://www.mhlw.go.jp/general/sikaku/successlist/2023/siken21/about.html)
言語聴覚士国家試験の受験資格
言語聴覚士国家試験の受験資格は、下記の通りです。
●2年制の言語聴覚士養成所、もしくは指定された大学・大学院における2年制の専攻科で言語聴覚士として必要な知識や技能を習得する
言語聴覚士の受験資格を得るには、必ず文部科学大臣または都道府県知事が指定した学校や養成所で指定科目を履修し、卒業しなければなりません。数年間の実務経験や実習などで受験資格が得られるわけではないことに注意してください。
なお、外国の養成所で言語聴覚士に関する学業を修めている場合は、厚生労働大臣の認定を受けることで言語聴覚士国家試験の受験資格が得られます。
(出典:厚生労働省「言語聴覚士国家試験の施行」/https://www.mhlw.go.jp/kouseiroudoushou/shikaku_shiken/gengochoukakushi/)
(出典:一般社団法人 日本言語聴覚士協会「言語聴覚士を目指す」/https://www.japanslht.or.jp/aim/)
言語聴覚士(ST)の面接について
言語聴覚士が学ぶ内容は?
言語聴覚士の主な仕事内容として、「話す」「聞く」「食べる」といった機能に課題を抱えた方への機能訓練や、ご家族に向けた情報提供、アドバイスなどが挙げられます。
医師や看護師、作業療法士、理学療法士といった他職種と連携しながら、リハビリチームとして活動する機会も多いため、言語聴覚士は学校や養成所で幅広い知識・技術を身につけなければなりません。
以下では、言語聴覚士が学校や養成所で学ぶ内容(カリキュラム・実習)について、詳しく紹介します。
言語聴覚士になるためのカリキュラム
言語聴覚士になるためのカリキュラムは、専門基礎分野・専門分野の2つに分けられます。各領域の具体的なカリキュラム例は、下記の通りです。
就職先 |
●基礎医学 ●臨床医学 ●臨床歯科医学 ●音声・言語・聴覚医学 ●心理学 ●言語学 ●音声学 ●音響学 ●言語発達学 ●社会福祉・教育 |
---|---|
専門分野 |
●言語聴覚障害学 ●失語・高次脳機能障害学 ●言語発達障害学 ●発声発語・嚥下障害学 ●聴覚障害学 |
言語聴覚士のカリキュラムは多岐にわたります。また、こうした知識は、実際に言語聴覚士として臨床現場に立つときも非常に重要となるため、実践の場での活用を想定しながら学びを進める必要があるでしょう。
言語聴覚士になるための実習
言語聴覚士を目指す上で、必ず受けなければならないのが「臨床実習」です。臨床実習とは、実際に病院や高齢者施設、福祉施設などに訪問して行う実習であり、合計480時間にわたって実践されます。
具体的な実習カリキュラムは学校によって異なりますが、「見学実習」「評価実習」「総合実習」の3種類に分けられるのが一般的です。
見学実習 | 病院や介護施設・福祉施設などで、実際に働く言語聴覚士や関連専門職の仕事を見学します。見学を通じて、医療従事者としての振る舞いや対象者に対する接遇なども学びます。 |
---|---|
評価実習 | 訓練プログラムの流れを身につけるため、患者さま・利用者さまに対して言語聴覚療法評価や検査結果の分析を行いながら、実際に訓練プログラムを作成します。 |
総合実習 | 言語聴覚療法評価や検査、結果分析、訓練プログラムの立案・実施、ケースレポートの作成までを実施します。患者さま・利用者さまに対する基本姿勢や、他職種との連携について学ぶことも目的の1つです。 |
総合実習は、学習の総仕上げとも言うべき実習です。座学では学ぶことのできない、実践的なスキルや専門知識を身につけるよい機会となるでしょう。
言語聴覚士の就職先
言語聴覚士の活躍分野は多岐にわたります。代表的な職場として挙げられるのは、病院、クリニックなどの医療機関ですが、高齢者福祉分野や教育分野でも言語聴覚士のニーズが高まっています。
以下では、言語聴覚士の就職先とそれぞれの活動内容について、詳しく紹介しましょう。
- ●医療分野
言語聴覚士の代表的な就職先が、病院をはじめとする医療機関です。主にリハビリテーション科やリハビリテーションセンター、回復期病棟、口腔外科などに所属し、医師や看護師と連携しながら、患者さまの言語機能・嚥下機能の改善をサポートします。また、患者さまのご家族に情報提供やアドバイス、指導を行うことも、言語聴覚士の大事な役割です。
- ●高齢者福祉分野
具体的な就職先として挙げられるのは、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、デイサービスセンター、訪問リハビリテーションなどです。高齢者福祉分野における言語聴覚士は、介護職員のほか医師や看護師、管理栄養士などとも連携して、言語に関する能力やコミュニケーション能力の維持向上に努めます。レクリエーションを通じて、言語機能の改善を図る場合もあります。
- ●教育分野
具体的な就職先として、特別支援学校、発達障害児支援センター、児童デイサービス、小児医療センターなどが挙げられます。また、一般の保育所や小学校、中学校でも言語聴覚士を募集するケースがあります。教育分野における言語聴覚士の役割は、聴覚障害や摂食嚥下障害を持つ子どもへの訓練や指導、発達障害を持つ子どもへの言語およびコミュニケーション訓練などです。
言語聴覚士は独学でもなれる?
受験資格として「学校や養成所で学ぶこと」が定められているため、完全独学で言語聴覚士を目指すことはできません。しかし、すでに社会人として働いている方が、働きながら資格取得を目指すことは十分に可能です。
社会人が言語聴覚士を目指す場合は、定められた科目を履修できる学校への入学が必須です。学業の時間があまりとれない方、時間をかけてじっくりと学びたい方は4年制大学を選ぶのがよいでしょう。なかには夜間コースが設けられている学校もあるため、自身のライフスタイルに適した学校・コースを探してみてください。
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まとめ
言語聴覚士になるためには、言語聴覚士国家試験に合格する必要があります。言語聴覚士国家試験の合格率は65~70%となっており、リハビリ専門職のなかでは難易度が高めです。ただし、過去には合格率が75%に達する年もあったため、きちんと勉強すれば十分に合格を目指せるでしょう。
言語聴覚士は、受験資格に「学校や養成所で学ぶこと」が含まれているため、完全独学で目指すことはできませんが、社会人として働きながら資格取得を目指すことは可能です。ただし、言語聴覚士のカリキュラムには臨床実習が含まれているため、それを踏まえた計画を立てる必要があるでしょう。なかには夜間コースが設けられている学校もあるため、自身のライフスタイルに合った学校・養成所を探すのがおすすめです。
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※当記事は2023年5月時点の情報をもとに作成しています
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