訪問リハビリにおける言語聴覚士の役割や仕事内容とは?必要スキルややりがいも紹介

文:tokoshi(言語聴覚士)
退院後や在宅療養中の高齢者が、住み慣れた自宅で安心して暮らし続けるために欠かせないのが「訪問リハビリテーション(訪問リハビリ)」です。
そのなかで言語聴覚士(ST)は、「食べる」「話す」といった日常生活の基盤となる機能を支え、利用者の生活の質(QOL)を大きく左右する重要な役割を担っています。
訪問リハビリの現場では、病院のような整った環境ではなく、実際の生活空間で訓練を行うため、専門的な知識に加えて、柔軟な対応力や患者の家族・医療チームとの連携が求められます。
本記事では、訪問リハビリで活躍する言語聴覚士の具体的な仕事内容、必要なスキル、そしてこの仕事ならではのやりがいについて紹介します。
目次
訪問リハビリとは
訪問リハビリとは、リハビリ専門職が利用者の自宅を訪問し「生活の場」でリハビリテーションを行うサービスです。主な対象となるのは、病院を退院して在宅療養に移行した方や高齢者、介護が必要な方などが挙げられます。
以下のような状況の方が訪問リハビリを利用されています。
・手の動きが悪くなり、身の回りのことがしづらくなっている。
・言葉がうまく出ず、家族との会話に支障がある。
・食事中にむせることが増え、飲み込みに不安がある。
訪問リハビリには、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)といった多職種がチームとして関わります。病院でのリハビリとは異なり、利用者の生活環境に密着し、日常そのものを支える点が大きな特徴です。
訪問リハビリでの言語聴覚士の仕事内容

訪問リハビリにおける「言語聴覚士」の仕事は、病院内での訓練とは大きく異なります。
在宅支援では、利用者それぞれの「生活環境」や「介護状況」に応じて、実践的な支援を柔軟に組み立てる力が必要とされます。
本章では、現場でよく行われている言語聴覚士の主な業務内容を紹介します。
嚥下機能の評価や訓練
言語聴覚士の訪問リハビリで特に多い支援の1つが、嚥下機能の評価と訓練です。
利用者の自宅では食事環境が一人ひとり異なるため、実際の食事場面を評価し、より安全に「食べる」ことを支える工夫が必要です。
たとえば、椅子の高さを調整したり、食形態(きざみ食やミキサー食など)を工夫したりして、安心して食事ができる環境を整えます。
あわせて、嚥下体操や口腔機能訓練を行い、飲み込む力の維持・向上を図る支援も実施します。
さらに、家族や介護スタッフには「安全な介助の仕方」や「むせた際の対応」など、実践的な指導を行い、日常の食事場面を支援します。
加えて、栄養士や訪問看護師と連携し、多職種で「安全に食べる」ための体制づくりを担うことも、言語聴覚士の重要な役割です。
在宅生活でのコミュニケーション支援
病院では決まったプログラムに沿って訓練を進めるケースが多い一方で、在宅での言語聴覚療法では「日常の会話」そのものがリハビリの中心となります。家族や介護スタッフとの自然なやりとりを通して、実生活のなかで、利用者自身の考えを表出させる力を引き出し、発話や理解の向上を目指します。
また、電話やテレビ、タブレットなど、利用者が日常的に使っている機器を活用し、生活に直結した実践的な練習を行えるのも、訪問リハビリならではです。さらに、家族には「話しかけ方」や「聞き取りやすくする工夫」を伝えることで、コミュニケーション環境そのものを整え、日常生活の質を高めていきます。
在宅での生活動作に直結した発声・言語訓練
訪問リハビリの大きな特徴は「実際の生活そのものを訓練の場にできる」ことです。
たとえば「電話に出る」「買い物を頼む」といった、日常的な動作をリハビリに取り入れ、机上訓練だけでは得られない実践的な言語機能の回復を目指します。
さらに「昨日の出来事を話す」「退院後の生活について語ってもらう」といった、利用者の日常や興味に即したテーマを取り入れることで、自然と会話の場面が増え、負担感を減らしながらリハビリを継続できるようになります。
医療・介護スタッフとの連携と情報共有
訪問リハビリはチーム医療であり、他職種との連携が欠かせません。医師や訪問看護師、PT・OT、ケアマネジャーなどと定期的に情報共有を行い、嚥下状態やコミュニケーション状況を報告します。
また、利用者の状態に変化があればチーム全体で支援方針を再検討し、食事形態の見直しや訓練内容の調整を実施します。こうした多職種連携によって、1人では支えきれない部分を補い合い、利用者が安全に在宅生活を送れる環境を整えます。
訪問リハビリで求められる言語聴覚士の3つのスキル

訪問リハビリでは、専門知識に加えて、在宅支援ならではのスキルが大切になります。利用者の暮らしに寄り添いながら支援するために、言語聴覚士が身につけておきたい3つのスキルを紹介します。
1.言語・嚥下に関する臨床力
訪問リハビリでは、言語聴覚士としての基盤である「言語・嚥下障害に対する評価力」と「訓練スキル」が欠かせません。病院のように医療機器や検査設備が整っていない在宅の現場では、限られた情報を的確に読み取り、リスクを見極めながら安全な訓練を組み立てる臨床力が求められます。
また、利用者の状態は日々変化するため、医師の指示や状況に応じて訓練内容を調整できる判断力も、在宅でのリハビリでは重要となるでしょう。
2.環境に合わせて工夫する柔軟性
利用者の自宅は、病院のように統一された環境ではなく、机やベッドの高さ、照明、活動スペースといった生活環境が一人ひとり異なります。
特に食事に関しては、同じ「きざみ食」や「ペースト食」といっても家庭によって状態がさまざまであり、状況に応じて訓練内容や指導方法を変える必要があります。また、リハビリを円滑に進めるためには、家族や介護スタッフの協力を得つつ、生活に根ざした訓練を進めるためのコミュニケーション能力も重要です。
3.利用者に向き合う姿勢
在宅でのリハビリは、機能を改善することだけがゴールではありません。利用者が「自分らしく生活できること」を支えることが目的です。「言葉が少し出るようになった」「むせが減った」など、小さな進歩を一緒に喜び、信頼を深めていく姿勢が大切です。
訪問リハビリで働く言語聴覚士のやりがい
訪問リハビリの大きな魅力は、一人ひとりの利用者と深く関われることです。日々のリハビリを通して「生活の場での変化」をリアルに感じられるのは、この仕事ならではのやりがいです。「食事を楽しめるようになった」「家族との会話が増えた」といった利用者や家族の笑顔に直接触れることができ、その感謝の言葉が大きな励みになります。
また、訪問リハビリは医療現場よりも裁量が大きく、自分の判断で訓練計画を立てられる点も魅力の1つです。利用者の「やりたいこと」や「困っていること」に真摯に向き合い、その人に合った支援方法を考えられる環境だからこそ、言語聴覚士としての力を最大限に活かせるでしょう。
まとめ
訪問リハビリは、利用者の自宅という「生活の場」でリハビリを行う支援です。言語聴覚士は、嚥下やコミュニケーションを通じて「食べる」「話す」といった人としての基本的な力を支え、生活の質を高める重要な役割を担っています。
病院勤務とは違うやりがいがある訪問リハビリの現場は、言語聴覚士にとって専門性を活かしながら成長できる分野といえるでしょう。新たなキャリアステージとして訪問リハビリを検討してみてはいかがでしょうか。
参考
公益財団法人 長寿科学振興財団「訪問リハビリテーションとは | 健康長寿ネット」
私も訪問リハビリスタッフとして、あちこちの患者様のご自宅に訪問させて頂いた経験があります。食事形態について「こうしたら食べやすくなるかも」と提案すれば、その日の夕食からご家族様が工夫くださり、喜んで頂けたのはいい思い出です。病院や施設にはないスピード感や満足度を経験できるのも、訪問リハビリならではだと思います。
監修者プロフィール

マイナビコメディカル編集部
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