作業療法士(OT)とは?仕事内容について

最終更新日:2018年6月15日

作業療法士(OT)とは、身体又は精神に障害のある者もしくは将来それが予測される者に対し、主としてその応用的動作能力又は社会的適応能力の回復を図るため、手芸・工作などの治療、訓練、指導を行う専門職(国家資格)です。 ここでは作業療法の仕事の過程や、対象者さんとの関わり方の時期によっての違い、作業療法士の仕事先について解説します。

1. 作業療法の歴史

作業療法の源流を辿っていくと、その起源は古代エジプトやギリシア時代にまで遡るのをご存じでしょうか。もちろん、当時は、現代のような形で作業療法が用いられることはありませんでしたが、庭をきれいな花々で飾ったり、身近な人と集まって楽しい時間を過ごすといったごく日常的な活動が、病んだ心と身体を癒すと考えられていたのです。医学の父と呼ばれるヒポクラテスが、病に苦しむ患者が自らの自然治癒力を高める方法として、園芸や木工などの「作業」を行うことをすすめたことで、やがて、心と身体の相互作用が大変重視されるようになりました。また、ローマ帝国時代のギリシアの医学者で解剖学の創始者と呼ばれるガレノスは、「仕事をするということは、自然の最も優れた医師であり、それは人間の幸福について不可欠なもの」と主張し、その後の作業療法の発展に大きな影響を与えました。

この他にも、18世紀末にフランスの精神科医フィリップ・ピネルが、人里離れた精神病院に隔離され、鎖に繋がれていた患者を解放し、農作業やレクリエーションを通じ患者の回復と自発性を取り戻そうとした、いわゆる「精神障害者の解放運動」や「道徳療法」、産業革命による「機械化」や「大量生産」に対立し、歴史ある手工芸や芸術作品の価値や「作る喜び」を取り戻そうとした「アーツ・アンド・クラフツ運動」なども、現代の作業療法のモデルとなっています。

ここまでは世界における歴史を辿ってきました。では、日本には、いつどのような形で作業療法が広がっていったのでしょうか。日本においては、18世紀~19世紀にかけて、ヨーロッパ各地で精神医療を学んで帰国した呉秀三が、東京巣鴨病院(現・松沢病院)の精神障害者の無拘束化をすすめたのが、作業療法の始まりと言われています。そして、第2次世界大戦後の1950年代。GHQ指導のもと、日本の医療・社会保障政策が推進されるなか、当時既に専門職制度が確立されていたアメリカのリハビリテーション活動を視察した医師たちが中心となり、日本におけるリハビリテーション活動の有用性を訴えていきます。

こうした熱心な働きかけにより、日本で本格的に作業療法士の養成がスタートしたのは、東京五輪開始を目前に控えた1963年(昭和38年)です。日本初の作業療法士養成校が東京都清瀬市に開校し、1965年には、国家試験の概要などを定めた理学療法士および作業療法士法が法制化されました。第1回の国家試験に合格した20名の作業療法士に加え、既にアメリカで作業療法士の資格を取得していた2名が加わり、総勢22名の作業療法士が、日本の作業療法の礎を築くことになります。

2. 作業療法の定義

理学療法士および作業療法士法に定められる作業療法の定義は、以下の通りです。

この法律で「作業療法」とは、身体又は精神に障害のある者に対し、主としてその応用的動作能力又は社会的適応能力の回復を図るため、手芸、工作、その他の作業を行なわせることをいう。

一方、実際に現場で活躍する作業療法士による議論のもと承認された定義は以下の通りとなっています。

作業療法とは、身体又は精神に障害のある者、またはそれが予測される者に対し、その主体的な 生活の獲得を図るため、諸機能の回復、維持及び開発を促す作業活動を用いて、治療、指導及び援助を行うことをいう。
(1985年6月:社団法人日本作業療法士協会第20回総会時承認)

法律上の定義と作業療法士が独自に考案した定義には、若干違いが見られます。例えば、作業療法の対象については、法律上「身体又は精神に障害がある者」としているのに対し、作業療法士が考案した定義には、それに加え「またはそれが予測される者」も対象とするとしています。それが予測される者とは、作業療法士が関わることがなければ寝たきりや閉じこもり、認知症になってしまう恐れのある人、あるいはその家族、介護者をも含んでいます。作業療法士は、専門職のの基本姿勢として、障害の予防や健康状態の維持・改善を必要としている全ての人に対し、作業療法を提供すると掲げています。

3. 作業療法の仕事内容

作業療法は(※1)に示すような流れで行うのが一般的ですが、実際には関わる時期や勤務先の種別・対象疾患などによって大きく内容が異なります。

作業療法の過程

※1参考:日本作業療法士協会 作業療法ガイドライン実践指針

作業療法が関わる時期

現代社会では病気の早期発見・早期治療、健康寿命の延伸に向けた介護予防が重要視されます。作業療法士の活躍は、病気の発症直後から人生の締めくくりとなる終末期にまで及んでいます。関わる時期ごとの主な仕事内容は以下の通りです(※2)。

作業療法士が対象者と関わる時期

時期 内容
予防期 日常の生活に支障をきたさないように疾病や障害を予防する。加齢やストレスなどで心身機能の低下を引き起こしやすくなった人に、作業療法の観点からアプローチを行う(医療としての作業療法にかかわるには、診断が必要)。健康状況の変化にも対応するよう、障害をもたない人に対しても健康増進の観点から関与する
急性期 発症後、心身機能が安定していない時期を指し、医療による集中的な治療が中心となる。救命救急と安静が必要な時期を脱した亜急性気から、二次的障害の予防や、回復期への円滑な導入に向けて早期から関わる。
回復期 障害の改善が期待できる時期。対象者の心身機能・身体構造、活動、参加の能力の回復や獲得を援助する。
生活期 疾病や障害の回復が一定レベルに達し固定化した時期。疾病の再燃や再発を予防する。対象者の社会、教育、職業への適応能力の回復・獲得を援助するとともに、社会参加を促進する。
終末期 人生の最期の仕上げとしての関わりが重要となる時期。ホスピスケアを含み、死と対面することもあるが、対象者の心身機能、活動、参加の維持を図るとともに、尊厳ある生活への援助や家族への支援を行う。

※2参考:日本作業療法士協会 作業療法ガイドライン実践指針

作業療法士の所属先

作業療法士の活躍する領域は多岐にわたります。ここでは、その大部分を占める医療施設と介護保険関連施設に所属する作業療法士の仕事内容について紹介します。

医療施設

大学病院やリハビリテーション病院、一般の総合病院などにある作業療法部門に所属し、リハビリテーション業務にあたります。作業療法は、医学的な治療がある程度落ち着いてから処方されるのが一般的ですが、バイタルサインや栄養状態など、医学的情報をしっかりと把握せずに介入すると、患者さんの回復に悪影響を及ぼしかねないため、慎重な対応が求められます。新人作業療法士にとって、障害を受け止めきれない患者さんの心理的ケアは大変な重責ですが、前向きな気持ちで障害を克服していく過程に携われるのは、やりがいの一つでもあります。

身体障害分野の作業療法士が、最も多く対象としているのが脳卒中の後遺症による片麻痺や高次脳機能障害の患者さんです。また、パーキンソン病や関節リウマチといった難病も扱います。作業療法の目的は、上肢(腕)や手指の機能回復、脳機能の改善、日常生活における基本的な動作(食事・排泄・更衣・整容・入浴)や書字、料理、買い物といった応用的な動作の獲得、生活環境の調整(退院先のバリアフリー化・福祉用具の提案など)です。

精神障害分野では、統合失調症や感情障害を中心に、認知症や知的障害の患者さんを主な対象としています。身体障害分野と異なり、比較的若い患者さん(10代~20代)も扱うのが特徴の一つです。作業療法の目的は、コミュニケーションスキルや社会生活技能(電車の乗車や買い物など)の獲得、生活リズムの改善をメインとし、職業訓練や自宅退院に向けた準備にも携わります。病気を理由に、なかなか社会に適応できずにいる患者さんや、意欲が低下し、興味関心が狭くなりがちな患者さんが、再び地域社会で居場所や役割を持てるよう支援します。

発達障害分野では、脳性麻痺や自閉症、アスペルガー症候群、学習障害の子供を対象とした作業療法を行います。子供の発達状態に見合った遊びや訓練プログラムを立案し、子供が夢中になって取り組める環境を提供するのが作業療法士の役割です。子供だけではなく、家族に対しても相談に応じ、必要なアドバイスを行います。

介護保険関連施設

主に、介護保険法によって提供される介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、訪問看護・リハビリ事業所、通所リハビリテーション施設、通所介護施設(デイサービス)などに所属し、介護支援専門員が作成するケアプランの内容に応じた機能訓練や日常生活動作訓練、指導を行います。医療施設における作業療法士と比べ、理学療法士や社会福祉士といった他職種との垣根が低く、幅広い知識のもと支援に携わるのが特徴です。医療・介護従事者以外にも、地域の住民や商店街の方々などとの連携を必要とする場面が多く、信頼関係の構築に苦労する時期もありますが、作業療法を通じ、対象者だけではなく地域全体の健康づくりに携わるのも魅力的です。

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