機能訓練指導員は無資格はNG? 資格取得の道筋と現場の魅力を紹介
更新日 2026年07月22日 公開日 2026年07月23日

文:牛玖恵梨子(作業療法士)
「機能訓練指導員になりたいけど、資格がない」「どうやったら資格が取れるの?」──。
高齢者施設での仕事に興味をもつ人から、こうした声をよく聞きます。
無資格でも機能訓練指導員になることはできるでしょうか。
今回は、機能訓練指導員になるための資格要件、特に注意が必要な鍼灸師の条件、現場で求められる役割について、筆者の機能訓練指導員としての経験も交えたリアルな視点でお伝えします。
目次
機能訓練指導員とは何をする仕事か
機能訓練指導員は、介護保険法で定められた専門職です。デイサービスや特別養護老人ホーム、有料老人ホームなどで、高齢者の身体機能の維持・回復を支える役割を担います。
具体的には、歩く、立つ、座る、手を伸ばすといった日常動作がスムーズにできるよう、一人ひとりに合わせた訓練プログラムを組み立てます。
ただし、これは国家資格ではなく、「機能訓練指導員」という名称の資格試験があるわけではありません。特定の医療系国家資格をもっている人が、この職務に就けるというしくみなのです。
機能訓練指導員になれる資格は7種類

では、どんな資格があれば機能訓練指導員として働けるのでしょうか。現在認められているのは、次の7つです。
看護師・准看護師
医療の知識をもつ看護師は、機能訓練指導員として配置できます。利用者さんの健康管理や体調変化にも対応できるため、小規模な施設では看護師が機能訓練指導員を兼務することも珍しくありません。
理学療法士
運動機能のリハビリテーションを専門とする理学療法士は、機能訓練指導員として最も専門性が高いとされています。歩行訓練や筋力トレーニング、バランス練習など、その知識を直接活かすことができます。
作業療法士
日常生活動作の回復を支援する作業療法士も、機能訓練指導員として働けます。食事や着替え、トイレなど生活に必要な動作を、1つずつできるようにしていく細やかなアプローチが得意です。
言語聴覚士
話す、聞く、食べるといった機能のリハビリを専門とするのが言語聴覚士です。高齢者施設では、嚥下障害(飲み込みの問題)を抱える方も多く、そのケアができる専門家として重宝されます。
柔道整復師
骨折や脱臼、打撲などの治療を手がける柔道整復師も対象です。接骨院や整骨院での経験を活かし、関節や筋肉へのアプローチが得意です。
あん摩マッサージ指圧師
マッサージや指圧の技術をもつ、あん摩マッサージ指圧師も機能訓練指導員になれます。筋肉の緊張をほぐしたり、血行を促進したりする技術は、高齢者のケアに直結します。
鍼灸師(はり師・きゅう師)
そして、2018年の制度改正で新たに加わったのが鍼灸師です。ただし、この資格にはほかと大きく異なる点があります。それが「実務経験」の条件です。
鍼灸師だけに課される特別な条件

鍼灸師が機能訓練指導員として働くには、ほかの機能訓練指導員が在籍している施設で半年以上の実務を経験することが求められます。
なぜ鍼灸師だけ実務経験が必要なのか
これには理由があります。機能訓練の業務内容と鍼灸師本来の仕事が必ずしも一致していないため、実務経験を通じて業務の理解や対応力を確認する必要があると考えられたためです。
鍼灸師の専門は、鍼や灸を使った東洋医学的な治療です。一方、機能訓練指導員には、日常生活動作の訓練や運動プログラムの作成といった、やや異なるスキルが求められます。そのギャップを埋めるため、半年間の実地研修が義務付けられているのです。
実務経験の具体的な内容
この実務経験については細かい規定はなく、施設の管理者が業務遂行状況を確認し、所定の手続きに沿って書面で証明することとされています。
つまり、勤務時間や日数に明確な基準はありません。勤務時間や日数の扱いは運用や確認方法によって異なる場合があるため、事前に自治体や所属先に確認するとよいでしょう。働きながら資格要件を満たせるよう、柔軟な運用がなされているのです。
鍼灸師に期待される役割
では、なぜわざわざ鍼灸師を機能訓練指導員に加えたのでしょうか。高齢者は体の痛みを訴える方が多く、痛みを和らげる専門家としての役割が期待されたという背景があります。
膝が痛い、腰が痛い、肩が上がらない。こうした悩みを抱えながら訓練に取り組む高齢者にとって、痛みのケアができる鍼灸師の存在は心強いものです。鍼灸の技術で痛みを軽減しながらリハビリを進められれば、訓練の継続率も上がるでしょう。
無資格から機能訓練指導員を目指すには

「今は何の資格ももっていないけど、機能訓練指導員になりたい」という人は、どうすればいいのでしょうか。
まずは資格取得から
残念ながら近道はなく、先の7つのいずれかの国家資格を取得する必要があります。
最短ルートは、専門学校に3年通うことでしょう。夜間部がある学校なら、働きながら通うことも可能です。
看護師を目指すなら、准看護師から始めるという方法もあります。准看護師の養成課程は2年間で、働きながら学べる学校もあります。
理学療法士や作業療法士は専門性が高い分、養成期間も長く、学費も高額になりがちです。じっくり腰を据えて学ぶ覚悟が必要でしょう。
現場でアルバイトしながら学ぶ
資格取得を目指しながら、介護施設でアルバイトやパートとして働くのも1つです。介護助手として現場を知っておけば、資格取得後にスムーズに仕事に入れます。
特に鍼灸師を目指す人はこの働き方がおすすめです。半年の実務経験が必要になるのであれば、学生のうちから現場に触れておくのは賢い選択といえるでしょう。
機能訓練指導員に求められる本当の役割

資格があれば自動的によい機能訓練指導員になれるわけではありません。現場で本当に求められるのは、資格以上のものです。
一人ひとりに寄り添う力
利用者さんの状態は千差万別です。同じ「歩行訓練」でも、その人の体力、認知機能、性格、生活環境によって、アプローチはまったく変わります。
マニュアルどおりに進めるのではなく、目の前の人をよく観察し、その人に合った方法を見つけ出す、そんな柔軟性が求められます。
長期的な視点をもちながら根気よく
高齢者の機能訓練は、すぐに劇的な成果が出るものではありません。週に2〜3回、数か月かけて、少しずつ機能を取り戻していく地道なプロセスです。
途中で効果が見えなくなったりむしろ状態が悪化したりすることもあるため、それでも諦めずに関わり続けられるかが問われます。
生活の中に溶け込むさり気ない機能訓練
生活の中に溶け込む機能訓練も大切です。
筆者は作業療法士の資格を活かし、特別養護老人ホームとリハビリ特化型デイサービスで、機能訓練指導員として勤務した経験があります。
特に特別養護老人ホームでは、個別機能訓練だけでなく集団での体操や、書道などのクラブ活動も担当してきました。日常の楽しみを通じて身体機能や認知機能を引き出し、利用者さんが自分らしい生活を続けられるよう支援してきました。
こうしたさり気ない機能訓練のアプローチも、忘れないようにしたいところです。
機能訓練指導員の需要と将来性
では、機能訓練指導員の仕事に将来性はあるのでしょうか。
高齢化は今後も続く
65歳以上の高齢者の人口割合は今後も増えるため、要介護者の数は増加が見込まれます。それに伴い、介護施設やデイサービスも増え続けています。
法律で機能訓練指導員の配置が義務付けられている以上、施設が増えれば求人も増えるといえます。
資格取得を迷っているあなたへ
機能訓練指導員になるには、数年間学校に通い、国家試験に合格する必要があるなど、簡単な道ではありません。しかしその先には一定の需要が見込まれ、社会に必要とされる場面が多い仕事です。
資格はあくまでスタートラインです。現場に入ると、利用者さん一人ひとりからさまざまなことを教わることになります。「ありがとう、楽になったよ」「また来週も頑張るよ」などと言葉をかけてもらえる瞬間は、機能訓練指導員ならではの醍醐味です。大変なこともありますが、それ以上の価値が機能訓練指導員にはあると思います。
参考
機能訓練指導員は、高齢者の自立を支える医療・介護チームの要です。記事にあるとおり、看護師やリハビリ職など国家資格に基づく専門性が必須であり、無資格では就けない責任ある仕事です。医師としても、単なる機能回復だけでなく、利用者様の生活背景や心情に寄り添い、その人らしい生活を支える彼らの役割は非常に大きいと感じます。高齢化が進む中、その専門性と人間力がますます必要とされています。
著者プロフィール

牛玖恵梨子
作業療法士
作業療法士、児童指導員ほか。
養成校卒業後、病院勤務を経て福祉心理学系の大学へ編入。卒業後は伊豆七島にある三宅島や都内、千葉県内で働く。
趣味は旅と読書、そしてビールを飲むこと。趣味と作業療法の経験を活かし、医療や福祉をテーマにした執筆や書籍などの編集も行っている。













