児童指導員の資格は本当になくなるの?経験者が今と未来を解説
更新日 2026年02月03日 公開日 2026年02月08日

文:牛玖恵梨子(作業療法士)
「児童指導員の資格がなくなるかもしれない」――。
そんな噂を耳にしたことがある人もいるかもしれません。福祉の現場で働く人たちの間では、時々こうした話題がもち上がります。本当にそんなことが起きるのでしょうか。そしてもし起きたら、子どもたちを支える現場はどうなってしまうのでしょうか。
今回の記事では、児童指導員という仕事を取り巻く現状と、この資格の今後について考えていきます。
目次
児童指導員任用資格とは何か
まず基本的なところから整理しましょう。児童指導員は、児童養護施設や障害児施設、放課後等デイサービスなどで働く専門職です。ただし、医師や看護師のような「国家資格」ではありません。
正式には「児童指導員任用資格」と呼ばれ、大学で福祉や心理、教育を学んだ人、教員免許や幼稚園教諭をもつ人、あるいは現場での実務経験がある人などがこの任用資格を得られます。
つまり、試験を受けて合格する類のものではなく、一定の条件をクリアすれば自動的に認められるしくみなのです。
「資格がなくなる」とはどういうことか

では、「資格がなくなる」という話は、具体的に何を指しているのでしょうか。
実は、この任用資格そのものが法律から削除されるという議論が、過去に一部で取り沙汰されたことがあります。
児童指導員がなくなるという話は、2021年度に行われた障害福祉サービス報酬改定での加算制度の変更に関連しているとみられます。この改定では「児童指導員等配置加算」が廃止され、さらに「児童指導員等加配加算」の一部についても調整が行われました。
ただし、現時点で資格制度が廃止される具体的な動きがあるわけではありません。むしろ、子どもの権利を守るため、専門性の担保は重要だという認識が強まっています。
とはいえ、将来的にどうなるかは誰にもわかりません。だからこそ、もし本当に資格要件がなくなったら何が起きるのか、想像しておく価値はあるでしょう。
資格要件がなくなったら起こること
もし児童指導員の資格要件がなくなったらどうなるのでしょうか。将来にそなえてシミュレーションをしてみました。
誰でも働ける現場になる
資格要件が撤廃されれば、誰でも児童指導員として働けるようになります。人手不足に悩む施設にとっては、一時的に採用のハードルが下がり、人員確保が楽になるかもしれません。
しかし、子どもと向き合う仕事は本当に「誰でもできる」ものでしょうか。虐待を受けた子ども、発達に課題のある子ども、家庭に居場所がない子どもたちと日々接するには、心理学の基礎知識、発達の理解、適切な距離感の取り方など、実際はさまざまな専門的スキルが求められます。
施設間の格差が広がる
資格要件がなくなれば、施設の方針次第で採用基準が大きく変わるでしょう。しっかりした研修体制をもつ施設は、独自の基準で質の高い職員を育てられるかもしれません。
一方で、人手不足に追われている施設では、とにかく人数を揃えることが優先され、質は二の次になってしまうかもしれません。そうなると、どの施設で暮らすか、どの施設に通うかによって、子どもが受けられる「支援の質」に大きな差が生まれてしまいます。
専門職としての価値の低下
もう1つ見逃せないのが、職業としての社会的評価が下がる心配があることです。資格要件がなくなれば、「特別なスキルが不要な仕事」というイメージがついてしまう恐れがあります。
その結果、給与水準はさらに下がってしまいます。優秀な人材が他の職業に流れていき、残るのは「他に選択肢がないから」という消極的な動機で働く人ばかりという悪循環に陥りかねません。
資格なしで児童指導員になれるのか

今でも、補助職員やパート職員として勤務しながら資格取得を目指す人はおり、施設によっては、働きながら通信制大学で学ぶことを支援してくれるところもあります。現場経験を積みながら理論を学べるので、実践的なスキルが身につきやすいというメリットがあります。
ただし、正職員としての採用や給与アップには、やはり任用資格が必要になることがほとんどです。無資格のままキャリアを築いていくのは、現実的には難しいのが実情です。
児童指導員の資格を取る具体的な方法
これから児童指導員を目指す人のために、資格取得のルートを整理しておきましょう。
大学・短大で学ぶ
最も一般的なのは、大学や短大で社会福祉学、心理学、教育学、社会学のいずれかを専攻することです。卒業すれば自動的に任用資格が得られます。
時間はかかりますが、体系的に知識を学べるのは大きな強みです。
教員免許や幼稚園教諭を活かす
すでに教員免許や幼稚園教諭をもっている人は、それだけで児童指導員になれます。教育や保育の経験は、そのまま児童福祉の現場で活かせます。
実務経験を積む
高卒で児童福祉施設に2年以上勤務すれば、任用資格が得られます。最初は無資格の補助職員としてスタートすることになりますが、現場で学びながら資格につなげられるので、「すぐに働き始めたい」という人には向いています。
社会福祉士などの資格から
社会福祉士や精神保健福祉士の資格をもっている人も、児童指導員として働けます。福祉の専門知識をもつ人材は、現場で重宝されます。
児童指導員の需要は本当に高まっている?

そもそも児童指導員という仕事の需要は高まっているのでしょうか。
止まらない児童虐待の増加
児童相談所への虐待相談件数は増え続けています。一時保護される子どもも増えており、受け皿となる施設も職員も足りていません。
虐待を受けた子どもたちには、心のケアが必要です。安心できる環境で、信頼できる大人との関係を少しずつ築いていくプロセスを支えられるのが、児童指導員です。
発達障害児への支援ニーズ
発達障害への理解が広がり、早期からの療育の重要性も認識された結果、放課後等デイサービスや児童発達支援の事業所は、ここ数年で急増しています。
こうした施設でも、児童指導員は中核を担います。一人ひとりの特性を見極め、その子に合った支援を組み立てていく、専門的な視点と柔軟な対応力が求められます。
変化する家族の形
共働き世帯の増加、ひとり親家庭の増加、地域コミュニティの希薄化など、現代の子育て環境は、確実に変化しています。
学童保育や地域の子育て支援拠点など、家庭以外で子どもを見守る場所の重要性は高まる一方です。ここでも児童指導員の役割は大きく、需要は今後も続くと見られています。
この仕事の将来性を考える

では、児童指導員という仕事には長期的な将来性はあるのでしょうか。
なくならない仕事
AIの時代ですが、子どもと信頼関係を築き、心に寄り添い、成長を見守るこの仕事は、まさに人間にしかできない領域でしょう。
少子化が進んでも、支援を必要とする子どもの割合が減るわけではありません。むしろ、一人ひとりに丁寧に関わる必要性は高まっています。
求められる専門性の進化
これからの児童指導員には、より高度な専門性が求められるようになるはずです。トラウマへの理解、愛着形成の支援、発達特性への対応など、学び続ける姿勢が不可欠です。
資格を取って終わりではなく、常にアップデートし続けることができる人が、この業界で長く活躍できるはずです。
まとめ:資格があってもなくても大切なこと
結局のところ、資格があるかないかはスタートラインの話でしかありません。本当に大切なのは、目の前の子どもに誠実に向き合えるか、困難を抱えた子どもたちの人生に関わるという責任をどれだけ真剣に受け止められるかです。
もしあなたが児童指導員を目指しているなら、まずは自分に合った資格取得のルートを見つけてください。そして現場に出たら、資格はあくまでスタート地点だと思って、子どもたちから学ぶ姿勢を忘れないでほしいと思います。
この仕事には、確かに大変なことも多いですが、それ以上に得られるものがあります。興味のある方はぜひその一歩を踏み出してみてください。













