鍼灸師とは|鍼灸の基礎知識や仕事内容・鍼灸師になる方法を解説

更新日 2023年12月13日 公開日 2023年12月13日

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東洋医学の伝統的な治療法である鍼灸。腰痛や神経痛、片頭痛、膝痛といった慢性化しやすい痛みを緩和する効果が見込まれるため、国内外を問わず高い関心を集めています。では、鍼灸の施術を行う国家資格である「鍼灸師」は、具体的にはどのような仕事をしており、どうやったらなれるのでしょうか。

この記事では、鍼灸の効果や鍼灸師の仕事内容、鍼灸師が就職して活躍できる場所、鍼灸師になる方法について解説します。鍼灸師に興味がある方や、鍼灸師を目指している方は、ぜひ最後までご覧ください。

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鍼灸師とは|鍼灸の基礎知識や仕事内容・鍼灸師になる方法を解説

鍼灸師とは?

鍼灸師とは、東洋医学にもとづいて体のツボ(経穴)を刺激し、病気の治療や予防につとめる医療専門職です。東洋医学では、それぞれの疾患に対応したツボを刺激することで、人間本来の自然治癒力が高まり、症状の軽減や病気の予防につながると考えられています。ツボの刺激方法ははりときゅうに大別され、ツボにはりを刺して施術を行うのが「はり師」、もぐさでツボを温める施術を行うのが「きゅう師」です。

正式にはり師・きゅう師を名乗るには、医療系国家資格であるはり師資格やきゅう師資格を取得する必要があります。誤解されている方も多いのですが、実は鍼灸師資格というものはなく、はり師・きゅう師両方の資格を取得している方を鍼灸師と呼んでいます。つまり鍼灸師は、はり師ときゅう師の総称というわけです。

伝統的な東洋医学の治療法である鍼灸は、疼痛緩和などを目的とした補完療法として、あるいは副作用が少ない治療法として、国内外で注目されています。

(参考:厚生労働省「はり師・きゅう師」/https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/175

鍼灸にはどのような効果が期待されている?

中国の古代王朝・後漢の時代に執筆されたとされる「霊枢(れいすう)」にも、鍼灸についての記述があるほど、鍼灸は歴史のある治療法です。

(出典:国立研究開発法人科学技術振興機構J-STAGE「素問, 霊枢に準拠する鍼灸治療一般の原則」/https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsam1955/27/1/27_1_306/_article/-char/ja/

(出典:国立研究開発法人科学技術振興機構J-STAGE「霊枢の成立に就て」/https://www.jstage.jst.go.jp/article/kampomed1950/15/3/15_3_83/_article/-char/ja/

鍼灸治療には、腰痛、神経痛、片頭痛や膝痛など、慢性化することの多い痛みを緩和する効果が期待されています。そのため、米国疼痛学会や米国内科学会は、2007年から臨床診療ガイドラインで鍼灸を推奨しており、科学的に見た鍼灸治療の効果や安全性についての研究も進められています。

(出典:厚生労働省「『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』鍼治療」/https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/c02/01.html

ちなみに、日本鍼灸師会、東京都鍼灸師会などが採用している、鍼灸治療の効果に対する仮説は、「はりの刺激による免疫システムと神経活動の活性化が影響している」というものです。

人間の体に存在する免疫システムは、鍼灸によるはりの挿入や熱刺激に反応します。そして、刺激部分に免疫細胞を送ろうと血管が広がり、血行が改善されて、鎮痛作用が起こります。さらに、刺激によって自律神経活動が活発化し、臓器の活動や血管拡張、血圧正常化が起こることでホメオスタシス(身体恒常性)も改善されると言われています。

こうした一連の流れが、鍼灸治療の効果に影響しているというわけです。

(出典:公益社団法人 日本鍼灸師会「鍼灸の基礎知識」/https://www.harikyu.or.jp/acupuncture/acupuncture-02/#i-7

(出典:公益社団法人 東京都鍼灸師会「鍼灸の効果」/https://harikyu-tokyo.or.jp/general/effect

このような仮説があるものの、十分な検証データが集まっていないため、「鍼灸がなぜ効果を発揮するか」については明らかになっていません。しかし、日本、アメリカ、ドイツなどで鍼灸が保険適用されているなど、鍼灸の効果に対する医学的な関心は非常に高いと言えます。

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鍼灸師の仕事内容

鍼灸師の主な仕事は、はりときゅうを使って、健康回復をサポートしたり、病気の治療・予防を行ったりすることです。こうした仕事のなかには、東洋医学の見地から利用者さまを診断することも含まれます。

鍼灸師は、一般的に以下のような流れで仕事を行います。

1 東洋医学の知見にもとづき、脈診や望診といった検査を行う

2 法的に可能な範囲で、西洋医学的検査を行う

3 症状や体質を確認し、診断をくだす

4 適切な経穴に鍼灸による施術をする

はり治療

続いて、鍼灸師が行う検査や施術について具体的に解説します。

はり治療では、長さ約15〜90mm、太さ直径約0.1〜0.3mmという極細の金属ばりを使って、体のツボに刺激を与え、不調(痛みや筋肉のこり、血行不良など)の改善を目指します。はり治療用のはりは、極細なことに加えて先端が丸みを帯びているため、皮膚に刺してもほとんど痛みを感じません。

はり治療の施術方法は、はりを突き刺してすぐに抜くものや、はりを上下に動かして刺激を与えるもの、はりに微弱な電流を流すものなどさまざまです。

(出典:公益社団法人日本鍼灸師会「鍼灸の基礎知識」/https://www.harikyu.or.jp/acupuncture/acupuncture-02/#i-4

(出典:厚生労働省「『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』鍼治療」/https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/c02/01.html

きゅう治療

きゅう治療では、もぐさをツボにあたる部位の皮膚上で燃やし、熱刺激を与えることで、はり治療と同様に心身の不調改善を目指します。もぐさというのは、ヨモギの葉を乾燥させてすりつぶし、繊維を取り出したものです。

きゅうには「熱い」といったイメージがありますが、実際には約40〜50度程度の熱すぎない温度での施術が基本です。

きゅう治療には皮膚の上に直接もぐさを置き、火をつけてきゅうの跡を作る「有痕きゅう」と、きゅうの痕を残さない「無痕きゅう」があります。市販されている台座付きのきゅうは無痕きゅうであり、皮膚には痕が残りません。ただし、鍼灸師が行うきゅう治療の場合、有痕きゅうであっても小さなほくろほどの痕しか残りません。

脈診

東洋医学では、体内をめぐる生命エネルギーのことを「気」と呼び、気が乱れると病気が起こるとされています。そして、気の乱れを確認するための方法として用いられているのが脈診です。

脈診では、脈拍の強弱や回数などを計測し、気の状態を確認します。東洋医学では、脈が皮膚表面で簡単に取れるか取れないか、速いか遅いか、強いか弱いかといった特徴から、気の乱れが判別できると考えられています。

以下に、脈診における代表的な分類を紹介しましょう。

  • ・浮脈

    軽く触れると確認できるが、強く押さえると感じなくなる脈

  • ・沈脈

    軽く触れただけではわからないが、強く押さえると確認できる脈

  • ・遅脈
    ゆったりとした遅い脈
  • ・数脈

    速く打つ脈

  • ・虚脈

    脈拍が弱く、力がない脈

  • ・実脈

    脈拍が強く、力強い脈

望診

望診とは、表情や肌の色つや、体の動作、舌の状態などを確認し、診断を行うものです。東洋医学では免疫力が強く、病気をはね返せる状態にあることを「実証」、免疫力が弱った状態を「虚証」と呼び、患者がどの状態にあるかを望診で確認します。

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鍼灸師が活躍する場所は?

鍼灸師は、医療分野はもちろん、美容分野やスポーツ分野、福祉分野など、幅広い分野で活躍しています。

【鍼灸師の主な活躍場所】

鍼灸院・鍼灸整骨院 鍼灸院や鍼灸整骨院で、不調を抱えた患者さまに向けて施術を行います。
病院・クリニック 整形外科やリハビリテーション科で、医師や看護師さんとともに治療を行います。
エステサロン 美容鍼灸師としてエステサロンに勤務し、美肌やエイジングケアといった美容を目的とした鍼灸を行います。
スポーツ施設 スポーツトレーナー、アスレティックトレーナーとしてスポーツ施設に勤務し、スポーツで生じた障害やけがの痛みをやわらげるためのスポーツ鍼灸を行います。
介護福祉施設 介護福祉施設で勤務しながら、要介護者のQOL改善を目指して、鍼灸施術、訪問鍼灸などを行います。
教育機関・研究施設 鍼灸専門学校や医療系の研究施設で、後進の指導や臨床研究を行います。
独立開業 はり師・きゅう師は、医師と同じく開業権を持つ国家資格です。そのため、経験を積んだ上で独立開業する方もいます。
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鍼灸師になるには

上記のように幅広い就職先がある鍼灸師ですが、どうすれば鍼灸師になれるのでしょうか。厚生労働省は以下のように定めています。

(1)学校教育法(昭和22年法律第26号)第90条第1項の規定により大学に入学することのできる者(法第2条第1項の規定により文部科学大臣の認定した学校が大学である場合において、当該大学が学校教育法第90条第2項の規定により当該大学に入学させた者又は法附則第18条の規定により学校教育法第90条第1項の規定により大学に入学することのできる者とみなされる者を含む。)であって、3年以上、文部科学省令・厚生労働省令で定める基準に適合するものとして、文部科学大臣の認定した学校、厚生労働大臣の認定した養成施設又は都道府県知事の認定した養成施設において、はり師となるのに必要な知識及び技能を修得したもの

(引用:厚生労働省「はり師国家試験の施行」/https://www.mhlw.go.jp/kouseiroudoushou/shikaku_shiken/harishi/

鍼灸学科などの鍼灸師養成カリキュラムがある大学、もしくは鍼灸系専門学校で3年以上学ぶことで、はり師・きゅう師免許の国家試験受験資格が得られます。はり師・きゅう師の免許はそれぞれ別の資格ですが、同時に受験する場合は試験の共通科目が免除されます。

2022年の鍼灸師国家試験合格率は、はり師が74.2%、きゅう師が76.1%です。合格者数に上限はなく、一定数以上正答すれば合格できるため、しっかりと対策した上で試験に挑みましょう。

(出典: 厚生労働省「第30回あん摩マッサージ指圧師、はり師及びきゅう師国家試験の合格発表について」/https://www.mhlw.go.jp/general/sikaku/successlist/2022/siken13_14_15/about.html

(出典:公益財団法人東洋療法研修試験財団「試験概要」/https://ahaki.or.jp/exam/outline/

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まとめ

鍼灸師とは、東洋医学の見地から望診・脈診といった診断を行い、はりやきゅうによって体のツボ(経穴)を刺激することで、健康回復をサポートしたり、病気の治療・予防を行ったりする仕事です。主な就職先には、鍼灸院や病院のほか、介護施設、スポーツ施設、エステサロンなどがあり、幅広い分野で活躍できるでしょう。鍼灸師の資格を取得するには、3年以上養成施設で学んだ上で、はり師・きゅう師の国家試験を受験する必要があります。

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※当記事は2022年1月時点の情報をもとに作成しています

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