鍼灸師になるための資格は?国家試験や生涯学習制度について解説
鍼灸師は、はりやきゅうを使って体のツボを刺激することで、病気の治療・予防などを行う仕事です。鍼灸師は、国家資格であるはり師・きゅう師の総称で、資格を取得するには養成機関でさまざまな知識を身につけた上で、国家試験に合格する必要があります。鍼灸師が活躍する場所は、鍼灸院や鍼灸整骨院、病院以外にも数多くあるため、鍼灸師になった後も技術や知識を磨き続ければ、より幅広い分野で活躍できるでしょう。
当記事では、鍼灸師になるために必要な資格や、鍼灸師の将来について詳しく解説します。長く鍼灸師として活躍したい方は、ぜひ当記事を参考にしてください。
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目次
鍼灸師になるために必要な資格は?
鍼灸とは、「経穴」と呼ばれるツボに細長いはりを刺したり、ヨモギで作られたきゅうで熱刺激を与えたりして、人間本来の自然治癒力を高める施術のことです。
(出典:公益社団法人日本鍼灸師会「鍼灸の基礎知識」/https://www.harikyu.or.jp/acupuncture/acupuncture-02/#i-10/)
鍼灸師は、鍼灸治療の専門家としての高い知識と技術を持ち、日々患者さまの施術に取り組んでいます。
鍼灸には、腰痛や神経痛、片頭痛といった痛みを緩和する効果や、自律神経を整えて、免疫力を高める効果が期待されています。また、最近では一般的な施術のほかに、美容鍼灸やスポーツ鍼灸、不妊治療といった専門性の高い鍼灸治療も行われており、幅広い分野で鍼灸師が活躍しています。
鍼灸師として患者さまに施術を行うには、はり師・きゅう師の国家資格が必要です。ここでは、はり師・きゅう師国家試験の内容や、受験資格について詳しくお伝えします。
はり師・きゅう師の国家試験
はり師・きゅう師国家試験の概要は次の通りです。
試験日 | 毎年1回、例年2月の最終日曜日に実施 |
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試験地 |
北海道、宮城県、東京都、新潟県、愛知県、大阪府、広島県、香川県、福岡県、鹿児島県、沖縄県 ※なお、視覚障害のある方は各都道府県で受験可能 |
試験方法 | 四肢択一のマークシートによる筆記試験(実技試験なし) |
試験料 | 1つの資格につき14,400円 |
合格基準 | 170点満点中、6割にあたる102点 |
合格率 |
はり師国家資格:74.2%(令和4年度) きゅう師国家試験:76.1%(令和4年度) |
(出典:公益社団法人東洋療法研修試験財団「試験概要」/https://ahaki.or.jp/exam/outline/)
(出典:厚生労働省「第30回あん摩マッサージ指圧師、はり師及びきゅう師国家試験の合格発表について」/https://www.mhlw.go.jp/general/sikaku/successlist/2022/siken13_14_15/about.html)
例年の合格率は75%前後であり、実技試験もないため、過去問や参考書を使ってしっかり事前準備をすれば、さほど難易度の高い試験内容ではありません。
資格取得後に活躍するためにも、この段階できちんとした知識を身に付けておきましょう。
はり師・きゅう師国家試験の内容
はり師・きゅう師国家試験の試験科目は、次の一覧の通りです。
- ○はり師国家試験
医療概論(医学史を除く)、衛生学・公衆衛生学、関係法規、解剖学、生理学、病理学概論、臨床医学総論、臨床医学各論、リハビリテーション医学、東洋医学概論、経絡経穴概論、はり理論及び東洋医学臨床論
- ○きゅう師国家試験
医療概論(医学史を除く)、衛生学・公衆衛生学、関係法規、解剖学、生理学、病理学概論、臨床医学総論、臨床医学各論、リハビリテーション医学、東洋医学概論、経絡経穴概論、きゅう理論及び東洋医学臨床論
(出典:公益社団法人東洋療法研修試験財団「試験概要」/https://ahaki.or.jp/exam/outline/)
「はり理論及び東洋医学臨床論」と「きゅう理論及び東洋医学臨床論」以外は共通科目です。そのため、はり師国家試験ときゅう師国家試験を同時に受験する場合は、申請することで一方の共通科目試験が免除されます。
(出典:厚生労働省「はり師国家試験の施行」/https://www.mhlw.go.jp/kouseiroudoushou/shikaku_shiken/harishi/)
とはいえ、共通科目だけで12科目あり、はり師国家試験ときゅう師国家試験を両方受験する場合は、合計14科目の勉強が必要です。試験日から逆算した学習スケジュールを立てて、効率よく試験対策を進めましょう。
はり師・きゅう師国家試験の受験資格
受験資格を得るには、次の条件を満たす必要があります。
・視覚障害があり、高等学校に入学できる方で国や自治体が認定した養成施設または学校で技術を修得した方
(出典:公益社団法人東洋療法研修試験財団「試験概要」/https://ahaki.or.jp/exam/outline/)
大学に入学できる資格は、高校卒業や高卒認定試験に合格することで得られます。その後は、鍼灸師になるためのカリキュラムがある大学や専門学校に入学し、3年以上かけて実技や専門知識を学びます。
鍼灸師として、最短で国家試験に合格したい場合は、3年課程の専門学校に入学し、はり師・きゅう師国家試験を同時受験するのが良いでしょう。
なお、はり師・きゅう師国家試験の受験資格には、年齢制限が設けられていません。そのため、社会人になってからのキャリアチェンジや、他の医療系国家資格とのダブルライセンスを目指して、はり師・きゅう師国家試験を受験することも可能です。
鍼灸師養成施設のなかには、夜間制で学べるカリキュラムが用意されている学校もあるため、働きながらでも鍼灸師を目指せるでしょう。
(出典:厚生労働省「きゅう師国家試験の施行」/https://www.mhlw.go.jp/kouseiroudoushou/shikaku_shiken/kyushi/)
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鍼灸師の資格は取得すべき?鍼灸師の将来性
鍼灸師が活躍する現場は、医療業界だけでなく介護、美容、スポーツ業界にまで広がっています。さらに、はり師・きゅう師は開業権のある国家資格であるため、独立して治療院を開くことも可能です。
また、鍼灸治療は体への負担が少なく、副作用も起こりにくい施術と言われているため、今後は高齢者に対する需要の高まりが予想されています。高齢化が進む現代において、はり師・きゅう師は注目度の高い資格と言えるでしょう。
以上のように、鍼灸師は非常に将来性のある仕事だと言えますが、そのなかでさらに活躍していくためには、どうすれば良いのでしょうか。ここからは、社会に求められる鍼灸師になるためのポイントを解説します。
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求められる鍼灸師になるには
鍼灸師として求められる存在になるには、時代のニーズに合った知識を身に付けることが重要です。基本的な鍼灸の知識だけでなく、プラスアルファの知識があると、特定の分野で強みを発揮できるでしょう。特に次の3つの分野では、鍼灸師の注目度が高まっています。興味のある方は、ぜひ知識を深めてみてください。
介護分野 |
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高齢化が進む現在、高齢者へのケアは社会的なニーズとなっています。鍼灸師として施術ができることはもちろん、リハビリテーションや予防介護の知識があると、介護業界で重宝されるでしょう。介護福祉施設で半年間の実務経験を積めば、機能訓練指導員としてのキャリアを築くことも可能です。 |
美容分野 |
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近年の健康志向の高まりを考えれば、美容鍼灸の知識を磨くことも、時代に合ったスキルアップの方法だと言えます。美容鍼灸とは、鍼灸によってツボを刺激することで、美肌効果やリフトアップ効果が期待できる施術法です。 また、外見だけでなく、ホルモンバランスの改善やストレスの緩和など、内面(健康面)にもアプローチできるのが美容鍼灸師の強みです。美容鍼灸師として活躍したい場合は、美容鍼灸サロンやエステサロンが主な職場になります。 |
スポーツ分野 |
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体のコンディションを整えるだけでなく、病気やけがの予防効果もある鍼灸治療は、スポーツ業界でも注目が集まっています。練習や試合で体を酷使するスポーツ選手にとって、日頃のケアはとても大切です。鍼灸治療は副作用が少ない上に、ドーピング検査に影響する可能性もないことから、スポーツ業界と非常に相性が良いと言えるでしょう。 スポーツ分野で働く場合は、スポーツトレーナーとして選手に施術を行うほか、スポーツ施設のお客さまにスポーツ鍼灸を提供することもあります。 |
時代に合った専門性を身に付けることで、さまざまな業界で求められる鍼灸師になれるでしょう。
鍼灸師の生涯研修制度
生涯研修制度とは、「鍼灸師として社会のニーズに応えられるよう努力を重ね、医学の進歩に対応し、鍼灸師の社会的評価を高めること」を目的にした制度です。研修会や関係学会に出席することで単位が取得でき、1年間で25単位以上取得すると、研修修了証書が交付されます。
研修会には、基礎医学や臨床といった研修のほか、専門分野に特化したプログラムも用意されています。研修会に参加して、鍼灸に関する知識・技術を総合的に向上させれば、鍼灸師としてのレベルアップが目指せるでしょう。
また、生涯研修制度に参加して、研修修了証書が交付されると、鍼灸師として研さんを積んでいることの証しにもなります。将来的に活躍の場を広げたい方は、積極的に参加してみると良いでしょう。
(出典:公益財団法人東洋療法研修試験財団「生涯研修とは」/https://ahaki.or.jp/training/essential/)
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まとめ
鍼灸師になるためには、はり師・きゅう師の国家資格を取得する必要があります。はり師・きゅう師国家試験は、3年以上鍼灸師の養成施設に通い、知識を身に付けることで受験できます。合格率は、例年75%程度なので、しっかりと勉強して合格を目指しましょう。
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※当記事は2023年2月時点の情報をもとに作成しています
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