柔道整復師の歴史とは?現代まで続く施術方法も解説

更新日 2024年02月26日 公開日 2024年02月26日

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柔道整復師は薬や手術に頼らず、手技を使って骨折・脱臼・打撲・捻挫などを治療する、日本の伝統的な医療専門職です。柔道整復術が生まれたとされる奈良時代には、整復技術とあん摩技術が同一視されていましたが、江戸時代に蘭学、中国医学といった海外の医学と結びついたことで、柔道整復術は大きく発展。次第に体系化していきました。

この記事では、古代から江戸時代までの柔道整復発展の歴史や、明治政府による規制と再興、戦後の歩みなどを紹介するとともに、歴史のなかで育まれた柔道整復の施術方法についても解説していきます。柔道整復師を目指している方や、柔道整復師の歴史やルーツについて知りたい方は、ぜひご覧ください。

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柔道整復師の歴史とは?現代まで続く施術方法も解説

柔道整復師の歴史

柔道整復術とは、骨折、脱臼、打撲、捻挫などに対して、整復・固定・後療法といった「出血を伴わない施術(非観血的療法)」を行い、人間の持つ自然治癒能力を最大限に引き出す治療法です。薬や手術に頼らず、手技を用いて自然治癒に導いていく柔道整復術は、柔術から生まれた施術であり、その発祥は約1300年前(現代につながる柔道整復術は約200年前)だと言われています。

ここからは、柔道整復術の今日に至るまでの歴史を振り返っていきましょう。なお、各章の内容は以下の出典を参考にしています。

(出典:公益社団法人大阪府柔道整復師会「柔道整復術の歴史」/https://www.osaka-jyusei.or.jp/about/history/

(出典:国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)J-Stage「柔道整復師はどのようにしてその名を得たか」/https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsss/20/2/20_51/_pdf

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奈良時代~江戸時代の柔道整復師

柔道整復術の起源は、奈良時代にまでさかのぼります。当時、用いられていた法律「養老律令」には、すでにあん摩師やあん摩博士、あん摩生(学生)に関する記述があり、あん摩生はあん摩だけでなく、打ち身、捻挫、骨折の治療法を学ぶように定められていました。また、984年に書かれた、日本に現存する最古の医書「医心方」にも、打撲傷や捻挫、骨折、脱臼の治療法が記載されています。こうしたことからも、柔道整復術(接骨術)が非常に長い歴史を持っていることがわかるでしょう。

柔術と整骨を結びつけるという、柔道整復術の考え方が本格的に広まったのは江戸時代のこと。1619年に中国から亡命してきた拳法家の陳元賛(ちんげんぴん)が、柔術と応急手当としての整骨術を伝えたことが、その源流になったとされています。

その後、1746年には高志鳳翼(こうし ほうよく)が日本初の専門書である「骨継療治重宝記」を発表。1810年には各務文献(かがみ ぶんけん)が、解剖学的な知見を取り入れた「整骨新書」を完成させました。整骨新書には、現代で用いられている柔道整復術の根幹となる「無血整復」に関する知識が、詳細なスケッチとともに記されています。

さらに江戸時代後期には、華岡青洲(はなおか せいしゅう)が、蘭学の技術を取り入れた整骨術として「華岡青洲整骨秘伝図」を残しています。

明治時代の柔道整復師

このように、学問と結びつく形で社会に広まっていった柔道整復術ですが、明治時代に入ると状況が一変します。明治政府が、明治7年に「医制」という法令(現在の医師法・薬剤師法の元になっている法令)を制定したことで、医業が許可制へと変わったのです。また、医制は日本の医療の近代化を目的としていたため、医療の中心は漢方医学から西洋医学へと移っていきました。

こうした動きをうけて、明治27年には接骨業が廃止され、接骨院で仕事をしていた人々は、治療を行えなくなってしまいます。つまり、柔道整復術の伝統・文化に消滅の危機が訪れたのです。

しかし、大正時代に入ると柔道家による柔道接骨術公認請願運動が活発化し、1913年には柔道整復術を復活させるための請願運動が行われました。そして1920年、活動のかいあって政府が規則を改正。専門技術を持つ者を柔道整復師として公認し、近代における柔道整復師が正式に誕生します。

戦後の柔道整復師

1947年、旧憲法のもとに定められた法律はGHQの統制下で失効しました。しかし、同年に「あん摩、はり、きゅう、柔道整復等営業法」が制定されたことで、柔道整復師は再度法的に認められることになります。

その後は、全国各地に柔道整復師の養成学校が開校し、1970年には、柔道整復師の職務・資格などを規定した「柔道整復師法」が成立しました。ちなみに柔道整復師法は、1947年に制定された「あん摩、はり、きゅう、柔道整復等営業法」から、柔道整復術に関連するところだけが切り離された法律です。

1976年になると、柔道整復師養成施設におけるカリキュラムも制定され、教育の内容がよりはっきりとしたものになります。また、柔道整復師の業務範囲が「骨折や捻挫といった軟部組織の損傷に対する施術」と明確に定められたのもこの頃からです。

現代の柔道整復師

1992年、柔道整復術に関するさまざまな調査研究や論文発表、学術講演会の開催などを行う「日本柔道整復接骨医学会」が設立されると、1989年には19年ぶりに柔道整復師法が改正されました。それまでは、都道府県単位で資格試験が実施されていましたが、改正によって柔道整復師は厚生大臣免許に変更。厚生労働省が行う国家試験となったのです。

また、2001年には、WHOから提出された報告書において日本の柔道整復術が紹介され、2002年には、日本柔道整復接骨医学会が「日本学術会議」(科学者の意見を国内外に発信する日本の代表機関)に登録されました。これによって、今後は柔道整復術の技術が世界中に広がっていくことが期待されています。

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現代まで受け継がれる柔道整復師の施術方法

現代まで受け継がれてきた柔道整復術の施術方法は、整復法、固定法、後療法の3つに大別されます。

柔道整復師は上記3つの方法を用いて、骨折や脱臼、打撲、捻挫などに対する施術を行いますが、施術が持つ性質や方法はそれぞれに異なります。ここでは、整復法、固定法、後療法について詳しく見ていきましょう。なお、柔道整復師が骨折、脱臼の治療を行うには、医師の同意が必要です。

整復法

整復法は、骨折や脱臼によって、外れたりずれたりした骨を元の状態に戻すための治療法です。施術では患部の状態を把握したうえで、けん引や圧迫などのアプローチを行います。症状によっては患部以外の部位もチェックし、施術を行うケースもあります。

骨が外れたりずれたりした場合、その骨が他の神経・血管にダメージを与えている可能性があるため、整復法を行う場合は、単純に物理的アプローチを行うだけでなく、患者さまの表情や顔色、しびれの有無などをチェックすることも重要です。

固定法

固定法は、症状の出ている場所を回復しやすい状態に保つ治療法のことで、安静、冷却、圧迫、挙上などの方法があります。

  • ●安静

    ギブスや三角巾、テーピングなどを用いて患部を固定する方法です。無理な動きやぐらつきを防ぐことで、内出血、腫れなどによる症状の悪化を予防します。

  • ●冷却

    ビニール袋などに氷を入れて患部を冷やす方法です。これによって、内出血や炎症、腫れを抑え、痛みを軽減させます。

  • ●圧迫

    パッドやスポンジなどを押し当てながら、患部を固定する方法です。患部を圧迫することで内出血や腫れを抑え、症状の悪化を防ぎます。

  • ●挙上
    クッションや枕を使って、患部を心臓よりも高い位置に持っていく方法です。これによって、腫れにくくなったり、回復しやすくなったりする効果が期待できます。

後療法

後療法は、患部の回復を早めるために刺激を与える治療法で、手技療法、物理療法、運動療法の3つに分けられます。

  • ●手技療法

    手を使って叩いたり揉んだりすることで、自然治癒力を高める方法です。血のめぐりやリンパの分泌を活性化し、早期の回復を目指します。

  • ●物理療法

    電気や温熱、超音波、光、水などを用いて患部に刺激を与える方法です。血のめぐりをよくしたり、体のさまざまな組織を活性化させたりすることで、身体機能の正常化を目指します。

  • ●運動療法
    患部を動かすことで、低下した身体機能を回復させる方法です。ギプスやテーピングなどで長期間固定すると筋肉や関節が固くなってしまうため、運動によって少しずつ体を動かす必要があります。
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まとめ

柔道整復術は約1300年前に生まれ、江戸時代には蘭学や中国医学と結びついて大きく発達しました。しかし、明治時代に「医制」が制定されたことで、接骨術を含めた漢方医学が廃止され、柔道整復術の伝統や文化に消滅の危機が訪れます。その後、柔道家たちの請願運動によって接骨術は復活。大正時代には正式な職業として柔道整復師が生まれました。

また、1970年以降は「柔道整復師法」の制定や免許の国家資格化、WHOによる柔道整復技術の紹介、日本柔道整復接骨医学会の学術会議登録などによって、柔道整復の技術はさらなる発展を見せています。

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※当記事は2022年2月時点の情報をもとに作成しています

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