治験コーディネーターの平均年収|他職種との比較・給料の特徴も
治験コーディネーターは、治験施設支援機関(SMO)や病院・クリニックに所属して、新薬の治験をサポートする仕事です。病気に悩む多くの方に貢献できるやりがいの大きい仕事ですが、専門性が高い職種ということもあり、給料や福利厚生などの待遇面についてはあまり知られていません。
当記事では、治験コーディネーターの平均年収を中心に、他業種との比較や給料の特徴を解説します。福利厚生の内容や年収アップの方法についても紹介するので、治験コーディネーターに興味がある方や、就職・転職を目指している方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
治験コーディネーターの平均年収
治験コーディネーター(CRC)は、新薬開発のための治験をサポートする仕事です。治験とは、新しい医薬品・医療機器などを開発する際、有効性や安全性を確認するために実施する臨床試験のことで、治験コーディネーターは医師や製薬会社と協力しながら、スケジュール調整や被験者対応などを行います。
治験のモニタリングが中心の臨床開発モニター(CRA)とは異なり、関係機関への報告書の作成、被験者への報告や心身のケアなど、治験業務全般のサポートを行うのが治験コーディネーターの役割です。
なお、治験コーディネーターの勤務形態には2つのパターンがあり、治験施設支援機関(SMO)に所属して医療機関へ派遣されるケースと、病院やクリニックに所属して院内コーディネーターとして働くケースがあります。
マイナビコメディカルの求人情報をもとに概算すると、治験コーディネーターの平均年収は約370万〜430万円となっています。
治験コーディネーターの平均年収 |
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約370万~430万円 |
(出典:マイナビコメディカル/https://co-medical.mynavi.jp/)
上記の平均年収をさらに細かく見ていくと、治験施設支援機関(SMO)の平均年収は約320万〜420万円、医療機関で働く治験コーディネーターの平均年収は、約350万〜480万円でした。
勤務地や職場の規模によっても異なりますが、この数字を見る限りでは、治験施設支援機関よりも医療機関のほうが年収は高い傾向にあるようです。
次に、治験コーディネーターと他の医療系職種の平均年収を比較してみましょう。
看護師
看護師資格を保有する治験コーディネーターは珍しくなく、看護師としての臨床経験は治験コーディネーターの仕事に大いに役立ちます。ただし、病院勤務の看護師から治験コーディネーターに転職した場合、年収は一時的に下がる可能性がある点に注意が必要です。
【看護師との比較】
看護師の平均年収 | 治験コーディネーターの平均年収 |
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約508万円 | 約370万~430万円 |
(出典:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況」/https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2022/)
数字だけ見ると、両者の間には差があるように思えますが、看護師は夜勤の有無など働き方によって収入が大きく変動します。土日休み・日勤のみの働き方であれば、年収面で大きな差が生じることはないでしょう。また、治験コーディネーターは「3年以上のキャリアを積む」「CRCの認定資格を取得する」などのスキルアップ・キャリアアップを図ることで、平均以上の収入を得ることが可能です。
薬剤師
薬剤師の平均年収は、治験コーディネーターの平均年収よりも高い水準となっています。薬剤師が治験コーディネータ—に転職した場合は、看護師と同様、年収が一時的に下がる可能性があるでしょう。
【薬剤師との比較】
薬剤師の平均年収 | 治験コーディネーターの平均年収 |
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約551万円 | 約370万~430万円 |
(出典:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況」/https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2022/)
一方で、治験コーディネーターの仕事には「専門性を役立てられる」「新薬開発・治験薬に関われる」「先端医療を学べる」「患者さまとの距離が近い」などの魅力もあります。収入以上に治験コーディネーターの仕事内容に魅力を感じる方は、転職を検討してみるのもよいでしょう。
臨床検査技師
病院勤務の臨床検査技師の場合、入院患者さまの急変や緊急の検査依頼に備えて、当職やオンコール対応を求められるケースが少なくありません。また、職務に関連した認定資格を取得することで、給料アップにつながる場合もあります。そうしたことが影響して、臨床検査技師の平均年収は治験コーディネーターより高い傾向にあります。
【臨床検査技師との比較】
臨床検査技師の平均年収 | 治験コーディネーターの平均年収 |
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約509万円 | 約370万~430万円 |
(出典:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況」/https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2022/)
ただし、治験コーディネーターは基本的に夜勤がないため、「日勤のみ」という条件で比較すれば、収入面での差はそれほど大きくはないと考えられます。治験コーディネーターとしての経験を積むことで、病院勤務の臨床検査技師と同等の収入を目指すことも可能でしょう。
診療放射線技師
診療放射線技師の年収は、医療系職種のなかで医師・歯科医師・薬剤師に次ぐ高さです。病院勤務の診療放射線技師の場合、臨床検査技師と同様に当直やオンコール対応が求められるケースがあるため、そうした手当も年収に影響していると考えられます。
【診療放射線技師との比較】
診療放射線技師の平均年収 | 治験コーディネーターの平均年収 |
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約544万円 | 約370万~430万円 |
(出典:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況」/https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2022/)
そのため、診療放射線技師から治験コーディネーターに転職した場合、初年度の収入は下がる可能性が高いでしょう。しかし、治験コーディネーターは夜勤がなく残業も少ないので、ワークライフバランスが取りやすくなることが期待できます。
臨床工学技士
臨床工学技士から治験コーディネーターに転職した場合、初年度の年収は下がる可能性があるものの、それ以降の想定年収は大きく変わらないと考えられます。
【臨床工学技士との比較】
臨床工学技士の平均年収 | 治験コーディネーターの平均年収 |
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約443万円 | 約370万~430万円 |
(出典:職業情報提供サイト(日本版O-NET)「臨床工学技士」/https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/164)
臨床工学技士は、人工透析機や人工呼吸器、人工心肺装置といった生命維持管理装置を操作するスペシャリストです。特に透析経験のある臨床工学技士は、透析薬の治験において大いに活躍できるでしょう。
管理栄養士・栄養士
治験コーディネーターとして活躍する方のなかには、管理栄養士・栄養士の資格を持つ方もいます。収入の水準は治験コーディネーターのほうが高いので、管理栄養士・栄養士から治験コーディネーターに転職する場合は、年収アップが期待できるでしょう。
【管理栄養士・栄養士との比較】
管理栄養士・栄養士の平均年収 | 治験コーディネーターの平均年収 |
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約379万円 | 約370万~430万円 |
(出典:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況」/https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2022/)
病院などの医療機関での勤務経験のある方は、医療従事者(医療職)と連携した経験があるため、より有利に転職活動を進められるでしょう。
治験コーディネーターの給料項目
治験コーディネーターは将来性・成長性の高い職業であり、キャリアや保有資格によっては管理職として大幅な年収アップを目指すことも可能です。転職直後は前職よりも給料が低くなる場合もありますが、しっかりと結果を残すことができれば収入アップにつながるでしょう。
治験コーディネーターへの転職を検討する際には、年収総額だけでなく給料の内訳を確認することも重要です。給料の内訳を理解した上で、転職サイトなどで実際の求人情報をチェックしてみましょう。
基本給
基本給とは給料のベースとなる賃金のことを指します。時間外手当(残業手当)、役職手当といった各種手当やインセンティブを含まず、「一定期間に必ず支給される金額」と考えるとよいでしょう。なお、基本給に各種手当やインセンティブを加算した金額が「総支給額」、社会保険料や各種税金が天引きされた後の金額が「手取り額」となります。
基本給の金額は、月給だけでなく賞与(ボーナス)の金額にも影響します。賞与は「基本給×○か月」で算出される場合が多いので、基本給の割合が低い転職先の場合、想定よりも賞与額が低くなる可能性があるでしょう。
また、CRC手当を含めて基本給としている企業もあるので、求人情報であらかじめ確認しておくとよいでしょう。
CRC手当
CRC手当(外勤手当)というのは、治験が行われる病院に派遣される治験コーディネーター向けの手当です。会社から医療機関に派遣されることで発生する手当なので、医療機関専属の院内治験コーディネーター(院内CRC)として勤務する場合は、CRC手当が支給されません。
CRC手当の支給額は企業によって異なります。求人情報を確認する際は、どの程度の手当がつくのかをしっかり確認しましょう。
固定残業代
固定残業代とは、固定給のなかにあらかじめ含まれている残業代のことです。固定残業代が導入されている企業では、実働時間に関係なく一定時間分の残業代が支給されます。
例えば「固定残業代20時間分」の場合、月の残業時間が20時間を超えるまでは支給される給料が変わりません。つまり、月の残業時間が0時間でも同じ給料になる(一定の残業代が受け取れる)わけです。
なお、想定する残業時間を超えた場合は、超過した分の残業代が別途支給されます。求人情報を確認する際には、固定残業代の金額・時間数が基本給と区別して明記されているかをチェックしておきましょう。
資格手当
CRCに関する資格を取得することで支給される手当のことです。CRCの資格には、日本SMO協会の「JASMO公認CRC試験」や日本臨床薬理学会の「認定CRC試験」があります。
(出典:日本SMO協会「公認CRC・SMA制度」/https://www.jasmo.org/expart/license/index.html)
(出典:日本臨床薬理学会「認定CRC制度について」/https://www.jscpt.jp/profession/crc?sid=ss2)
治験コーディネーターの資格手当は、勤務先によって支給額が異なります。また、資格の取得は、スキルアップだけでなくキャリアアップにもつながります。キャリアアップを実現することで、さらなる収入アップも見込めるでしょう。
その他
勤務する企業にもよりますが、次のような手当が支給される場合もあります。
◆治験コーディネーターが受け取れる可能性がある手当
- ・家族手当…扶養家族がいる方に支給される手当
- ・住宅手当:住居費を補助するために支給される手当
- ・通勤手当:自宅と担当の医療機関(勤務地)を移動するのにかかる交通費
このほか、企業独自の手当や福利厚生の制度が設けられているケースもあるので、求人票や企業のホームページなどで確認することをおすすめします。
治験コーディネーターにおける給料の特徴3つ
治験コーディネーターは、他職種と比べて職場による年収の違いがほとんどありません。そのため、治験コーディネーターの仕事で高給を狙うためには、経験の有無や賞与の多さが重要になります。
ここでは、治験コーディネーターの給料に関する3つの特徴について解説します。
医療系資格による給料の差がほとんどない
医療関連の職種では、保有資格が給与に直結するケースが多く見られます。しかし、治験コーディネーターの場合は、資格による給料の差がほとんどありません。看護師や薬剤師、臨床検査技師といった他職種から転職した場合でも、資格が給料に反映されることは考えにくいでしょう。
また、治験コーディネーターの給料は経験の有無が重視されるため、未経験で採用された場合は、どんな資格を持っていてもスタートラインは同じとなります。
経験を積むことが給料アップにつながるため、未経験から治験コーディネーターへの転職を目指す場合は、早い段階で転職活動を進めるほうが有利です。
大手SMO企業が平均年収を底上げしている
治験受託の多くを大手企業が占めていることから、SMO業界は大手企業の影響力が強く、平均年収も企業規模によって差が見られます。
治験コーディネーターの求人情報を見ると、月給ベースでは大手企業と中小企業の間に大きな違いはありません。しかし、大手企業は賞与金額が多い傾向にあり、必然的に年収も高くなります。大手SMO会社が治験コーディネーターの平均年収を底上げしていると言われるのは、こうした理由によるものです。
昇給率が高い傾向にある
昇給率とは、昇給前と昇給後の給料を比較し、どの程度昇給したかをパーセンテージで表したものです。
- 昇給率(%)=(昇給後の給料-昇給前の給料)÷昇給前の給料×100
企業の多くは昇給制度を導入しており、SMO企業(治験施設支援機関)や医療機関も例外ではありません。大まかな昇給率を把握することで将来の収入額を予想できるので、現在の職種と治験コーディネーターの昇給率をそれぞれチェックしておくとよいでしょう。
治験コーディネーターの昇給率は、職場や個人の業績によって異なりますが、業績のよい企業であれば、毎年数%以上の昇給を実現することも可能です。知識やスキルを身につけて、実績につなげていきましょう。
治験コーディネーターの福利厚生の特徴は?
転職を考えるにあたっては、給料だけでなく福利厚生も気になるポイントです。マイナビコメディカルの求人情報をもとに、治験コーディネーターの福利厚生の特徴を調査したところ、下記のような傾向が見られました。
治験コーディネーターの福利厚生の特徴 |
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・完全週休2日制の求人がほとんど ・土日祝日が休みの職場が多い ・GWや夏季休暇、年末年始休暇を取得できる求人が多い ・有給休暇をはじめ、育児休暇制度、介護休職制度、慶弔休暇などの制度が整っている ・ライフスタイルにあわせて働ける求人が多い ・雇用保険、労災保険、健康保険、厚生年金保険など各種保険完備の求人が多い |
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治験コーディネーターが年収を上げるためのポイント3つ
治験コーディネーターは、他職種に比べて初年度の平均年収が低めです。保有資格についても考慮されないことが多いため、年収を上げるためにはポイントを押さえた働き方をしつつ、治験コーディネーターとしての経験を積むことが重要となります。
ここでは、治験コーディネーターが年収アップを目指すためのポイントを紹介します。
公認CRCを目指す
治験コーディネーターのスキルや実績を測る目安として、「公認CRC」という制度があります。公認CRC制度は、治験コーディネーターの資質向上を目的に創設されたもので、日本SMO協会が主催しているJASMO公認CRC試験をはじめ、いくつかの団体で実施されています。
公認CRCを取得しているとキャリアアップにつながるほか、転職の際のアピールポイントにもなるため、積極的に取得するのがおすすめです。
都市部の職場を選ぶ
治験コーディネーターの仕事で高収入を目指すなら、都市部の職場を選ぶのも1つの方法です。他の職種にも言えることですが、東京や大阪などの大都市圏は給料が高く、地方で転職するよりも高収入を得られる傾向にあります。「都市部の職場は給料が高い分、多忙になる」という印象をお持ちの方もいそうですが、治験コーディネーターは完全週休2日制の職場が多いため、都市部であってもワークライフバランスを重視した働き方ができるでしょう。
転職時に年収交渉を行う
治験コーディネーターの仕事は、専門的な知識やスキルが要求されるため、転職の際は自身の経験やスキルを伝えた上で、きちんと年収交渉を行いましょう。
とはいえ、これまでの経験や能力を上手にアピールするのは意外に難しいものです。交渉に自信がない場合は、転職エージェントを活用するとよいでしょう。
治験コーディネーターへの転職を検討している方は、医療従事者の求人に特化した転職サイトであるマイナビコメディカルをご利用ください。マイナビコメディカルでは専属のキャリアアドバイザーがつき、1人ひとりの条件に合わせた求人を紹介することが可能です。また、企業との年収交渉もキャリアアドバイザーが代行するため、未経験者でも安心して転職活動ができます。治験コーディネーターの非公開求人も豊富にそろっていますので、お気軽にご相談ください。
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まとめ
治験コーディネーターの年収は、薬剤師や放射線技師と比較するとやや低めですが、医療関連職種のなかでは平均的な金額です。転職の際は、医療関連の資格より治験コーディネーターとしての経験が重視されるので、経験が浅い場合は初年度の年収が下がる可能性もあります。
しかし、治験コーディネーターは経験を積むことで昇給が期待できる職種です。また、給料水準が高い都市部で働くことで、収入アップにつながる可能性もあるでしょう。
マイナビコメディカルでは、業界に精通したキャリアアドバイザーが、治験コーディネーターに転職する際の年収交渉や書類作成のアドバイスなど、さまざまなサポートを行っております。ぜひ一度ご相談ください。
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※当記事は2023年11月時点の情報をもとに作成しています
監修者プロフィール
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