「柔道整復師はやめたほうがいい」と言われるのはなぜ?その理由とは
柔道整復師は整骨院や接骨院、病院、介護施設などに勤務し、患者さま、利用者さまのけがに対して、整復や固定といった治療を行います。柔道整復師は幅広いフィールドで活躍できる職業ですが、一方で「柔道整復師を目指しているときに、周りの反応がよくなかった」「周囲から『柔道整復師はやめたほうがいい』と言われたことがある」などの声を耳にするのも事実です。
そこで本記事では、「柔道整復師はやめたほうがいい」と言われる理由や、柔道整復師の可能性、柔道整復師の資格を生かせる職業・職場などについて詳しく解説します。柔道整復師を目指している方は、ぜひ参考にしてください。
資格取得方法・必要な費用相場を解説!

目次
なぜ「柔道整復師はやめたほうがいい」と言われる?4つの理由
インターネットで「柔道整復師」を検索すると、見出しに「やめとけ」「やめたほうがいい」「やめたい」などのワードが使われた記事を多く見かけます。そこには、どういった理由があるのでしょうか? 柔道整復師が、ネガティブなイメージを抱かれてしまう理由には、下記の4つが挙げられます。
- ・国家試験の合格率が低い
- ・他の介護・医療職と比べて給料が低い
- ・過去に保険の不正請求があった
- ・競争が激しく、廃業の不安がある
ここからは、4つの項目について詳しく解説していきます。
国家試験の合格率が低い
「柔道整復師はやめたほうがいい」と言われる理由の一つに、柔道整復師国家試験の合格率が低いことが挙げられます。以下は、過去5年間の国家試験の結果です。
受験者数 | 合格者数 | 合格率 (うち既卒の合格率) |
|
---|---|---|---|
2024年(第32回) | 5,027名 | 3,337名 | 66.4%(35.9%) |
2023年(第31回) | 4,521名 | 2,244名 | 49.6%(11.5%) |
2022年(第30回) | 4,359名 | 2,740名 | 62.9%(16.9%) |
2021年(第29回) | 4,561名 | 3,011名 | 66.0%(21.6%) |
2020年(第28回) | 5,270名 | 3,401名 | 64.5%(16.5%) |
(参考:厚生労働省「第28回柔道整復師国家試験の合格発表について」/https://www.mhlw.go.jp/general/sikaku/successlist/2020/siken16/about.html)
(参考:厚生労働省「第29回柔道整復師国家試験の合格発表について」/https://www.mhlw.go.jp/general/sikaku/successlist/2021/siken16/about.html)
(参考:厚生労働省「第30回柔道整復師国家試験の合格発表について」/https://www.mhlw.go.jp/general/sikaku/successlist/2022/siken16/about.html)
(参考:厚生労働省「第31回柔道整復師国家試験の合格発表について」/https://www.mhlw.go.jp/general/sikaku/successlist/2023/siken16/about.html)
(参考:厚生労働省「第32回柔道整復師国家試験の合格発表について」/https://www.mhlw.go.jp/general/sikaku/successlist/2024/siken16/about.html)
上記の通り、柔道整復師の国家試験の合格率は6割程度で推移しています。制度開始当初の1992年~1999年は8割程度の合格率だったことを考えると、難易度が高まっていると言えるでしょう。
特に、既卒の受験者の場合は合格率1割程度の年もあり、働きながら合格を目指すことの難しさが伺えます。
なお、柔道整復師の合格率が低下した理由としては、次のような要因が考えられます。
・養成校の増加に伴い、受験者数が制度開始時の5~6倍に増えた。また、社会人受験者の増加などで受験者層が多様化し、教育環境にもばらつきが生じている。
・後述する不正請求問題などが問題視された結果、柔道整復師育成の適正化を求める流れが強まり、試験が難化傾向にある。
・試験範囲が広いことに加えて、必修問題で80%以上の正答率が求められる。
柔整師のデメリット・魅力とは?
他の介護・医療職と比べて給料が低い
柔道整復師は国家資格でありながら、350万~450万円が年収の相場とされており、2024年の厚生労働省のデータでも、全国平均が459.3万円(※)となっています。
(参考:職業情報提供サイト(日本版O-NET「柔道整復師」/https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/173)
※はり師、きゅう師などを含む「その他の保健医療従事者」に分類されたなかでの年収平均であるため、実態とは異なる可能性があります。
また、初任給は約16万~20万円となっており、新人のうちはそれほど大きく稼げない傾向にあります。
仕事を始めて間もない時期は、実際にやりながら覚えることも多く、どうしても業務量が増えがちです。しかし、前述したように新人の給料はさほど高くないのが実情。「努力と給料が見合っていない」と感じて、「やめたい」と思ってしまう人もいるでしょう。
※平均年収・初任給は、求人サイトに記載されている給与情報から算出したおおよその金額です。
年収を高めるポイントも
過去に保険の不正請求があった
多くの柔道整復師は、法律やルールに則って保険請求を行っていますが、過去に一部の悪質な柔道整復師による不正請求が問題になったことがあります。加えて、知識不足のまま開業した事業者が、知らず知らずのうちにお客さまに不正請求を行っているケースもありました。
そうした問題があったために、柔道整復師自体にネガティブなイメージを持つ人がいるという点は理解しておくべきでしょう。
とはいえ、不正請求に対する国の取り締まりは年々厳しくなっており、不正請求の疑いがある施術所には領収書、カルテといった資料の提示が求められるほか、審査委員会による厳格なチェックが行われます。そのため、今後は柔道整復師に対するイメージも改善されていくでしょう。
競争が激しく、廃業の不安がある
柔道整復師は比較的独立しやすいため、養成校を卒業後、十分な現場経験や技術力が備わっていないまま開業する人も少なくありません。実際、2022年度における柔道整復師の施術所は50,919か所となっており、「あん摩、マッサージおよび指圧を行う施術所」の18,155か所よりも、格段に多い状況です。
(参考:厚生労働省「令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」/https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/22/)
(参考:全国柔整鍼灸協同組合「都道府県別の柔道整復施術所(接骨院・整骨院)数について」/https://www.zenjukyo.gr.jp/news/kenbetu-sejutushosu/)
多くの柔道整復師が成功を目指して独立開業すれば、施術所の数も多くなり、それだけ競争が激しくなります。また、競争が激しくなると、経営力のない施術所はついていけず、業績の悪化から廃業せざるを得ないケースも発生します。
このように、ライバルが多く廃業の不安があることも、「柔道整復師はやめたほうがいい」と言われる理由の一つでしょう。
30年後も仕事はなくならない?
一概に「柔整師はやめたほうがいい」とは言えない理由
「柔道整復師はやめたほうがいい」と言われる背景には、給料の低さや保険の不正請求問題、廃業リスクなどがあります。しかし、高齢化が進むなか、介護福祉業界での活躍が期待されるなど、柔道整復師には「やめたほうがいい」とは言い切れない将来性もあります。
ここからは、一概に「柔道整復師はやめたほうがいい」と言えない理由について解説します。
職場によっては高収入を目指せる
厚生労働省のデータによると、柔道整復師の平均年収は459.3万円となっています。しかし、なかには正社員の月給を35万~40万円以上に設定している施設もあり、職場や働き方によっては年収500万円以上の高収入を目指すことも可能でしょう。
なお、高収入が期待できる求人先では、院長候補を求めていることが多く、経験者が歓迎される傾向にあります。
未経験の場合でも、業績が安定して成長している施設や、教育システム・昇給制度が整っている施設を選べば給与アップがかないやすく、1年目で30万円程度の月給を得られる可能性もあるでしょう。
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保険の不正請求は減っている
柔道整復師が、公的医療保険制度が適用される保険診療だけで経営を続けていくのは、決して簡単ではありません。そのため、最近では段階的に自費診療を導入して、売り上げの確保に努めている整骨院・接骨院も多く見られます。
一方、国の取り締まりが厳しくなったことで、柔道整復師が売り上げのために不正請求を行うケースは確実に減っています。そうした状況を踏まえるなら、ネガティブなイメージを過剰に心配する必要はないでしょう。
工夫次第で独立に成功する可能性は十分にある
先に、「柔道整復師は競争が激しく、廃業の不安がある」と紹介しましたが、なかには独立開業に成功して、1,000万円以上の年収を得ている経営者もいます。
知識や技術を磨くだけでなく、効果的な集客施策やマーケティングを行い、お客さまが満足できる施術に努めれば、競争を勝ち抜いて成功する可能性は十分にあるでしょう。
新卒・既卒で合格者数が変わる理由も
柔道整復師の資格を生かすためには?
みなさんのなかには、周囲から「やめたほうがいい」と言われたことで、整骨院や接骨院以外への就職・転職を考えている方もいるのではないでしょうか。もちろん、それも一つの方法ですが、せっかく取った国家資格を無駄にする手はありません。
最後に、柔道整復師の資格を生かせるおすすめの働き方を紹介するので、職場選びに迷っている柔道整復師の方は、参考にしてください。
スポーツトレーナーを目指す
柔道整復師の資格を生かせば、スポーツトレーナーとして活躍することが可能です。また、勤務先によっては、スポーツ外傷やスポーツ選手のトレーナー業務をメインに担当することもあります。
スポーツトレーナーの求人募集には、「勤務時間9~18時」「完全週休2.5日」など、ワークライフバランスに配慮した働き方が多く見られます。柔道整復師の資格を生かしながらスポーツ選手のサポートをしたい方や、仕事とプライベートをしっかり両立させたい方には、理想的な働き方と言えるでしょう。
病院や介護施設を勤務先に選ぶ
急速に高齢化が進むなかで、医療・介護サービスの需要と供給のバランスを安定させることは、国を挙げての課題です。そのため近年は、病院や介護施設でも柔道整復師のニーズが高まっています。
病院で働く柔道整復師は、運動機能の専門家として患者さまの骨折や脱臼、ねんざなどの施術を担当します。一方の介護施設では、機能訓練指導員として、利用者さまの運動プログラムやリハビリプログラムの作成・実施を担うケースが多いでしょう。
通常の整骨院の年間休日は平均で110日となっており、年末年始以外はフルで稼働しなければならない状況です。しかし、スタッフの数が充実している病院や介護施設なら、年間休日120日以上を確保することも可能です。柔道整復師としての知識や技術を生かしつつ、ワークライフバランスも重視したい方は、病院や介護施設の求人をチェックしてみてください。
向いていない人と何が違う?
まとめ
合格率の低下や給料の低さ、競争の激しさなどが原因で、「柔道整復師はやめたほうがいい」という言葉を聞くことがあります。しかし、柔道整復師は整骨院や接骨院、病院、介護施設など、幅広いフィールドで活躍できる職業で、勤務先によっては高収入を得ることが可能です。また、工夫と努力次第では、独立開業して成功する可能性もあります。
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